後遺障害14級の慰謝料と逸失利益の金額はどのぐらい?【弁護士解説】
夫が、2月に信号停車中に追突されるという交通事故に遭い、会社を10日休みました。
むちうちで週2、3回のペースで8月まで治療をして症状固定となりました。
後遺障害は14級9号に認定されています。
夫は会社員で年収は450万円です。
また事故前3ヶ月の給料の合計額は112万5000円で稼働日数(実際に働いた日数)63日でした。
入院はなく、通院は80回、バスで通院していて往復560円でした。
こうした場合の適正な賠償額を教えてください。
後遺障害14級に認定された場合に請求できる損害項目
後遺障害部分
後遺障害14級に認定された場合には、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求することができます。
後遺障害慰謝料とは
後遺障害慰謝料とは、後遺障害に認定された場合に請求できる慰謝料です。
具体的な金額は、等級に応じて定められており、14級の場合は裁判基準(裁判になった場合の基準)で110万円です。
後遺障害逸失利益とは
後遺障害逸失利益とは、交通事故による後遺障害により働きづらくなり、減収してしまうことに対する補償です。
具体的には以下の計算式で計算します。
計算式
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
基礎収入は、原則、事故前年の年収で計算します。
労働能力喪失率は、各等級で目安が決まっており、14級の場合は5%となっています。
労働能力喪失期間は、14級9号の場合には5年程度で計算されることが多いです。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除する係数です。
14級9号の認定の場合には5年に対応するライプニッツ係数4.5797を用いて計算します。
傷害部分
後遺障害の認定の有無に関わらず、交通事故でケガをして入通院した場合には以下のような損害項目を請求することができます。
こうした損害項目は、傷害部分の賠償と呼ばれます。
以下では、主な損害項目を紹介しています。
- 治療費
- 傷害慰謝料
- 通院交通費
- 休業損害
- 入院雑費
- 入通院付添費用
今回のケースの場合、金額はいくらになる?
以下では、裁判基準で計算しています。
なお、裁判基準は、裁判になった場合に使用される基準ですが、弁護士が示談交渉に介入した場合には、示談交渉段階から裁判基準で交渉します。
治療費
当然のことながら、交通事故により要した治療費は加害者側に請求することができます。
治療費は、被害者の過失が小さい場合には、保険会社が直接病院に支払って対応します。
従って、被害者は病院の窓口でお金を支払う必要はありません。
特殊な事情がない限り、示談交渉の段階では、すでに保険会社から病院に対する治療費は全て支払われています。
今回のケースでは、追突事故であり、被害者に過失はありませんので治療費は全て保険会社がすでに負担しているため、追加で請求する金額はありません。
休業損害
休業損害は、仕事を休んだことで給料を減らされた場合の補償です。
計算にあたっては、事故前3ヶ月の給料の合計額を稼働日数で割って1日単価を算出して計算します。
今回のケースでは事故前3ヶ月の給料は112万5000円で稼働日数は63日とのことなので、1日単価は1万7857円となります。
①1日単価の算出
112万5000円 ÷ 63日 = 1万7857円
10日休んでいるとのことなので、10日分の17万8570円が休業損害となります。
②休業損害の算出
1万7857円 × 10日 = 17万8570円
※保険会社は、1日単価の算出にあたって稼働日数ではなく90日で割るように主張してくることがあります。事案によっては90で割ることも妥当といえる場合もありますが、不適切であるケースもありますので、その際には弁護士にご相談ください。
通院交通費
通院交通費は、公共交通機関を利用した場合には、その実費を請求することができます。
自家用車で通院した場合には、1キロメートルあたり15円を請求することができます。
今回のケースでは、バスで通院(往復560円、80回)したとのことなので、4万4800円を請求することができます。
通院交通費の算出
560円 × 80日 = 4万4800円
傷害慰謝料
入通院期間に応じて傷害慰謝料を請求することができます。
裁判基準の傷害慰謝料は、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(2021年版)、通称「赤い本」に記載された表により算出します。
参照:青本・赤い本のご紹介|公益財団法人 日弁連交通事故相談センター
今回のケースでは、2月から8月まで7ヶ月間通院を継続したとのことなので、傷害慰謝料は97万円となります。
傷害慰謝料の詳しい算定方法はこちらをご覧ください。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料は、等級に応じて定められており、14級は110万円です。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益は、上記のとおり、以下の計算式で計算します。
基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
今回のケースでは、基礎収入は450万円、労働能力喪失率は5%、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数は4.5797(5年)となります。
従って、今回のケースの逸失利益は、下記の計算式のとおり、103万0432円となります。
後遺障害逸失利益の算出
450万円 × 5% × 4.5797 = 103万0432円
過失割合
過失割合がある場合には、損害の合計額から過失割合分を差し引いて最終的な金額を算出します。
今回のケースでは、追突事故で過失は0%なので賠償額を差し引く必要はありません。
合計
以上の合計額は、332万3802円となります。
従って、この金額が、裁判基準における適正額となります。
まとめ
この記事では、具体的な事情を踏まえて損害の計算を行いました。
後遺障害の逸失利益の計算は複雑な論点もありますので、計算方法についてお悩みのことがあれば、弁護士に相談されることをお勧めします。