任意保険の交通事故慰謝料はいくら?相場や注意点|計算機付

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

任意保険の交通事故慰謝料はいくら?

任意保険から支払われる交通事故慰謝料としては、入通院慰謝料(通院1日あたり最高で約9333円、入院1日あたり最高で1万7666円)、後遺障害慰謝料(110万円〜2800万円程度)、死亡慰謝料(2000万円〜2800万円程度)の3種類があります。

この記事では、交通事故に遭った場合に、保険会社から支払ってもらえる慰謝料の相場や請求手続、その際の注意点について解説しています。

ご覧いただくことで、少ない慰謝料での泣き寝入りを避けるだけでなく、保険会社に対して請求できる慰謝料の適正額やポイントを知ることができます。

ぜひ参考になさってください。

任意保険の交通事故慰謝料の相場

交通事故に遭った場合、被害者は、相手(保険会社)に対して、慰謝料を請求することができます。

この慰謝料の金額には以下の表のように相場、つまり適正額があります。

入通院慰謝料 通院1日当たり最高で約9333円
入院1日当たり最高で1万7666円
後遺障害慰謝料 110万円から2800万円程度
(障害の重さによる)
死亡慰謝料 2000万円から2800万円程度

しかし、実は、保険会社はその相場より低い金額で慰謝料を提案してくることがほとんどです。

そのため、任意保険会社と慰謝料等を交渉するに当たっては、まず、保険会社から提示された慰謝料が相場より低いものでないか、確認する必要があります。

 

 

スマホで簡単!慰謝料の自動計算ツール

任意保険から支払いを受けられる慰謝料等の計算は、以下の自動計算ツールから、簡単に計算できます。

ご自身が請求できる慰謝料の概算を知りたい方は、この自動計算ツールをご活用ください。

※ご利用の際は同ページの注意事項をよくお読みください。

 

 

交通事故の慰謝料とは?

慰謝料とは、交通事故により被った精神的な苦痛に対する損害賠償金を指します。

例えば、交通事故により怪我をしたことで、入院・通院が必要となったり、後遺症が残ってしまったり、最悪の場合死亡してしまうことがあります。

このような事態が生じた際、被害者は精神的苦痛を感じるため、賠償金を請求することが法律上認められています。

民法710条
他人の身体…を侵害した場合…、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

引用元:民法|e-Gov法令検索

交通事故の慰謝料には3つの種類がある

慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料及び死亡慰謝料の3つの種類があります。

交通事故の慰謝料は3種類

 

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、事故の怪我によって、入通院せざるを得なくなったことに関する慰謝料です。

次の項目で見るように、入通院の期間や怪我の重さによって慰謝料の金額が変わります。

 

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料は、事故の怪我によって、後遺症が残ってしまったことに関する慰謝料です。

こちらについても、次の項目で見るように、後遺症の重さによって金額が定められます。

 

死亡慰謝料

死亡慰謝料は、事故によって死亡したことに関する慰謝料です。

亡くなった方が一家の支柱であったかなど、家族内での立場が考慮されて、金額が定められます。

 

 

交通事故の慰謝料の計算方法

慰謝料には3つの基準がある

慰謝料は、精神的な損害に対する賠償金であるため、お金に換算することは非常に難しいです。

その一方で、同じ程度の怪我や後遺症を負ったにもかかわらず、判断者によって金額がばらばらだと不公平感があります。

そこで、交通事故の慰謝料を計算するに当たっては、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3つの基準が用いられています。

