交通事故で全治1週間の慰謝料はいくら?相場や注意点
交通事故で全治1週間のケガを負った場合、その相場は4万〜6万5000円程度です(軽傷で通院のみを前提としています)。
この金額は、診断のとおり、1週間で完治した場合の金額です。
しかし、実際は全治1週間と診断されても、それ以上に通院が必要となることも多く、その場合には、実際に通院が必要であった期間を前提に慰謝料の金額が算出されることになります。
慰謝料の算定基準には、「自賠責基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」があり、弁護士基準が最も高い算定基準であり、妥当といえる相場の基準です。
ここでは、全治1週間のケガを負って慰謝料を請求する場合の注意点や、具体的な手続きの流れ、慰謝料を適切に受け取るためのポイントなどについて解説していきます。
交通事故で全治1週間のケガを負った方は、参考になさってください。
目次
全治1週間の交通事故の慰謝料の相場
交通事故で全治1週間のケガを負った場合、被害者が慰謝料として受け取れる金額の相場は、弁護士基準によれば4万〜6万5000円程度となります。
全治1週間のケガの場合、慰謝料の算定基準ごとの慰謝料の相場は以下のとおりです。
慰謝料の算定基準 | 慰謝料の相場 |
---|---|
自賠責基準の場合 | 1万円~3万円 |
弁護士基準の場合 | 4万円~6万5000円 |
まず、医師の診断を受けて「全治1週間」と伝えられる怪我にはどのようなものがあるのでしょうか。
「全治」とは、怪我の治療のために通院が必要な期間・治療が必要な期間をさします。
怪我が完全にもとの状態に戻る「完治」とは異なりますので注意が必要です。
全治の期間は、治療を担当した医師が初診の段階で判断する治療期間の見込み期間ですので、実際の治療期間とは誤差が生じる可能性があります。
全治1週間という診断は、交通事故による負傷の中でも比較的軽微なものといえます。
全治1週間と判断される可能性があるのは、以下のようなケガです。
- 頸椎捻挫(むちうち):衝撃によって頭が揺さぶられることで首に出る不調や痛み
- 打撲:衝突・転倒によって筋繊維や血管が損傷すること
- 挫創:衝突・転倒により皮膚表面が損傷すること
- 挫傷:皮下組織や筋肉などが損傷すること
- 捻挫:関節の靭帯や腱、軟骨などが損傷すること
また、交通事故の慰謝料には
- 「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」
- 「後遺障害慰謝料」
- 「死亡慰謝料」
の3種類があります。
このうち、全治1週間という軽傷の場合に請求できる可能性があるのは、「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」と「後遺障害慰謝料」です。
「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」とは、交通事故によって医療機関への入院や通院を強いられたことによって生じた精神的な苦痛を補償するために支払われる慰謝料のことです。
「後遺障害慰謝料」とは、交通事故が原因で後遺障害が残ってしまったことへの精神的な苦痛を補償するために支払われる慰謝料のことです。
スマホで簡単!慰謝料の自動計算ツール
交通事故で負傷した場合、被害者の方が受け取れる慰謝料の概算をスマホで自動で計算できるツールがあります。
スマホで簡単に慰謝料などの賠償金の金額を今すぐ知りたいという方は、以下の自動計算機を利用してください。
全治1週間の慰謝料の計算方法
慰謝料には3つの基準がある
ここでは、交通事故によって全治1週間のケガで通院したとして「入通院慰謝料」を請求する場合に限定して解説していきます。
慰謝料の金額を算定する方法として、「自賠責保険基準」、「任意保険基準」、「弁護士基準」の3つの基準が存在しています。
自賠責基準での計算
自賠責基準とは、自賠責保険が賠償金を計算する際に使用する基準です。
自賠責保険は、被害者を救済することを目的に自動車を運転する人に加入が義務づけられている保険です。
自賠責基準は必要最低限度の被害者救済を目的としているため、3つの算定基準の中では最も低い基準となっています。
自賠責保険基準で慰謝料の金額は、以下のような計算式で算出することになります。
自賠責基準では、入通院慰謝料は1日あたり4300円と定められています。
対象日数については、「交通事故のあと最初の診察から治療終了までの期間」または「実際の入通院日数を2倍した日数」のうち、数字が小さい方が基準となります。
具体的にみてみましょう。
交通事故によってむちうちとなり、最初の診察から治療終了までの通院期間が30日、実際に通院した通院日数が5日だったとしましょう。
実通院日数を2倍した日数は、10日(= 5日 × 2)ですので、通院期間30日よりも小さくなります。
したがって、対象日数としては「実際の入通院日数を2倍した日数」が採用されることになります。
以上より、入通院慰謝料は、4万3000円(= 4300 × 10日)となります。
交通事故で全治1週間の場合、自賠責基準による入通院慰謝料の早見表は以下のようになります。
実際に通院した日数 | 慰謝料額 |
---|---|
1日 | 8600円 |
