事故車とは?事故車の意味、デメリットや注意点|弁護士が解説

執筆者:弁護士 重永尚亮 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

事故車とは、車の骨格を損傷し、修復歴がある車のことをいいます。

交通事故によって自身の車両の修理が必要となった場合、将来ご自身の車を売るときにどのくらい価値が下がってしまうか不安に思われる方が多いと思われます。

この記事では、そもそもどのような場合に事故車に当たるかについて解説しております。

また、事故車となってしまった場合のデメリットや事故車となった場合の注意点について解説しております。

事故車とは?

「事故車」とは、その名の通り事故に遭った車という訳ではありません。

「事故車」とは、車の骨格を損傷し、修復歴がある車のことをいいます。

日本自動車査定協会では、事故車の定義として「骨格(フレーム)部位等を交換したり、あるいは修復(修正・補修)したものが修復歴車(事故車)」となるとしています。

引用元:一般財団法人日本自動車査定協会

また、修復歴の有無について自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則14条では、下記の項目について交換したり、あるいは修復(修正・補修)がされているものと定められています。

  • フレーム(サイドメンバー)
  • クロスメンバー
  • フロントインサイドパネル
  • ピラー
  • ダッシュパネル
  • ルーフパネル
  • フロア
  • トランクフロア

したがって、「事故車」に該当する場合とは、車の骨格部分を修理したことがある場合をいいます。

車を修理する原因としてもっとも多いのが交通事故です。

そのほかにも大雨によって車両が冠水してしまったことで骨格部分の修理が必要となった場合にも事故車として扱われます。

このように車両の骨格部分の修理が必要となれば損傷の原因については問われません。

事故車の見分け方とは?

事故車の見分け方のポイントは修理・修復歴の有無です。

修理歴がついてしまうのは車両の骨格部分です。

具体的には下記の項目に修理がなされていた場合です。

ただし、ねじ止め部分は骨格には含まれません。

 

サイドメンバー

サイドメンバーとは、車体の側面を構成する部材のことをいいます。

サイドメンバーの交換や曲がり・凹みがある場合には、事故車にあたります。

 

クロスメンバー

クロスメンバーとは、車体の強度を上げるための部材です。

クロスメンバーの交換や曲がり・歪み・凹みやその修理歴がある場合には、事故車にあたります。

 

フロントインサイドパネル

フロントインサイドパネルとは、車体のボンネットを開けた時のエンジンルームの左右に設置されているパネルのことをいいます。

インサイドパネルの交換や軽微ではない修理跡がある場合には、事故車にあたります。

 

ピラー

ピラーとは、車体の屋根を支える支柱のことをいいます。

ピラーの交換やスポットの打ち直し、ピラーの外部あるいは外板から波及した凹みやその修理歴がある場合には事故車にあたります。

 

ダッシュパネル

ダッシュパネルとは、車体の骨格を構成する部材で、エンジンルームと客室の間にある隔壁パネルのことをいいます。

ダッシュパネルの交換や外板から波及した凹みやその修理歴がある場合には事故車にあたります。

 

ルーフパネル

ルーフパネルとは、車体の屋根部分をいいます。

ルーフパネルを交換、外板から波及した凹みやその修理跡がある場合に事故車にあたります。

 

フロア

フロアとは、車体の客室の下に広がっているパネルをいいます。

フロアの交換や、センターフロアパネルまたはフロアサイドメンバーの接合部に、剥がれや修理跡がある場合あるいは、破れや亀裂がある場合、フロアの外板から波及した凹みやその修理歴がある場合に事故車にあたります。

 

