むちうちで後遺障害の12級が認定されるのはどのような場合ですか?
交通事故によって、むちうち損傷(診断名は「頸椎捻挫」「外傷性頸部症候群」「頸部挫傷」等)した場合、後遺障害等級の12級及び14級に該当する可能性があります。
14級に該当するには、障害の残存が医学的に説明できることが要求されますが、12級に認定されるには、障害の残存が医学的に証明することまで要求されます。
さらに具体的に、どのような場合に障害の残存が医学的に証明されたといえるかご説明します。
一般に、画像から神経圧迫の存在が考えられ、かつ、圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された場合には、医学的証明があると認定されやすいです。
画像から神経圧迫の存在が考えられる
画像とはレントゲン、CT、MRIの画像であり、画像から神経が圧迫されていることが認められることが必要です。
画像から神経が圧迫されているかどうかは、後遺障害診断書の内容を確認したり、医師に見解を聞く必要があります。
圧迫されている神経の支配領域に知覚障害などの神経学的異常所見が確認された
神経学的検査は様々ありますが、代表的な検査としては、スパーリングテストやジャクソンテストなどがあります。
スパーリングテストは、頭を傾けて下方に押し付け神経根の出口を狭めます。
神経根に障害がある場合には、その神経根の支配領域に放漫痛・痺れ感が生じます。
こういった放漫痛・痺れ感が生じた場合には陽性、そうでない場合は陰性ということになります。
ジャクソンテストは、頭を後方に傾け、上腕や手の痺れを誘発しているかどうかを検査する方法です。
- 徒手筋力検査・・・三角筋、上腕二等頭筋などの筋力を調べる
- 知覚検査・・・皮膚の知覚の以上を検査する
- 筋萎縮検査・・・両上肢の肘関節の上下10cmのところの上腕部と前腕部の周径を計測する
- 深部腱反射・・・腱をゴムハンマーで叩き、筋に刺激を与えたときに起こる筋収縮を調べる
もっとも、神経学的検査は患者さんの訴えにより結果が左右されうるため、結果の客観性については一定の限界があります。
したがって、認定にあたっては、患者さんの訴えと得られている客観的な資料とを総合して認定されるのが実情のようです。
画像にて神経の圧迫が認められるものの、神経学的検査では、画像上で圧迫されている部分が支配する領域とは異なる領域に異常が出るなど、画像所見と神経学的検査が整合しないような場合には、医学的証明まで認められないこともあります。
裁判を提起して12級獲得を試みるという方法
後遺障害等級を判断する機関は、基本的には損害保険料算出機構というところです。
仮に損害保険料算出機構で非該当や14級の判断をされた場合、12級獲得を目指して裁判を提起し、裁判官に後遺障害等級を判断してもらうという方法があります。
ただし、裁判所での判断も、損害保険料算出機構の判断が尊重される傾向があるため、等級判断が覆る可能性は決して高くはないことに注意が必要です。
また、仮に12級が認定されたとしても、既往症なども含めて認定されれば、素因減額がなされる可能性もあります。
判例 損害保険料算出機構で14級の判断がなされ、裁判で12級の判断に覆った裁判例
判旨
「X線検査上原告には加齢による第5・第6頸椎間の狭小化が認められること、原告が痛みを訴える部位が頸部から右肩部、右上腕であること・・・等の認定事実を総合すると、原告には本件事故前から加齢による第5・第6頸椎間の狭小化があったところ、右脆弱な部位に本件事故による衝撃が加わったことにより、右部位付近(第4/第5、第5/第6、第6/第7)の神経根に圧迫ないし刺激が加わり、このため、頸部から右肩部にわたる疼痛を来たし、頸部の疼痛を原因として頸部の運動制限を生じ、また、右肩部の疼痛に由来する廃用性の関節拘縮による右肩の運動制限が生じたものと認められる。
そして、原告の症状の程度(特に右肩関節の運動制限の程度)や治療経過を併せ考えると、後遺障害等級は、12級に該当する」と判断しています。
【大阪地判H10.5.26】
交通事故による「むちうち」で後遺障害等級12級の認定を受け、適切な補償を受けるには、専門の知識に基づいた十分な準備が必要となります。