2日 | 1万7200円 |
3日 | 2万5800円 |
4日 | 3万4400円 |
5日 | 4万3000円 |
6日 | 5万1600円 |
7日 | 6万200円 |
※通院期間は14日以上であることを前提にしています。
なお、自賠責基準での慰謝料の相場や、適切な慰謝料を取得するポイントについては、以下のページで詳しく解説していますので、参考にしてください。
任意保険基準での計算
任意保険基準とは任意保険会社が内部的に定めている賠償の基準です。
各保険会社が自由に設定している基準ですので、会社ごとにその内容は異なります。
一般的に任意保険は、最低限の補償を目的としている自賠責保険では足りない部分を補うために、自動車を使用する人が加入している保険だといえます。
ただし、任意保険基準によっても、被害者の方が本来受け取るべき金額からは低額に設定されています。
任意保険基準は各社によって異なりますが、以前は統一基準があったため、その基準を参考に保険会社が被害者に提示するおおよその相場をご紹介したいと思います。
上記の表の見方について説明しましょう。
例えば、交通事故で1カ月入院し、6カ月通院した場合には、それぞれがクロスする83万2000円の慰謝料を請求できることがおわかりいただけると思います。
弁護士基準での計算
弁護士基準とは、弁護士が交渉や訴訟で使用する基準です。
この基準は過去の裁判例をもとに作成されています。
弁護士基準は、紛争のある交通事故事件について被害者と加害者がそれぞれ自分に有利な証拠を提出して主張・立証を尽くした結果、裁判所が正当な慰謝料として認定した金額が基準になっています。
したがって、3つの算定基準の中でもっとも厳格に被害者の損害について判断された基準であり、もっとも高い基準です。
弁護士に交通事故事件を依頼した場合には、当然弁護士基準を用いて示談交渉や訴訟対応を行うことになりますが、裁判所も同基準をベースに判断するケースが多いと思われます。
そのため、弁護士基準は裁判基準と呼ばれることもあります。
参考に、むちうちなどの軽傷の場合に用いられる弁護士基準による入通院慰謝料の算定表をご紹介します。
上記の弁護士基準表の見方について解説しましょう。
交通事故でむちうちになり1カ月入院し、6カ月通院した場合には、それぞれがクロスする113万円の慰謝料が請求できることがおわかりいただけると思います。
また、同種のケースで任意保険基準と比較した場合、弁護士基準の方が高くなることがわかります。
弁護士基準の慰謝料の相場やその計算方法や、その他の基準との違いについては以下のページでより詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
弁護士基準が最も高額かつ適正な算出方法
上記で紹介した「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの基準の中で最も慰謝料が高額になり適切に算出されているのが、弁護士基準です。
弁護士基準の具体的な内容については、「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻(基準編)」という本に記載されています。
この本は1年ごとに改訂されており、交通事故を専門的に取り扱っている弁護士であれば毎年購入している書籍です。
全治1週間の被害者が取得できるのは慰謝料だけではない!
慰謝料以外の損害項目一覧
全治1週間の交通事故の被害者は、慰謝料以外の損害についても賠償を求めることができます。
慰謝料以外の損害項目として、よく問題になる項目としては以下のようなものがあります。
- 休業損害
- 逸失利益
- 積極損害
以下それぞれについて解説していきます。
休業損害
休業損害とは、交通事故でケガをして働けなくなったことで、本来であれば得られたはずなのに得られなかった給与や収入を損害とすることです。
勤務先から給与をもらっている会社員はもちろん、個人事業主の方やアルバイト・パート収入がある方、専業主婦(主夫)の方であっても同様に補償を受けることができます。
休業損害については以下のページで詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
逸失利益
逸失利益には「後遺障害による逸失利益」と「死亡による逸失利益」があります。
全治1週間のケガを負った場合に関係があるのは、前者の「後遺障害による逸失利益」です。
これは、交通事故が原因で被害者に後遺症が残った場合、生涯にわたって得られなくなってしまった将来の収入のことをいいます。
被害者の方は、後遺障害により労働能力が喪失したことで減少してしまった収入を加害者に損害として請求することができます。
逸失利益に関する詳しい解説については、以下のページを参考にしてください。
治療費などの積極損害
積極損害とは、事故がなければ支払う必要がなかったのに事故があったことで現実に支払わなければならなかった費用のことです。
例えば、治療費や通院交通費、自動車の修理費用など、被害者が交通事故のせいで負担することになった実費については積極損害と考えられています。
積極損害に関しては、以下のページで詳しく解説していますので、参考にしてください。
賠償金はいくら?自動計算機で算定しよう!
