交通事故の慰謝料請求に必要な書類・明細|弁護士が解説
交通事故の慰謝料請求に必要な書類・明細としては、以下のようなものが挙げられます。
入通院慰謝料 | 診断書、診療報酬明細書(レセプト)、施術証明書・施術費明細書 |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害診断書、画像データ(CT、MRI、レントゲン)・写真、後遺障害等級認定票 |
死亡慰謝料 | 死亡診断書または死体検案書、省略のない戸籍(除籍)謄本 |
「交通事故に遭って慰謝料請求を考えているが、そのために必要な書類や明細がわからない・・・」
このような悩みを抱えている交通事故の被害者の方は一定数いらっしゃいます。
たしかに、被害者の方が必要書類を集めなくても、保険会社が慰謝料を提示してくれるケースも多いです。
もっとも、自賠責保険に被害者請求をする場合や、保険会社から被害者へ追加で資料を要求される場合などもあり、その場合はどのような書類が必要なのかを被害者自身で理解しておかなければなりません。
本記事では、慰謝料請求のために必要な書類や明細を、これまで多くの交通事故事案を扱った弁護士が解説いたします。
請求する慰謝料の種類(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)ごとに必要な書類・明細を解説しておりますので、お困りの方はぜひ一度ご覧になってください。
目次
交通事故の慰謝料請求に必要な書類・明細
交通事故の慰謝料請求に必要な書類・明細については、請求する慰謝料の種類によって異なってきます。
慰謝料の種類ごとの必要な書類・明細を以下の表でまとめています。
慰謝料の種類 | 必要な書類・明細 |
---|---|
入通院慰謝料 |
|
後遺障害慰謝料 |
|
死亡慰謝料 |
|
以下、各書類について説明いたします。
入通院慰謝料の場合
入通院慰謝料とは、事故のよって通院を要するケガをした場合に発生する慰謝料のことをいいます。
入通院慰謝料を請求する場合に必要となる書類・明細については、以下のとおりです。
診断書
引用元:冊子② ご請求に関する書類 | 損害保険料率算出機構
被害者の傷病名、治療の内容、今後の見通し、通院期間などを示すのが医師作成の診断書です。
診断書は、ケガをしていることを客観的に示す書類になります。
また、入通院慰謝料の弁護士基準では、ケガの内容によって用いる基準(軽傷用か重症用か)が異なりますので、診断書はそのどちらの基準を用いるかの判断材料にもなります。
ただし、相手方任意保険会社が一括対応(治療費の対応)をしている場合は、通常、相手方任意保険会社が被害者から同意書を取り付けて病院から直接診断書を取り寄せていますので、そのようなケースでは慰謝料請求において特段診断書を取得する必要はありません。
診療報酬明細書(レセプト)
引用元:冊子② ご請求に関する書類 | 損害保険料率算出機構
引用元:冊子② ご請求に関する書類 | 損害保険料率算出機構
診療報酬明細書とは、被害者に対して行った治療の内容とその単価、通院日数などを記載した医師が作成する書類のことをいいます。
診療報酬明細書は、レセプトと呼ばれたりすることもあります。
診療報酬明細書を見れば、どのくらい通院したかなどがはっきりわかります。
なお、診断書同様、相手方任意保険会社が一括対応している事案では、診療報酬明細書も相手方任意保険会社が病院から直接取得しているケースがほとんどですので、慰謝料請求において別途取得する必要はありません。
診断書や診療報酬明細書には様式があり、交通事故において必要な様式は自賠責用の診断書・診療報酬明細書です。
では、交通事故で健康保険を使用した場合には自賠責用の診断書・診療報酬明細書を記載してもらえるでしょうか。
結論としては、通院した病院によって書いてもらえる病院と、そうでない病院があります。
前提として、交通事故でも健康保険を使用して通院することは可能です。
交通事故で健康保険を使用した方が良いケースは、
- 被害者にも一定の過失が生じる場合
- 相手方任意保険会社が一括対応をしてくれない場合
- 加害者が任意保険に加入していない場合
などです。
もっとも、病院によって、健康保険を使用した場合には自賠責用ではなく、健康保険用の診断書・診療報酬明細書しか記載できないという所があります。
健康保険用の診断書・診療報酬明細書でも慰謝料請求ができないわけではありませんが、被害者請求をした場合に、自賠責調査事務所から記載の修正や追記を求められたりすることがあり、少し面倒になるケースもある印象です。
そのため、健康保険で通院する場合は、事前に病院に自賠責用の診断書・診療報酬明細書を記載してもらうことが可能か聞いてみるのがベストだと思います。
