圧迫骨折による後遺症のポイント|弁護士が解説
交通事故によって圧迫骨折のケガを負ってしまう場合があります。
本記事では、主に圧迫骨折の後遺症について交通事故を多く扱う弁護士が解説していきます。
この記事でわかること
- 圧迫骨折について
- 圧迫骨折の後遺障害の種類
- 圧迫骨折の慰謝料などの賠償金
- 圧迫骨折の賠償金を得るためのポイント
目次
圧迫骨折(あっぱくこっせつ)とは
圧迫骨折とは、背骨が上下に押しつぶされて圧迫され折れてしまう骨折のことをいいます。
背骨のことを脊柱(せきちゅう)とも呼ぶことから、「脊柱圧迫骨折」(せきちゅうあっぱくこっせつ)と呼ばれることもあります。
なお、背骨は、首の背骨である頚椎(けいつい)、胸の背骨である胸椎(きょうつい)、腰の背骨である腰椎(ようつい)などから構成されています。
圧迫骨折の症状や日常生活への影響
圧迫骨折の症状は、骨折しているところに痛みが生じます。
日常生活上では、特に、起き上がったり、寝返りをするとき痛みが生じます。
なお、圧迫骨折から派生して下半身も痛むこともあります。
圧迫骨折の原因
圧迫骨折は、交通事故・労災事故やスポーツで外から力が加わった場合に骨折してしまうといわれています。
また、加齢とともに骨の量が減って弱くなってしまう「骨そしょう症」が原因となって圧迫骨折をすることもあります。
圧迫骨折の後遺障害認定の特徴と注意点
圧迫骨折の認定可能性がある後遺障害は、以下のとおりです。
変形障害
背骨を圧迫骨折した場合、きれいに骨がくっつかず、変形して骨がくっついてしまうことがあります。
一定以上の変形がある場合には、後遺障害として認定されます。
変形障害の後遺障害は、下表のとおりです。
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
---|---|
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
6級5号 脊柱に著しい変形を残すもの
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、レントゲン、CT、MRIなどの画像で脊椎の圧迫骨折が確認できる場合で、かつ、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
※後彎(こうわん)とは、脊椎が前方へ折れ曲がることです。
「前方椎体高が著しく減少」したとは、減少した全ての椎体の後方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さ以上である場合をいいます。
この場合、「前方椎体高が減少」したとは、減少した全ての椎体の後方椎体高の合計と減少後の前方椎体高の合計との差が、減少した椎体の後方椎体高の1個あたりの高さの50%以上であるものである場合。
コブ法とは、レントゲン写真を見て判断するもので、背骨の頭側とお尻側において、それぞれ水平面から最も傾いている椎体の延長線が交わる角度を測定する方法です。
8級相当 脊柱に中程度の変形を残すもの
「脊柱に著しい変形を残すもの」とは、レントゲン、CT、MRIなどの画像で脊椎の圧迫骨折が確認できる場合で、かつ、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
前方椎体の高さの減少の程度は、減少した前方椎体の高さの合計と、後方椎体の合計の高さの差が、椎体1個あたりの後方椎体の高さの50%以上あることが必要となります。
1と2については、軸椎以下の脊柱を稼働させずに、回旋位又は屈曲・伸展位の角度を測定する。
- 1. 60度以上の回旋位となっているもの
- 2. 50度以上の屈曲位又は60度以上の伸展位となっているもの
- 3. 側屈位となっており、X線写真等により、矯正位の頭蓋底部の両端を結んだ線と軸椎下面との平行線が交わる角度が30度以上の斜位となっていることが確認できるもの
11級7号 脊柱に変形を残すもの
「脊柱に変形を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。
- 1. 脊柱圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できる場合
- 2. 脊椎固定術が行われた場合(移植した骨がいずれかの脊椎に吸収されたものを除く。)
- 3. 3個以上の脊椎について、椎弓切除術等の椎弓形成術を受けた場合
運動障害・荷重機能障害
運動障害の等級
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
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8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかにより、頚部及び胸腰部が強直した場合に該当します。
- 1. 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、そのことがX線写真等により確認できる場合
- 2. 頸椎及び胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われた場合
- 3. 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められる場合
「脊柱に運動障害を残すもの」とは、以下のいずれかに該当する場合を指します。
次のいずれかにより、頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたもの
- 1. 頸椎又は胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの
- 2. 頸椎又は胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
- 3. 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
荷重機能障害
6級相当 | 頚部及び腰部の両方の保持が困難であるもの |
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8級相当 | 頚部又は腰部のいずれかの保持が困難であるもの |
6級相当の認定は、頚部及び腰部の両方の保持が困難であり、常に硬性装具を必要とする場合に認定されます。
8級相当の認定は、頚部又は腰部のいずれかの保持が困難であり、常に硬性装具を必要とする場合に認定されます。
圧迫骨折で痛みがあると後遺症?
