背骨骨折による後遺症のポイント|弁護士が解説
背骨骨折とは、背中にある骨(頚椎または胸椎、腰椎)が潰れたりして折れてしまうことをいいます。
背骨骨折により後遺症が残った場合には、後遺障害に認定される可能性があります。
本記事は、背骨骨折のケガをしてしまった方向けに、背骨骨折の後遺障害認定の特徴や慰謝料についてを解説します。
目次
背骨骨折とは
背骨骨折とは、背中にある骨が潰れたりして折れてしまうことをいいます。
背骨は、下記のイラスト図のように、頚椎(けいつい)、胸椎(きょうつい)腰椎(ようつい)、仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)という骨から構成されています。
なお、仙骨と尾骨は背骨の一種ではあるものの、骨盤骨の一部でもあるため、自賠責保険等の後遺障害認定においては背骨とは別の認定として扱われるため、本記事での「背骨骨折」は、頸椎〜腰椎までの骨折を意味します。
背骨と脊椎・脊柱との違い
背骨は脊椎(せきつい)や脊柱(せきちゅう)と呼ばれ、全て同じ意味なので違いはありません。
背骨骨折と脊椎圧迫骨折との違い
背骨骨折と脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)もほぼ同じ意味なので、違いはありません。
背骨骨折の症状と日常生活への影響
背骨骨折の症状としては、骨折部位に痛みが生じます。
日常生活への影響としては、寝返りを打った時、起き上がる時、後ろを振り向く時、重い物を持つ時などに痛みが出てしまうということです。
背骨骨折は全治何ヶ月?
背骨骨折の全治の目安は、3〜6ヶ月です。
背骨骨折の入院期間はどれくらい?
背骨骨折は必ずしも入院が必要となるわけではありませんが、入院する場合の入院期間の目安は、2週間〜1ヶ月程です。
背骨骨折のリハビリはどれくらい?
背骨骨折のリハビリは、概ね2〜3ヶ月と考えられます。
症状等にもよりますので、主治医に確認するのがベストでしょう。
日常生活はコルセットが必要?
背骨骨折の治療方針として、安静にして骨がしっかり治るのを待つという保存的治療が選択されることがあります。
背骨骨折の保存的治療で多いのが、コルセットを巻いて背骨を安定させるというものです。
コルセットを巻くかどうか、巻くとしてどのくらいの期間巻くかは医師の判断に委ねるべきでしょう。
背骨骨折の原因
背骨骨折は、背骨に非常に強い圧力がかかった場合に起こりうるものです。
具体的には、バイク事故、自転車事故、歩行中の事故、労災で高いところから転落する事故などで背中を地面に強く叩きつけられた場合等が原因となることが多いです。
背骨骨折の後遺障害認定の特徴と注意点
背骨の変形障害
背骨が変形して状態で骨がくっついてしまった場合、その状態次第で以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級 | 内容 |
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6級5号 | 脊柱に著しい変形を残すもの 【「脊柱に著しい変形を残すもの」とは】 レントゲン、CT、MRIなどの画像で背骨の圧迫骨折等が確認できる場合で、かつ、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
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8級相当 | 脊柱に中程度の変形を残すもの 【「脊柱に中程度の変形を残すもの」とは】 レントゲン、CT、MRIなどの画像で背骨の圧迫骨折等が確認できる場合で、かつ、以下のいずれかに該当する場合をいいます。
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11級7号 | 脊柱に変形を残すもの 【「脊柱に変形を残すもの」とは】 以下のいずれかに該当するものをいいます。
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全ての等級の共通点として、画像で背骨の圧迫骨折等が確認できることが必要な要件となります。
また、前方椎体高が減少しているかどうかはっきりしない事案では、主治医だけでなく、別の医師の画像鑑定等を受けた方が良いでしょう。
背骨の運動障害・荷重機能障害
背骨骨折が原因で首や背中が曲がりにくくなった場合は、運動障害として以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
運動障害の後遺障害等級
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
6級5号 | 【脊柱に著しい運動障害を残すもの】 (「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは) 以下のいずれかにより、頚部及び胸腰部が強直した場合に該当します。
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8級2号 | 【脊柱に運動障害を残すもの】 (「脊柱に運動障害を残すもの」とは) 次のいずれかにより、頚部又は胸腰部の可動域が参考可動域角度の2分の1以下に制限されたものが該当します。
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背骨骨折が原因で首や腰などを支える機能が低下し、硬性補装具(こうせいほそうぐ)が常に必要となる場合は、荷重機能障害として、以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
荷重機能障害の後遺障害等級
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
6級相当 | 脊柱に著しい運動障害を残すもの 頚部及び腰部の両方の保持が困難であるもの |
8級相当 | 頚部又は腰部のいずれかの保持が困難であるもの |
運動障害についても、やはり骨折についての画像所見の有無が重要となります。
画像所見がないことにより、何も後遺障害が認定されないという結末も考えられます。
画像所見があることを立証するためには、医師の意見書や画像鑑定報告書を自賠責保険に提出するという方法が考えられます。
背骨骨折後に痛みがあるとき後遺障害が認定できる?
