腎臓破裂とは?弁護士が後遺症のポイントについて解説

執筆者:弁護士 西崎侃 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)


腎臓(じんぞう)破裂とは、腎臓(人体の腰付近に左右対称のかたちで2つある臓器)が破裂することをいいます。

交通事故により腎臓が破裂してしまったということは、事故の際に強い衝撃が腎臓に加わったということなので、事故の規模が大きかったことを意味します。

また、腎臓は、人体の中でも、老廃物や余分な水分、塩分等をろ過して、尿として排出するという重要な機能を果たすため、腎臓破裂による日常生活や仕事への影響は大きいでしょう。

交通事故が原因で腎臓が破裂してしまった場合、腎臓破裂による労務(仕事など)への影響の程度によって認定されうる後遺障害等級が異なってきます。

この記事では腎臓破裂の内容や後遺障害認定、賠償額の相場等について開設しておりますので、交通事故や労災事故で腎臓を破裂してしまった被害者の方のお役に立てれば幸いです。

腎臓破裂とは

腎臓破裂(じんぞうはれつ)とは、腎臓(人体の腰付近に左右対称のかたちで2つある臓器)が破裂することをいいます。

腎臓

交通事故や労災事故で腎臓が損傷した場合、症状が軽いものから順に次のように分けられます。

①挫傷 < ②裂傷、亀裂 < ③破裂 < ④腎茎損傷(じんけいそんしょう)

①挫傷(ざしょう)とは、打撲や被膜下血腫(ひまくかけっしゅ)の症状があらわれることをいいます。

被膜下血腫(ひまくかけっしゅ)とは、腎臓を覆っている被膜の下に、出血した血液がたまる状態をいいます。

②裂傷、亀裂とは裂傷(れっしょう)、亀裂(きれつ)とは、腎臓の組織が裂けた状態・割れた状態のことをいいます。

③破裂とは、腎臓の組織が完全に破壊された状態をいいます。

④腎茎損傷(じんけいそんしょう)とは、腎臓を支える腎茎(じんけい)が損傷を受けたことをいいます。

腎茎とは、腎臓を体内で固定するために腎臓の下側に存在するものです。

つまり、腎臓破裂は、④腎茎部損傷の次に重い症状となります。

 

 

腎臓が破裂したらどうなる?

死亡の可能性は?

腎臓が破裂すると、内出血や血尿などを引き起こす可能性があります。

また、破裂した腎臓から大量の血液が失われることにより、出血性ショックを引き起こす可能性があります。

出血性ショックをおこしてしまうと、死亡する危険性もあるため、緊急手術が必要となるケースもあります。

※腎臓破裂によって死亡する可能性は、被害者の状態によって異なり、腎臓破裂の程度や治療のタイミング、被害者の全身状態によっても異なるため、早期発見と適切な治療が重要になってきます。

 

腎臓破裂の日常生活への影響

腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分、塩分等をろ過して、尿として排出するという重要な機能を担っています。

そのため、腎臓が破裂してその機能が低下すると、次のような症状があらわれる可能性があります。

  • 吐気、嘔吐
  • 不眠
  • 頭痛
  • 疲れやすさ など

また、時間が経つにつれ腎臓の機能が低下していくと、これらの症状は悪化していきます。

よって、腎臓破裂により腎臓の機能が低下していくと、日常生活や仕事への影響・支障は大きいものといえます。

 

腎臓破裂は治る?

腎臓破裂は、適切な治療を受ければ治る可能性があります

そして、何が「適切な治療」かを判断するために、超音波検査(音波を使って腎臓の内部を観察する検査方法)やCT検査(放射線(X線)を用いて身体の状態を撮影する検査方法)等をすることがあります。

これらの検査によって、腎臓の損傷の程度や出血の程度等を調べることができます。

これらの検査によって「適切な治療」が何かを判断することができた場合、実際に治療を進めることになりますが、治療の方法は、腎臓破裂の程度や状態によって異なります。

腎臓破裂に対する治療としては、腎臓の損傷が軽度であれば経過観察や投薬、重度であれば手術が必要になってきます

なお、腎臓破裂の場合の手術としては、腎臓を修復するための縫合術(ほうごうじゅつ)や、場合によっては腎臓摘出術が行われることがあります。

 

 

腎臓破裂の原因

交通事故や労災事故で腎臓が破裂してしまう原因としては、以下のような場合が考えられます。

交通事故
  • 歩行者や自転車で走行中の人が車にはねられたことで、身体(特に背中側)を地面や電柱等に強く打ちつけた場合
  • 自動車同士の事故において、自動車同士の衝突やシートベルトによる圧迫によって強い衝撃が加わった場合 など
労災事故
  • 建設現場や工場などで、重い物が落下してきたり、機械の部品などに挟まれたりしたことで、腎臓に直接的な衝撃を受けた場合
  • 高い所から転倒したり、足場が崩れて転落したりしたことで、腎臓に強い衝撃を受けた場合 など

