後遺障害1級の慰謝料の相場は?慰謝料以外に請求できる項目も解説
後遺障害1級は、後遺障害等級の中で最も重い等級です。
賠償額も高額になり、被害者やご家族で交渉することは難しいため、弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
この記事では、以下の点について説明しています。
後遺障害1級各号の内容
後遺障害1級は、常に介護を要する場合と、常に介護を要しない場合に分けられています。
常に介護を要する場合
- 1級1号 「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
脳挫傷、びまん性軸索損傷、くも膜下出血など重篤な頭部外傷等を負ったことで、体を自由に動かすことができなくなり、植物状態となった場合に認定される等級です。 - 1級2号 「胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」
常に介護を要しない場合
- 1級1号 「両目が失明したもの」
- 1級2号 「咀嚼及び言語の機能を廃したもの」
- 1級3号 「両上肢をひじ関節以上で失ったもの」
- 1級4号 「両上肢の用を全廃したもの」
- 1級5号 「両下肢をひざ関節以上で失ったもの」
- 1級6号 「両下肢の用を全廃したもの」
後遺障害1級に認定された場合の請求項目
後遺障害1級に認定された場合、主な請求項目は以下のとおりです。
- 治療費
- 傷害慰謝料
- 入院雑費
- 付添看護費用
- 通院付添費用
- 付添人の交通費等
- 休業損害
- 家屋リフォーム代
- 介護用ベッド、医療機器の購入費用
- 後遺障害慰謝料
- 後遺障害逸失利益
- 将来雑費
- 将来介護費用
- 将来の医療機器の購入費
- 近親者慰謝料
以下、個別に説明していきます。
治療費
当然のことながら、治療費を請求することができます。
治療費は、事故から症状固定となるまで請求することができます。
もっとも、症状の悪化を防止するためなど、治療の必要性が認められる範囲で将来治療費が認められる場合もあります。
傷害慰謝料
事故発生から症状固定までの期間の傷害慰謝料を請求することができます。
手術を何度も繰り返したり、生命が危ぶまれるような状況がある場合には、裁判基準(裁判をした場合の賠償水準)の20〜30%程度を増額して請求することもあります。
入院雑費
入院の際に支出する雑費の補償です。
裁判基準で入院1日につき1500円が補償されます。
付添看護費用
被害者が、子どもで付添の必要がある場合や、医師からの付添の指示があるような場合には、付添看護費用を請求することができます。
家族が付き添う場合には、1日6500円とされていますが、症状の程度や被害者が幼児、児童である場合には、10%〜30%増額されることがあります。
通院付添費用
被害者の症状の程度や、年齢などからして通院に付添が必要と認められる場合には、通院付添費用が認められます。
後遺障害1級認定の場合、被害者一人での通院は困難であることがほとんどなので、通院付添費用も請求されるべきです。
裁判基準で1日付き3300円を請求することができます。
付添人の交通費等
病院で付添うために、病院に行く際に必要となる交通費も必要な範囲で請求することができます。
休業損害
被害者の介助のためなどで、家族が仕事を休まざるを得なくなった場合には、相当の範囲で休業損害を請求することができます。
家屋リフォーム、自家用車改造代
自宅で介護することとなった場合、自宅をバリアフリー化するなど自宅や自家用車を改築・改造する必要が出てきます。
こうした費用も、必要な範囲の改築・改造の費用を請求することができます。
介護用ベッド、医療機器の購入費用
自宅で介護を開始するにあたっては、通常のベッドではなく、介護用ベッドや医療機器を購入する必要がでてきます。
そうした費用も必要な範囲で請求することができます。
後遺障害慰謝料
後遺障害1級の慰謝料は、2800万円です。
この金額は目安であり、症状の程度によって増額される場合もあります。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、事故がなければ将来得ることができたであろう利益を損害として請求するものです。
計算式は以下の計算式で計算します。
後遺障害1級の労働能力喪失率は100%です。
具体例 37歳、年収480万円の場合
例えば、37歳、年収480万円の方の場合には以下の金額になります。
480万円 ✕ 100% ✕ 19.6004 = 9408万1920円
将来雑費
トイレを利用できず紙おむつを使用している場合には、将来においても紙おむつは必要になります。
こうした将来に必要となる雑費を請求することができます。
金額については、現状必要となっている雑費に将来必要となることが分かっている雑費の金額を加えて概算を出し、1日1000円とか2000円といった形で請求します。
将来介護費用
自宅で介護する場合、家族やホームヘルパーに介護を委ねることになるため、その費用を将来介護費用として請求することができます。
請求金額は、介護の必要の程度に応じて変わってきますが、全介助で24時間体制の介護が必要な場合には、1億円を超えることもあります。
将来の医療機器の購入費
医療機器は、永遠に使用できるわけではなく、必ず買い替えが必要になります。
したがって、将来においても必要となる医療機器の購入費用も必要な範囲で請求することができます。
近親者慰謝料
後遺障害1級に認定された被害者家族の精神的苦痛は計り知れません。
したがって、近親者固有の慰謝料として賠償請求することができます。
具体的な金額は、事案によって異なりますが、裁判例では200〜400万円程度を認めているものがあります。
まとめ
以上のように、後遺障害1級の場合の請求項目は多岐にわたり、その計算方法も複雑です。
弁護士に依頼していない場合には、保険会社から賠償の提示がなされますが、上記の項目を漏らすことなく提示される可能性は極めて低いでしょう。
適切な補償を得るために、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。