背骨骨折後に痛みが残り続けている場合には、神経症状として以下の後遺障害等級が認定される可能性があります。
神経症状の後遺障害等級
後遺障害等級 | 内容 |
---|---|
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
12級13号は、痛みの存在が医学的に「証明」可能な場合に認められます。
14級9号は、痛みの存在が医学的に「説明」可能な場合に認められます。
医学的に「証明」可能な場合(12級13号)とは、他覚的所見、主に画像所見(レントゲン、MRI、CT)があるといえる場合をいいます。
医学的に「説明」可能な場合(14級9号)とは、他覚的所見はないが治療経過や事故状況等の総合的な観点から痛みの存在が一応説明できる場合をいいます。
骨がしっかりくっついて治った場合は、12級13号の認定は難しく、14級9号が認定されるかどうかということになります。
ただし、14級9号も簡単に認定されるわけではありません。
14級9号は痛みの存在に一貫性があるかが重要で、一定の期間痛くなかったのに少しの期間だけ痛かったという場合には一貫性がないと判断されて、14級9号さえも認定されない可能性があります。
背骨骨折の慰謝料などの賠償金
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、入院や通院をした場合に生じる精神的苦痛に対する賠償金のことです。
入通院慰謝料は、以下の3つの基準に分かれています。
- 自賠責基準
- 任意保険会社基準
- 裁判基準(弁護士基準)
任意保険会社基準は、各保険会社の基準で公表はされていないので、以下は自賠責基準と裁判基準(弁護士基準)を説明いたします。
自賠責基準
自賠責基準とは、自賠責保険で認定される場合や、弁護士が介入しない場合に任意保険会社が被害者に提示する基準のことです。
自賠責基準は、最低限の補償内容です。
入通院慰謝料の自賠責基準の計算方法は以下のとおりです。
※対象日数については、以下の2つの日数を比べて少ない方が対象日数となります。
- 実際に通院した日数の2倍の日数
- 通院期間(治療開始日から治療終了日までのトータル)の日数
裁判基準(弁護士基準)
裁判基準(弁護士基準)とは、裁判をした場合、あるいは弁護士が交渉した場合に用いられる基準です。
3つの基準の中では、基本的に最も高額となるのが裁判基準です。
裁判基準は、重傷と軽傷の場合で用いる表が違いますが、背骨骨折の場合は、入院や通院期間に応じて、以下の重傷用の表を用いて計算します。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛に対する賠償金のことです。
後遺障害慰謝料は、基本的に認定される後遺障害等級によって自賠責基準や裁判基準の相場が異なってきます。
以下は、背骨骨折で認定可能性のある後遺障害等級ごとの自賠責基準と裁判基準の相場の比較です。
背骨骨折で認定可能性のある後遺障害等級 | 自賠責基準 | 裁判基準 |
---|---|---|
6級 | 512万円 | 1180万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残存したことによって将来の労働能力に影響する分の賠償金のことをいいます。
後遺障害逸失利益の基本計算式は、以下のとおりです。
後遺障害逸失利益は、被害者がどのくらいの年収か、認定される後遺障害等級が何級かによって賠償金がいくらになるか変わってきます。
背骨骨折の変形障害の場合、加害者側から変形しただけで労働にはさほど支障がないとして、後遺障害逸失利益を減額すべきだと主張されることがあります。
実際上、変形障害の場合に、後遺障害逸失利益の一定程度の減額をしている裁判例などもあります。
もっとも、変形しているだけでなく骨折部位に痛みも生じている場合は、一定程度労働能力が喪失していると主張すべきです。
どの程度現在の仕事に影響を与えているかを具体的に主張できるかどうかで、後遺障害逸失利益が減額されるかどうかが決まってきます。
具体的に主張するにあたっては、現在の仕事内容はどのようなものか、背骨骨折が原因でどのような仕事がしにくくなっているか、実際に背骨骨折が原因で減収しているか等が主張対象になってくるでしょう。
高齢者の場合は減額されることがある?
