破裂骨折とは?弁護士が後遺症のポイントについて解説
破裂骨折(はれつこっせつ)とは、背骨の椎体のお腹側と背中側の両方を骨折するもので、骨折の中でも重い骨折です。
したがって、骨の変形障害、運動障害、神経症状の後遺障害などが残存してしまう可能性があります。
脊髄にまでダメージが及んでいる場合には、体に麻痺が残る可能性もあります。
このページでは、破裂骨折した場合の後遺障害や賠償額の相場などについて解説していますので、ご参考にされてください。
目次
破裂骨折とは
破裂骨折(はれつこっせつ)とは、背骨を構成する椎体(ついたい)のお腹側と背中側のいずれもが骨折するものです。
椎体は、背骨の主要な部分であり、体を支える大事な骨です。
破裂骨折は、この椎体がひどく骨折してしまうものであり、後遺障害が残ってしまう可能性が高い傷病といえます。
破裂骨折の分類
破裂骨折は、以下の5つのタイプに分けられます。
- A 頭尾側両椎体終板の骨折(椎体の上下両方の骨折)
- B 頭側椎体終板の骨折(椎体の上側の骨折)
- C 尾側椎体終板の骨折(椎体の下側の骨折)
- D 回旋を伴う破裂骨折
- E 側屈を伴う破裂骨折
破裂骨折と圧迫骨折との違い
破裂骨折は椎体の前と後ろの部分を骨折するものですが、圧迫骨折は、椎体の骨折が前の部分にとどまる骨折のことをいいます。
破裂骨折、圧迫骨折のいずれもレントゲンで診断することができます。
圧迫骨折よりも破裂骨折の方が症状としては重く、治療も難しくなります。
破裂骨折の症状と日常生活への影響
破裂骨折の症状
破裂骨折すると、骨折した部分に強い痛みが発生します。
体を動かすと特に痛みが強くなり、体勢を変えるのも痛みで難しくなります。
脊髄にまでダメージが及んでいる場合には、体に麻痺やしびれが生じることもあります。
その場合には、日常生活は困難になり、入院が必要になることが多いでしょう。
破裂骨折の場合仕事へいつ復帰できる?
破裂骨折した場合に、いつごろ職場復帰できるかは、骨折の程度次第です。
比較的、骨折の程度が軽い場合には、2〜3ヶ月で職場復帰することもできるでしょう。
一方で、骨折の程度が重く、脊髄にまで損傷が及んでいる場合には、長期間にわたり職場復帰することは難しく、症状の程度によっては、負傷前の仕事を十分にこなすことができなくなり、退職せざるを得なくなる可能性もあるでしょう。
破裂骨折の原因
破裂骨折は、交通事故や労災事故などで外から背骨に強い力が加わった場合に発生します。
歩行中に後方から自動車に追突されたり、バイクを走行中に自動車と衝突するなどして、背骨に強いエネルギーが加わることで破裂骨折する可能性があります。
また、仕事中に高いところから転落して背中を打ちつけたような場合にも破裂骨折する可能性があります。
破裂骨折の後遺障害認定の特徴と注意点
破裂骨折した場合の後遺障害としては、骨の変形障害、運動障害、痛みなどの神経症状の障害が考えられます。
また、破裂骨折することで脊髄に損傷が生じた場合には、体が麻痺する障害が残る可能性もあります。
破裂骨折による変形障害
破裂骨折は、骨折の中でも重い骨折です。
したがって、破裂骨折したあと治療をしてもきれいに骨がくっつかず、変形してくっついてしまう可能性があります。
そうした場合には、変形の程度によって以下の後遺障害に認定される可能性があります。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの |
8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
破裂骨折による運動障害
破裂骨折したあと、骨がきれいにくっつかず、背骨が動かしづらくなることがあります。
こうした場合には、運動障害として後遺障害に認定される可能性があります。
破裂骨折の運動障害の後遺障害等級は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
6級5号 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの |
8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
具体的に、どのような場合に認定されるかは、こちらをご覧ください。
破裂骨折による麻痺の障害
破裂骨折したことで脊髄も損傷した場合には、体に麻痺が残る可能性があります。
麻痺が残ってしまった場合に認定される可能性のある後遺障害等級は以下のとおりです。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
別表第1 1級1号 | せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、常に他人の介護を要するもの |
別表第1 2級1号 | せき髄症状のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの |
別表第2 3級3号 | 生命維持に必要な身のまわり処理の動作は可能であるが、せき髄症状のために労務に服することができないもの |
