骨挫傷による後遺症のポイント|弁護士が解説
交通事故などで手や足などの部位に骨挫傷(こつざしょう)という診断を受けたという方もいらっしゃるかと思います。
もっとも、骨挫傷は聞き慣れない言葉であり、今後どうなるか不安になることもあるでしょう。
本記事では、骨挫傷の基礎知識をはじめ、後遺障害認定や賠償金などを交通事故を多く扱う弁護士が解説していきます。
この記事でわかること
- 骨挫傷について
- 骨挫傷の後遺障害等級
- 骨挫傷の賠償金
- 骨挫傷で適切な賠償金を得るためのポイント
目次
骨挫傷(こつざしょう)とは
骨挫傷(こつざしょう)とは、外部からの圧力によって、骨折まではいかないものの、骨の内部で出血して損傷することをいいます。
骨挫傷は、レントゲンでは発見することはできず、MRI画像で発見できるものになります。
骨挫傷の症状や日常生活への影響
骨挫傷は、負傷部位に強い痛みを感じます。
また、骨の内部が出血していることから、熱感覚を伴うこともあります。
骨挫傷が完治するまでどれくらい?
骨挫傷が完治するまでは、一般的に1〜3ヶ月程と言われています。
骨挫傷の治療法としては、基本的には安静にして、必要に応じて消炎鎮痛剤(痛み止め薬のこと)が投与されることになります。
加えて、超音波治療を行うこともあります。
いわゆる症状固定も、多くは1〜3ヶ月程度と考えられますが、事故状況や負傷具合によっては、6ヶ月程度要することもあります。
症状固定について、詳しくはこちらをご覧ください。
骨挫傷の原因
骨挫傷は、交通事故、労災、スポーツなどで関節同士がぶつかり合って骨の内部が損傷することによって生じるものです。
外部から強く圧力がかかった場合で骨折をしていない場合、痛みが続くようであれば、もしかしたら骨挫傷かもしれないので、主治医に相談してみましょう。
骨挫傷の後遺障害認定の特徴と注意点
骨挫傷では、症状固定時まで治療しても、痛みが残ってしまう場合があります。
痛みが残ってしまった場合には、以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、骨挫傷後に痛みなどの神経症状が残った場合に、その神経症状が医学的に“証明”可能といえるときに認定されます。
医学的に証明可能とは、主に画像所見(MRI等)があり、その画像所見と痛みが結びついている場合を指します。
14級9号 局部に神経症状を残すもの
「局部に神経症状を残すもの」とは、骨挫傷後に痛みなどの神経症状が残った場合に、その神経症状が医学的に“説明”可能といえるときに認定されます。
医学的に説明が可能とは、画像所見がなくても、受傷時の態様、治療経過、症状の一貫性・連続性などから痛みがあることが一応説明がつくという場合を指します。
骨挫傷は、自然治癒(しぜん治癒)で完治することも多く、画像所見が最終的に残らないということもあり得ます。
そうすると、実際上、認定が多いのは14級9号であることが考えられます。
ただし、14級9号も簡単に認定されるわけではありません。
筆者の経験上、14級9号が認定されるためには、基本的に6ヶ月以上通院することが必要だと考えています。
骨挫傷の慰謝料などの賠償金
骨挫傷のケガをした場合、いくつかの考えられる損害があります。
ここでは、代表的な損害を解説します。
治療費
骨挫傷を治すために必要な治療費は、基本的に加害者側負担になります。
治療費と関連して、薬代やMRI画像の撮影代も原則加害者側負担になります。
治療費について、詳しくはこちらをご覧ください。
休業損害
骨挫傷の通院のため仕事を休んで収入が減った場合、休業損害を請求できます。
休業損害の計算式は、会社員や個人事業主(自営業も含む)などの立場によって計算方法が異なります。
休業損害は、主婦の方でも基本的に請求できます。
休業損害について、詳しくはこちらをご覧ください。
入通院慰謝料
骨挫傷で病院へ通院した場合、精神的苦痛に対する賠償として入通院慰謝料(傷害慰謝料とも呼びます)というものを請求できます。
入通院慰謝料は、裁判基準の場合、軽傷か重傷かで用いる基準が異なります。
骨挫傷は、軽傷用の表か重傷用の表どちらを用いればよいか疑問を持たれている方もいらっしゃるかと思います。
軽傷か重傷かの違いは、他覚所見、つまり画像所見(レントゲン、CT、MRI)があるかどうかで考えていくことになります。
画像所見があれば重傷用、画像所見がなければ軽傷用の表を用いることになります。
骨挫傷は、MRIで画像所見が裏付けられていれば、重傷用の表を用いるべきです。
筆者としては、仮に保険会社が軽傷用の表も用いるべきだと主張してきた場合は、被害者側は強く反論して重傷用の表を用いるべきだと主張すべきだと考えています。
入通院慰謝料について、詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害慰謝料
骨挫傷によって最終的に後遺障害が認定された場合、後遺障害が残ったことについての精神的苦痛の賠償として、後遺障害慰謝料が請求できます。
後遺障害慰謝料は、認定される等級によって裁判基準の相場が決まっています。
認定等級 | 裁判基準の相場 |
---|---|
12級 | 290万円 |
14級 | 110万円 |
もっとも、上記の金額はあくまで「相場」なので、個別事情によっては増額されることもあります。
後遺障害慰謝料について、詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残った場合に将来の収入減少に対する補償のことです。
簡単に申し上げると、後遺障害が残ったら、仕事がうまくできず、将来的な収入減少が予想されるから、その分は損害として評価しましょうという話です。
逸失利益の基本の計算方法は、以下のとおりです。
なお、労働能力喪失率は、基本的に等級ごとに以下のように定められています。
