交通事故で入院。慰謝料はいくら?相場や必要な手続|計算機
入院慰謝料は、自賠責保険基準で計算した場合、入院1日あたり4300円、弁護士基準で計算した場合、ケガの程度が軽症で1~2週間入院したケースで約8万1666円〜16万3333円、ケガの程度が重症で1~2ヶ月間入院したケースで約53万円〜101万円ほどとなります。
自賠責保険基準における入院慰謝料の計算方法は、「4300円×入院日数(入院期間)」となります。
弁護士基準における入院慰謝料の計算方法は、入院日数(入院期間)に応じて金額が増えていきます。
被害者に骨折・脱臼等がなく軽症の場合は、入院1日あたり約1万1666円となるため、入院期間1週間で約8万1666円、入院期間2週間で約16万3333円となります。
また、被害者に骨折・脱臼等があり重症の場合には、入院1日あたり約1万7666円となるため、入院期間1ヶ月で53万円、入院期間2ヶ月で101万円、入院期間3ヶ月で145万円となることが多いです。
この記事においては、交通事故によって入院しなければならなくなった場合の入院慰謝料の相場や計算方法等について詳しく解説するとともに、賠償金を受け取るまでの流れや注意すべき点などについて解説しております。
入院する必要があるほどの大きな事故に巻き込まれて大変な思いをされている被害者にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
交通事故の入院慰謝料とは?
入院慰謝料とは、交通事故の被害にあったことにより入院した場合に、入院日数(入院期間)に応じて算出される慰謝料のことをいいます。
なお、入院慰謝料と似た用語に「入通院慰謝料」というものがあります。
入通院慰謝料とは、交通事故が原因で入院だけではなく通院もした場合に、入院日数(入院期間)と通院日数・通院期間に応じて計算される慰謝料のことをいいます。
交通事故にあって入院が必要になった場合、その後のリハビリや経過観察のために通院が必要になることが多いため、一般的には、入院慰謝料ではなく、入通院慰謝料で計算することが多いでしょう。
入院と通院のどちらもした場合に請求することができる入通院慰謝料については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。
交通事故の入院慰謝料の相場とは?
入院慰謝料の相場は次のようになります。
ケガの程度:重症の場合 | ケガの程度:軽症の場合 | |
---|---|---|
自賠責保険基準 | 約13万円〜約25万8000円 ※1ヶ月〜2ヶ月間入院したことが前提となります。 |
約3万円〜約6万円 ※1週間〜2週間入院したことが前提となります。 |
弁護士基準 | 約53万円〜101万円 ※1ヶ月〜2ヶ月間入院したことが前提となります。 |
約8万1666円〜16万3333円 ※1週間〜2週間入院したことが前提となります。 |
※上記表はあくまでも参考となります。具体的な事案に応じた入院慰謝料の金額は変動する可能性があります。
被害者のケガの程度が軽症の場合、その分入院の必要性が低くなり、入院期間も短期間になる傾向にあります。
他方、被害者のケガの程度が重症の場合、入院期間は長くなる傾向にあるため、入院慰謝料も高額になることが多いでしょう。
上記表では、入院のみをした場合の入院慰謝料の相場を示しておりますが、実際には、入院をした後にリハビリのために通院を数ヶ月行う場合が多いでしょう。
以下の記事では入院と通院をした場合の入通院慰謝料について解説しておりますので、ぜひご確認ください。
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交通事故の入院慰謝料の計算方法
交通事故の通院慰謝料の計算方法には、以下の3種類があります。
交通事故の入院慰謝料の計算方法は、それぞれの基準によって異なります。
以下では、それぞれの計算方法を詳しく解説していきます。
①自賠責保険基準
自賠責保険基準を用いた入院慰謝料の計算方法は以下のようになります。