施術証明書・施術費明細書
施術証明書・施術費明細書とは、整骨院や接骨院に通院した場合に、施術の内容や金額の内訳、通院日数などが記載される柔道整復師が記載する書類のことをいいます。
施術証明書・施術費明細書は、診断書や診療報酬明細書の整骨院・接骨院バージョンと思っていただければイメージしやすいかと思います。
整骨院や接骨院へ通院した場合でも、医師の指示のもと通院しているなどの一定の条件を満たしていれば、入通院慰謝料は請求できます。
なお、施術証明書・施術費明細書も、一括対応がされている事案では任意保険会社が整骨院や接骨院から直接取得しているため、別途取得は不要です。
後遺障害慰謝料の場合
後遺障害慰謝料とは、事故によって後遺障害が残存した場合に発生する慰謝料のことをいいます。
後遺障害慰謝料を請求する場合に必要となる書類・明細については、以下のとおりです。
後遺障害診断書
後遺障害診断書とは、症状固定に至ったときに、どのような後遺障害が残っているかを医師に記載してもらう診断書のことをいいます。
後遺障害診断書は、自賠責の後遺障害認定において必須の書類になります。
画像データ(CT、MRI、レントゲン)・写真
自賠責保険に後遺障害申請をする際、CT、MRI、レントゲンといった画像データの提出を求められます。
後遺障害申請では、むちうちなどの他覚的初見がない傷病でも、自賠責調査事務所は画像データの提出を求めてきます。
画像データは病院に保管されているため、各病院の開示の手続きを踏めば取得することができます。
なお、変形障害の事案では、変形部分の裸体写真を提出することもあります。
後遺障害等級認定票
自賠責保険で後遺障害が認定された場合、後遺障害等級認定票という書類が発行されます。
後遺障害等級認定票には認定された等級や認定の理由が記載されています。
後遺障害慰謝料は等級ごとに相場が決まっているため、多くの事案では、この後遺障害等級認定票に記載された等級を参考に金額の主張をすることになります。
死亡慰謝料の場合
死亡慰謝料とは、事故によって被害者の方が亡くなった場合に発生する慰謝料のことをいいます。
死亡慰謝料を請求する場合に必要となる書類・明細については、以下のとおりです。
死亡診断書または死体検案書
死亡診断書または死体検案書は、医師が作成するものです。
これらの書類は、被害者の方が亡くなったことを証明する書類になります。
省略のない戸籍(除籍)謄本
省略のない戸籍(除籍)謄本は、各市町村の役所で入手することができます。
この書類は、被害者の方の相続人が誰か判断するためなどに用いられます。
慰謝料以外の賠償金請求に必要な書類・明細
慰謝料以外の賠償金を請求するための必要な書類・明細については、代表的な損害をもとにご紹介いたします。
通院交通費
通院交通費を請求する場合は、「通院交通費明細書」というものを保険会社に提出します。
通院交通費明細書は、病院への通院手段、車通院の場合は病院までの距離、公共交通機関を使用した場合はその片道料金などを記載します。
自家用車や公共交通機関を使用した場合、通常、それにかかった費用の領収書関係(例えば、ガソリン代の領収書やICカードの利用履歴等)の提出は求められません。
もっとも、タクシーを利用した場合は、タクシーの領収書の提出は求められます。
休業損害
交通事故によって仕事を休み、それによって収入が減少した場合、休業損害を請求できる余地があります。
休業損害は、どのような働き方をしているかによって提出する書類が異なってきます。
例えば、
- 会社員・・・休業損害証明書と源泉徴収票
- 自営業者や個人事業主・・・確定申告書
- 家事従事者・・・家族構成表、家族記載分の住民票
などを提出することになります。
後遺障害逸失利益・死亡逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害が残った場合に将来の収入減少に対する補償のことです。
死亡逸失利益は、死亡した場合の将来の収入減少に対する補償のことです。
後遺障害逸失利益や死亡逸失利益を算出するにあたって、基礎収入の立証資料として、源泉徴収票や確定申告書を提出することになります。
なお、被害者請求をする場合に必要な書類については、下記のサイトでまとめていますのでご参照ください。
交通事故の慰謝料を請求する手続
交通事故の慰謝料を取得する流れ
以下、重要項目に絞って解説いたします。
症状固定
治療は基本的に症状固定まで続けるのがセオリーです。
症状固定とは、これ以上症状の改善が見込まれない状態を指します。
症状固定は、保険会社が勝手に決められるものではなく、医学的判断が尊重されます。