交通事故の慰謝料の3つの基準

まず、自賠責基準は、法律で加入が義務付けられている自動車賠償責任保険(いわゆる「自賠責保険」)による基準です。

通院日数 × 1日当たり4,300円(令和2年3月31日より前に発生した事故の場合は、4,200円)で計算されます。

通院日数は、治療を開始した日から治療が終了した日までの全期間と実通院日数の2倍とを比較して、より少ない日数が計算の基礎となります。

法律で定められた基準のため必ず支払われますが、その分金額は低く抑えられています。

また、自賠責保険は、治療費や慰謝料等(傷害部分)の総額で120万円以内でしか支払われないという制限があります。

任意保険会社基準は、保険会社が任意で定めた内部的な基準です。

基準は公表されていないため内容は明らかではありませんが、自賠責基準と弁護士基準の間で定められているようです。

弁護士基準は、弁護士が示談交渉の際に用いる基準であり、また、裁判をした場合に裁判所が使用する基準でもあるため裁判基準とも呼ばれています。

弁護士基準では、怪我の程度によって異なる表を用いて慰謝料額を計算します。

骨折や脱臼などの重い怪我の場合には、【別表Ⅰ】を用います。

むち打ちなど他覚的所見(レントゲンなどによって客観的にわかる異常)がない場合や軽い打撲や切り傷の場合には、【別表Ⅱ】を用います。

具体的には以下の表のとおりです。

他覚的所見がある場合など重症の場合【別表Ⅰ】

他覚的所見がある場合など重症の場合【別表Ⅰ】

他覚的所見がないなど軽傷の場合【別表Ⅱ】

他覚的所見がないなど軽傷の場合【別表Ⅱ】

基本的な表の見方は、入院又は通院の期間(1ヶ月=30日)の当てはまる欄を探します。

 

例1)軽傷による通院期間が3ヶ月の場合

軽傷であるため、【別表Ⅱ】の通院した月数3ヶ月の欄を見れば、53万円ということがわかります。

入院と通院が両方行われた場合には、入院と通院の期間が交わる欄を見ます。

例2)軽傷による入院期間が1ヶ月あった後、通院期間が5ヶ月あった場合

表によると、105万円ということがわかります。

軽傷による入院期間が1ヶ月あった後、通院期間が5ヶ月あった場合

1ヶ月(30日)に満たない端数が生じた場合には、表の慰謝料額を日割して計算するのが通例となっています。

この計算はやや複雑ですので、以下の例を参照してください。

例3)軽症で通院期間が45日だった場合

期間を1ヶ月(30日)と15日に分けます。

1ヶ月目に発生する慰謝料の額は【別表Ⅱ】のとおり、19万円となります。

2ヶ月目の間に発生する慰謝料の額は、2ヶ月の場合の慰謝料36万円から、1ヶ月の場合の慰謝料19万円を差し引いて、17万円ということがわかります。

この17万円を30日で割って、2ヶ月目の通院期間の1日当たりの慰謝料額を算定します。

1日当たりの慰謝料額:17万円 ÷ 30日 = 5666.6円 = 5667円

15日間の慰謝料額:5667円 × 15日 = 8万5005円

最終的に、1ヶ月目の19万円に15日間の8万5005円を加えて、27万5005円が慰謝料の額となります。

基準を比較してみよう

例えば、慰謝料についていえば、大まかに比べても以下のように大きな差があります。

自賠責基準 弁護士基準
入通院慰謝料
(3か月入院し、3か月の通院を要した場合。2日に一回通院)
77万4000円 188万円
後遺障害慰謝料
(植物状態など:第1級)
1650万円 2800万円
死亡慰謝料
(夫婦/片働き/子供一人/働いている方が亡くなった場合)
1250万円 2800万円

 

保険会社には任意保険基準ではなく弁護士基準で請求

上記の表でわかるように、慰謝料の金額は、自賠責基準 < 任意保険会社基準 < 弁護士基準となっているので、自動計算ツールで弁護士基準による金額を把握した上で保険会社と交渉することが大切です。

賠償金支払いの段階になると、保険会社から、損害賠償額を記載した書面が送られてきます。

その慰謝料の欄には「弊社基準による」などの記載がされていることがほとんどです。

保険会社から賠償の提示があった場合には、弁護士に相談して適切な賠償額を算定してもらうことをお勧めします。

 

 

任意保険から支払われるのは慰謝料だけでない!

慰謝料以外の損害項目一覧

事故に遭った場合に保険会社へ請求できる賠償金は慰謝料だけではありません。

主に以下の損害などが、賠償金の対象となり得ますので、チェックしてみてください。

積極損害
(事故により負担しなければならなくなった費用)
    (人身損害)

  • 治療関係費
  • 付添費用
  • 将来介護費用
  • 雑費
  • 通院交通費
  • 学生・生徒の学習費用
  • 家屋・自動車改造費
    (物的損害)

  • 車の修理費
  • 代車料
消極損害
(事故により得られなくなった収入等)
  • 休業損害
  • 後遺障害による逸失利益
  • 死亡による逸失利益
精神的損害(慰謝料)
  • 死亡慰謝料
  • 入通院慰謝料
  • 後遺障害慰謝料
  • 近親者慰謝料
その他
  • 弁護士費用
  • 遅延損害金