認定等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
12級 | 14% |
14級 | 5% |
後遺障害逸失利益について、詳しくはこちらをご覧ください。
骨挫傷で適切な賠償金を得る6つのポイント
骨挫傷で適切な賠償金を得るためのポイントはいくつかあります。
以下、ご紹介いたします。
病院へ通院する
まずは、しっかり病院へ通院し、症状を緩和させて行くことが必要です。
この点について、病院ではなく、整骨院へ通院してよいかというご質問を受けることがあります。
筆者としては、骨挫傷の場合、整骨院ではなく病院へ通院すべきだと考えています。
理由としては、病院の医師じゃないと診断書や後遺障害診断書を記載してもらえず、後々の賠償金請求に影響を与える可能性があるからです。
また、整骨院は交通事故の賠償の世界においては例外的な位置付けなので、保険会社の治療の打ち切りが早まる可能性があり、被害者が十分な治療を受けにくくなるというデメリットもあります。
整骨院通院について、詳しくはこちらをご覧ください。
治療の打ち切りについて、詳しくはこちらをご覧ください。
定期的に通院する
病院へは定期的に通院するようにしてください。
定期的に通院した方が良い理由は、例えば、1ヶ月の期間を空けて通院した場合、事故との因果関係が否定されて、その後の治療費や慰謝料などが補償されないことがあるからです。
また、慰謝料の計算(裁判基準)においても、長期間を要す通院で実通院日数が非常に少ない場合、3.5倍ルールというものが適用され、慰謝料が減額される可能性がありますので注意が必要です。
重傷用の3.5倍ルールについて、詳しくはこちらをご覧ください。
何より、病院へ定期的に通院していれば、医師の細かな指導や投薬により、少しづつでも治っていくことが期待されます。
後遺障害の申請をする
上記で解説した後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益は、一部の例外を除き、原則自賠責保険の後遺障害認定がなされている必要があります。
そのため、症状が変わらないという状態(=症状固定)までしっかり通院しても痛みが残った場合は、自賠責保険へ後遺障害の申請をすべきです。
症状固定について、詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害申請をする際は、医師に「後遺障害診断書」というものを書いてもらう必要があります。
後遺障害診断書について、詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害申請は、被害者側で申請する場合(被害者請求)、必要書類を集めなければならなかったり、適切な資料を提出しないと認定されなかったりします。
被害者請求について、詳しくはこちらをご覧ください。
後遺障害申請の際は、できるだけ交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
後遺障害の申請について、詳しくはこちらをご覧ください。
一度後遺障害が認定されなくても諦めない
後遺障害申請をしても、必ずしも後遺障害等級が認定されるとは限りません。
非該当(ひがいとう)といって、どの後遺障害等級にも該当しないという回答が返ってくる可能性があります。
もっとも、自賠責保険には、異議申立てという手続きがあり、新たな資料を提出すれば結果が覆る(くつがえる)ことがあります。
上記でも触れたとおり、骨挫傷の後遺障害等級として多いのは14級9号です。
非該当から異議申立てで14級9を目指すための新たな資料としては、以下のようなものが考えられます。
- カルテ
- 物損資料
- 医師の意見書
- 症状固定後も通院をしている場合は、通院を立証する資料(領収書、カルテ等)
異議申立てについて、詳しくはこちらをご覧ください。
過失割合が問題となる場合はしっかり交渉する
骨挫傷に限った話ではありませんが、過失割合で被害者に不利に合意してしまった場合は、賠償金がその分減らされてしまいます。
そのため、1割でも被害者に有利な過失割合となるよう、交渉を頑張った方が良いです。
過失割合は、客観的な証拠(例えば、ドライブレコーダー)が最も重要ですが、裁判例を理解したうえで個別具体的に検討する能力も必要です。
過失割合の交渉も、基本的には専門家である弁護士の力を借りた方が良いでしょう。
過失割合について、詳しくはこちらをご覧ください。
弁護士へ相談する
上記でみてきたとおり、交通事故は非常に専門的な要素が強く、一般の方が全てを対応するのは難しいと思います。
そこで、骨挫傷のケガをされた方は、一度は弁護士に相談することをお勧めします。
「弁護士だなんて大げさな・・・」と思われていませんか?
弁護士に依頼しないと賠償金の面で被害者が大きく損をする可能性があります。
交通事故で弁護士に依頼するメリットなどについて、詳しくはこちらをご覧ください。
なお、弁護士費用の面については、弁護士費用特約を利用すれば、原則被害者負担なしで弁護士に依頼することができます。
弁護士費用特約について、詳しくはこちらをご覧ください。
デイライト法律事務所の骨挫傷の解決事例について、詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
骨挫傷は簡単に後遺障害が認定されるものではなく、適切な後遺障害申請をすべきです。
場合によっては医師と連携しながら後遺障害申請を準備すべきでしょう。
当事務所には交通事故や労災等の事故案件に注力する弁護士のみで構成される人身障害部があり、何かしらのケガをされた方々を日々サポートしております。
LINEやZoomなどによる全国対応も行っていますので、骨挫傷でお困りの方はお気軽にご相談ください。