後遺障害申請
症状固定となっても痛みが残っていたり、動かしにくさがまだあったり、骨が変形してくっついた場合などは後遺障害申請をすることになります。
後遺障害申請には、保険会社に全て任せる事前認定と、被害者やその代理人弁護士が行う被害者請求の2パターンがあります。
後遺障害が残っていない場合は、症状固定後に示談交渉に入ります。
示談交渉
損害確定後に、示談交渉をして賠償金を確定させることを目指します。
なお、通常はこちらから提示をしなくても、相手方保険会社が賠償金を計算して提示してくれることが多いです。
被害者に弁護士がついている場合は、こちらから弁護士基準で賠償を計算して相手方に提示して交渉をスタートさせるのが基本です。
示談成立・示談金の振込
相手方と金額で折り合いがついたら、示談書にサインして示談成立です。
示談金の振込は、示談書を相手方保険会社に送付してから2週間前後で行われます。
症状固定前でも慰謝料を請求することはできます。
このように損害が確定する前に、先に賠償金の一部を払ってもらうことを「内払い」と言います。
内払いは、治療が比較的長期になりそうな場合には、相手方任意保険会社も応じてくれやすいです。
内払いでもらえる慰謝料の金額はケースバイケースですが、執筆者の経験上、請求時点の通院実績(実通院日数や通院期間)をもとに、自賠責基準や弁護士基準で算出してくれることが多い印象です。
また、自賠責保険の仮渡金制度というものもあり、自賠責から損害の一部を先に受領する方法もあります。
交通事故にあって当面の生活費が苦しいなどの状況になった場合は、内払いや仮渡金制度の利用を検討しましょう。
交通事故の慰謝料を取得するための費用
交通事故の慰謝料を取得するために必要な費用としては、以下のようなものが挙げられます。
実費
実費とは、交渉や裁判をする上でかかってしまう必要な費用のことをいいます。
例えば、保険会社との電話代、文書の郵送・FAX代、裁判所までの交通費、刑事記録の取得費用などが挙げられます。
弁護士費用
弁護士に依頼する場合、弁護士費用がかかります。
裁判を提起すれば、認定された損害の10%を弁護士費用として相手方に払ってもらうことができますが、示談交渉段階では相手方に支払ってもらうことができないのが通常です。
もっとも、弁護士費用特約が使える場合は、保険会社が代わりに弁護士費用を支払ってくれるため、被害者の負担を減らすことができます。
当事務所の弁護士費用はこちらをご覧ください。
交通事故の慰謝料を自分で請求するリスクやデメリット
交通事故の慰謝料を自分で請求することも可能ですが、以下のようなリスク・デメリットがあります。
交渉段階では保険会社は低い基準でしか認めてくれない
交通事故の慰謝料には、①自賠責基準、②任意保険会社基準、③弁護士基準(裁判基準)という3つの基準があります。
賠償金の高さの点に着目すれば、それぞれの基準の関係は基本的に以下のようになっています。
このように、慰謝料の金額が最も高くなるのは、原則的に弁護士基準です。
もっとも、交渉段階において、弁護士に依頼しなければ保険会社は自賠責基準か任意保険会社基準しか認めてくれないケースがほとんどです。
そうすると、不当に低い金額でしか提示されないことになります。
上記のとおり、原則的には弁護士基準が最も金額が高くなりますが、例外的に弁護士基準が自賠責基準を下回るケースもあります。
例えば、以下のようなケースです。
- 怪我がむちうち
- 通院期間が60日、実通院日数が25日
- 被害者と加害者の過失割合が50:50
自賠責基準では、被害者の過失が70%未満であれば過失相殺がされないため、そのまま21万5000円を受領できます。
もっとも、弁護士基準の場合、過失相殺はそのままなされるので、36万円 – 18万円(36万円 × 0.5) = 18万円となります。
もっとも、保険会社は自賠責基準を下回る金額で示談はできない仕組みになっているため、このようなケースでは、弁護士が入っていても、自賠責基準で合意することになります。
被害者の過失の度合いが大きく、軽傷で通院期間も比較的短い時に、自賠責基準の方が高くなりやすいです。
正確な弁護士基準を算出することができるか
交通事故の書籍を参照したり、インターネットで検索すれば、弁護士基準の概要を知ることはできます。
もっとも、弁護士基準を正しく算出するには、確かな知識と経験が必要です。
当然ですが、素人の方はプロよりも計算ミスをしやすいです。
また、弁護士基準はあくまで目安なので、事案に応じて修正する必要がありますが、その修正は裁判例などを理解していないと難しいです。
交通事故の適正な賠償金を取得する7つのポイント
①交通事故に強い弁護士に相談・依頼する