治療費や物的損害など交通事故によって負担せざるを得なくなった費用(積極損害)については、保険会社へ賠償金を請求することができます。

以下では、積極損害のうち人身損害について、いくつかご紹介します。

積極損害について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

 

治療関係費

入院費用や治療費を指します。

基本的に問題なく損害として認められますが、医師の指示がない治療、例えば、接骨院やマッサージなどは認められない場合がありますので注意が必要です。

なお、治療費等については、被害者の過失割合が小さい場合には保険会社が病院に直接治療費を支払う対応(一括対応)してもらえるため、実際に窓口で負担することは少ないです。

 

付添費

重症の場合や被害者が幼い場合など、家族が入院看護や通院に付き添ったときは、付添看護費を請求することができます。

金額の算定方法は事情によりけりですが、入院付添の場合は1日当たり6500円の範囲で、通院付添の場合は1日当たり3300円が認められます。

付添のために仕事を休んだことで減少した収入の方が大きい場合には、その減少した収入額を賠償請求します。

 

将来介護費用

事故の後遺障害などにより、食事や移動に介助が必要となった場合には、将来の介護費を請求することができます。

こちらについては、常に介護が必要で、親族が行う場合には、弁護士基準で1日あたり8000円となっています。

介護の必要性の程度によって金額は変動します。

特に、被害者が若い場合には、かなり高額になるため、保険会社も厳密に争ってくる傾向があります。

 

雑費

入院するに当たって、必要となった諸費用についても損害として認められます。

入院雑費については、弁護士基準で1日1500円が認められます。

 

通院交通費

通院のために必要となった交通費も損害として認められます。

交通手段は公共交通機関か自家用車が基本ですが、歩行が困難であるなど、これらを利用できない事情がある場合には、タクシーの利用も認められます。

自家用車の場合は、必要性が認められれば、ガソリン代だけでなく駐車料金や高速代も認められるため、きちんと領収書を保管しておくようにしましょう。

 

物的損害

事故により車や持ち物が壊れてしまった場合に請求できるのが物的損害に対する賠償金です。

物的損害は、原則として修理費用を請求することができます。

もっとも、修理費用がその物の時価額を上回る場合には、時価額の金額が賠償額となります。

また、事故現場から自動車工場までのレッカー代や、自動車の修理中に利用した代車の利用料についても、物的損害として請求することができます。

 

休業損害

事故で怪我をしたことにより得ることができなかった収入は休業損害として、保険会社に請求することができます。

会社勤めの場合には、直近3か月の収入から1日当たりの収入を算出し、これに休業した日数(入院や通院により休業した日数)を乗じることで算出します。

なお、有給休暇を利用して通院した場合であっても、休業損害として認められます。

個人事業主の場合には、休業によって実際に減少した収入が損害として認められますが、被害者がどれだけ事業に関わっていたのかなどを慎重に検討する必要があります。

被害者が専業主夫/主婦の場合、実際には家庭内で賃金の支払いなどは行われませんが、家事労働には労働の対価が払われるべきと理解されていますので、主婦も休業損害を請求することができます。

休業損害について、詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

 

後遺障害による逸失利益

治療完了後に後遺障害が残った場合、将来の収入が減少すると考えられるため、その補償として後遺障害による逸失利益を請求することができます。

後遺障害による逸失利益について、詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

 

その他

弁護士費用

訴訟をした場合、請求が認められた額の1割程度を弁護士費用相当額として請求することができます。

このことは、弁護士費用特約を使った場合も同様です。

ただし、裁判で判決になり弁護士費用として一定額が認められた場合、その認められた金額分は、弁護士費用特約から支払われる保険金(弁護士費用)の金額から控除されますので、注意が必要です。

例えば、弁護士費用50万円のケースについて、本来であれば弁護士費用特約から50万円が保険金(弁護士費用)として支払われます。

しかし、判決で20万円の弁護士費用が認められた場合には、50万円から20万円を差し引いた30万円しか保険金は支払われないのです。

裁判をしても判決までいかずに、和解で終結する場合には、こうした問題は出てこないため、和解するか判決までいくかは慎重に検討する必要があります。

 

遅延損害金

賠償金については、事故が発生した時点から年3%(2020年3月31日以前に発生した事故は年5%)の金利が付きます。

この金利を遅延損害金と言います(“支払が遅れたことによる損害”という意味です。)。

法律上は遅延損害金を請求する権利がありますが、訴訟で解決をする場合を除いて、保険会社は遅延損害金を支払わないことが一般的です。

 

賠償金はいくら?自動計算機で算定しよう!