退院した後、通院する場合には、下記の入院慰謝料に加えて、通院の慰謝料も加算されます。
※「入院期間(入院日数)」とは、交通事故にあったことで実際に病院に入院した日数(期間)のことをいいます。
以下具体例を用いて、自賠責保険基準の入院慰謝料を説明していきます。
この場合、4月9日から4月30日までは合計22日、5月1日から5月9日までは合計9日となるため、入院日数(入院期間)は合計31日となります。
したがって、自賠責保険基準で計算すると、次のようになります。
4300円×31日=13万3300円
②任意保険基準
任意保険基準を用いた入院慰謝料の計算方法は、任意保険会社が内部で定めた計算方法に従って算出されます。
任意保険基準で計算されている場合、被害者に交付される賠償金額の内訳が記載された書面に、「弊社基準」などと記載されていることが多いです。
「弊社基準」などの記載があった場合には、保険会社と示談をする前に、上記の自賠責保険基準を用いて計算した賠償金額よりも金額が高いかどうかのチェックをされることをおすすめします。
その理由は、任意保険基準で入院慰謝料が計算されていたとしても、自賠責保険基準で入院慰謝料を算出した場合と金額が同じというケースがあるからです。
任意保険基準の計算方法は外部に公表されていないところですが、一般的には、自賠責保険基準で計算した金額よりも高い金額になることでしょう。
③弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準を用いて入院慰謝料を計算する場合、原則として、(a)入院期間と(b)ケガの程度を考慮することになります。
(a)入院期間について、入院慰謝料は、入院期間が長くなればなるほど高くなります。
(b)ケガの程度については、交通事故によって意識不明や身体を動かせなくなってしまった場合のように、ケガの程度が重症であればその分精神的苦痛も大きくなるため、入院慰謝料の金額は高くなります。
具体的に、弁護士基準による入院慰謝料の金額は、次のようになります。
(a)入院期間 | (b)ケガの程度 | |
---|---|---|
骨折・脱臼等あり | 骨折・脱臼等なし | |
1ヶ月 | 53万円 | 35万円 |
2ヶ月 | 101万円 | 66万円 |
3ヶ月 | 145万円 | 92万円 |
4ヶ月 | 184万円 | 116万円 |
5ヶ月 | 217万円 | 135万円 |
6ヶ月 | 244万円 | 152万円 |
7ヶ月 | 266万円 | 165万円 |
8ヶ月 | 284万円 | 176万円 |
9ヶ月 | 297万円 | 186万円 |
10ヶ月 | 306万円 | 195万円 |
11ヶ月 | 314万円 | 204万円 |
12ヶ月 | 321万円 | 211万円 |
※1ヶ月=30日となります。
入院日数に端数がでた場合、どのように計算する?
以下では、具体例をもとに計算してみましょう。
具体例
被害者は、令和6年4月9日に交通事故にあってしまい、足を骨折してしまったため、手術が必要になりました。
そのため、被害者は、令和6年4月30日まで病院に入院しました。
ケガの程度としては、骨折があるため重症と場合と考えます。
したがって、重症の場合の基準(上記の表を参照)を参考に入院慰謝料を計算します。
入院日数は、4月9日から4月30日までなので、22日となります。
上記の表をみると、入院1ヶ月で53万円となっていますが、この1ヶ月とは30日で算出されているものです。
具体例では、入院日数が30日(1ヶ月)に満たないため、日割り計算をする必要があります。
そのため、上記具体例の入院慰謝料は以下のように計算します。
53万円 ÷ 30日(1ヶ月)× 22日(入院日数)= 38万8667円(1円未満くりあげ)
したがって、上記具体例における入院日数22日の入院慰謝料は、38万8667円となります。
ここでは、入院だけをした場合の入院慰謝料を解説いたしましたが、入院と通院のどちらもした場合の入通院慰謝料については、以下の記事で詳細に説明しておりますのでぜひご確認ください。
交通事故でもらえるのは入院慰謝料だけではない!