トランクフロア

トランクフロアとは、トランクルームの下部にあるパネルのことをいいます。

トランクフロアの交換、破れや亀裂がある場合、パネル接合部に剥がれや修理跡がある場合、外板から波及した凹みやその修理跡がある場合に事故車にあたります。

出典:骨格部位名称・修復歴減点・ランク表|一般財団法人 日本自動車査定協会 群馬県支所

一方、修理歴があったとしても事故車扱いにならない項目は以下の通りです。

修理歴があったとしても事故車扱いにならない項目
フロントバンパー ヘッドライトとフロントグリル(ボンネットの下部に取り付けられた格子状の部品)の下にある部分をいいます。
ロアスカート バンパーの下部に設置された部品です。
フロントフェンダー 走行中にタイヤによって跳ね上げられた泥や水が飛散しないように前のタイヤの外側に被っているパネルをいいます。
ボンネット エンジンルームを覆っているふたをいいます。
リアフェンダー 走行中にタイヤによって跳ね上げられた泥や水が飛散しないように後ろのタイヤの外側に被っているパネルをいいます。
トランクリッド 車体の後方に取り付けられているトランクルームのふたをいいます。
リアバンパー 車体の広報にある衝突時に衝撃を和らげる部品をいいます。
サイドシルパネル ドアの真下の前輪後側から後輪前側までの外装部位全体をいいます。
ドア

上記項目は、車両の骨格部分に当たらないため修理をしたとしても事故車にあたりません。

 

事故車であることを隠せる?

既にご説明した通り、「事故車」に該当する場合は、当該車両の査定額に大きな影響を及ぼします。

そこで、査定に出す際に「事故車」であることを隠したいと思われる方々も一定数いらっしゃるかと思います。

しかし、事故車であることを隠したまま売却することはできません。

事故車であることを隠そうとしたとしても発覚してしまう場合がほとんどです。

というのも、査定をする側としても事故車であることを隠そうとする人が一定数いることを前提に査定を実施します。

そして、査定をする側は車のプロです。

したがって、査定額に大きな影響を及ぼす大きな修理跡については基本的に発覚すると思っておいた方が良いでしょう。

また、事故車であることが事前わかっている場合には、査定に出す際にきちんと事故車であることを申告する必要があります。

そのため、隠す隠さない以前に事故車であることを伝える必要があります。

事故車隠しがバレたときのリスク

事故車隠しがバレてしまった場合は、民事上、刑事上の責任を負う可能性があります。

まず、民事上の責任としては、買取店からの損害賠償請求を受ける可能性があります。

通常、修理歴がある場合には、きちんと買取店に伝える必要があります。

修理歴があるにも関わらずわざと隠して売りに出した場合には、「修理歴のない車を売る」という債務を履行しなかったことになります。

そうなると、売主は債務不履行責任として買取店に発生した損害を賠償しなければならない可能性があります。

具体的には、事故車としての買取額と事故車でないと偽って支払われた金額の差額や、転売先が既に決まっている場合にはキャンセル料、運送費用や保管料や事務手数料等の損害について請求される可能性があります。

次に、刑事上の責任としては、事故車であるか否かは買取店にとっては重大な関心事項です。

買取店としては事故車でないことをもって買取価格を決めています。

そうであるにも関わらず、実は事故車である場合には、事故車でない車両の価格と事故車であるときの価格との差額について買取店が損をしてしまうことになります。

このように買取店にとって事故車か否かは買取店の財産に影響を与えることから詐欺罪が成立する可能性があります。

以上のように、事故車であることを隠することによるリスクは想像以上に大きいため事故車であることを素直に買取店に伝えた方が良いでしょう。

 

 

車の事故の特徴

車の事故の特徴については、様々な事故態様がある以上一概に特徴を挙げることは非常に難しいです。

もっとも、事故態様として骨格部分への損傷を与える可能性がある場合として、かなりスピードが出ている状態で追突(車の前後ろに車両がぶつかることをいいます。なお、前の車がバックでぶつかってくることを逆突と言います。)や衝突した場合です。