既にご紹介した自動計算機では、慰謝料だけでなく、上記の損害も含めた金額を計算することができます。

ぜひ、ご利用ください。

 

 

任意保険から慰謝料等を受け取るための手続

任意保険から慰謝料等を取得する流れ

事故の発生から慰謝料等の賠償金を受け取るまでの流れ(後遺症が伴う場合)は、以下の図のとおりです。

任意保険から慰謝料等を取得する流れ

⑴ 概要

事故発生から賠償金の受け取りまでの流れは、事故発生から治療の終了までと、交渉から賠償金の受け取りまでの2つに分けることができます。

前半では、医師の指示に従って、症状固定(治療を継続しても症状が一進一退でそれ以上症状が良くならない状態)まで治療に専念しましょう。

症状固定や後遺障害認定は慰謝料等の金額に影響する重要な判断ですので、慎重に判断する必要があります。

後半では、示談交渉が始まります。

示談交渉では、文書等でお互いの主張を出し合い、納得が得られるまで話し合いを行います。

示談が決裂した場合には、裁判等による決着となり、その判断に基づき賠償金が支払われます。

以下では、適切な賠償金を受け取ることができるよう各段階での注意事項をご説明していきます。

⑵ 事故の発生

事故が発生した際は、道路の通行を妨げない場所に移動し、警察や保険会社への連絡をしましょう。

特に警察への事故報告は法律上の義務となっていますので、ささいな事故であっても、警察への事故報告を怠らないようにしましょう。

警察が到着してからは、事故の発生状況を聞かれますので、分かりやすい説明を心がけましょう。

この際、誤った報告書を作られてしまうと、事故の状況を正確に証明できず、交渉の際に不利になってしまうことがありますので、注意が必要です。

⑶ 入院・通院治療

怪我をした場合には、入院・通院をすることになります。

⑴でご説明したように、まずは医師の指示にしたがって治療に専念しましょう。

⑷ 症状固定

症状固定とは、これ以上治療をしても症状が良くならない状態を指します。

例えば、むちうちの場合、病院での治療や整骨院での施術によって一時的には症状が和らぐものの、しばらく経つと元の痛みがぶり返す状態を指します。

症状固定となった場合は、それ以降の治療の必要性が認められなくなるため、以後の治療費を賠償請求することができなくなります。

また、それ以後は入通院慰謝料の算出期間に含まれないこととなります。

このように症状固定がいつかという問題は、賠償請求等をするに当たって非常に重要なポイントです。

症状固定は医師が判断するものですが、症状固定の時期について、保険会社から被害者個人に打診されることがあります。

この際は自身で判断せず、医師の判断を仰ぎましょう。

医師がまだ治療の必要性があるとの見解である場合には、それを保険会社担当者に説明し、症状固定に至っていないと主張することが大切です。

こうした対応が難しい場合には、早めに弁護士に相談して対応を相談あるいは依頼することをお勧めします。

⑸ 後遺障害等級認定

症状固定後に、身体的な障害が残っている場合は、後遺障害等級認定を検討します。

後遺障害等級とは、後遺症の重さをいい、重い順に1級から14級までの等級があります。

等級が重くなるにつれて、賠償金の額は大きくなります。

後遺障害等級認定をしてもらうには、医師の後遺障害診断書が必要となります。

後遺障害申請の方法としては、事前認定(保険会社に申請してもらい方法)、被害者請求(被害者側で申請する方法)があります。

それぞれ、メリット・デメリットがありますので、詳しくは以下のページをご参考にされてください。

⑹ 示談交渉開始

治療期間や後遺障害等級が定まった段階で、示談交渉が始まります。

示談交渉は、保険会社から、「損害賠償額算定書」や「免責証書」と題する書面が送付されることから始まるのが一般的です。

まずは、そこに記載されている費目(賠償の内容)に漏れがないか、金額が適正かを確認しましょう。

治療費は保険会社があらかじめ立替払いしていることが多いため、請求の漏れがあることはあまりありません。

しかし、通院交通費など一旦ご自身で負担している損害は、保険会社に請求しなければ支払ってくれませんので、注意が必要です。

また、慰謝料などについては、既にご紹介したように交渉の余地が十分にあります。

できる限り弁護士基準に近い金額での支払いを求めるようにしましょう。

 