圧迫骨折で痛みが残ると後遺障害が認定される可能性があります。
痛みが残る後遺障害は、「神経症状」という部類になります。
神経症状
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
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14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、圧迫骨折後に、綺麗に骨がくっつかず、その結果、痛みや痺れなどの神経症状が残った場合に認定されます。
「局部に神経症状を残すもの」とは、圧迫骨折後に、骨は綺麗にくっついたものの、痛みや痺れなどが残り、それが治療経過、症状の一貫性・連続性などから医学的に説明できる場合に認定されます。
圧迫骨折の慰謝料などの賠償金
圧迫骨折の場合には様々な種類の賠償金が発生することが考えられます。
請求できる賠償金の中でも代表的な損害である慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料)と逸失利益についてご紹介いたします。
圧迫骨折の入通院慰謝料
交通事故で入院や通院をした場合には、その期間に応じて入通院慰謝料というものが請求できます。
裁判基準の入通院慰謝料は、重傷用の表と軽傷用の表がありますが、圧迫骨折の場合は、重傷用の表を使います。
例えば、圧迫骨折で入院1ヶ月、通院6ヶ月で治療が終了した場合、上記の表が交わるところの149万円が入通院慰謝料ということになります。
圧迫骨折の後遺障害慰謝料
後遺障害に認定された場合には、等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。
後遺障害慰謝料は、等級ごとによって決まっています。
例えば、8級であれば8級2号でも、8級相当でも同額の830万円となります(裁判基準)。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
---|---|
6級 | 1180万円 |
8級 | 830万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
圧迫骨折の逸失利益
圧迫骨折により後遺障害に認定された場合には、逸失利益を請求することができます。
逸失利益とは、後遺障害が残ってしまったことで、働きづらくなり減収してしまうことへの補償です。
逸失利益は、以下の計算式で計算します。
逸失利益の計算式
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入は、会社員であれば、事故前年の年収額となります。
労働能力喪失率は、等級ごとに定められており、圧迫骨折の後遺障害等級の喪失率は下表のとおりです。
後遺障害等級 | 喪失率 |
---|---|
6級 | 67% |
8級 | 45% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
14級 | 5% |
労働能力喪失期間とは、症状固定時の年齢から67歳になるまでの年数です。
ただし、12級13号の場合は10年、14級9号の場合は5年程度に制限される傾向にあります。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。
逸失利益は、本来、将来受け取るお金を先に一時金として受領することになるため、利息分を控除して賠償額が算出されるのです。
以下の例で、逸失利益を計算しますので、ご参考にされてください。
具体例 後遺障害8級2号に認定を受けた会社員の場合
会社員、42歳、年収460万円、圧迫骨折により後遺障害8級2号に認定を受けた場合
460万円 × 67% × 17.4131(25年のライプニッツ係数)= 5366万7174円
圧迫骨折の変形障害で最も認定されることが多いのは11級7号です。
11級7号は、骨に変形がある点を捉えて後遺障害認定されるため、保険会社から骨が変形しただけでは、労働能力を喪失していないので、逸失利益は認められないあるいは、制限的であるべきとの主張がなされることがあります。
筆者の経験上も、変形障害というだけで、保険会社が逸失利益は通常の逸失利益よりも減額してくる傾向があると思います。
確かに、単に骨が変形しているだけで、労働に何の支障がないのであれば、その通りかもしれません。
しかし、骨が変形して癒合(ゆごう=くっつくこと)していることで、痛みや痺れなどの症状も残っていることもあり、労働能力に影響していることもあります。
こうした場合には、どのような症状が残っているのか具体的に主張して逸失利益を請求する必要があります。
現に労働に支障が出ていて減収しているような場合には、減収が分かる資料を保険会社に提出するなどして、労働能力を喪失していることを十分に主張すべきでしょう。
なお、以上のような具体的に残っている症状の説明、労働に対する支障、減収の有無などを適切に保険会社に伝えるためには、基本的には専門家である弁護士に任せた方が良いでしょう。
自動計算ツールのご紹介
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などを簡易的に計算してくれる自動計算ツールがあります。
圧迫骨折で適切な賠償金を得る5つのポイント
適切な治療を受ける
まずは、何より病院に通院して適切な治療を受けて回復を目指すことが必要です。
病院での医師の指示に従いながら、完治するために最善を尽くすことが重要です。
仕事や家事など、人によっては通院しにくい事情もあるでしょう。
もっとも、通院をやめてしまえば、その後の慰謝料請求にも影響がある場合があるので、基本的には我慢せず通院すべきだと考えています。
後遺障害を適切に認定してもらう
治療が終了したら(症状固定になったら)、後遺障害申請をして後遺障害認定をしてもらう必要があります。
ただ認定してもらうだけでなく、「適切」な後遺障害の等級を認定してもらうべきです。
なぜなら、上記で解説したとおり、認定される等級によって賠償額が大幅に変わる可能性があるからです。
適切な後遺障害の認定のためには、被害者請求で弁護士が後遺障害申請をした方が良いでしょう。
適切な賠償金の金額を算定する
圧迫骨折は基本的に重傷の部類のケガです。
そのため、賠償金は高額となるケースが多いです。
もっとも、慰謝料等において、弁護士が介入した場合の裁判基準と保険会社が提示してくる自賠責基準または任意保険会社基準では大きく異なることがあります。
したがって、弁護士に依頼し、適切な賠償金を算定してもらうということが大切だと考えています。
加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう
加害者側(加害者本人や加害者の保険会社)が提示してくる示談内容は、焦ってサインせず、専門家(弁護士)に内容を確認してもらいましょう。
示談書にサインをしてしまった場合、適切な賠償額ではなくても原則取り消しできません。
手遅れになる前に、示談内容を専門家に確認してもらう必要があります。
後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する
できるだけ早い段階で後遺障害に詳しい弁護士に相談し、適切なサポートを受けるということも必要であると考えています。
ここでいう適切なサポートとは、例えば、
- 保険会社との治療打ち切りの交渉をし、十分な治療期間を確保する
- 後遺障害診断書のチェック
- 後遺障害申請の提出資料の精査
などです。
まとめ
圧迫骨折の後遺障害の種類は複数あり、内容も専門的でわかりにくいです。
繰り返しになってしまいますが、適切な後遺障害の認定を得るためには、専門家(弁護士)の力が必要であると考えています。
当事務所には交通事故や労災等の事故案件に注力する弁護士のみで構成される人身障害部があり、おケガで苦しむ方々を強力にサポートしています。
LINEなどによる全国対応も行っていますので、圧迫骨折でお困りの方はお気軽にご相談ください。