賃金センサス|意味や見方を弁護士が解説【最新版】

執筆者:弁護士 宮崎晃 (弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士)


賃金センサスとは、政府が毎年発表する「賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、平均収入をまとめた資料をいいます。

 

賃金センサスとは

賃金センサスとは、毎年実施されている政府の「賃金構造基本統計調査」の結果に基づき、労働者の性別、年齢、学歴等の別に、その平均収入をまとめた資料をいいます。

賃金センサスは、交通事故、医療事故、学校の事故、その他人身障害事案において、被害者が後遺症を負った場合の逸失利益を計算するために活用される場合があります。

そのため、賃金センサスは、人身障害事故を専門とする弁護士や裁判所にとってとても重要な資料となります。

また、事故のために仕事を休み、賃金が減った場合に休業損害を計算するためにも活用される場合があります。

 

 

令和5年(2023年)賃金センサス(令和5年賃金構造基本統計調査)

下表は、2024年3月27日に発表された2023年(令和5年)の賃金センサスをまとめたものです。

逸失利益等の算定を行う法律実務家にとって必要性が高いと思われるデータのみをピックアップしています。

【全労働者の平均】 (単位:円)
男女計・学歴計・全年齢の平均額 5,069,400

 

【学歴別・男女別】 (単位:円)
学歴 男性 女性
全学歴 5,698,200 3,996,500
中卒 4,515,900 3,027,300
高卒 4,958,400 3,420,600
専門学校卒 5,163,600 4,118,100
高専・短大卒 5,921,000 4,259,300
大学卒 6,552,700 4,700,200
大学院卒 8,390,300 6,588,200
不明 4,499,800 3,030,400

 

【年齢別・男女別】 (単位:円)
年齢 男性 女性
全年齢 5,698,200 3,996,500
〜19歳 2,675,900 2,549,600
20〜24 3,515,300 3,180,300
25〜29 4,393,300 3,811,600
30〜34 5,035,900 3,978,200
36〜39 5,642,900 4,134,600
40〜44 6,132,100 4,241,600
45〜49 6,512,400 4,372,900
50〜54 6,850,200 4,411,000
55〜59 6,981,600 4,326,300
60〜64 5,115,100 3,572,800
65〜69 4,119,400 3,012,300
70歳〜 3,679,000 2,956,900

引用:賃金構造基本統計調査|政府統計の総合窓口

 

 

賃金センサスの見方

上表は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」のデータを使用して作成したものです。

このデータの量は膨大であり、かつ、データを見ても、賃金センサスという言葉は記載されていません。

賃金センサスの具体的な作成の手順は以下のとおりです。

「産業大分類」から
「第1表 年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」(産業計・産業別)を使用

【全労働者の平均】
区分「企業規模計(10人以上)」において「男女計・学歴計」の項目の数値を抽出し、以下の計算式で算出

計算式
きまって支給する現金給与額 × 12 + 年間賞与その他特別給与額

【学歴別・男女別】
区分「企業規模計(10人以上)」において男性と女性それぞれのそれぞれの学歴計、中学卒、高校卒、専門学校卒、高専・短大卒、大学卒、大学院卒、不明の項の数値を抽出し、上記と同じ計算式で算出

【年齢別・男女別】
区分「企業規模計(10人以上)」において男性と女性それぞれの学歴計、各年齢の項の数値を抽出し、上記と同じ計算式で算出

 

 

賃金センサスの動向

過去5年間を見ると、2019年まで右肩上がりだった平均賃金が2020年になって減少に転じました。

おそらく、新型コロナウィルスによって業績が悪化した企業が賃金カットや解雇を行ったことによるものだと考えられます。

しかし、2021年には再び増加し、2023年にはコロナ直前よりも高い水準となりました。

全労働者 男性 女性
2023 5,069,400 5,698,200 3,996,500
2022 4,965,700 5,549,100 3,943,500
2021 4,893,100 5,464,200 3,859,400
2020 4,872,900 5,459,500 3,819,200
2019 5,006,900 5,609,700 3,880,000
2018 4,972,000 5,584,500 3,826,300
2017 4,911,500 5,517,400 3,778,200
2016 4,898,600 5,494,300 3,762,300
2015 4,892,300 5,477,000 3,727,100

全労働者:男女計・学歴計・全年齢の平均額
男性:男性の学歴計・全年齢の平均額
女性:女性の学歴計・全年齢の平均額

引用:賃金構造基本統計調査|政府統計の総合窓口

 

 

令和4年(2022年)の賃金センサス(令和4年賃金構造基本統計調査)

参考として、令和4年の賃金センサスもご紹介します。

【全労働者の平均】 (単位:円)
男女計・学歴計・全年齢の平均額 4,965,700

 

【学歴別・男女別】 (単位:円)
学歴 男性 女性
全学歴 5,549,100 3,943,500
中卒 4,328,500 2,898,200
高卒 4,829,900 3,307,700
専門学校卒 4,990,600 4,086,800
高専・短大卒 5,752,000 4,170,300
大学卒 6,402,700 4,624,600
大学院卒 8,194,100 6,480,100
不明 4,565,100 3,105,200

 

【年齢別・男女別】 (単位:円)
年齢 男性 女性
全年齢 5,549,100 3,943,500
〜19歳 2,653,900 2,388,200
20〜24 3,401,800 3,131,200
25〜29 4,273,600 3,726,300
30〜34 4,959,000 3,907,800
36〜39 5,600,500 4,111,400
40〜44 6,008,200 4,238,500
45〜49 6,360,800 4,317,100
50〜54 6,722,600 4,315,800
55〜59 6,740,100 4,280,700
60〜64 4,904,500 3,436,000
65〜69 3,857,500 2,975,500
70歳〜 3,327,900 2,955,200

 

 

まとめ

賃金センサスは、政府の調査の結果に基づく資料であり、日本の労働者がおかれている賃金の状況を理解するための資料です。

また、交通事故などの人身障害事案において、逸失利益や休業損害の算定にも活用されています。

賃金センサスの数字は毎年異なるため、専門家の方々は、常に最新の正確なデータを確認するようにされてください。

この記事が交通事故に遭われた方や専門家の方のお役に立てば幸いです。

 

 

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