交通事故の適正な賠償金を獲得するには、交通事故に強い弁護士に相談・依頼することが最も効果的だと考えています。
交通事故に慣れている弁護士だと、上記で解説した慰謝料請求に必要な書類・明細について熟知しています。
また、慰謝料請求以外の争点、例えば、休業損害、後遺障害・死亡の逸失利益、過失割合などについて、どのような証拠を集めてどのような主張をすべきかを把握していると考えられ、被害者にとって頼もしい存在となることでしょう。
交通事故は専門性の高い分野であり、弁護士であれば誰でもこなせるというわけではありません。
適正な賠償金を得るためには、弁護士の見極めも大切です。
その弁護士が交通事故に強いかどうかは、解決実績やホームページ上の記載を参考にしてみてください。
②証拠の収集を怠らない
交通事故の賠償請求は、基本的に被害者の方に立証責任があります。
そのため、本記事で解説した必要書類や明細をはじめ、損害の立証に必要な証拠をしっかり集め、その証拠に基づいて適切な主張をしなければなりません。
証拠の収集方法は様々ですが、事案に応じて適時に証拠の確保をするように心掛けてください。
③病院へできる限り通院する
通院が面倒である、仕事が忙しい、通院をしてもあまり治療の効果がないなどの理由から、症状が残存して治療の必要性があるにもかかわらず、治療をすぐにやめてしまう、あるいは通院頻度を極端に少なくしてしまう方がいらっしゃいます。
しかし、通院回数が極端に少ないがゆえに、賠償金が減ってしまうという事態が起きるケースがあります。
例えば、入通院慰謝料の自賠責基準は、実通院日数を基準に計算されることが多く、通院回数が少ないとその分低額な金額しかもらえないことになります。
入通院慰謝料を弁護士基準で計算しても、実通日数があまりにも少ないと、減額修正されることもあります。
そのため、治療の必要性がある場合は、できる限り病院へ通院するようにしてください。
もちろん、治療の本来の目的はあくまで症状の改善ですので、慰謝料のためだけに通院すべきではないです。
後遺障害の等級認定の場面において、実通院日数は考慮対象になり得ます。
特に、他覚所見がない14級9号が認定されるかどうかの事案は、実通院日数がわかりやすく影響してくることが多い印象です。
14級9号は、症状の一貫性や事故規模など総合考慮して決まるため、実通院日数だけで決まるということはありません。
もっとも、筆者の経験上、捻挫系のケガだと実通院日数が50日を下回る場合には、14級9号の認定可能性が低くなることが多いと感じております。
なお、ここでいう実通院日数は、あくまで病院へ実際に通った日数を指します。
整骨院への実通院日数が多くても、病院へほとんど通っていないケースでは、14級9号の認定は格段に難しくなることが多いです。
④後遺障害申請を行う
症状固定時まで通院しても、何らかの後遺障害が残っている場合は、自賠責保険に対して後遺障害申請をすべきです。
後遺障害等級が認定されたら、その等級に応じて、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益が請求できます。
後遺障害が一番下の14級でも認定されたら、賠償金が100万円以上変わってくることが多いので、被害者の方が損をしないためにも後遺障害申請の検討は必ずするようにしてください。
後遺障害の申請をして結果が出た際、満足できる等級を獲得できなくてもすぐに諦めてはいけません。
自賠責保険は異議申立て制度があり、新たな証拠を提出さえすれば、もう一度審査をしてもらえます。
適切な証拠と成熟度が高い異議申立書を提出すれば、結果が変わり得る可能性は十分あります。
また、異議申立ての結果も妥当ではないと考えた場合には、紛争処理機構という別の機関で自賠責保険の判断の妥当性を審査してもらえることもできます。
後遺障害等級は、賠償金の高さを大きく左右するものになります。
異議申立てや紛争処理機構の申立てをうまく活用して、適切な後遺障害等級が認定されるように努めるべきといえます。
⑤過失割合も妥協しない
被害者にも過失がある事案では、その分賠償金が減ることになります。
過失割合は全体の損害から差し引かれます。
以下の簡単な例を見てください。
具体例 被害者の損害が全部で1000万円
この例では、過失割合が10%異なるだけで、被害者の受け取る金額に100万円もの差が出てしまいます。
そのため、過失割合の交渉にも手を抜かず、粘り強く行っていくことが重要です。
過失割合については、「判例タイムズ」という類型別に過失割合が記載されている本があります。
保険会社は、通常、この判例タイムズの基本割合を根拠に過失割合を提案してくることが多いです。