スピードが出ている関係上、衝撃が骨格部分へ波及する可能性が高まります。

また、軽自動車とトラックとの事故といった車体の大きさが異なる車両同士が追突、衝突した場合にも大きな衝撃が加わることが予想されるため、骨格部分への損傷が発生する可能性があります。

 

 

事故車のデメリット

事故車となった場合のデメリットとして以下の点が挙げられます。

  • 車の修理が必要
  • 車を買い替えなければならない場合もある
  • 車の価値が下がる
  • 自動車の保険料が高くなる
  • 事故後の対応による負担

車の修理が必要

既に説明した通り、事故車は修理歴がある車両のことをいいます。

したがって、事故車に当たる場合は、修理が必要な状態にあることを意味します。

そして、事故車を今後も乗り続けようと考えた場合には、しっかりと修理をする必要があります。

また、修理をしないまま中古車市場で売りに出そうとしても基本的にスクラップとしての価値がないため、中古車として売ることができない可能性があります。

このように中古車市場に売りに出すためにも車の修理が必要となります。

 

車を買い替えなければならない場合もある

事故車となる場合には、車両の骨格部分に損傷がある状態です。

そうすると、車両の走行にも大きな影響を及ぼします。

したがって、事故車となる場合には、車を買い替えなければならない場合があります。

また、通常、骨格部分の損傷が激しい場合は、修理費用の金額が高額となる傾向にあります。

高額な修理費用を支払うよりも買い替えた方が安くなる場合も多々あります。

 

車の価値が下がる

事故車となった場合の最大のデメリットは車の価値が下がってしまうことにあります。

車を売りに出す際にチェックされる項目として修理歴があります。

そして、事故車のように車両の骨格部分に修理歴がある場合には、車の価値は大幅に下がります。

その理由としては、車両の骨格部分に修理が入っている関係上、修理が完了していたとしても車の走行に影響があると推測されるからです。

したがって、事故車となってしまった場合には、車の価値はどうしても下がってしまいます。

事故車の査定額はどのくらい下がる?

事故車の査定額として車種や損傷の程度もよりますが、一般的に30万円程度の減額があるといわれています。

このように、査定額の減額幅は大きく事故車であることは査定において非常に大きなデメリットになります。

 

自動車の保険料が高くなる

交通事故に遭った場合に、自身の車両の修理費用を賄うために車両保険を使うことがあります。

車両保険とは、自身の車が事故によって損害が発生した場合、修理費用を補填する保険です。

車両保険を使った場合、保険の等級が3等級下がります。

この等級とは、1等級から20等級まであり、等級が上がると保険料の割引率が上がります。

一方、保険の等級が下がると保険料の割引率が下がり、結果として保険料が上がるという仕組みになっています。

なお、使うと等級が下がってしまう保険として、車両保険の他に対人賠償保険、対物賠償保険があります。

このように、保険を利用することで自動車の保険料が高くなることがあります。

 

事故後の対応による負担

事故車となるような事故に遭った場合、修理額や修理方法などについて、保険会社と交渉する必要が出てくる可能性があります。

また、修理完了した後も、今後修理された車を乗り続けるつもりはない場合には、中古車市場において当該車両を売りに出す手続きを行う必要があります。

このように、事故後各所関係機関とのやり取りをしなければならないという負担が発生します。

 

 

事故車の注意点

事故車となってしまった場合に注意すべきポイントとしては以下の点が挙げられます。

故障する可能性がある

事故車は、車両の骨格部分への損傷があったことを意味します。

車両の骨格部分は車両の安全な走行に重要な役割を担っています。

そのため、いくら修理を行ったとしても将来的に故障してしまう可能性は否定できません。

また、車両の不具合が出てくるたびに修理が必要となる関係上、修理代が嵩む可能性もあります。

 

損害額を適切に算定する

既にご説明した通り、事故車となってしまった場合、車の価値は下がります。

ただ、事故車であったとしても、走行に支障がないことが相当期間の走行実績等によって証明できる場合には、その旨を買取店に説明をすることによって価値の下がり幅を抑えることができることもあります。

そこで、買取店との間でしっかりと車両の走行実績等について説明すると良いでしょう。

 

 

事故車についてのQ&A

事故を起こした車を運転してもいいですか?

