脳震盪の後遺症とは?
脳震盪の後遺症には、記憶障害のほか、頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気、ふらつき、集中力の低下などがあります。
脳震盪の後遺症は、頭に強い衝撃が加わることが原因となって発生します。
多くの場合には、一過性(短期間で症状が消える)で終わりますが、人によっては、1年以上継続して症状が残ることもあります。
脳震盪の後遺症は、レントゲンやCT、MRIで明確に指摘できないことが多いため、後遺障害の認定については難しい部分があります。
以下では、脳震盪の後遺症について、詳しく解説していますので、ご参考にされてください。
目次
脳震盪の後遺症とは
脳震盪の後遺症には、記憶障害のほか、頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気、ふらつき、集中力の低下などがあります。
脳震盪(のうしんとう)とは、頭に強い衝撃を受けたことによって、意識を失ったり、記憶を失ったりすることです。
脳自体にダメージはないものの、脳の機能が一時的に不具合を起こすものです。
ただし、人によっては、1年以上症状が残ってしまう場合もあるので注意が必要です。
脳震盪の症状が残ったまま繰り返し頭部に強い衝撃が加わると重篤な症状が発症することもあるので、脳震盪を起こした場合には、医師の指示にしたがって、治療し安静にすることが大切です。
脳震盪の症状
脳震盪による記憶障害
脳震盪を起こした場合には、一時的な記憶障害が発生することがあります。
脳震盪を起こした当時のことを思い出すことができなくなるのです。
通常、記憶障害は一過性のもので、脳自体に損傷が生じているわけではありません。
ただし、何度も脳震盪を繰り返すような場合には、重篤な症状がでることがあります。
脳震盪によるその他の症状
脳震盪は、意識を失っていない場合でも発生していることが多くあります。
頭痛、耳鳴り、めまい、吐き気、ふらつき、集中力の低下などの症状が出ることがあります。
脳震盪の日常生活への影響
脳震盪の症状はいつまで続く?
脳震盪は、基本的には一過性の症状であることが多く、病院に診察に行ったときには、症状が回復していることもあります。
したがって、こうした場合であれば、日常生活にも特に影響は及ぼしません。
しかし、症状が継続することもあります。
そういったケースは、脳震盪後症候群と呼ばれています。
多くの方が脳震盪後症候群は、3ヶ月程度で症状はなくなるといわれていますが、なかには1年以上、症状が継続する方もいます。
こうした場合では、継続的に脳震盪による症状で日常生活に支障が出ることもあるでしょう。
脳震盪の原因
脳震盪は、交通事故や労災事故などで頭に強い衝撃が加わった場合に発生する可能性があります。
交通事故では、バイクで走行中に車と衝突して転倒した場合や、歩行中に車両にはねられたような場合には、頭部を激しく打って脳震盪を起こす可能性があります。
労災事故では、作業中に転倒して頭部を打った場合などで脳震盪を起こす可能性があります。
その他にもラグビーやサッカーなど、人と人が激しく接触するスポーツが原因で脳震盪を起こすことが多いです。
脳震盪の後遺障害認定の特徴と注意点
脳震盪の後遺症は事故から数年後に見つかることも
脳震盪を起こした後、症状が無くなり長期間経過した後に脳の障害が引き起こされることがあります。
ボクシングやラグビー、サッカーなどのスポーツで反復して頭に衝撃が加わり脳震盪を起こしている場合には、数年〜数十年後に脳障害が発生することがあるのです。
交通事故や労災事故の場合に発生することも否定はできませんが、事故から相当期間経過してしまうと、事故との関係性を証明することが困難になり、補償を受けることができない可能性が高いです。
脳震盪の後遺障害
脳震盪は、一過性の症状にとどまることが多いため、後遺障害には認定されないことが多いと考えられます。
ただし、症状が継続した場合には、神経症状として以下の後遺障害等級に認定される可能性はあります。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
