外傷性頚部症候群の慰謝料|相場・増額方法を解説【計算機付き】
目次
外傷性頚部症候群とは
外傷性頚部症候群とは、いわゆるむちうちの場合に診断される診断名の一つで、交通事故などで頚部に衝撃が走り、その影響で、長期間にわたって頚部痛、肩こり、頭痛、めまい、手のしびれ、などの症状がでる傷病です。
慰謝料とは
慰謝料とは、交通事故が原因の精神的苦痛に対する賠償金です。
外傷性頚部症候群により、通院を行った場合には、怪我をして通院する必要が生じることの苦痛に対する通院慰謝料が発生します。
また、後遺障害が認定されれば、後遺障害によって日常生活や仕事がこれまで通りに行えなくなったことの苦痛に対する後遺障害慰謝料が発生します。
外傷性頚部症候群の慰謝料の相場
外傷性頚部症候群の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料の2つがあり、それぞれの相場をまとめると下表のようになります。
慰謝料の種類 | 慰謝料の決め方 | 相場 |
---|---|---|
入通院慰謝料 | 入通院期間の長さ | 通院の場合1日あたり5000円〜6000円程度 入院の場合1日あたり1日1万円程度 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が残ったときの障害の程度(等級) | 110万円〜290万円 |
上記は、弁護士基準(裁判水準)をもとにした概算額です。
慰謝料の基準には、弁護士基準の他に、任意保険基準と自賠責基準がありますが、交通事故被害者が受け取るべき金額は、弁護士基準によるべきです。
なぜならば、弁護士が用いる基準は、仮に裁判で争った場合に、裁判所に認められるであろう金額をもとに算出しているからです。
したがって、交通事故被害者の方が知るべき「正しい相場」は、弁護士基準の金額となります。
弁護士基準による慰謝料の金額が知りたい方は、こちらをお使いください。
入通院慰謝料の相場
外傷性頚部症候群の入通院慰謝料の相場は、入通院期間の長さで決まります。
通院 | 1日あたり5000円〜6000円程度 |
---|---|
入院 | 1日あたり1万円程度 |
交通事故の慰謝料の相場は怪我の程度と入通院の日数等によって計算されます。
また、以下の表の通り、通院期間が長期になれば、通院慰謝料の上昇幅もなだらかになり、1日あたりの金額は減少します。
通院期間 | 入通院慰謝料の相場 | 1日あたりの金額 |
---|---|---|
1ヶ月(30日) | 19万円 | 約6333円 |
3ヶ月(90日) | 53万円 | 約5889円 |
6ヶ月(180日) | 89万円 | 約4944円 |
後遺障害慰謝料の相場
交通事故により、身体に痛みが残ったり、動かしづらくなったり、傷痕が残った場合などで、後遺障害に認定された場合には、後遺障害慰謝料を請求することができます。
外傷性頚部症候群を患ったケースで、後遺障害が認定される場合には、「局部に神経症状を残すもの」第14級が認定されることがほとんどです。
また、症状固定時(治療をしても一進一退の状況)になった時に、CTやMRIの画像などを見て、痛みの原因となる異常が確認できる場合には、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級が認定される可能性もあります。
もっとも、実際の事例においては、12級も14級も認定されず、後遺障害が認定されないケースが少なくはありません。
弁護士基準による後遺障害慰謝料(抜粋)は下表のとおりです。
第12級 | 290万円 |
---|---|
第14級 | 110万円 |
外傷性頚部症候群の慰謝料の計算方法
外傷性頚部症候群慰謝料の弁護士基準と他の基準との違い
外傷性頚部症候群慰謝料の弁護士基準
弁護士基準とは、弁護士に依頼した場合に弁護士が参照する基準で、裁判になった場合の相場でもあります。
後ほど説明します自賠責基準、任意保険基準よりも高額に計算され、一番適切な金額に近い基準ともいえます。
弁護士基準による慰謝料については、通院期間に応じて計算されます。
下の表が入院をせず、通院のみをした場合の外傷性頚部症候群の場合の弁護士基準の慰謝料になります。
通院期間 | 慰謝料額 |
---|---|
1ヶ月 | 19万円 |
2ヶ月 | 36万円 |
3ヶ月 | 53万円 |
4ヶ月 | 67万円 |
5ヶ月 | 79万円 |
6ヶ月 | 89万円 |
入院もした場合には、上記の表よりも金額が加算されます。
具体例 入院3日間、通院期間87日間の場合
弁護士基準で計算をすると、54万6000円になります。
入通院慰謝料について詳しくは、こちらをご覧ください。
外傷性頚部症候群慰謝料の自賠責基準
自賠責基準は、自賠責保険が設定をした基準で、最低限度の補償の基準でもあります。
加害者が任意保険に加入しておらず、賠償金を支払える経済力のない場合には、まず自賠責保険に請求して、自賠責保険基準での賠償金を取得することが多いです。
自賠責基準の入通院慰謝料は、対象日数 × 4300円 = 慰謝料金額となります。