高齢者の場合、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)で元々骨が折れやすく、そのことが主な原因で背骨が骨折するというケースがあります。
単に高齢者というだけでは、賠償金が減額されることはありませんが、元々持っていた骨粗鬆症が損害を拡大させたといえる場合には、賠償金が減額されることがあります(これを「素因減額」といいます)。
ただし、その事案で素因減額されるかどうかについては、元々被害者の持っていた骨粗鬆症がどの程度影響しているかを、医師の意見を参考にして丁寧に検討すべきです。
背骨骨折で適切な賠償金を得る4つのポイント
しっかり治るまで通院する
背骨骨折がしっかり治るまで通院を継続してください。
中途半端な時期に治療をやめてしまうと、その分賠償金が減らされる可能性があります。
いつまで通院すれば良いかという話ですが、医師に症状固定と判断されるまで通院すべきです。
症状固定とは、これ以上改善が見込めないという時期のことです。
なお、通院している途中で保険会社から打ち切りの打診があるかもしれませんが症状固定に至っていない場合は、治療期間の延長する交渉をすべきです。
症状固定以降も症状が残っている場合は後遺障害の申請をする
症状固定まで通院しても何かしらの症状が残っている場合は、交通事故であれば自賠責保険に後遺障害の申請をすべきです。
後遺障害の申請は、保険会社が申請してくれる「事前認定」と、被害者側で申請する「被害者請求」があります。
筆者としては、被害者側で提出資料が選べる被害者請求を選択すべきだと考えます。
被害者請求のデメリットとして、提出資料を準備するのが面倒であるということが挙げられますが、弁護士に依頼すれば、基本的に全て弁護士に申請を任せることができます。
賠償金を裁判基準で算定して請求する
賠償金は、基本的に最も高額となる裁判基準で算定すべきです。
保険会社は、通常、裁判基準よりも低い自賠責基準や任意保険会社の基準で算定して提示してきます。
もっとも、自賠責基準や任意保険会社の基準だけでは賠償として適切ではありません。
保険会社が賠償金を提示してきても、損害の各項目ごとに裁判基準での引き直し計算が必要です。
交通事故や労災に強い弁護士に相談する
適切な賠償金を得るための最も重要なポイントは、「交通事故や労災に強い弁護士に相談すること」です。
弁護士であれば、後遺障害申請などを丁寧に行うことができますし、裁判基準での請求も可能です。
早い段階で相談していれば、それだけ弁護士が動けることも多くなりますので、背骨骨折のケガをされた方は一度は必ず弁護士に相談するようにしてください。
まとめ
上記でご紹介したとおり、背骨骨折に関して適切な対処をするためには、様々な知識等が必要です。
なお、本記事でご紹介したものは、実際の事件を進めていく上ではほんの一部の基本事項に過ぎません。
筆者は、被害者の方が背骨骨折の適切な賠償金をもらうためには、専門家の力を借りることが必須であると考えています。
デイライト法律事務所は、交通事故や労災などに注力する専門チームがあり、これまでに多くの事件を解決してきました。
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背骨骨折でお困りの方は、デイライト法律事務所にぜひお気軽にお問い合わせください。