9級10号、12級13号の認定を受けるには、少なくとも脳震盪によって症状が残っていることを医学的に証明できる必要があります。
医学的に証明するためには、レントゲン、CT、MRIなどで画像上の異常な部分があることを指摘できることが重要です。
しかし、脳震盪の場合、画像上、異常を指摘できない場合も多く、症状の残存について医学的な証明をすることが難しいケースが多いでしょう。
14級9号の場合には、医学的に証明することまでは求められませんが、医学的に説明できるレベルでないと認定されません。
事故の規模・態様、症状の一貫性・連続性、治療の期間・内容、神経学的検査の結果、画像所見の有無などを中心に総合考慮して判断されることになります。
MTBI(軽度外傷性脳損傷)について
MTBI(軽度外傷性脳損傷)とは、頭に衝撃が加わったものの、意識障害が軽度、あるいは、意識障害がなく、画像上も異常が見られないが、高次脳機能障害のような症状(認知障害、行動障害、人格変化)が出ることをいいます。
WHO(世界保健機関)が、2004年にMTBIの基準を定めています。
しかし、後遺障害を審査する自賠責保険は、その基準を満たしたとしても、それのみで高次脳機能障害として認定することは適切ではないとの見解を示しています。
高次脳機能障害に認定されるには、脳外傷(脳挫傷、急性硬膜下血腫、くも膜下出血など)が画像上明らかでないと認定されません。
MTBIの場合、画像上、異常が指摘できないので、自賠責保険からMTBIを理由に後遺障害の認定を受けるのは難しいと考えられます。
脳震盪の慰謝料などの賠償金
脳震盪による損害の主な賠償項目としては、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益が考えられます。
これらの賠償の計算にあたっては、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)があります。
以下では、最も高水準で適切な基準である弁護士基準を前提に説明しています。
入通院慰謝料
入通院慰謝料の計算は、入院期間、通院期間によって計算されます。
通院頻度が少ない場合には、通院期間を短く修正して計算するよう保険会社から主張されることもあります。
入通院慰謝料の詳しい計算方法は以下のページをご参照ください。
入通院慰謝料の概算の金額をすぐに知りたい方は、以下のページの交通事故賠償金計算シミュレーターをご活用ください。
後遺障害慰謝料
脳震盪により後遺障害に認定された場合の後遺障害慰謝料は、等級に応じて以下の金額になります。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
9級10号 | 690万円 |
12級13号 | 290万円 |
14級9号 | 110万円 |
逸失利益
逸失利益とは、交通事故や労災事故などで後遺障害が残った場合に働きづらくなって収入が減ってしまうことに対する補償です。
逸失利益は、計算式で算出されます。
基礎収入は、原則として、事故が発生した前年の年収額とされます。
労働能力喪失率は、後遺障害等級に応じて喪失率が定められています。
等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
9級10号 | 35% |
12級13号 | 14% |
14級9号 | 5% |
労働能力喪失期間は、原則として症状固定の年齢から67歳までの年数ですが、12級13号は10年、14級9号は5年に制限される傾向にあります。
12級13号と14級9号は神経症状に対して認定される等級ですが、神経症状は時間の経過とともに、治っていくものと考えられているため、こうした制限がされる傾向にあります。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。
例えば、45歳で年収600万円の人が、12級13号に認定された場合、逸失利益は以下の計算式のとおり、716万5368円となります。
逸失利益の概算を計算されたい方は、下記サイトの交通事故賠償金計算シミュレーターをご活用ください。
ラグビーなどのスポーツの場合は減額されることがある?