任意保険から慰謝料等を取得するための書類/証拠

保険会社に対して慰謝料等を請求するにあたっては、①事故の状況、②怪我及び後遺障害の内容、③発生した損害を証明する書類や証拠を提出する必要があります。

任意保険から慰謝料等を取得するために必要な書類/証拠

これらは取得先や用途が異なっているため、あらかじめ整理しておくことが重要です。

①事故の状況を証明する書類/証拠
書類/証拠 取得方法 証明事項
交通事故証明書 自動車安全運転センターへ申請(窓口、郵便振替、インターネット可)
※通常は保険会社が取得してくれるため、ご自身で取得する必要はありません。
交通事故の発生
実況見分調書/物件事故報告書 警察への照会の上、検察庁に閲覧謄写の申請 事故の発生状況
ドライブレコーダー映像 自身のレコーダーからのダウンロード
相手方からの任意提出
事故の発生状況
<注意点>
交通事故証明書

交通事故証明書には、物損事故と人身事故の区別が記載されます。

事故直後は痛みがなく、警察に物損事故と届けていた場合であっても、後に痛みが出るようであれば、速やかに警察に連絡して、人身事故へ切り替えるようにしましょう。

実況見分調書

実況見分には、必ず立ち会うようにしましょう。

立ち会わない場合、加害者側の話のみが記載され、不利な証拠となってしまう可能性があります。

ドライブレコーダー

ドライブレコーダーは事故の状況を客観的に証明できるため、交渉や裁判において強力な力を発揮します。

保険会社から事故状況について疑問が出された場合には、積極的に提出するようにしましょう。

②怪我及び後遺障害の内容に関する書類/証拠
書類/証拠 取得先 証明事項
診断書 病院
(保険会社が治療費を立替払いしている場合は取得不要)
傷害の内容や治療経過
後遺障害診断書 病院 後遺障害の有無
<注意点>
診断書

診断書は、交通事故による怪我の内容や治療経過などが記載されています。どのような怪我を負い、全治までどのくらいかかるのかなどが記載される書類です。

保険会社が、直接病院に治療費を支払っている場合には、通常は、保険会社が病院を通じて取得するため、ご自身で取得する必要はありません。

しかし、どのような怪我を負い、治療にどれだけの期間がかかったのかは、慰謝料の金額に大きく影響してきますので、あらかじめご自身で内容を確認することが大切です。

後遺障害診断書

後遺障害診断書は、後遺障害の有無を判断するための書類です。

後遺障害診断書では、後遺障害の有無は認定されず、症状固定時にどのような症状が残っているかについて、医師の所見が記載されます。

後遺障害診断書は、その他の必要書類と一緒に自賠責保険会社に提出し、その後、後遺障害の審査機関(自賠責調査事務所)に提出され、同事務所がこれに基づいて、後遺障害の有無を判断します。

つまり、後遺障害診断書に書いていない事項は、後遺障害の認定では考慮されないという点に注意が必要です。

身体のしびれなど感覚的な障害については、きちんと医師に伝え、後遺障害診断書に書いてもらうことが重要です。

また、被害者自らが後遺障害認定申請をする場合(被害者請求)では、後遺障害診断書以外に、レントゲン写真や診療記録などを病院から取り寄せて、集める必要があります。

③発生した損害を証明する書類/証拠
書類/証拠 取得先 証明事項
人身損害
診療報酬明細書 通院先の病院(保険会社が治療費を立替払いをしている場合は取得不要) 治療費
通院交通費の領収書 交通費等の支払先
(公共交通機関の場合は不要)
通院交通費
(会社勤めの場合)
休業損害証明書と事故前年の源泉徴収票
自身の勤務先
(休業損害証明書の様式は保険会社から取得できる)
休業損害
(個人事業主の場合)
前年の確定申告書
自身の手元にあるもの 休業損害
後遺障害診断書 病院 後遺症の所見の有無・内容
後遺障害等級認定票 自賠責保険会社 後遺障害等級
物的損害
修理見積書/領収書 修理工場 車両損害の金額
中古車の市場価格がわかる資料 「中古車価格ガイドブック」(日本自動車査定協会)、又はインターネットサイト 中古車の時価賠償価格
<注意点>