入院慰謝料以外の損害項目一覧
交通事故にあい入院する必要が生じた被害者は、入院慰謝料以外にも以下のような項目を加害者側の任意保険会社(加害者が任意保険に加入していない場合には、加害者本人)に請求することが可能です。
※通常、加害者は任意保険に加入していることが多いため、加害者側の任意保険会社に請求することになります。
- 通院慰謝料
- 休業損害
- 逸失利益
- 治療費などの積極損害
- 後見等関係費用
- 通院慰謝料
通院慰謝料とは、交通事故が原因で通院する必要が生じた場合に、通院日数や通院期間を考慮して精神的苦痛に対して支払われる慰謝料のことをいいます。
被害者が、交通事故にあって一定期間入院した場合、その後にリハビリや経過観察等のために通院することが多いでしょう。
このように、入院した後に通院もした場合の慰謝料のことを入通院慰謝料といいます。
そのため、入院した後に通院をした被害者は、入院慰謝料だけではなく、通院慰謝料もあわせて請求できます。
通院慰謝料の計算方法には、①自賠責保険基準、②任意保険基準、③弁護士基準(裁判基準)の3つの計算方法があります。
①自賠責保険基準では、「4300円×通院期間」で出た金額と「4300円×実際に通院した日数の2倍」で出た金額を比較して、金額が低くなる方の計算式を用います。
自賠責保険基準は、あくまでも被害者に対して国が認める最低補償となるため、金額が低くなる方の計算式で計算するのです。
②任意保険基準は、それぞれの保険会社ごとに決まっており、計算式等の詳細は公表されていません。
③弁護士基準(裁判基準)では、原則として、ケガの程度と通院期間を参考に金額を算出します。
例えば、被害者がむちうちなどのために通院した場合、通院1ヶ月で19万円、通院2ヶ月で36万円、通院3ヶ月で53万円となります。
また、被害者が骨折などのために通院した場合、通院1ヶ月で28万円、通院2ヶ月で52万円、通院3ヶ月で73万円となります。
弁護士基準(裁判基準)での慰謝料の算出は、上記3つの基準の中で最も適切な賠償金となるため、最も高額な賠償金となることが多いです。
入通院慰謝料の計算方法や金額の相場については、以下の記事でも詳しく解説しておりますので、ぜひご覧になってください。
休業損害
休業損害とは、交通事故によるケガの痛みや通院のために、仕事を休んだことで発生する休業した分の損害のことをいいます。
休業損害の計算方法も、①自賠責保険基準、②任意保険基準、③弁護士基準(裁判基準)の3種類があります。
そして、休業損害の金額は、通常、自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準(裁判基準)となります。
ただし、次のようなケースでは②任意保険基準や③弁護士基準よりも①自賠責保険基準のほうが休業損害の金額が高くなる可能性があるため、注意しましょう。
- 1日あたりの収入が6100円未満のケース
- 被害者の過失割合が大きいケース
このように、自賠責保険基準の方が金額が高くなる可能性があるのは、自賠責保険基準の休業損害の金額は1日あたり6100円で、過失割合を考慮することなく計算するからです。
また、被害者の仕事はさまざまで、会社員、個人事業主(自営業)、主婦(主夫)などが考えられるでしょう。
休業損害の計算方法や注意点は、被害者の仕事の種類によってさまざまなので、被害者の仕事の種類にあった以下に掲げる記事をご確認ください。
被害者の仕事の種類ごとに休業損害の注意点などを以下の記事で説明しておりますので、詳しくは以下の記事をご覧ください。
逸失利益
逸失利益とは、交通事故にあわなければ本来失うことがなかった利益のことをいいます。
逸失利益には、次の2種類があります。
- ① 後遺障害逸失利益
- ② 死亡逸失利益
①後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益とは、後遺障害がなければ本来失うはずがなかった利益のことをいいます。
入院が必要になるほどのケガを負ったことで後遺障害が残ってしまった場合、将来の労働能力が低下してしまいます。
このような後遺障害が残ってしまい、労働能力が低下してしまったことに対する補償のことを後遺障害逸失利益といいます。
後遺障害逸失利益が認められるためには、後遺障害申請をして、後遺障害等級が認定される必要があります。
なお、後遺障害等級は、1級~14級まであります。
どの後遺障害等級に認定される可能性があるかは、被害者の症状やケガの程度等によって異なるため、詳しくはぜひ弁護士にご相談ください。
②死亡逸失利益
死亡逸失利益とは、交通事故にあったことで死亡してしまい、死亡していなければ将来的に失うことがなかった利益のことをいいます。
死亡逸失利益の算出では、被害者の基礎収入や年齢を考慮することになります。
具体的には、死亡逸失利益は次のように計算します。
後遺障害逸失利益や死亡逸失利益の計算方法や金額については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、少しでも気になる方は以下の記事をご参照ください。
治療費などの積極損害
積極損害とは、被害者またはそのご家族が、交通事故が原因で負担しなければならなくなった費用(損害)のことをいいます。