ラグビーなどのスポーツでは、人と激しく接触することが前提となっているため、そのスポーツをすることでケガをしてしまうリスクは予想することができます。
したがって、リスクを承知の上で、ケガをしても自己責任として誰にも損害を請求できないのではないかと思われる方もいるでしょう。
しかし、スポーツ事故の場合であっても、損害賠償を請求できる場合があります。
例えば、学校の部活動において、脳震盪を起こして治療が必要になった場合、学校側に補償を求めることができる可能性があります。
学校側は、生徒がケガをしないように配慮する安全配慮義務があります。
この義務に違反していたような場合には、学校側に補償を求めることができる可能性があります。
なお、学校事故の場合には、日本スポーツ振興センターに治療費などを請求することができます。
脳震盪で適切な賠償金を得る6つのポイント
速やかに病院で受診する
交通事故や労災事故で脳震盪を起こした場合には、速やかに病院を受診して医師の指示にしたがって、必要な検査をしましょう。
脳震盪の程度が重度である場合には、脳内で出血を起こしている可能性もあるので、無理をせずに病院に行って安静にするようにしましょう。
病院を受診しない場合には、脳震盪の発生自体を証明することができず、何の補償も受けることができなくなる可能性があります。
脳震盪以外の傷病で後遺障害認定の可能性がないか検討
脳震盪は、一過性の症状で終わることが多く、後遺障害には認定されにくい傷病といえるでしょう。
しかし、脳震盪を起こしているということは、頭に強い衝撃が加わったということなので、首に大きな負荷が加わっている可能性があります。
したがって、むちうち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群など)で後遺障害が認定される可能性はあります。
むちうちの場合、14級9号に認定される可能性があります。
脳震盪にともなって、首の痛みもある場合には、そのことを医師に明確に伝えましょう。
首の痛みを明確に伝えないままでいると、頚椎捻挫や外傷性頚部症候群などの傷病名がつかないままになってしまい後遺障害の対象とならなくなってしまう可能性があるからです。
後遺障害を適切に認定してもらう
後遺障害等級に認定された場合には、原則として後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。
例えば、14級9号に認定された場合には、後遺障害慰謝料110万円を請求することができますし、逸失利益は年収にもよりますが、年収額500万円の場合で約114万円を請求することができます。
さらに比較して、12級13号に認定された場合には、後遺障害慰謝料290万円、逸失利益は年収額500万円の場合で597万1140円になります。
このように、後遺障害に認定されるかどうかで賠償額は大きく変わりますし、等級の程度によっても賠償額は大きく変動するので、適切な後遺障害に認定されることはとても大切です。
適切な賠償金の金額を算定する
賠償金の算定基準は、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つがあります。
加害者側が提示してくるのは、自賠責保険基準や任意保険基準ですが、適切な基準は最も高い賠償水準である弁護士基準です。
以下のページでは、交通事故賠償金計算シミュレーターを掲載していますので、弁護士基準での賠償額の概算を確認したい場合には、ご活用ください
加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう
上記したように、加害者側が提示してくる賠償の提示は、自賠責保険基準や任意保険基準で金額が計算されていますので、安易に鵜呑みにして合意するのは避けましょう。
事案にもよりますが、弁護士に依頼して弁護士基準で交渉した結果、賠償金が数倍になるというケースもあります。
特に大幅な増額が期待できるのは、後遺障害等級に認定されている場合です。
後遺障害認定されている場合には、後遺障害慰謝料、逸失利益について増額が期待できるため大幅な増額が期待できるのです。
したがって、加害者側から賠償の提示がされた場合には、一度専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する
後遺障害の認定は、治療中に作成された診断書や診療報酬明細などの医療記録をもとに審査されます。
したがって、治療中の段階から必要に応じて専門の弁護士に相談しながら治療を継続することも大切であると考えます。
後遺障害に詳しい弁護士に相談することで、検査の必要性など、状況に応じて弁護士からアドバイスを受けることができます。
被害者が弁護士費用特約に加入している場合には、自己負担なく弁護士に相談・依頼することができます。
弁護士費用特約は、被害者が交通事故事件を弁護士に依頼するにあたって必要となる費用を保険会社が支払ってくれる特約です。
弁護士費用特約の適用範囲は広く、契約者本人だけでなく、同居している家族や別居している未婚の子などにも適用されます。
弁護士費用特約の限度額は多くの場合、300万円までです。
多くのケースで弁護士費用は300万円以内に収まるため、被害者に手出しが出ないことがほとんどでしょう。
ただし、弁護士事務所によっては、弁護士費用特約だけでは弁護士費用を賄えないケースもあるので、依頼前に、弁護士費用特約で全ての費用がまかなえるか確認しておきましょう。
まとめ
脳震盪は、頭に強い衝撃が加わることで発生する傷病です。
症状は、一過性であることが多く、レントゲンやCT、MRIなどの画像でも確認できないことが多いです。
したがって、脳震盪が原因で後遺障害の認定を受けることは容易ではありません。
しかし、頭に強い衝撃を受けているので、首にも大きな負荷が加わり、痛みが残ってしまう可能性もあります。
こうした場合には、首の痛みについて、後遺障害14級9号が認定される可能性があります。
このページではMTBIについても、言及しましたが、上記したとおり、MTBIでの後遺障害の認定は難しい部分が多いため、せめて14級9号の認定がされるように検討することも大切でしょう。
後遺障害に認定されるかどうかで、賠償金は大きく変わるため、脳震盪による症状等で不安なことがあれば専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、交通事故や労災事故に注力する弁護士が相談対応しておりますので、脳震盪でお困りの場合には、安心してご相談ください。
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