交通事故で通院3ヶ月|慰謝料計算や相場、むちうちの慰謝料獲得

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

通院3ヶ月した場合の慰謝料の相場は、むちうちや打撲の軽症の場合は53万円、骨折や脱臼などの重症の場合は73万円です。

この金額は、弁護士基準(裁判基準)で計算した場合の金額です。

3ヶ月通院の慰謝料はいくら?【早見表付】

慰謝料の基準は3つある

交通事故が原因で入院・通院した場合には、入通院慰謝料を請求することができます

入通院慰謝料の計算にあたっての基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。

自賠責保険基準とは、自賠責保険に賠償請求した場合に用いられる計算方法であり、最も低い水準の基準です。

任意保険会社の基準とは、各任意保険会社が設定している基準です。自賠責保険よりは少し高い水準になります。

弁護士基準とは、弁護士が交渉に介入した場合に用いる基準です。裁判所も同様の基準で賠償額を算定するので裁判基準とも呼ばれます。

これらの3つの基準の中で、弁護士基準が最も高い基準となります。

 

基準別!慰謝料早見表

3ヶ月通院した場合の入通院慰謝料

以下は、3ヶ月通院した場合の弁護士基準と自賠責保険基準を用いて計算した場合の慰謝料金額です。

任意保険基準は、現在は公表されていないので、割愛しますが自賠責保険基準よりも少し金額が高い程度です。

自賠責保険基準 弁護士基準
通院実日数が45日以上の場合
38万7000円
通院実日数が45日未満の場合
通院実日数の2倍 × 4300円
53万円

 

後遺障害慰謝料

交通事故によって、痛みや痺れが残った場合には後遺障害に認定される可能性があります。

むちうちの場合だと14級9号あるいは12級13号に認定される可能性があります。

もっとも、後遺障害は、相当期間治療を継続しても痛みや痺れが残っている場合に認定されるものなので、むちうちで3ヶ月の通院で後遺障害に認定されることは、ほぼありません

後遺障害等級 自賠責保険基準 弁護士基準
14級9号 32万円 110万円
12級13号 94万円 290万円

 

 

通院3ヶ月の慰謝料の計算方法

自賠責基準

自賠責保険基準での慰謝料は、以下の計算式で計算します。

対象日数 × 4300円 = 慰謝料金額

対象日数は、「通院期間の日数」と「実通院日数の2倍」を比べて少ないほうが対象日数となります。

具体例 通院期間150日の間に60日通院して場合

この場合、60日の2倍は120日であり、通院期間150日と120日を比べると120日のほうが少ないため、120日が対象日数となります。したがって、この場合、自賠責保険基準では51万6000円が慰謝料の金額となります。

120日 × 4300円 = 51万6000円

 

任意保険基準

任意保険会社の基準は、各保険会社の間で独自に運用されており公表されていません。

もっとも、過去は統一された基準がありました。

過去の統一基準は下表のとおりです。

あくまで参考として御覧ください。

任意保険基準による入通院慰謝料

弁護士基準

弁護士基準は、通称「赤い本」(民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編))という書籍に記載されている表に基づいて計算します。

表は2パターンあります。

骨折や脱臼などの重症を負った場合に使用する表と、むちうちや打撲など軽症の場合に使用する表です。

【 骨折脱臼など重症の場合に使用する表 】

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306 314 321 328 334 340
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311 318 325 332 336 342
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315 322 329 334 338 344
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319 326 331 336 340 346
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323 328 333 338 342 348
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325 330 335 340 344 350
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327 332 337 342 346
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329 334 339 344
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331 336 341
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333 338
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335
11月 150 179 207 234 258 278 296 312 324 332
12月 154 183 211 236 260 280 298 314 326
13月 158 187 213 238 262 282 300 316
14月 162 189 215 240 264 284 302
15月 164 191 217 242 266 286

【 むちうちや打撲など軽症の場合に使用する表 】

入院 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 13月 14月 15月
通院 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195 204 211 218 223 228
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199 206 212 219 224 229
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201 207 213 220 225 230
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202 208 214 221 226 231
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203 209 215 222 227 232
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204 210 216 223 228 233
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205 211 217 224 229
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206 212 218 225
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207 213 219
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208 214
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209
11月 117 135 150 160 171 179 187 193 199 204
12月 119 136 151 161 172 180 188 194 200
13月 120 137 152 162 173 181 189 195
14月 121 138 153 163 174 182 190
15月 122 139 154 164 175 183

計算方法

計算方法について、以下具体例を用いて説明します。

具体例

傷病名:頚椎捻挫(むちうち)

入院0日、通院50日、治療期間120日の場合

このケースでは、傷病名は頚椎捻挫なので、軽症のときに使う表を使用します。

なお、むちうちは、「頚椎捻挫」「外傷性頚部症候群」などといった傷病名で診断されます。


表の1ヶ月は30日で計算します。

したがって、120日は4ヶ月で計算することになります。


入院0日、通院4ヶ月なので、表の一番左の列の「4月」の行に記載のある「67」万円が慰謝料の金額となります。

このように、入院0日のケースでは、一番左の列の数字だけをみれば計算することができます。

入院がある場合には、入院の列と通院の行の交わる数字が慰謝料の金額となります。

つまり、入院30日(1ヶ月)、通院150日(5ヶ月)の場合は105万円が慰謝料となります。

 

 

むちうちは通院3ヶ月で打ち切られる?