別表第2 5級2号 | せき髄症状のため、きわめて軽易な労務のほかに服することができないもの |
別表第2 7級4号 | せき髄症状のため、軽易な労務以外には服することができないもの |
別表第2 9級10号 | 通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの |
別表第2 12級13号 | 通常の労務に服することはできるが、せき髄症状のため、多少の障害を残すもの |
具体的な認定基準については、こちらをご覧ください。
破裂骨折による痛み等の神経障害
破裂骨折によって、痛みや痺れなどの神経症状が残ることがあります。
神経症状の後遺障害等級は、以下のとおりです。
等級 | 後遺障害の内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号と14級9号の違いは、「頑固な神経症状」なのか、単なる「神経症状」なのかの違いです。
具体的には、「頑固な神経症状」といえるには、神経症状が残っていることを医学的に「証明」しなければなりません。
医学的に証明するために、画像(レントゲン、CT、MRIなど)から、骨や筋肉等に異常があり、それが原因で神経症状が発生していることを示す必要があります。
一方で、単なる「神経症状」といえるには、神経症状が残っていることを医学的に「説明」できることが必要となります。
医学的に説明できるかどうかは、事故の規模・態様、症状の連続性・一貫性、治療の期間・頻度・内容、神経学的検査の結果、画像所見の有無などの事情を総合考慮して判断されます。
破裂骨折の慰謝料などの賠償金
破裂骨折した場合の主な賠償項目としては、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益があります。
賠償金の計算にあたっては、3つの基準があります。
自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3つです。
弁護士基準は、裁判になった場合に裁判所が使用する基準でもあるため、裁判基準とも呼ばれています。
これらの基準の中で最も高く適切な基準は弁護士基準(裁判基準)であるため、以下では、弁護士基準を前提に解説しています。
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、事故によって入院や通院をせざるを得なくなったことに対する慰謝料です。
入院期間、通院期間をもとに金額を算出します。
具体的には、入院期間と通院期間に応じた慰謝料が記載された表によって算出します。
以下の表は、その一部を抜粋したものです。
表の見方ですが、入院した月数の縦列と通院した月数の横列の交わる欄に記載のある数字が慰謝料学となります。
例えば、2ヶ月入院して、その後、6ヶ月通院した場合には、181万円が入通院慰謝料となります。
具体的な入通院慰謝料の金額を確認されたい場合には、以下のページの交通事故賠償金計算シミュレーターをご活用ください。
入院期間と通院期間を入力することで、入通院慰謝料の概算を計算することができます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことに対する慰謝料です。
後遺障害慰謝料の金額は、後遺障害等級の程度に応じて定められています。
破裂骨折して後遺障害認定を受けた場合の後遺障害慰謝料額は以下のとおりです。
後遺障害等級 | 弁護士基準での慰謝料の額 |
---|---|
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
逸失利益
逸失利益は、後遺障害が残ったことで働きづらくなり収入が減ってしまうことに対する補償です。
逸失利益は、以下の計算式で計算します。
基礎収入は、事故の前年の年収額になるのが原則です。
労働能力喪失率は、5%から100%の間で、後遺障害等級の重さに応じて下表のように定められています。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
1級 | 100% |
2級 | 100% |
3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
労働能力喪失期間は、症状固定となった年齢から67歳までの期間です。
例えば、症状固定が35歳であれば、労働能力喪失期間は32年となります。
ただし、14級9号の場合は5年間、12級13号の場合には10年間に制限されることが多いです。
いずれも神経症状の後遺障害であり、神経症状は時間の経過とともに、軽減していくと考えられているため労働能力喪失期間も制限されています。
ライプニッツ係数とは、中間利息を控除するための係数です。
例えば、45歳で年収600万円の人が、破裂骨折をして運動障害を残し、8級2号に認定された場合、逸失利益は4302万9630円となります。
計算式は以下のとおりです。
600万円 × 45% × 15.9369 = 4302万9630円
下記サイトの交通事故賠償金計算シミュレーターによって、逸失利益の概算を計算することができますので、ぜひご活用ください。
変形障害の逸失利益