人身損害

診療報酬明細書

治療費を証明するに当たっては、診療報酬明細書が必要となります。

ただし、多くの場合、診療報酬明細書は保険会社が病院から直接受領しているため、ご自身で取得していただく必要はありません。

これは保険会社があらかじめ治療費を立替払いしているためです。

通院交通費の領収書

治療費とは異なり、通院交通費などは一旦ご自身で負担の上、保険会社に対して請求しなければなりません。

そのため、原則として、通院交通費を請求する場合には、領収書が必要となります。

ただし、公共交通機関の場合には、通院の事実さえ診断書等でわかれば、領収書は不要と考えられています。

休業損害証明書・事故前年度の源泉徴収票・事故前年度の確定申告書

会社勤めである場合には、休業損害証明書を会社に作成して貰う必要があります。

休業損害証明書には事故前年の源泉徴収票を添付する必要があります。

個人事業主である場合には、事故発生の前年度の確定申告書を提出する必要があります。

後遺障害診断書・後遺障害等級認定票

後遺症に基づく慰謝料等を請求するには、後遺障害診断書及び後遺障害等級認定票が必要となります。

医師の作成する後遺障害診断書に基づき、後遺障害の有無・内容が認定され、後遺障害等級認定票が発行されます。

これによって、自身の後遺障害の等級が証明されます。

物的損害

修理見積書又は領収書

車の修理費を請求するに当たっては、修理前であれば修理見積書、修理後であれば明細書が必要となります。

通常の場合、保険会社のアジャスターという専門家が、修理工場と協議して修理費用を決定することになります。

「中古車価格ガイドブック」(日本自動車査定協会)・インターネットサイト

車が修理できない場合、あるいは、修理費用が時価額を上回る場合は、時価(事故当時の車の価値)で賠償されますが、その時価は中古車市場の金額が参考にされますので、「中古車価格ガイドブック」や、インターネットサイトの取引価格を参照しましょう。

これらを閲覧して、車種、年式、型版、走行距離などご自身の車と近いものをピックアップしましょう。

 

任意保険から慰謝料等を取得するための費用

任意保険から慰謝料等を取得するためにかかる費用には、実費と弁護士費用があります。

また、弁護士費用特約も交通事故において重要な役割を果たしています。

以下ではこれらについて、説明します。

実費

診断書や交通事故証明書など各種証明書の発行料、診療記録等のコピー代、CD-ROMの媒体費用、郵送費など保険金請求を行うのに当たっては、実費が発生します。

特に、診療記録等のコピー代は、高額になることもありますので、注意が必要です。

これらの実費のほとんどは、保険会社に請求することができますので、実費を負担した場合には領収書を保管し、裏面にその用途をメモしておくなどしておくことが重要です。

弁護士費用

弁護士に事件の処理を依頼した場合、以下のように着手金や実費などの費用が掛かります。

ただし、相談料については初回相談無料という事務所に相談することで無料とすることができます。

また、弁護士費用については、弁護士費用特約(※)を利用することにより、実負担なく弁護士に依頼することも可能です。

デイライト法律事務所での報酬基準は以下の記事をご参照ください。

あわせて読みたい
弁護士費用
  • 相談料
    30分当たり5000円(旧弁護士報酬基準による)
  • 着手金
    事件処理を依頼して、取り掛かってもらう際に支払うものです。10万円から20万円ぐらいのことが多いです。
  • 成功報酬
    保険金(賠償金)を回収した場合に支払うものです。回収した金額にもよりますが、回収金額×11%+22万円ほどとされることが多いです。
  • その他
    弁護士の交通費や手続に必要な実費が必要となります。
※弁護士費用特約について

弁護士費用特約とは、交通事故について弁護士に依頼する場合に、一定額まで(300万円までが多い。)であれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれる制度です。

これを利用することで、多くの場合、弁護士費用を支払うことなく交通事故の処理を依頼することができます。

また、弁護士費用特約のみを利用した場合であれば、基本的に保険の等級は上がらないため、翌年度以降の保険料が増額されることはありません。

なお、よくある勘違いとして、事故に遭ったご自身の保険に弁護士費用特約が付いていないため、利用をあきらめてしまうケースがあります。

しかし、ご家族の誰かが弁護士費用特約を付けていれば、利用できることがありますので、よく確認してみましょう。

 

 