むちうちは3ヶ月程度で、保険会社から治療費の対応を打ち切られるといったルールはありません

むちうちは、骨折などと異なり、レントゲンやMRIなどで確認することができません。

むちうちのほとんどの場合が被害者の自覚症状のみであり、医学的に明確に症状の存在を証明することができないのです。

そのため、症状が治っているかどうか客観的には分かりづらく、適切な治療期間の判断が難しい部分もあります。

したがって、保険会社は、治療費をいつまで対応するかどうかについて、事故の規模や主治医の意見などを踏まえて判断する傾向にあります。

事故規模が甚大であるような場合には、6ヶ月以上、治療費の対応をしてもらえることが多いですが、事故の規模が軽微であるような場合には、3ヶ月を待たずに1,2ヶ月で治療費の対応を打ち切られることもあります

 

 

むちうちで通院日数が少ない場合は通院期間が修正されることがある

弁護士基準での慰謝料の計算は、これまで説明したとおり、上記表により計算します。

むちうちで通院頻度が少ない場合には、実通院日数の3倍の日数に通院期間が修正されることがあります

つまり、通院期間が相当に長く、実際の通院日数が20日の場合、20日の3倍である60日が通院期間とされるのです。

あくまでも目安ですが、週に2回程度通院していれば、保険会社から上記のような通院期間の修正を主張されることはないでしょう。

自賠責保険基準では、上記の計算方法のとおり、実通院日数の2倍が通院期間の日数を超えれば、それ以上は増額されません。

つまり、通院期間の日数の半分の日数を通院していれば満額の支払いを受けることができます

以上のとおり、通院すればするほど賠償金が増額されるというわけではありません。

通院頻度は、医師の指示に従い適切な頻度で通院しましょう

 

 

むちうちの慰謝料はいつもらえる?

慰謝料が計算できるようになるには、治療が終了して通院期間が決まった後です。

したがって、通院が終わらないと慰謝料の計算もできないので、慰謝料の支払いを受けることはできません。

通院終了後、保険会社から賠償額の提示があり、示談交渉を行います(弁護士に依頼している場合には弁護士が示談交渉を行います)。

示談交渉により慰謝料の金額が定まった後、「免責証書」あるいは「承諾書」といった書面に被害者が署名押印することで内容が確定します。

その後、保険会社から慰謝料を含めた賠償金が被害者の指定の口座に支払われます。

もっとも、被害者の過失割合が小さく、確実に一定額の慰謝料が発生する場合には、通院を終了する前に、慰謝料の一部を先に内払してもらうことができるケースもあります。

内払を希望する場合には、その理由を保険会社に説明した上で交渉することが必要です。

 

 

通院3ヶ月で治療打ち切りと言われた場合の対処法

むちうちの場合、事故から3ヶ月程度経つと、保険会社から治療費の対応を終了する打診がされることがあります

打診された時点で、ケガも良くなり、医師からも治療を終了して問題ないとの説明を受けている場合には、そのまま治療を終了してよいかと思います。

しかし、症状が残っていて、かつ、医師からも治療の継続をすすめられているような場合には、安易に治療終了に同意すべきではありません。

以下では、こうした場合に、治療の打ち切りの打診を受けた場合の対処法について解説します。

 

保険会社と交渉する

治療の継続が必要であるにもかかわらず、保険会社から、治療終了の打診がされた場合には、対応の延長の交渉をされるべきです。

交渉するにあたっては、治療継続について、医師の見解を確認しておくことが大切です。

治療継続の必要性があるかどうかは、医学的判断が必要になります。

主治医が、まだ治療の必要性があると明言してくれていれば、保険会社も治療費の対応を延長してくれる可能性があります。

また、治療費対応の延長の交渉をするにあたっては、ある程度、延長を希望する期間を明確にしておくことも有効である場合があります。

保険会社としては、漠然と治療費対応を延長してほしいと言われても、いつまで対応すればいいのか不安になります。

明確に期限を区切ることで、そうした不安を解消し、対応を延長してもらえる可能性が高まるのです。

もっとも、治療終了の期限の目処がつかない場合に、期限を明確にしてしまうと、治療が必要な状況下でも対応を終了されてしまう可能性もあるので、注意されてください。

医師の意見を確認したり、自分で交渉をするのが難しいと感じられる方は、弁護士に交渉を依頼されることを検討すべきでしょう。

弁護士に依頼した場合には、必要に応じて医師と面談して見解を確認したり、書面で医療照会(医師へ質問すること)をするなどして、医師の見解を把握し、弁護士が保険会社と交渉を行います。

 