なお、ケースによっては事故態様や車の損傷の有無・程度が軽微であること等を理由に、今回の事故で腎臓を破裂するはずはないというような主張をされるケースがあります。

被害者があった事故が、腎臓が破裂する程度の交通事故・労災事故であることを主張するためには、被害者自身の主張だけではなく、客観的証拠(ドライブレコーダーの映像、車両や身体の損傷部位の写真、診断書・カルテなど)が重要になってきます。

※具体的にどのような証拠が有効な証拠になるかは事案によって異なりますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

 

 

腎臓破裂の後遺障害認定の特徴と注意点

交通事故により被害者が腎臓破裂になってしまった場合、被害者の症状としては、大きく2つに分けることができます。

  • 腎臓を失った(亡失した)場合
  • 腎臓を失っていない場合

認定される可能性がある後遺障害等級としては、次のような等級が考えられます

等級 具体的症状
腎臓を失った(亡失した)場合 腎臓を失っていない場合
第7級5号 GFR値が31~50ml/分であるもの
第9級11号 GFR値が51~70ml/分であるもの GFR値が31~50ml/分であるもの
第11級10号 GFR値が71~90ml/分であるもの GFR値が51~70ml/分であるもの
第13級11号 GFR値が91ml/分であるもの GFR値が71~90ml/分であるもの

※「GFR値」とは、腎臓の機能を評価するために使用される指標の1つで、1分間あたりに腎臓でろ過される血液の量を数値として表したものになります。
※「GFR値」の算定において、小数点以下は切り上げます。

なお、一般的に、GFR値が91ml/分である場合には正常であると判断されます。
※GFRは、個人の年齢や体格、性別などによって異なるため、詳細な評価は医師の判断によります。

後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益の金額や示談までの流れ等について、詳しくおしりになりたい方は以下の記事をご覧ください。

 

 

腎臓破裂の慰謝料などの賠償金

交通事故で腎臓破裂になってしまった場合に請求できる可能性がある項目は、次のとおりとなります。

  1. ① 入通院慰謝料
  2. ② 後遺障害慰謝料
  3. ③ 後遺障害逸失利益

①入通院慰謝料とは、入通院期間に応じた慰謝料のことをいいます。

②後遺障害慰謝料とは、自賠責保険会社(損害保険料率算出機構)や裁判所から後遺障害が認定されたときに認められる慰謝料のことをいいます。

ここでは、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料のそれぞれの相場を記載いたしますので、ご確認ください。

①入通院慰謝料の相場

  • 通院1日あたり2,711円〜9,333円
  • 入院1日あたり7,555円〜17,666円

※入通院慰謝料は、怪我の程度と入通院期間の長さによって判断します。
※入通院慰謝料の最低金額は、通院あるいは入院の期間が15ヶ月であった場合の1日単価で算定しています。そのため、通院あるいは入院の期間が15ヶ月を超える場合は、上記の金額よりもさらに下がります。

②後遺障害慰謝料の相場

180万円〜1000万円

※後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったときの障害の程度(等級の程度)によって判断します。

なお、入通院慰謝料・後遺障害慰謝料の相場の金額は、すべて弁護士基準(弁護士が入った場合の基準)を前提にしております。

③後遺障害逸失利益とは、交通事故で腎臓を破裂しなければ本来得ることができたであろう利益のことをいいます。

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で計算します。

後遺障害逸失利益
= 1年あたりの基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

※家事従事者(主婦・主夫)の「1年あたりの基礎収入」については、「賃金センサス」(国が出している平均収入をまとめた資料)をもとに基礎収入を算出します。

具体例
被害者の事故の前年の年収額が600万円で、交通事故が原因で腎臓が破裂し、腎臓を失ってしまったことにより後遺障害11級10号に認定されたとします。この具体例を前提にすると、後遺障害逸失利益は次のように計算します。
600万円 × 20% × ライプニッツ係数(0.9709〜24.5187)
※ライプニッツ係数は、事故によって労働能力を喪失した期間によって変わります。したがって、後遺障害逸失利益の相場としては、約116万円〜2940万円ほどになります。なお、相場の金額は、弁護士基準(弁護士が入った場合の基準)及び労働能力喪失率20%、労働能力喪失期間1年〜45年を前提にしています。

入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の相場や賠償金の種類の詳細については以下をお読みいただければと思います。

 

 

腎臓破裂で適切な賠償金を得る5つのポイント

ケガを放置せずに治療を受ける

交通事故によって腎臓が破裂しているかどうかは、超音波検査やCT検査によって判断されます。

これらの検査によって腎臓が破裂していると判断された場合、腎臓の損傷が軽度であれば経過観察や投薬、重度であれば手術などの治療を行うことになります。

このような腎臓破裂に対する適切な治療は、きちんと継続するようにしましょう

また、弁護士基準(裁判をした場合に、裁判所が認めてくれるであろう金額の基準)は、基本的に通院期間を基準として慰謝料を算定します。

そのため、このような治療を腎臓破裂の痛みが回復するまで継続することで、腎臓破裂の早期回復につながるだけでなく、慰謝料を増額できる可能性が高まります

被害者にとって一番良いのは、腎臓破裂による体調不良が良くなったり、腎臓の機能が回復することですが、通院期間が長くなることは慰謝料を請求する際に重要な事情となってきます。