交通事故によって被害者が入院することになった場合、治療費や義足、アメニティ代(おむつ代など)などさまざまな費用が発生する可能性があります。
交通事故によって入院が必要になった場合、次のような損害が特に問題となることがあるため注意が必要です。
- 器具・装具等購入費
- 症状固定後の治療費(将来治療費)
- 特別室・個室料等
- 入院付添費用
- 将来の介護費
- 入院雑費
- 家屋・自動車等改造費
- 葬儀関係費用
被害者が入院をした場合、このような損害もあわせて賠償してもらうことができる可能性があります。
それぞれの損害について、詳しくは以下の記事で解説しておりますので、気になる方は以下の記事をぜひご参照ください。
後見等関係費用
例えば、被害者が高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)を負ってしまい、植物状態などになってしまった場合、後見人(成年後見人)を選任することがあります。
後見人(成年後見人)とは、知的障害や記憶障害などによって判断力が欠けてしまった被害者に代わって、契約の締結や預貯金の管理などを行う人のことをいいます。
後見人(成年後見人)は、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人がなります。
後見人(成年後見人)の選任には、必ず家庭裁判所の審判が必要になるため、その審判手続費用が発生します。
また、家庭裁判所は、後見人(成年後見人)に支払うべき報酬も決めます。
このように、後見人(成年後見人)を選任すると、審判手続費用や後見人(成年後見人)の報酬などが発生します。
このような後見人(成年後見人)の選任に関係して発生する費用は、必要かつ相当な範囲であれば交通事故の損害として認められます。
賠償金はいくら?自動計算機で算定しよう!
前述のように、交通事故にあったことで入院が必要になってしまった被害者は、さまざまな損害を請求できる可能性があります、
しかし、交通事故の賠償に関してあまり詳しくない被害者にとっては、「細かな知識等よりも、自分の場合に具体的にどのくらいの金額を請求できるのか知りたい」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
このような思いをお持ちの被害者のために、当法律事務所では、簡単な事項を入力するだけで、自動で、賠償金の計算をしてくれる自動計算機を作成しています。
この計算シミュレーターによって、被害者やそのご家族は、法的に請求できる可能性がある賠償金額のイメージを持ってもらうことができます。
当法律事務所の計算シミュレーターには、以下のような特徴があります。
- 慰謝料(傷害慰謝料と後遺障害慰謝料)だけでなく、休業損害や後遺障害逸失利益も算定できる
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交通事故の入院慰謝料を減額されないための注意点
入院慰謝料を減額されないためには、以下の2点に注意するようにしましょう。
必要性のない入院をさけること
前述したように、入院慰謝料を計算する場合、入院日数(入院期間)を基準として具体的な慰謝料の金額を出します。
この入院日数(入院期間)は、あくまでも入院の必要性がある入院日数(入院期間)を意味します。
そして、入院の必要性があるかどうかは、医学的な観点から医師が判断することになります。
そのため、被害者の都合や要望等を理由に入院の期間がのびたなどの場合は、医学的な観点からは入院の必要性がなかったとして、入院慰謝料が減額される可能性があります。
入院は、被害者のケガを治療したり、手術をする必要があったりした場合にするものです。
いつまで入院する必要があるかについては、きちんと医師の指示に従うようにしましょう。
健康保険を有効活用する
交通事故が原因で入院しなければならなくなったケースには、足の骨折などで1ヶ月程度の入院が必要な場合や、頭蓋骨骨折・外傷性くも膜下出血などが原因で意識不明となり数か月の入院が必要な場合などがあります。
このうち、ケガの程度が大きく数か月の入院が必要になるケースでは、1ヶ月あたり数十万円の入院費用がかかるなど、入院費用が高額になることが多いです。
弁護士に依頼しなかった場合に用いられる自賠責保険基準では、治療費や慰謝料などの傷害部分については、上限120万円までしか補償されないというきまりになっています。
そのため、治療費が高額になり、120万円を超えた損害については、慰謝料から減額されることになってしまい、少なくとも自賠責保険からは補償されないことになってしまいます。
しかし、健康保険には「高額療養費制度」というものがあります。
「高額療養費制度」とは、治療費の負担額が一定程度以上になった場合に、治療費の一部を協会けんぽ(国)が負担してくれるという制度です。
詳細は、全国健康保険協会のホームページに記載がありますので、以下をご覧ください。
参考:全国健康保険協会│高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
