バイク事故はなぜ死亡が多い?|被害者遺族の対応についても解説
目次
バイク事故は死亡率が高い?
バイクは機敏に走らせることができ、ツーリングなどの趣味に愛用されることから、親しまれやすい乗り物です。
もっとも、残念ながらバイク事故で亡くなられる方も多くいらっしゃるのも事実です。
年によっても異なりますが、バイク事故の死亡率は、自動車や自転車事故の死亡率よりも高いです。
バイク事故の死亡率
バイク事故と、その他の事故の死亡率を比較してみましょう。
令和3年度版交通安全白書(内閣府)によれば、令和2年度(2022年度)の各種事故の死亡率は、以下のとおりです。
バイク事故 | バイク事故全体の中で、死亡率は1.3% |
---|---|
自動車事故 | 自動車事故全体の中で、死亡率は0.4% |
自転車事故 | 自転車事故全体の中で、死亡率は0.6% |
引用元:令和3年版交通安全白書|内閣府
このように、バイク事故は、自動車事故と自転車事故と比較すると、死亡率が高いといえます。
ご家族がバイク事故で死亡してしまったら
ご家族が対応すべきこと
通夜・葬儀
被害者の方が亡くなった場合は、通夜や葬儀を執り行う事になります。
なお、加害者から高額な香典を受領した際は、後の損害賠償金からその香典分が差し引かれる可能性もありますので注意してください。
見舞金が賠償額から差し引かれるかどうかについて、詳しくはこちらをご覧ください。
相手方(保険会社)と示談交渉
葬儀等が落ち着いた頃、賠償金について相手方保険会社と交渉することになります。
死亡の場合、金額が大きくなることもあり、示談が成立するまである程度時間がかかることが多いかと思います。
示談交渉が決裂した場合は、訴訟提起(裁判)を検討することになります。
交通事故の解決までの流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
損害賠償金の受領
示談がまとまり、示談書を取り交わした後、賠償金を受領して事件終了となります。
なお、自賠責保険に被害者請求をして、損害の一部を補填するという手段もあります。
死亡の場合、自賠責保険から最大で3000万円を受領することができます。
被害者請求について、詳しくはこちらをご覧ください。
死亡事故のご遺族の方は、こちらもご覧ください。
上記のように、ご遺族の方は、悲しみの中で、示談交渉等の大変な作業をしなければなりません。
もっとも、相手方や相手方保険会社との交渉は、弁護士に任せることもできます。
バイクでの死亡事故が起きた場合、ご遺族の方は、弁護士に依頼されることをお勧めします。
交通事故で弁護士に依頼するメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。
死亡事故の損害賠償金の相場
死亡事故が起きた場合、損害項目によって相場は異なります。
以下では、代表的な損害の相場を解説いたします。
死亡慰謝料
死亡慰謝料とは、死亡した場合の精神的苦痛に対して支払われる賠償のことです。
死亡慰謝料の裁判基準は、以下のようになっています。
被害者の立場 | 弁護士基準の死亡慰謝料 |
---|---|
一家の支柱 | 2800万円 |
母親、配偶者 | 2500万円 |
その他(独身の男女・子ども・幼児) | 2000万円〜2500万円 |
なお、上記金額には、民法711条の「被害者の父母、配偶者、子」とそれに準ずる者の固有の慰謝料も含まれています。
死亡慰謝料について、詳しくはこちらをご覧ください。
死亡による逸失利益
死亡による逸失利益とは、被害者が死亡しなければ、将来の就労によって得ることができたはずの収入を損害とするものです。
死亡による逸失利益の計算式は、以下のとおりです。
【 死亡による逸失利益の計算式 】
基礎収入額 × ( 1 – 生活費控除率 ) × 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 = 死亡による逸失利益
具体例 死亡による逸失利益の計算
- 給与所得者(サラリーマン)で年収が500万円
- 独身で一人暮らしの男性(生活費控除率50%)
- 死亡時の年齢40歳(就労可能年数は67歳 – 40歳 = 27年)
- 27年のライプニッツ係数は、18.3270
500万円(基礎収入額) × (1 – 0.5) × 18.3270(就労可能年数に対応するライプニッツ係数)
= 4581万7500円(死亡による逸失利益)
死亡逸失利益について、詳しくはこちらをご覧ください。
治療費・入院費
死亡するまでに支出した治療費や入院費は、必要かつ相当な費用といえれば、実際に支出した費用を請求することができます。
入院雑費
入院雑費とは、洗面用具などの日用雑貨品、テレビカード購入費等の入院中に生じる様々な費用のことです。
入院雑費の相場は、1日につき1500円です。
入院雑費について、詳しくはこちらをご覧ください。
付添看護費用
被害者の家族が、死亡するまで病院に付き添って看護した場合、付添看護費用を請求できます。
付添看護費用の相場は、1日につき6500円です。
付添人交通費
看護のため、付き添いをした家族の付添人交通費も請求することができます。
車で通院した場合は1㎞あたり15円、公共交通機関を利用した場合は実費相当額が請求金額になります。
葬儀費用
葬儀費用は、火葬、埋葬料、読経、法名料、布施、供物代等の葬儀を執り行うための費用のことです。
葬儀費用の相場は、150万円(ただし、150万円を下回る場合は実際に支出した額)です。
なお、香典返しは、損害として認められません。
入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入通院慰謝料は、入院や通院をしたことによって発生する精神的苦痛に対する賠償です。