被害者が負った精神的な損害や財産的な損害をすべて合計した金額が事故の賠償金の金額となります。
相手方の保険会社と適切に示談交渉を進めるためにも、まずは正確な賠償金の金額を算定することが何よりも重要です。
ご自身の交通事故のケースで大まかな賠償金の金額を知りたいという方は、以下の自動計算ツールをご活用ください。
お手元のスマホで必要事項を入力いただくだけで素早く・簡単に賠償金の概算を算出することができます。
全治1週間の被害者が慰謝料を受け取るための手続
全治1週間の慰謝料を取得する流れ
全治1週間のケガを負った場合、交通事故の発生から慰謝料を受け取るまでの流れは以下のようなフローになります。
交通事故の発生
交通事故が起きた場合には、すぐに警察に連絡してください。
警察に適切に報告することで、交通事故が起きたことを証明する「交通事故証明書」を交付してもらえます。
適切な治療を受ける
交通事故でケガをした場合には、医療機関で適切な診断・治療を受けることが大切です。
事故で怪我をした場合には、速やかに病院を受診するようにしましょう。
受診後は、医師の指示に従って、リハビリをするなど適切な治療を継続しましょう。
症状固定
症状固定とは、これ以上治療を継続しても症状の改善が見込まれない状態をいいます。
症状固定は一般的には医師が判断することになります。
ご自身の判断で勝手に治療を中断してしまうと、中断時点で症状固定とみなされ、そこまでの賠償金しか認められないというリスクがあります。
後遺障害等級認定
症状固定の時点で後遺症が残っている場合には、後遺障害等級認定の申請手続きをとる必要があります。
後遺障害等級が認められた場合には、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
示談交渉
慰謝料やそれ以外の損害について適切に算定したうえで、保険会社に損害賠償請求をして、示談交渉を進めることになります。
慰謝料などの賠償金を受け取る
示談が成立した場合には、示談書の内容に沿って示談金が支払われます。
一般的には、被害者が指定した銀行口座に一括で支払われることが多いです。
全治1週間の慰謝料を取得するための書類
加害者が任意保険に加入している場合には、被害者は特に資料を準備する必要はありません。
保険会社において必要な診断書や診療報酬明細書などを取り寄せて慰謝料の金額を算定し、被害者に慰謝料の金額の提示がなされます。
加害者が任意保険に加入しておらず、被害者が自賠責保険に請求しなければならない場合には、さまざまな書類を提出する必要があります。
必要となる書類の種類は以下のとおりです。
- ① 支払請求書(保険金・損害賠償額・仮渡金)
- ② 請求者本人の印鑑証明書
- ③ 交通事故証明書
- ④ 事故発生状況報告書
- ⑤ 診断書、施術証明書・施術費明細書
- ⑥ 診療報酬明細書
慰謝料の他に休業損害を請求する場合には休業損害証明書等が必要となりますし、通院交通費を請求する場合には、通院交通費明細書を提出する必要があります。
全治1週間の慰謝料を取得するための証拠
慰謝料の証拠としては、通院を示すための診断書や診療報酬明細書が大切です。
また、軽傷の場合には、保険会社からケガをしていないのではないかと疑われることもあります。
そうした場合には、車の破損状況やドライブレコーダーなどを証拠として、ケガをするレベルの事故であったことを主張立証していくことが必要となるケースもあります。
全治1週間の慰謝料を取得するための費用
実費
実費とは慰謝料請求をするにあたって必要となる、交通費、印刷代、郵送代、印紙代などのことです。
このような実費については、慰謝料請求を弁護士に依頼せずに被害者の方がご自身で対応した場合にも負担しなければならない費用です。
弁護士に依頼した場合、実費については事件が終了した際に清算することが一般的ですが、事前に相当の実費が必要であると想定される場合には、事前に「預り金」として一定の金額の支払いをお願いされるケースもあります。
弁護士費用
慰謝料請求を弁護士に依頼する場合には、弁護士費用がかかってきます。
弁護士費用については、以下のような費用項目があります。
- 法律相談費用:弁護士に相談するために必要となる費用
- 着手金:弁護士に実際に依頼する際に必要となる費用
- 報酬金:賠償の回収額などに応じて生じる費用
- 日当:弁護士が調査や出廷のために遠方に出張した場合に生じる費用