逸失利益とは、後遺障害が残ったことで働きづらくなり、収入が減ってしまうことに対する補償です。
破裂骨折の変形障害は、骨が変形していることに着目して認定される後遺障害です。
加害者側は、この点を捉えて、骨が変形しているだけだから労働能力に問題はなく、逸失利益は発生しない、あるいは、発生したとしても制限されるべきだと主張してきます。
実際に、裁判例においても、逸失利益について制限的に考える裁判例もあります。
例えば、11級7号の場合、11級の労働能力喪失率は通常20%ですが、14%や5%にとどまる裁判例や、事案によっては逸失利益を認めない裁判例もあります。
したがって、被害者側としては、単に骨の変形にとどまらず、痛みや可動域の制限が生じており、それが原因で仕事あるいは家事に支障が出ていることを具体的に主張立証していく必要があります。
破裂骨折の場合、重い骨折ですから、変形しただけにとどまらず、痛みも残る可能性が高いです。
こうした痛みによって、重いものが持ち上げられなくなる、継続して肉体労働をすることが難しくなる、集中力が低下して作業効率が落ちることは十分に考えられます。
具体的エピソードを示して、こうした事情を具体的に主張し、適切な逸失利益を補償するよう交渉することが大切です。
破裂骨折で適切な賠償金を得る4つのポイント
上記したように、変形障害は骨折による骨の変形に着目して認定される後遺障害なので、加害者側から、逸失利益の計算にあたって労働能力喪失率や喪失期間が制限的に主張されることが多いです。
こうした主張に対しては、実際の減収やその見込、具体的な仕事・家事への支障を主張して適切な逸失利益を補償してもらうべきです。
仮に、逸失利益を減額されたしまったとしても、後遺障害慰謝料の部分を増額してもらうなどして、できる限り賠償額を増額する交渉をされるべきでしょう。
麻痺が生じた場合には将来介護費用を請求できないか検討する
破裂骨折によって、脊髄を損傷し、重度の麻痺が残った場合には、別表第1の後遺障害1級や2級が認定される可能性があります。
別表第1胃の1級や2級に認定された場合には、日常生活を送る上で、介護が必要であり、将来においても介護が必要であると考えられるため、将来介護費用を請求することができます。
介護費用は、1日8000円が基本となりますが、介護の必要性の程度によって金額は大きく変動します。
将来介護費用は、1億円を超える賠償額になることもありますので、適切な補償を受けるべく、介護が具体的にどの程度必要なのかをしっかりと主張していかなければなりません。
適切な治療を受ける
当然のことではありますが、医師の指示に従って、適切に治療を受けることは大切です。
入院期間や通院期間は、入通院慰謝料の金額にも影響するので、医師の指示に従って、きちんと治療を行いましょう。
後遺障害を適切に認定してもらう
上記した後遺障害慰謝料や逸失利益からも分かるとおり、後遺障害に認定されるかどうか、どの等級に認定されるのかによって賠償額は大きく変わってきます。
認定されている等級が適切かどうか分からない場合には、専門の弁護士に相談しましょう。
認定されている等級が不適切な場合には、異議申し立てをすることで等級を変更することができる可能性があります。
異議申し立てにあたっては、認定の結果を踏まえて、どのような証拠を追加すれば適切な認定を獲得できるか十分に検討する必要があり、高度に専門的な判断が必要になります。
したがって、専門の弁護士に相談して見通しを確認されることをおすすめします。
適切な賠償金の金額を算定する
加害者側としては、できる限り賠償金の金額は抑えたいのが本音です。
実際、保険会社が提示する賠償額は、自賠責保険基準や任意保険基準で計算されたものであり、十分な補償とはいえません。
加害者側から賠償の提示があったとしても安易に納得して示談しないようにしましょう。
専門の弁護士に相談して、弁護士基準だとどの程度の金額になるのかを見込額を計算してもらってから示談するかどうかを決めるべきです。
事案によっては、弁護士が交渉をすることで保険会社からの提示額の数倍で示談できるということもあります。
弁護士基準での賠償額の概算を計算されたい場合には、以下のページの交通事故賠償金計算シミュレーターをご活用ください。
まとめ
破裂骨折は、骨折の中でも重い骨折で後遺障害が残ってしまう可能性が高いです。
後遺障害としては、骨の変形障害、運動障害、痛みなどの神経症状の障害があります。
事故によるダメージが脊髄にまで及んでいる場合には、体に麻痺が残ってしまう可能性があり、脊髄の損傷の程度によっては重篤な後遺障害が残ってしまう可能性もあります。
したがって、破裂骨折した場合には、賠償額も高額になる傾向になり、計算方法も複雑になります。
適切な補償を受けるためにも専門の弁護士に相談されることをおすすめします。
当事務所では、交通事故をはじめとする人身障害の分野に注力する弁護士が所属しています。
最初のご相談から、依頼後の事件処理まで専門の弁護士が対応しますので、破裂骨折についてお困りのことがあれば、安心してご相談ください。
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