死亡までに入院や通院をしている場合、この入通院慰謝料も請求することができます。
入通院慰謝料は、入院期間や通院期間をもとに金額を算出します。
入通院慰謝料の相場について、詳しくはこちらをご覧ください。
自動計算機
交通事故の損害について、大まかな損害額を知りたいという方のために、損害の自動計算機があります。
死亡事故にも対応し、慰謝料や逸失利益を計算できますので、ぜひご活用ください。
ただし、自動計算機は、個別の事情までは考慮していませんので、ご留意いただければと思います。
自動計算機については、こちらをご覧ください。
バイクの死亡事故で賠償金が減らされる場合
一定の事情があれば、上記で記載した賠償金が減る場合があります。
例えば、以下のような事情があれば、賠償金が減らされる可能性があります。
過失相殺
被害者の方にも過失があるような事案では、過失相殺がなされ、最終的に受け取る賠償額が減ります。
以下、過失相殺の具体例です。
具体例 過失割合が20(被害者):80(加害者)の事故
被害者の損害が以下であったような場合
- 治療費 20万円
- 傷害慰謝料 53万円
- 死亡慰謝料 2800万円
- 死亡逸失利益 2000万円
→上記の総損害額は、4873万円です。
そして、被害者にも、過失が20%あるので、974万6000円(4873万円 × 0.2)を差し引きます。
そうすると、被害者が受領する金額は、3898万4000円(4873万円 – 974万6000円)となります。
過失の交渉について、詳しくはこちらをご覧ください。
素因減額
被害者が元々持っていた疾患や、元々の性格が原因で死亡に繋がったケースでは、賠償金が減額されることがあります。
これを、素因減額といいます。
素因減額により、どの程度減額されるかは、ケースバイケースです。
素因減額について、詳しくはこちらをご覧ください。
バイク事故で死亡率が高い原因
生身の身体であること
バイクの場合、車と違って生身の身体で運転しているため、衝突事故が起こった際には、ダイレクトに衝撃を受けることになります。
生身の身体であるため、身体の重要な器官を車両や地面に強く打ちつけたりして、死亡に繋がるというケースがみられます。
危険なすり抜けが多い
バイクは、機動性があるため、車と道路の隙間を走行し追い抜く「すり抜け」が行われることがあります。
危険なすり抜けも多いため、車線変更した車と衝突するなどの事故が発生し、死亡に至るケースがあります。
車の死角に入りやすい
バイクは、ミラーに映りにくい、対向車の陰に隠れる、大型車の陰に隠れる等、車から見た死角に入りやすいです。
そのため、バイクがある程度スピードが出ていても、車の運転者が気付かず、衝突し、死亡してしまうことが多いです。
例えば、交差点や渋滞中の道路で、右折車に進路を譲った直進車の左側をすり抜けてきたバイクと右折車が出合い頭衝突する、いわゆる「サンキュー事故」などが典型例です。
サンキュー事故について、詳しくはこちらをご覧ください。
バイクでの死亡事故を避けるための対策
バイクでの死亡事故を避けるための対策をいくつか紹介いたします。
無理な追い越しはしない
バイクでの無理な追い越しは、事故を引き起こしやすくなります。
法定速度を守り、安全運転を心掛けましょう。
ヘルメットやプロテクターを着用する
バイクで事故が起きた場合、上記で解説したとおり、身体の重要な器官(頭部、胸部等)を車両や地面に強く打ちつけたりすることがあるため、死亡事故となってしまうケースがあります。
そのため、身体の重要な器官を守る、ヘルメットやプロテクターをしっかり装着することが重要です。
バイクの整備を怠らない
バイクの整備不良は、死亡事故に繋がる可能性があります。
定期的な点検をし、万全の状態で走行するようにしましょう。
バイクの死亡事故の解決事例
以下では、当事務所で解決したバイクの死亡事故の例をご紹介いたします。
事例 バイクの死亡事故において示談交渉で近親者慰謝料が認められた例
【 事例の概要及び結果 】
被害者の方は、原付バイクで青信号に従って交差点を直進していたところ、反対方向から同じく青信号に従って交差点を右折してきた加害者の車両に衝突し、転倒する事故に遭いました。
救急搬送されましたが、病院で頚椎骨折に伴う頸髄損傷と診断され、懸命の治療も及ばず、事故から約24時間後に亡くなられました。
被害者のご家族は、加害者の保険会社から賠償の提示を受けましたが、妥当なものかどうかを検証するため、当事務所へご相談に来られました。
その後、当事務所の弁護士がご依頼を受け交渉した結果、近親者慰謝料等を認めてもらい、最終的な賠償額を約500万円増額させて解決することができました。
本解決事例について、詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
- バイク事故は、死亡率が高い。
- 被害者のご家族は、通夜や葬儀、相手方(保険会社)と示談交渉をしていく必要がある。
- 死亡した場合、死亡慰謝料、死亡逸失利益、治療費・入院費、入院雑費、付添看護費用、付添人交通費、葬儀費用、入通院慰謝料等が請求できる。
- 賠償金は、過失相殺や素因減額によって減額される可能性がある。
- バイク事故で死亡率が高い原因は、生身の身体であること、危険なすり抜けが多いこと、車の死角に入りやすいことなどである。
- バイクでの死亡事故を避けるための対策としては、無理な追い越しをしない、ヘルメットやプロテクターを着用する、バイクの整備を怠らないなどである。
バイクの死亡事故に遭われたご家族の方は、悩まず、交通事故に精通している弁護士にご相談ください。