賠償上適切な通院頻度や通院回数の注意点等について、詳しくは以下をご覧ください。

 

適切な後遺障害等級を認定してもらう

交通事故が原因で腎臓破裂してしまった場合に、認定される可能性がある後遺障害等級は次のとおりです。

等級 後遺障害の内容 慰謝料の金額
(弁護士を入れた場合)
第7級5号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 1000万円
第9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 690万円
第11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 420万円
第13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 180万円

※「弁護士を入れた場合」とは、弁護士基準(裁判基準)のことを指します。

後遺障害等級が認定された場合の慰謝料等について、詳しく確認されたい場合は以下の記事をご覧ください。

 

適切な慰謝料の賠償額を獲得する

慰謝料を算定する基準には、①自賠責保険基準、②任意保険会社基準、③弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。

慰謝料の交渉に弁護士を入れなかった場合には、①自賠責保険基準または②任意保険会社基準で算定されることが多いです。

他方、弁護士を入れた場合には、③弁護士基準(裁判基準)で算定することになりますので、最も適切な賠償金を請求することができます。

具体的には、次のような差額が生じます。

等級 後遺障害の内容 慰謝料の金額
(弁護士を入れなかった場合)
慰謝料の金額
(弁護士を入れた場合)
第7級5号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 419万円 1000万円
第9級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 249万円 690万円
第11級10号 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの 136万円 420万円
第13級11号 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの 57万円 180万円

※「弁護士を入れなかった場合」とは、自賠責基準のことをいい、「弁護士を入れた場合」とは、弁護士基準(裁判基準)のことを指します。

このように、弁護士を入れなかった場合と弁護士を入れた場合とでは、慰謝料の金額に大きな差が生じます

そのため、適切な賠償金を獲得するためにも弁護士にご相談されることをおすすめいたします。

慰謝料の相場・計算方法について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

 

示談内容については弁護士等の専門家に確認してもらう

示談とは、本件事件について、金額、過失割合、支払期限等を確定させた上で、お互いの合意によって事件を解決する方法のことをいいます。

示談は、原則として書面(「示談書」、「承諾書」、「同意書」など)に署名・捺印をすることでお互いが合意したということになります。

示談をする際は、次のような点に注意するようにしましょう。

  • 示談書にこちらの認識と違った事実が記載されていないか
  • 示談書にこちらに不利な条件が記載されていないか

示談の流れや注意点について、詳しくは以下をご確認ください。

 

早い段階で後遺障害に詳しい弁護士に相談するメリット

交通事故に遭われた被害者が行うこととしては、次のようなことがあります。

  • 適切な治療を行う。
  • 適切な治療期間・慰謝料を認めてもらうための交渉を相手方保険会社と行う。
  • 治療終了後も腎臓破裂によって痛み等がある場合に、適切な後遺障害等級を獲得する。

交通事故に関する法律や保険制度などの知識に詳しい弁護士に早い段階で相談すると、次のような効果が望めます。

  • 治療をしていく中で出てくる様々な問題について正確なアドバイスを受けることができる。
  • 弁護士に依頼後の相手方保険会社との交渉はすべてその弁護士を通して行うことになるため、治療に専念することができる。
  • 弁護士基準(仮に裁判をしたら裁判所が認めてくれるであろう金額の基準)で算定した慰謝料を示談の段階で獲得できる可能性がある。
  • 相手方保険会社や病院から開示を受けた資料をもとに、適切な後遺障害の等級を獲得することができる。

そのため、後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談することで、被害者は治療に専念していただくことができるだけでなく、適切な賠償金を獲得できたり、適切な後遺障害等級を獲得できたりする可能性があります

弁護士に依頼することの効果・メリット等について、詳しくは以下の記事をお読みください。

 

 

まとめ

以上、交通事故にあい腎臓が破裂してしまった場合に請求することができる慰謝料等の金額や認定される可能性がある後遺障害の特徴と注意点などについて詳しく解説いたしました。

人体の中でも非常に重要な役割を果たす腎臓が破裂してしまったために、吐き気や不眠、頭痛などに悩まされることの苦しみは大きいものです。

突然巻き込まれてしまった交通事故によるこのような苦しみを少しでも和らげるためにも、妥当な慰謝料・後遺障害等級を認めてもらう必要があります。

当法律事務所では、オンライン相談(LINE、Zoomなども対応可能です。)や電話相談も初回相談料無料で全国対応を行っておりますので、少しでもお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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