事故を起こした車であったとしても、車検を通せる状態であれば、運転することができます。

車検では、公道を安全に走行できるかどうかを細かくチェックされます。

したがって、車検を通る車両であれば運転することはできます。

一方、車検を通らない車両で公道を走った場合には、道路交通法違反となります。

このように、たとえ自走が可能であったとしても車検が通らない車両は運転できませんので注意しましょう。

仮に、車検を通らない車両を公道で運転した場合道路交通法62条違反となり罰則が科されます。

道路交通法62条では、道路運送車両法に定められた保安基準(排気騒音の大きさなど)に適合しない消音器を取り付けた車両を運転すれば「整備不良違反」になります。

罰則としては、3ヶ月以下の懲役、または5万円以下の罰金が科されます。

また、行政罰として違反点数2点が加点されます。

引用元:大阪府警察

根拠条文

道路交通法62条(整備不良車両の運転の禁止)
車両等の使用者その他車両等の装置の整備について責任を有する者又は運転者は、その装置が道路運送車両法第三章若しくはこれに基づく命令の規定(同法の規定が適用されない自衛隊の使用する自動車については、自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第百十四条第二項の規定による防衛大臣の定め。以下同じ。)又は軌道法第十四条若しくはこれに基づく命令の規定に定めるところに適合しないため交通の危険を生じさせ、又は他人に迷惑を及ぼすおそれがある車両等(次条第一項及び第七十一条の四の二第二項第一号において「整備不良車両」という。)を運転させ、又は運転してはならない。

道路交通法119条2項
2 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
二 第六十二条(整備不良車両の運転の禁止)の規定に違反して車両等(軽車両を除く。)を運転させ、又は運転したとき。

道路交通法120条
次の各号のいずれかに該当する者は、五万円以下の罰金に処する。
第六十二条(整備不良車両の運転の禁止)の規定に違反して軽車両を運転させ、若しくは運転した者又は第六十三条の九(自転車の制動装置等)第一項の規定に違反した者

引用元:道路交通法|e-Gov法令検索

また、車検を通せない車を公道で走らせた場合、運転者のみならず車両の所有者や整備者の責任も問われる可能性があります。

 

車の事故を起こしたらまずやることは?

第1にすべきこととしては、交通の妨げにならないように、あるいは二次災害の発生を防止するために安全な場所に車を移動させましょう。

第2に、警察に通報しましょう。

第3に、保険会社に連絡をし、レッカー移動やレンタカーの手配といったその後の対応を相談しましょう。

第4に、事故にあった車両を修理に出しましょう。

第5に、保険会社や修理会社とやりとりをして車両の修理額や修理方法について打ち合わせをしましょう。

第6に、修理金額等に納得がいかない場合は弁護士に相談しましょう。

 

 

まとめ

以上のとおり、事故車の意味、デメリットや注意点について解説しました。

既にご説明したとおり、事故車となってしまうことで査定額が下がってしまうことは車両の持ち主にとって大きなデメリットとなります。

ただ、事故に遭ったからという理由のみで事故車になるわけではありません。

事故にあったとしても、事故車について正確な理解をしておくことで、事故車には当てはまらず、買取価格は下がらないことを業者に説明することもできるでしょう。

交通事故に遭われた際に、治療もしながら事故車に当たるかどうかにも気をとめなければならないのはとても大変だと思われます。

そこで、事故車を始めとした物損については交通事故を専門とする弁護士に任せることをお勧めいたします。

当法律事務所には、交通事故を専門とする弁護士が所属しております。

そのため、交通事故によって発生したトラブルに悩む被害者を強力にサポートすることができます。

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