この対象日数は、実通院日数の2倍の日数と通院期間の日数の少ない方の日数となります。
具体例 実通院日数20日、通院期間90日の場合
実通院日数20日 × 2 = 40日 < 90日となるため、対象日数は40日です。
一日あたり4300円ですので、40日の場合では
4300 × 40 = 17万2000
したがって、例の場合の自賠責基準は、17万2000円になります。
外傷性頚部症候群慰謝料の任意保険基準
任意保険基準は、各保険会社が独自に作成し、非公開とされていますので、詳細は不明ですが、自賠責基準と同等か、それよりもやや高い金額での計算になります。
任意保険基準は、弁護士基準による賠償金額よりも安価に計算されます。
後遺障害慰謝料の請求の流れ
後遺障害とは、治療を続けても完治することがなく、身体的あるいは精神的な不具合が将来にわたって残ってしまう状態をいいます。
この後遺障害は、自動車損害賠償保障法(いわゆる自賠法)で規定されており、最も重い1級から14級までの等級があります。
このような等級が認定されると後遺障害慰謝料を取得することができます。
事故の発生から後遺障害慰謝料を受領するまでの流れは下の図の通りです。
怪我がある場合には、速やかに病院で診察を受け、治療を開始する必要があります。
治療を行っても一進一退の状況(症状固定)になった時に治療を終了します。
弁護士に依頼をしている場合には、弁護士が資料を収集し、後遺障害の申請を行います(被害者請求)。
弁護士に依頼をしていない場合には、保険会社が資料を収集して、後遺障害の申請を行います(事前認定)。
その後、自賠責保険より、後遺障害の結果の通知が届きます。
後遺障害の結果に応じて交渉を行います。
弁護士あるいは被害者と保険会社とで合意が成立すれば、「免責証書」「承諾書」という題名の書面に、弁護士あるいは被害者本人が署名押印を行います。
「免責証書」「承諾書」には、合意した賠償金の支払いを受けることで賠償を全て完了するという法的な意味があります。
その後、保険会社から賠償金が支払われます。
資料の準備、訴状の作成をし、裁判を起こします。
裁判では、主張を記載した書面や、証拠となる資料を提出します。
主張や証拠が出揃うと、裁判所からの和解案の提示があります。
和解できない場合には、尋問(裁判所で裁判官の前で事故状況などを説明する手続)が行われる場合もあります。
裁判の結果に応じて相手方の保険会社から賠償金が支払われます。
以上が事故の発生から後遺障害慰謝料の受領までの流れになります。
弁護士に依頼をしている場合には、弁護士が保険会社と連絡、交渉、資料の準備、裁判での手続を行います。
治療中などの早めのタイミングで弁護士に依頼をしていると、弁護士が今後の流れを考えながら、可能な限り不利にならないように対策ができます。
後遺障害慰謝料以外の賠償金の請求を忘れずに
後遺障害慰謝料は、慰謝料のうちの一部です。
そして、賠償金には、慰謝料の他にも治療費、車の修理費用などの物損などがあります。
このような賠償金の請求の漏れをなくすことも適切な賠償金を取得するために必要です。
賠償金の内訳(代表例)
賠償金 | 物的損害 | 修理費用 | 後遺障害の認定に関係なく、損害が発生すれば請求できる項目 | |
---|---|---|---|---|
レンタカー代 | ||||
壊れた身の回りの品に関する損害 | ||||
人的損害 (怪我に関わる損害) |
治療費 | |||
通院交通費 | ||||
休業損害 | ||||
慰謝料 | 入通院慰謝料 | |||
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が認定された場合に請求できる項目 | |||
逸失利益 |
上記の内訳表はあくまで代表的なものを記載していますので、記載がないものも請求できる可能性があります。
「事故が原因でこのような出費、損失があったけど請求できるかわからない。」といった場合には、専門の護士に相談することをお勧めします。
外傷性頚部症候群慰謝料等の適正額がわかる自動計算機
「保険会社から賠償の提示がされたけれど適正かどうかわからない。」、「適切な相場を事前に知りたい。」というような場合もあると思います。
もっとも、交通事故の賠償計算は、専門的な知識を必要としますので、簡単には金額を算出できません。
下記のページでは、適正な相場である弁護士基準での賠償額が算出できる自動計算機を載せています。
も賠償額がどの程度になるかは、実際の事故ごとの個別事情を踏まえる必要があるので、少しでも不安のある方は弁護士に相談されることをお勧めします。
まとめ
ここまで、外傷性頚部症候群の慰謝料について説明してきました。
外傷性頚部症候群の慰謝料は、通院期間に応じて算定されますが、適切な慰謝料を得るためには、適切な賠償金を知ることが重要です。
また、その他の賠償項目について漏れなく検討することも適切な賠償金を得るために大切です。
そのため、どうすればより適切に近い慰謝料を獲得できるか、どのような請求ができるか、について、ご質問やご不安がある方は、お近くの弁護士にご相談された方が良いでしょう。