もっとも、判例タイムズには、基本割合の他に、「修正要素」があります。
保険会社が提示してくる過失割合は、被害者に有利な修正要素を無視している可能性がありますので、保険会社の主張は鵜呑みにせず、専門家である弁護士に確認してもらうようにしましょう。
⑥労災や自身の加入している保険も利用する
通勤災害であれば、労災を申請することも検討すべきです。
労災のメリットは、
- ① 保険会社と比較して、治療の打ち切りが早くない
- ② 特別支給金という上乗せでもらえる補償がある
- ③ 被害者にも過失がある場合には、労災を使った方が、使わない場合と比較して最終的にもらえる賠償金が高い
などが挙げられます。
また、相手方が任意保険に入っておらず賠償金の回収が難しいケースでは、ご自身が加入している人身傷害保険等を利用すれば、一定程度の賠償金をもらうことが可能です。
さらに、生命保険に加入している場合には、一定のお見舞金をもらうことができる可能性があり、これは相手方から受領する賠償金とは別に受領することができます。
⑦訴訟提起も検討する
実務上、交渉段階では慰謝料の金額を相場よりも少し低い金額でしか提示してこないことがあります。
また、判決をもらう段階までいかないと、相手方から遅延損害金や弁護士費用をもらえないケースがほとんどです。
特に、重い後遺障害が残った場合や死亡してしまった場合は、賠償額が大きくなる分、遅延損害金や弁護士費用だけでも百万単位で賠償金が変わってくることがあります。
そのため、交渉段階よりも増額が見込まれるケースでは、積極的に訴訟提起をしていくべきです。
結論から申し上げると、訴訟にもデメリットはあります。
まず、訴訟は1〜2年かかることが多く、解決まで時間を要します。
また、事案によっては、自賠責で認められていた後遺障害等級よりも低い等級を前提に賠償金が計算され、結果的に交渉段階よりも賠償金が減額されることもあります。
そのため、本当にその事案で訴訟提起すべきかどうかは、慎重に検討すべきです。
専門的見地から訴訟で判決が出た場合の見通しを立て、交渉段階の金額と比較し、どちらが被害者にとって得かを見極める必要があります。
交通事故の必要書類・明細についてのQ&A
慰謝料請求の必要書類や明細は全部自分で集める必要がある?
上記でも解説したとおり、保険会社が一括対応している事案では、診断書、診療報酬明細書等は保険会社が医療機関から直接取り寄せていることが通常です。
そのような場合、改めて医療機関から診断書等を発行してもらう必要はありません。
また、弁護士に依頼しているケースでは、必要書類の収集を弁護士に任せることもできます。
もっとも、一括対応されている事案でも、途中で治療が打ち切られその後被害者が自費で通院したようなケースでは、打ち切り後の診断書等は自ら(弁護士に依頼している場合はその弁護士を通して)医療機関から取り寄せる必要があります。
慰謝料請求の必要書類や明細は原本を提出しなければならない?
そのため、取り寄せた原本は、汚損しないよう大切に保管するようにしてください。
慰謝料請求の必要書類や明細の取得費用を加害者に請求できる?
例えば、診断書や診療報酬明細書代は、基本的に問題なく加害者へ請求できます。
また、取得費用は、被害者請求をした場合に自賠責保険から回収できるものも多いです。
仮に、加害者に請求できないものであっても、被害者が弁護士費用特約を使用して弁護士に依頼している場合には、その弁護士から被害者加入の保険会社に実費として請求すれば、その保険会社から支払ってもらえるケースもあります。
慰謝料請求の必要書類や明細に有効期限はある?
賠償請求には、ケガの場合5年、自賠責保険への請求の場合3年などの時効があります。
時効を過ぎてしまうと、必要書類の意味がなくなってしまう可能性がありますので十分注意してください。
慰謝料請求のためにカルテを取得する必要はある?
上記で解説した診断書や診療報酬明細書等があれば、それで慰謝料の計算は十分可能です。
ただし、後遺障害の異議申立てをする場面等では、カルテが有力な証拠となることがあります。
まとめ
本記事では、交通事故の慰謝料請求に必要な書類・明細について解説しました。
もっとも、必要な書類・明細について正しい知識を持っていたとしても、正当な慰謝料を獲得できるとは限りません。
正当な慰謝料を獲得するには、まずは交通事故に詳しい弁護士に相談し、対応を依頼するようにするのが望ましいです。
弊所は、交通事故の案件を多く扱う人身障害部というチームがあり、これまで多くの交通事故被害者のサポートをさせていただきました。
全国的に対応しておりますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。