高額な治療費の影響で120万円を超えた部分について慰謝料から減額されるという不利益を負わないために、少しでも治療費を抑える目的で、健康保険の「高額療養費制度」を有効活用することができることを覚えておきましょう。
交通事故の賠償金を増額するポイント
以下のような事情がある場合には、被害者の入院慰謝料を増額することができる可能性があります。
手術内容や被害者の状態によっては増額事由にあたる
原則として、被害者が入院中に手術をしたかどうかによって、入院慰謝料の金額が変わることはありません。
しかしながら、例外的に、手術の内容によっては入院慰謝料の金額を増額することができる事情にあたる場合があります。
また、慰謝料とは、被害者の精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。
そのため、被害者への精神的苦痛が大きければ大きいほど、慰謝料は増額されるべきものです。
具体的には、次のような事情がある場合には、入院慰謝料の金額を増額できる可能性があります。
- 症状の内容や程度によって、手術を何度も繰り返す必要があった
- 麻酔を使用することなく手術を行った
- 生きるか死ぬかの状態が継続した
- 被害者が妊婦の場合で、中絶手術を受けなければならなかった
- 被害者が妊婦の場合で、胎児を流産、死産せざるをえなかった
弁護士に依頼して賠償金の交渉を任せる
弁護士に依頼して入院慰謝料の交渉を任せることで、賠償金を増額できる理由は次のとおりです。
- 入院慰謝料を弁護士基準(裁判基準)で算出することができる
- 弁護士が具体的事案に応じた個別事情を考慮して賠償金の交渉をすることができる
入院慰謝料を弁護士基準(裁判基準)で算出することができる
上記で説明したように、入院慰謝料の計算方法には、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類がありますが、賠償金の金額は弁護士基準が最も高額になります。
ただし、この弁護士基準は、被害者が弁護士に依頼しなければ用いることができないことが多いでしょう。
なぜなら、被害者が弁護士に依頼することで、示談で解決できなければ裁判(訴訟)にまで発展する可能性があるからです。
裁判(訴訟)にまで発展すれば、加害者側の保険会社は、遅延損害金や弁護士費用などを支払わなければならなくなる可能性があります。
また、弁護士に依頼をして裁判(訴訟)をすれば、いずれにしても入院慰謝料が弁護士基準で計算されることになります。
加害者側の保険会社としてはこのような想定がされるため、被害者が弁護士に依頼している場合には、入院慰謝料を弁護士基準(裁判基準)を前提として交渉するのです。
被害者が加入している保険等(自動車保険、自転車保険、火災保険、クレジットカードなど)に、「弁護士費用特約」が付いている可能性があります。
「弁護士費用特約」が付いており、本件交通事故で利用できれば、通常、被害者が弁護士に支払うべき相談料、着手金、報酬金などをご加入の保険会社が負担してくれます。
そのため、「弁護士費用特約」を利用すれば、被害者が弁護士に報酬金等を支払うことなく、弁護士に賠償金等の交渉を任せることができるのです。
なお、「弁護士費用特約」の上限は、300万円となっていることが多いです。
しかし、弁護士への報酬金が300万円を超えることは少ないです。
弁護士報酬について少しでもご不安な方は、弁護士に依頼する前に報酬金等の見通しを弁護士にお聞きになることをおすすめします。
以下では、当法律事務所の弁護士費用について記載しておりますので、当法律事務所へのご相談・ご依頼をご検討の方はぜひご覧ください。
弁護士が具体的事案に応じた個別事情を考慮して賠償金の交渉をすることができる
前述のように、被害者が賠償金の交渉を弁護士に依頼した場合は弁護士基準を用いるため、原則として、入院慰謝料は入院日数をカウントして計算します。
しかし、具体的事案によっては、特段の事情があり、入院慰謝料が増額されるべき事案があります。
入院慰謝料が増額されるべき特段の事情があったとしても、加害者側の保険会社の方から慰謝料を増額すべき事情を考慮してくれることはほとんどありません。
このような場合、弁護士に賠償金の交渉等を依頼すると、弁護士が代わりに慰謝料を増額すべき事情を主張することができます。
そのため、弁護士に賠償金の交渉等を依頼することで、弁護士が慰謝料を増額すべき特段の事情を主張し、具体的事案に応じた個別事情を考慮して、慰謝料を増額してもらえる可能性があります。
交通事故の入院慰謝料等を受け取る流れ
交通事故の入院慰謝料等は、以下のような流れで受け取ることができます。
交通事故が発生する
入院慰謝料を計算するときのスタートは、入院を開始した日となります。
衝撃が大きな事故でケガの程度が大きければ、交通事故が発生した日(事故日)にそのまま救急搬送されることもあるため、事故日と入院開始日が同じ日になることもあるでしょう。
医師が入院の必要があると判断した場合には、きちんと医師の指示に従い入院するようにしましょう。
入院して適切な治療を受ける
交通事故にあって入院した場合、医師の指示に従い、MRIやCTの精密検査などを受け、適切な治療を受けることをおすすめします。
ケガの内容が、外傷性くも膜下出血など脳に影響があるケガだった場合、整形外科だけではなく、脳神経外科でも受診する必要があります。
