後縦靭帯骨化症(OPLL)とは|交通事故との関係を弁護士が解説
後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう)は、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を走る後縦靭帯という靭帯が肥厚し骨化が起きることによって、感覚障害や運動障害、神経症状などを発症する病気です。
既往症として、後縦靭帯骨化症があったとしても、交通事故の後遺障害が認定されないというわけではありません。
例えば、神経症状(手足のしびれ等)がある場合は、14級9号、12級13号といった後遺障害が認定される可能性があります。
ただし、事故当時、後縦靭帯骨化症に罹患しており、それが原因で損害が拡大したよう場合には、賠償金が減額される可能性があります。
後縦靭帯骨化症とは
後縦靭帯骨化症(こうじゅうじんたいこっかしょう (OPLL))は、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を走る後縦靭帯という靭帯が肥厚し骨化が起きることによって、感覚障害や運動障害、神経症状などを発症する病気です。
この病気の発生頻度は、日本では男性で約4%、女性で約2%といわれており、男性に多く発症する傾向にあります。
これに対し、アメリカでの発症頻度は0.12%、ドイツでは0.1%程度と報告されており人種によって発生頻度が大きく異なる病気です。
なお、後縦靭帯骨化症は、厚生労働省により、難治性疾患(特定疾患)に指定されています。
発症の要因としては、同一家系での発生や兄弟で罹患しているような事例が多数あることから遺伝が発症に関係していると考えられています。
もっとも、遺伝の他にも様々な要因により発症すると考えられており、糖尿病や、肥満傾向、老化現象、骨化部位における局所ストレスなども発症の要因と考えられています。
具体的な症状としては、頸椎の場合、首筋や肩甲骨周辺・指先にしびれがあり、症状が進行すると足のしびれや運動障害、細かい作業が困難になる巧緻運動傷害などが発現します。
また、胸椎の場合は、下半身の脱力やしびれが生じることが多く、腰椎の場合にも、下半身の脱力や痛み、しびれ等の症状が発現します。
後縦靭帯骨化症と後遺障害の関係
既往症として、後縦靭帯骨化症があったとしても、そのことから直ちに後遺障害が認定されないというわけではありません。
例えば、神経症状(手足のしびれ等)がある場合は、14級9号、12級13号といった後遺障害が認定される可能性があります。
また、脊椎損傷の場合は、12級13号、9級10号、7級4号、5級2号、3級3号、2級1号 、1級1号といった後遺障害が認定される可能性があります。
素因減額の可能性
事故当時、後縦靭帯骨化症に罹患しており、それが原因で損害が拡大したよう場合には、賠償金が減額される可能性があります。
このように被害者の疾患を理由に賠償金額を減額することを素因減額といいます。
以下では、後縦靭帯骨化症により素因減額された裁判例をご紹介します。
判例 最判H8.10.29
被害者が事故前から後縦靭帯骨化症に罹患していたことが治療の長期化や後遺障害の程度に大きく寄与していることが明白な事案につき、加害行為前に疾患に伴う症状が発現していたかどうか、疾患が難病であるかどうかに関わらず、素因減額がなされる可能性があると判断しています。
→差戻審(大阪高裁H9.4.30)では、3割の素因減額を認めています。
判例 水戸地裁H30.5.23
事故前から後縦靭帯骨化症及びこれに伴う重度の脊柱管狭窄が広範に確認されていたと認められた事案で、後遺障害逸失利益に関し、5割の素因減額を認めました。