弁護士費用の負担をできるだけ軽くしたいという場合には、無料法律相談を実施している事務所を利用したり、弁護士費用特約を利用する方法があります。
弁護士費用特約とは、交通事故事件を弁護士に依頼する場合に、その弁護士費用を加入している保険会社が支払ってくれる保険特約です。
弁護士費用特約のほとんどは、上限300万円までの弁護士費用をカバーしているため、被害者は弁護士費用を負担することなく弁護士に依頼することができます。
弁護士費用特約については、以下のページで詳しく解説していますので、参考にしてください。
全治1週間の被害者が気をつけたいNG行動
ここでは全治1週間のケガを負った被害者がとってはならないNG行為について解説していきます。
交通事故現場に警察を呼ばない
交通事故が発生した場合には、道路交通法にしたがって警察に届け出る義務があります。
この義務に違反すると、交通事故の発生を証明する「交通事故証明書」の発行を受けることができなくなります。
事故が発生した証拠がない場合には、慰謝料の支払いを受けられないリスクが出てきますので注意が必要です。
事故後、最初に整骨院を受診する
交通事故の初診は整骨院(接骨院)ではなく、整形外科などの病院で診察を受けるべきです。
整骨院では診断書やMRI画像などが適切に入手できません。
結果として、治療費や慰謝料の請求時に受傷当時の状態や治療経過を証明できず、賠償金額が減額してしまうリスクがあります。
保険会社に言われて勝手に治療を中断する
治療のために通院していると、相手方の保険会社から治療を打ち切るように催促を受ける場合があります。
これは、それ以降の治療に対する治療費や慰謝料を支払わないという保険会社からのメッセージです。
しかし、治療の終了時期については医師と相談のうえで決めるべきことになります。
保険会社に言われるがまま治療を中断してしまうと、治療期間が短くなったぶん入通院慰謝料が低額になるおそれがあり、また必要な治療をしなかったことでケガが治らないというリスクもあります。
したがって、医師に相談もせず自分の判断だけで勝手に治療を中断するのはやめましょう。
全治1週間の被害者が慰謝料を受け取る3つのポイント
事故後はすぐに医師の診断を受ける
全治1週間のケガという軽傷の場合には、ご自身の判断ですぐに病院に行かない被害者の方もいらっしゃいます。
しかし、体に痛みや違和感があれば、速やかに病院を受診しておくことが重要です。
全治1週間のケガの場合、事故直後は違和感程度でも事後的に体に痛みが出てくるというケースも多いです。
体の違和感と思っていたものの事後的に痛みに変わり受診したという場合、事故とケガとの因果関係が否定され慰謝料請求ができないという可能性もあります。
したがって、体の違和感程度の場合であっても、事故後はすみやかに医療機関を受診するようにしてください。
適切に通院する
入通院慰謝料については、通院日数や通院期間に応じて慰謝料の金額が変わってきます。
全治1週間のケガの場合であっても、痛みやしびれが続いている場合には、医師の指示にしたがって適切に通院することが重要です。
症状が改善したからといって勝手に通院をやめてしまうと、その日以降の賠償金について減額されてしまう可能性があります。
交通事故に強い弁護士に相談する
全治1週間のケガの場合であっても、交通事故で負傷した場合には、弁護士に相談すべきでしょう。
弁護士に依頼した場合には、法的な観点からさまざまなアドバイスを受けることができますし、賠償金の増額交渉なども行ってくれます。
さらに、示談交渉が決裂して訴訟に発展した場合であっても、弁護士に依頼しておけば、引き続き訴訟対応をお願いすることができます。
まとめ
この記事では、交通事故で全治1週間のケガを負った場合の慰謝料について金額の相場や受け取るまでの流れについて解説しました。
通常、交通事故の被害者は法律の素人です。
したがって、ご自身で示談交渉して十分な慰謝料を回収できるか不安がある方は、たとえ軽傷の場合であっても、弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所には、交通事故案件を日常的に処理する弁護士が所属する人身障害部があります。
交通事故のご相談やご依頼後の事件処理は、全て人身障害部の弁護士が対応しますので、安心してご相談ください。
LINEなどによるオンライン相談により全国対応が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。