自賠責に被害者請求をする

治療費の対応をしているのは、加害者の任意保険会社です。

任意保険会社が治療費の対応を終了しても、自賠責保険は治療費の支払いを認めてくれる可能性があります

自賠責保険の傷害部分(治療費、入通院慰謝料、休業損害、通院交通費など)は限度額が120万円と決まっていますが、この限度額を超えていなければ、治療費を自賠責保険に請求することができます。

この場合、原則として、被害者が治療費を立替えて、その後、自賠責保険に治療費の請求をする必要があります。

もちろん、自賠責保険も必ず認めてくれるというわけではありませんが、任意保険会社が対応の延長を拒絶している場合で自賠責保険の120万円の限度額に達していないのであれば、自賠責保険に治療費を請求することも検討すべきでしょう。

 

 

提示された慰謝料が相場よりも安い!増額して適切な補償を受ける方法


保険会社からの賠償の提示は、自賠責保険基準あるいは任意保険会社基準にとどまります。

被害者自身で交渉しても最も高い水準である弁護士基準で解決することは、ほぼ不可能といえます。

したがって、保険会社からの賠償提示があった場合には、専門の弁護士に相談して適正な賠償額を確認して、弁護士費用と比較の上、弁護士への依頼を検討されることをお勧めします。

なお、弁護士費用特約に加入している場合には、加入している保険会社が弁護士費用を支払ってくれるため、慰謝料の増額交渉は弁護士に依頼されたほうがいいでしょう。

 

 

通院3ヶ月で慰謝料以外に請求できる損害項目

通院を3ヶ月した場合に慰謝料以外で請求できる主な損害項目は以下のとおりです。

  • 治療費等
    病院や整骨院での治療費や施術費用
  • 入院雑費
    入院した際に必要となる雑費(1日1500円)
  • 通院交通費
    病院や整骨院に通院した場合の交通費
  • 休業損害
    事故が原因で給料が減ったり、家事がしづらくなった場合の補償
  • 物損
    車の修理費用や代車代など

主婦の休業損害も認められています。

主婦の休業損害を検討するにあたっては、どの程度、家事に支障が出ていたかという観点から検討することになりますが、正確に「どの程度家事ができなかったか」を明らかにすることは難しいケースが多いです。

したがって、家事ができていなかった事情について、できるだけ具体的に説明し、証拠がある場合には、それを示して金額の交渉をすることになります。

証拠としては、家事代行の領収書、惣菜を購入したレシートなど、第三者に家事をしてもらったことが推認できるものが考えられます。

 

 

通院3ヶ月の慰謝料でよくある質問

整骨院の通院期間も慰謝料算定に加味される?

入通院慰謝料の金額の計算にあたっては、通院期間を踏まえて計算します。

この通院期間は、整骨院の通院も含まれます

したがって、整骨院に通院したことで慰謝料が減額されるということはありません。

もっとも、事前に保険会社に確認せずに整骨院に通院した場合には、保険会社から整骨院の施術費用の支払いを拒絶される可能性があります。

この場合、保険会社は、整骨院の通院分を含めずに慰謝料の計算を行います。

このような事態にならないよう、事前に保険会社に整骨院に通院することを伝えておいたほうがいいでしょう。

 

通院期間3ヶ月で後遺障害認定される?

通院期間3ヶ月で後遺障害に認定されることはほとんどありません

骨折をして骨が変形してしまったけど、治療自体は3ヶ月で終わってしまったというようなケースでは、骨の変形が明らかであれば、後遺障害に認定される可能性はありえます。

しかし、むちうちの場合であれば、ほぼ間違いなく後遺障害に認定されることはないでしょう。

むちうちで後遺障害に認定される可能性が出てくるのは、6ヶ月以上は通院を継続した場合です。

したがって、事故から3ヶ月経過した時点でも痛みが根強く残っており、後遺障害が残る可能性があるのであれば、治療を継続すべきでしょう。

こうした場合には、保険会社に治療費の対応を一方的に打ち切られた場合でも、健康保険を使用して自費で通院を継続することも検討すべきです。

 

 

まとめ

むちうちの場合には、事故から3ヶ月程度で保険会社から治療費対応を打ち切られることがあります。

こうした場合に、医師と相談して治療を終了しても問題ないようであれば、そのまま終了して構いません。

しかし、症状が続いている状況で、医師からも治療の継続を勧められているような場合には、保険会社と対応の延長交渉をされるべきでしょう。

交渉により延長してもらうことが難しい場合には、自賠責保険に請求をすることも検討されてください。

こうした保険会社対応や自賠責保険への請求は簡単なことではありませんので、不安があれば弁護士に相談して依頼することも検討されるべきでしょう。

当事務所では、交通事故案件を日常的に取り扱う弁護士が、ご相談から事件処理の対応をしておりますので、ご安心してご相談ください。

また、ご来所されてのご相談に加えて、電話相談、オンライン相談(LINE、Zoom、Meet、FaceTimeなど)も対応しており、全国対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

あわせて読みたい
無料相談の流れ

 

 

慰謝料


 
賠償金の計算方法

なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

続きを読む