CRPS(RSD)の後遺障害とは?【弁護士が解説】

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

CRPSは、複合性局所疼痛症候群のことで、カウザルギーと反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)の2つの疾患の総称です。

この2つは外傷後の痛みがある疾患であり、いずれも後遺障害として認定される場合がある疾患です。

ここでは、CRPSの後遺障害認定について説明します。

CRPSとは

CRPSとは、複合性局所疼痛症候群のことです。

英名のComplex regional pain syndromeの略称です。

CRPSは、1994年世界疼痛学会がカウザルギーと反射性交感神経性ジストロフィー(RSDはreflex sympathetic dystrophyの略称)の2つの疾病を総合した呼称です。

カウザルギーには神経損傷があり、RSDには、神経損傷がない点に違いがあります。

CRPSの症状としては、以下のような特徴があります。

CRPSの症状の特徴

 

 

CRPSの後遺障害等級

CRPSの場合、以下の後遺障害に認定される可能性があります。

等級 後遺障害の内容
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの

 

 

CRPSの後遺障害認定のポイント

カウザルギーについては、神経損傷が認められることが必要です。

RSDは、カウザルギーと異なり神経損傷がないため、自賠責保険では下の3つの要素を要求しています。

  1. ① 関節拘縮
  2. ② 骨の萎縮
  3. ③ 皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮)

この主要な3つのいずれの症状も健側に比較して明らかに認められる場合に限定されています。

医師の診断基準においては、「骨の萎縮」は必須の条件には入っていないため、医師にCRPSと診断されたものの自賠責保険の後遺障害には該当しないという事態も生じることがあるでしょう。

もっとも、裁判例の中には、②の骨萎縮がなくてもRSDを認める裁判例(神戸地判平22.12.7など)があります。

 

 

CRPSと素因減額

素因減額とは、被害者が事故前からもっている疾患などによって、発生・損害が拡大した場合には、賠償額を一定の割合差し引くという考え方です。

CRPSは、交通事故により外傷を受けた人のごく一部に発生する傷病です。他の大部分の人は発症しないのだから、発症した人の持っている素因も発症に影響しているのではないかと考えられるのです。

しかし、CRPSは、交通事故による外傷が原因で発症するのであり、安易に素因減額が認められるべきではありません。

被害者側としては、特殊な事情がない限りは、素因減額の主張については、強く争っていくべきでしょう。

 

 

CRPSの後遺障害の賠償例

後遺障害に該当した場合には、後遺障害慰謝料と逸失利益を請求することができます。

以下では、7級4号、9級10号、12級13号に該当した場合の後遺障害慰謝料と逸失利益の金額を説明します。

前提条件として、被害者は、会社員、35歳、年収400万円、2020年4月1日以降の事故を前提に計算します
※2020年3月31日より前の事故の場合、逸失利益の金額が異なります。

 

7級4号の場合

  • 後遺障害慰謝料1000万円
  • 逸失利益4567万0912円
計算式 400万円(年収) ✕ 56%(労働能力喪失率) ✕ 20.3888(32年のライプニッツ係数)=4567万0912円

 

9級10号の場合

  • 後遺障害慰謝料690万円
  • 逸失利益2854万4320円
計算式 400万円(年収) ✕ 35%(労働能力喪失率) ✕ 20.3888(32年のライプニッツ係数)=2854万4320円

 

12級13号の場合

  • 逸失利益4567万0912円
  • 逸失利益477万6912円
具体例 400万円(年収) ✕ 14%(労働能力喪失率) ✕ 8.5302(10年のライプニッツ係数)= 477万6912円

 

 

まとめ

後遺障害等級認定にあたって、CRPSの存否について問題となることが多く、その立証のハードルは決して低くありません。

また、認定されても適切な賠償金額を減額される可能性もあります。

以上のようにRSDの後遺障害の問題解決には医学、損害賠償に関する専門的知識が要求されますから、交通事故にくわしい弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

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