また、ケガの程度が大きければ、手術やその後のリハビリが必要になってくるケースもあります。
被害者自身は重い症状ではないと思っていたとしても、後から思いもよらない症状がみつかったり、思いもよらない損傷を受けている可能性があります。
そのため、医師の指示のもと、入院して適切な治療を継続することが大切になってきます。
症状固定(治療終了)となる
症状固定とは、現代医学をもってしても、これ以上は治療を継続しても痛みやしびれ等の改善が見込めない状態のことをいいます。
症状固定をいつにするかは、医学的な観点からの判断となります。
したがって、症状固定日がいつになるかは、医師の意見やレントゲン・CT・MRIなどの画像から異常がみられるかなどを参考に判断することになります。
交通事故によって入院が必要になったケースでは、手術などのために入院して退院した後に、リハビリや経過観察等が必要になるため、一定期間リハビリや経過観察をした後に症状固定になることが多いでしょう。
保険会社は、慰謝料等の金額をおさえるために、まだ痛みやしびれなどがあるにもかかわらず症状固定(治療終了)ではないかと連絡してくることがあります。
しかし、症状固定(治療終了)は、あくまでも医学的な観点から、医師の意見をもとに判断されるべきものです。
医師が、まだ症状が一進一退の状態になっていないなど、治療によって回復する可能性があると意見している場合には、医師の意見をきちんと保険会社に伝えて、交渉することが重要です。
後遺障害申請をする
入院後のリハビリ等を継続してもまだ症状が残っている場合には、症状固定後に、後遺障害申請をすることをおすすめいたします。
後遺障害申請をするためには、必ず主治医の先生に後遺障害診断書を作成してもらわなければなりません。
「後遺障害申請にはどのような書類が必要なのか」、「後遺障害申請はどのようにしたらいいか」などの疑問をお持ちの方は、下記の記事で詳細に解説しておりますので、後遺障害の申請を考えられている方はぜひ参考にされてください。
賠償金額の交渉を行う
後遺障害申請をしない場合は、症状固定後に賠償金額の交渉を行います。
後遺障害申請をした場合は、後遺障害申請をして、後遺障害の結果が分かった後に賠償金額の交渉を行います。
賠償金額の交渉の中で、入院慰謝料(入通院慰謝料)や休業損害、治療費などの積極損害の交渉を行っていくのです。
ケースによってどのくらい交渉の時間がかかるかはばらばらですが、通常、賠償金額の交渉には1ヶ月〜3ヶ月程度時間がかかることが多いです。
※交渉する項目が多ければ多いほど、賠償金額の交渉には時間がかかります。
「自分で交渉してみたが適切な賠償金額なのか不安」、「どのように交渉したらいいのか分からない」などとお思いになられている方は、一度、交通事故に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
合意できた賠償金額で示談する
最終的には、交渉の中で合意できた賠償金額で加害者側の保険会社(または加害者本人)と示談することになります。
示談は、通常、免責証書、承諾書といった書面にサインすることで成立します。
この書面は、加害者側の保険会社から送られてくることが多いです。
一度、書面にサインしてしまうと、あとから賠償金額や本来受け取ることができるはずだった損害について争おうと思っても認められないことが多いです。
そのため、被害者がご自身で書面にサインする場合には、必ず賠償金額やその他の条件などに誤りがないかを確認したほうがいいでしょう。
示談書の書き方や注意点については、以下の記事をご確認ください。
賠償金を受領する
示談書にサインをした後、加害者側の保険会社に示談書が到達してから約1~2週間くらいで賠償金が振り込まれることが多いです。
賠償金の振込先は、示談書に記入した銀行口座になります。
保険会社から示談書に記入した銀行口座に賠償金が振り込まれたら、振込金額が記載されたはがきが届きますので、確認されてください。
交通事故の入院慰謝料等の相談窓口
入院慰謝料等について、「加害者側の保険会社から提示がきた賠償金は適切な金額なのか」、「入院慰謝料の金額を増額できる事情はないのか」などの不安をお持ちの被害者もいらっしゃるでしょう。
このような不安を少しでもお持ちの方は、交通事故に強い弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
交通事故に強い弁護士に相談・依頼することで、慰謝料を増額できる可能性や適切な慰謝料の金額などのアドバイスを受けることができます。
また、交通事故に強い弁護士であれば、類似のケースでの相場も熟知していますので、不合理な賠償金額であれば保険会社としっかり交渉することができます。
入院慰謝料の金額などについて少しでも気になる点がある方は、一度、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
以下の記事では、弁護士に相談することのメリットや弁護士の選び方等について説明しておりますので、少しでも気になる方はご覧いただければと思います。
交通事故の入院慰謝料のよくあるQ&A
交通事故で1ヶ月入院したら慰謝料はいくらですか?