任意保険から慰謝料等を受け取る3つのポイント

以上をまとめると任意保険から慰謝料等を受け取る際のポイントは、次の3つです。

  1. 慰謝料等の相場を知っておくこと
  2. 証拠をきちんと集めておくこと
  3. 交通事故に強い弁護士に相談すること

慰謝料等の相場を知っておくこと

慰謝料の相場を知っておかなければ、保険会社の提示した慰謝料等の額が適正かどうか判断できません。

保険会社からの提示を鵜呑みにするのではなく、弁護士に相談して適切な賠償額を算定してもらうことが大切です。

 

証拠をきちんと集めておくこと

適正な賠償額がわかっても、必要な書類や証拠がなければ、保険会社から慰謝料等を受け取ることができません。

受け取ることができる慰謝料等がわかったら、その根拠となる証拠をきちんと集めておくようにしましょう。

 

交通事故に強い弁護士に相談する

交通事故について弁護士に依頼する場合は、交通事故に長けた弁護士に依頼することが大切です。

弁護士の探し方や費用については、次のとおりです。

弁護士の探し方

ホームページに掲載している解決実績数は基本的に信用できますので、交通事故案件を多く扱っている弁護士を選びましょう。

ホームページで、交通事故に関するコラムを多く掲載している場合には、知識も豊富な可能性が高く信頼できます。

事務所によっては、初回無料相談を実施しているため、利用してみましょう。

弁護士費用について

ご自身の任意保険に弁護士費用特約が付いている場合には、上限額(一般的には300万円まで)の範囲で保険会社が負担してくれます。

また、ご自身の保険だけでなく、ご家族の弁護士費用特約を利用することもできることがありますので、一度ご確認してみることをおすすめします。

こちらの記事もご参照ください。

 

 

任意保険の慰謝料等についてのQ&A

交通事故慰謝料は自賠責と任意保険の両方からもらえる?

自賠責と任意保険のいずれからも慰謝料をもらうことはできますが、一方から受け取った分の慰謝料はもう一方の保険からもらうことはできません。

なぜなら、どちらも同じ慰謝料に対する支払いだからです。

例えば、自賠責保険から慰謝料として10万円を受け取った場合には、任意保険からは、受け取れるはずだった100万円から10万円を差し引いた90万円に限り受け取ることができます。

こちらの記事もご参照ください。

 

物損事故で任意保険から慰謝料をもらえる?

物損事故で任意保険から慰謝料を受け取ることは、一般的には認められていません。

なぜなら、慰謝料とは、事故によって被った精神的な苦痛に対する補償ですが、物が壊れた場合には、その物に対する弁償をすれば精神的な苦痛は補われたと考えられているためです。

一方で、ペットは法律上「物」と同様に扱われていますが、ペットを事故で亡くした場合に、慰謝料が認められた事例があります。その他、家に車が突っ込んで特別な恐怖を味わった場合など単に物を壊された以上の要素がある場合には、認められる可能性があります。

こちらの記事もご参照ください。

 

賠償請求には時効があると聞きました。どのようになっているでしょうか?

消滅時効とは、ある権利を一定期間行使しない場合、相手が消滅時効であると主張すれば、その権利を行使できなくなるという制度です。

交通事故の損害賠償請求権についても、消滅時効があるため、それまでに訴訟をするなどして対策をする必要があります。

消滅時効の期間は、令和2年4月1日以降に起きた事故については、以下のようになっています。

期間
治療費等の人身損害に対する賠償請求権 損害を知った時から5年間
損害を知った時 = 通常は、事故発生時を指す。
修理費等の物的損害に対する賠償請求権 損害を知った時から3年間

消滅時効の進行は、訴訟をするなどにより、一時的に止めることができますので、消滅時効まで時間がない場合には、早急に弁護士に相談して、対処してもらうことをお勧めします

 

 

まとめ

本稿では、任意保険から慰謝料等を受け取る方法についてご紹介しました。

交通事故は生活に大きな影響を与える一大事ですので、適切な慰謝料等を受け取る必要があります。

しかし、何が「適切」か判断するのは個人では非常に難しい状況にあり、保険会社のいうままにしてしまう事例が数多くあります。

そのため、交通事故に精通した専門家のサポートを受けながら、慎重に交渉することをお勧めいたします。

当事務所では、交通事故案件を日常的に取り扱う人身障害部の弁護士がご相談対応しております。

また、来所でのご相談、電話相談、オンライン相談(Zoom、LINE、Meet、FaceTime)も対応しており、全国対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

この記事が交通事故でお困りの方にとってお役に立てれば幸いです。

慰謝料


 
賠償金の計算方法

なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

続きを読む