被害者請求に必要な書類とは?流れを弁護士が解説
被害者あるいは被害者の依頼を受けた弁護士が、直接、自賠責保険に請求することを被害者請求と言います。
被害者請求には、傷害部分の請求、後遺障害部分の請求、死亡の賠償金の請求があります。
また、仮渡金といって、治療費等にあてるために、さしあたって支払いを受けることができる制度もあります。
この記事では、それぞれの請求にあたって、どのような書類が必要となるのか、その取得方法などについて詳しく解説しています。
この記事でわかること
- 被害者請求の必要書類
- 被害者請求の必要書類の取得・作成方法
- 後遺障害診断書の重要性
被害者請求に必要な書類
被害者請求に必要な書類は、下表のとおりです。
以下の書類は「必要書類」になりますが、これらの書類に加えて資料を提出することもできます。
損害の認定にあたって有利になると思われる証拠は積極的に提出したほうがいいでしょう。
各書類の取得方法・作成方法について
自賠責保険の請求に必要な書類の様式は、各自賠責保険会社に郵送するよう依頼すれば、必要な様式のセットを送ってくれます。
加害者がどこの自賠責保険に加入しているかは、交通事故証明書に記載されています。
支払請求書(保険金・損害賠償額・仮渡金)
支払請求書は、自賠責保険から送られてくる様式のセットに入っています。
内容としては、交通事故証明書を参照すれば完成できる内容です。
病院の治療費や整骨院の施術費用を直接、病院や整骨院に支払ってもらうためには、支払請求書の口座記入欄に、病院や整骨院の口座を記載する必要があります。
請求者本人の印鑑証明書
請求者の印鑑証明書が必要となります。
弁護士が委任を受けて被害者請求する場合には、弁護士の印鑑証明書を添付して請求しています。
交通事故証明書
交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り寄せることができます。
取り寄せ方法は、①証明書申込用紙を記入して郵便局で申し込む方法、②自動車安全運転センターの窓口で申し込む方法、③自動車安全運転センターのホームページから申し込む方法があります。
もっとも、任意保険会社が関与している場合には、保険会社がすでに取得しています。
したがって、その交通事故証明書の写しに原本証明印を押印してもらったものを送付してもらう方法もあります。
保険会社に、「原本証明印を押した事故証明を下さい」といえば理解してくれます。
人身事故証明書入手不能理由書
人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故証明書の記載が「物件事故」になっている場合に提出が必要となります。
事故後に、警察に診断書を提出している場合には、「人身事故」との記載になっており、この場合には、人身事故証明書入手不能理由書の提出の必要はありません。
人身事故証明書入手不能理由書では、ケガをしているのに、警察に診断書を提出して人身事故扱いにしなかった理由を記載する必要があります。
事故発生状況報告書
事故発生状況報告書は、事故の態様を図で記載し、その図の説明を文章で記載しなければなりません。
図を作成するにあたっては、事故現場の道路の状況を踏まえて、自分の車と加害者の車の衝突までの状況が分かるように記載する必要があります。
事故現場の道路の状況を作成するにあたっては、インターネットで事故現場の住所を入力すると、現場付近の地図を見ることができるので、それを参考にすると作成しやすいでしょう。
加害車両の自動車車検証(写)、標識交付証明書(写)または軽自動車届出済証(写)
これらの書類は、加害車両が、原動機付自転車又は軽自動車(二輪)、車検対象車でない場合に必要になります。
診断書、施術証明書および施術費明細書
診断書は、病院に作成のお願いをすることになります。
施術証明書と施術費明細書は、整骨院に通院した場合に必要になります。
整骨院の柔道整復師の先生に作成を依頼しましょう。
なお、任意保険会社が関与している場合には、すでに取得している場合もあるため、一度、任意保険会社に確認してみましょう。
診療報酬明細書
診療報酬明細書は、病院でどのような治療をしたか等が分かる書類です。
診断書と一緒に、病院に作成を依頼しましょう。
また、診療報酬明細書も任意保険会社が関与している場合には、すでに取得している場合もあるため、一度、任意保険会社に確認してみましょう。
休業損害証明書、確定申告書(写)、所得証明書など
これらの書類は、交通事故により休業したことで休業損害が発生した場合に提出する書類です。
会社員の場合には、休業損害証明書を会社に作成してもらい提出することになります。
この場合、源泉徴収票を添付する必要があります。
自営業者の場合には、確定申告書を提出します。
休業損害不請求理由書
休業損害を請求しない場合に提出します。
通院交通費明細書
通院にあたって、どのような方法(徒歩、自家用車、公共交通機関、タクシーなど)を利用したかを記載して提出する必要があります。
住民票または戸籍抄本
当事者が未成年者の場合に提出する必要があります。
委任状及び委任者の印鑑証明書
弁護士に依頼して、被害者請求を行う場合には、被害者の委任状と印鑑証明書が必要となります。
印鑑登録をしていない場合には、役所で実印登録をして印鑑証明書を発行して貰う必要があります。
付添看護自認書(近親者の場合)、または付添看護領収証
被害者の療養のために付き添って看護する必要があり、実際に看護した場合には付添看護自認書を提出します。
専門の業者に依頼した場合には、その領収書を提出することになります。
その他損害を立証する書類、領収証、診断資料など
損害の発生を証明する証拠が他にあれば添付することになります。
後遺障害の申請にあたっては、物損資料や画像鑑定書、被害者の陳述書、カルテなどを提出することもあります。
後遺障害診断書
後遺障害部分の申請をする場合に必要となります。
病院に作成を依頼する必要があります。
整骨院では後遺障害診断書は作成できませんのでご注意下さい。
死亡診断書または死体検案書
被害者が亡くなった場合に必要になります。
病院に作成してもらう必要があります。
省略のない戸籍(除籍)謄本
被害者が亡くなった場合に必要となります。
役所で取得することができます。
仮渡金支払に関する念書
仮払金の申請をする場合に必要となります。
後遺障害診断書の重要性
後遺障害申請をする場合においては、上記の書類の中でも特に重要なのは後遺障害診断書です。
後遺障害診断書に記載されている体の痛みや不具合が後遺障害等級の審査の対象となります。
つまり、肩の可動域に制限があるような場合であっても、肩の可動域について検査結果の記載がないような場合には、肩の可動域に関する審査は行われません。
医師は体を治すためのプロですが、交通事故における賠償実務に関して、十分な知識を持っている医師はそれほど多くはありません。
過不足なく後遺障害診断書の内容が作成されているかどうかは交通事故の専門の弁護士でなければ判断することは困難ですので、後遺障害診断書を作成された場合には、一度交通事故を専門的に取り扱う弁護士にみてもらうことをお勧めします。
まとめ
被害者請求にあたっては、上記のとおり、多くの書類を収集・作成して申請をする必要があります。
弁護士に依頼した場合には、弁護士が資料の収集から書類の作成まで行いますので、被害者請求をご検討の場合には、一度、弁護士に相談された方がいいでしょう。
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