交通事故で1ヶ月(30日間)の入院をした場合、自賠責保険基準で計算をすると、入院慰謝料は12万9000円となります。
※計算式は、4300円 × 入院日数(30日)= 12万9000円となります。
他方、弁護士基準で計算をすると、脱臼・骨折等がない軽症の場合で入院慰謝料は35万円、脱臼・骨折等がある重症の場合で入院慰謝料は53万円となります。
ただし、弁護士基準で計算した入院慰謝料の金額は、仮に裁判をすれば裁判所が認めてくれるであろう金額を前提にしています。
そのため、裁判をせずに示談で早期解決する場合には、上記金額の80~90%ほどになる可能性が高いため注意が必要です。
1ヶ月入院した場合の入院慰謝料をまとめると、次のようになります。
入院慰謝料:12万9000円
【軽症の場合】
入院慰謝料:35万円
※示談する場合、35万円の80~90%ほどの金額となります。
【重症の場合】
入院慰謝料:53万円
※示談する場合、53万円の80~90%ほどの金額となります。
交通事故で3ヶ月入院したら慰謝料はいくらですか?
他方、弁護士基準を前提にすると、脱臼・骨折等がない軽症のケースでは、入院慰謝料は92万円となります。
脱臼・骨折等がある重症のケースでは、入院慰謝料は145万円となります。
ただし、弁護士基準を前提に計算する場合、時間や労力がかかる裁判をすることなく、示談で解決することにすると、通常、上記金額の80~90%ほどで示談することが多いです。
まとめると、3ヶ月入院した場合の入院慰謝料は以下のようになるでしょう。
入院慰謝料:38万7000円
【軽症の場合】
入院慰謝料:92万円
※示談で解決する場合、92万円の80~90%ほどの金額となります。
【重症の場合】
入院慰謝料:145万円
※示談で解決する場合、145万円の80~90%ほどの金額となります。
まとめ
自賠責保険基準で計算すると、入院慰謝料は「4300円×入院日数(入院期間)」となります。
そのため、自賠責保険基準を前提にすると、1週間〜2週間入院した場合、入院慰謝料の金額は約3万円〜約6万円となり、1ヶ月〜2ヶ月間入院した場合、約13万円〜約25万8000円となります。
他方、弁護士基準で計算すると、ケガの程度が軽症のケースで、入院期間1週間で約8万1666円、入院期間2週間で約16万3333円、入院期間1ヶ月で35万円となります。
ケガの程度が重症のケースでは、入院期間1ヶ月で53万円、入院期間2ヶ月で101万円、入院期間3ヶ月で145万円となります。
当法律事務所においては、交通事故などで被害者がケガをした場合の事件(人身障害事件)に強い弁護士が多数在籍しています。
当法律事務所では、交通事故についてのご相談や交通事故についてのご依頼後の事件処理は、すべて同じ弁護士が対応しており、事案によっては人身障害事件に強い弁護士がチームでサポートさせて頂いております。
当法律事務所では、ご来所いただく対面相談だけではなく、電話相談やLINE、ZOOM、Meetなどを用いたオンライン相談でも対応させていただくことができますので、少しでも不安や疑問がある方はお気軽に当法律事務所にお問い合わせください。