脳出血の後遺症|症状や対処法

執筆者:弁護士 重永尚亮 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)

脳出血の後遺症

交通事故により、頭に衝撃が加わった場合、脳出血が発生してしまう可能性があります。

脳出血が発生することにより、脳だけでなく体の様々な部位に後遺症が残る可能性があります。

交通事故による脳出血により後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級の認定を受けることにより、慰謝料や逸失利益を相手方に請求することができます。

そこで、交通事故による脳出血によってどのような後遺障害等級が認定されるのか、慰謝料や逸失利益はどのように計算されるのかについて解説いたします。

脳出血とは?

脳出血とは、脳内にある細い動脈が破れることによって脳内出血が発生する症状をいいます。

交通事故等により頭部に強い衝撃が加わった場合には、頭部のCT検査をしましょう。

 

 

脳出血の後遺症とは?

脳出血の代表的な後遺症は以下のものが挙げられます。

脳出血の代表的な後遺症
運動麻痺
感覚障害
目の障害
構音障害
嚥下障害
高次脳機能障害 記憶障害
注意障害
遂行機能障害
社会的行動障害
失語症
半側空間無視など

脳出血の代表的な後遺症

運動麻痺

運動麻痺とは、手足の感覚が麻痺し、体を自由に動かすことができない障害をいいます。

 

感覚障害

感覚障害とは、体の感覚がなくなったり、鈍くなったりする障害をいいます。

 

目の障害

目の障害とは、両目又は片目の視野が狭くなったり、対象物が二重に見えるといった状態になる障害です。

 

構音障害

構音障害とは、会話をする際に、呂律が回りにくくなり、うまく話せなくなる障害をいいます。

 

嚥下障害

嚥下障害とは、食事をする際に、食べ物を飲み込みにくくなる障害をいいます。

 

高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳卒中などの病気や交通事故などで脳の一部を損傷したために、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能の一部に障害が起きた状態をいいます。

高次脳機能障害の症状の例としては下記の症状があります。

記憶障害

病気や怪我の前のことは覚えているのに、新しい出来事を覚えられない。

注意障害

集中力が続かない。気が散りやすい。複数のことを同時にできない。

遂行機能障害

段取り良く物事を進めることができない。優先順位がつけられない。

社会的行動障害

感情や欲求のコントロールができない。やる気が起きない。人柄が変わってしまう。

失語症

言いたい言葉が出てこない。聞こえていてもその意味が分からない。

半側空間無視

目では見えているのに、片側に注意がいかないため、見落としたり、ぶつかったりしやすい。

引用元:高次脳機能障害|東京都福祉局

 

寝てばかりなのは脳出血の後遺症?

睡眠を司る睡眠中枢は、視床下部の前方にある視索前野にあると言われています。

また、脳幹網様体や視床下部には、覚醒中枢があると言われています。

この睡眠中枢と覚醒中枢の働きによって人間は睡眠、覚醒することができます。

脳出血により、上記中枢に障害が発生することで覚醒中枢が麻痺を起こすことにより、強い眠気が発生し、寝てばかりの状態になってしまいます。

このように、脳出血が発生した後に寝てばかりの生活になってしまった場合には、脳出血の後遺症である可能性があります。

 

疲れやすいのは脳出血の後遺症?

脳出血後に日常生活を送る上で、脳出血前に比べて疲れることが多くなったと感じる方が一定数いらっしゃいます。

疲れやすくなる原因の一つとして、脳出血による運動麻痺や感覚麻痺によって日常動作がしづらくなったことで体に過度な負担をかけてしまっている場合があります。

このように、脳出血後の日常生活において疲れやすくなったと感じた場合には、脳出血による後遺症である可能性があります。

 

しびれは脳出血の後遺症?

脳出血により、中枢神経や末梢神経に障害が発生した場合には、体に痺れが発生する可能性があります。

したがって、脳出血により痺れが発生することも脳出血の後遺症である可能性があります。

 

 

脳出血の後遺症の原因

脳出血による後遺症の原因は、脳出血により体内に血液が行き渡らず、脳組織にダメージが発生した結果、体の麻痺や感覚の障害、脳の障害が残ってしまうことがあります。

 

 

脳出血の後遺症への対処法

後遺障害申請を行う

脳出血による症状を治療していたとしても、残念ながら症状が改善せずに後遺症として残ってしまうことがあります。

この後遺症について適切な補償を受けるためには後遺障害申請をする必要があります。

「後遺症」と「後遺障害」とは法的に別の概念です。

慰謝料等の支給対象となるためには、「後遺障害」と判断されなければなりません。

そこで、「後遺症」を「後遺障害」とするために後遺障害申請をするのです。

「後遺障害」には1級から14級までの等級が割り振られており、症状に応じて等級が認定されます。

 

後遺障害に詳しい弁護士に相談する

脳出血によって後遺症が残ってしまっている中で、リハビリをする傍らで後遺障害の申請手続きを行うのはとても大変です。

そこで、被害者の負担を減らすために後遺障害に詳しい弁護士に後遺障害申請手続きを任せてしまうのも一つの方法です。

弁護士に依頼するメリットは下記の通りです。

  • 後遺障害の申請について助言やサポートを受けることができる
  • 後遺障害の認定結果が妥当であるかどうかを確認してもらうことができる
  • 妥当な賠償金額について知ることができる

 

 

脳出血の後遺障害認定の特徴と注意点

脳出血によって残ってしまう可能性のある後遺障害は高次脳機能障害や麻痺が考えられます。

上記症状に対して認定されうる後遺障害は下記の通りです。

後遺障害等級
別表第1 1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
別表第1 2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
別表第2 3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
別表第2 5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表第2 7級4号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
別表第2 9級10号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
別表第2 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
別表第2 14級9号 局部に神経症状を残すもの

後遺障害等級ごとの認定について詳しくは以下をご覧ください。

 

 

脳出血の慰謝料などの賠償金

交通事故によって脳出血が発症した場合に受け取ることができる賠償金の例として下記のものがあげられます。

  • 休業損害
  • 慰謝料
  • 逸失利益

休業損害

脳出血を発症するほどの交通事故に遭われた場合、ほとんどのケースで入院となります。

そうすると、入院のために仕事を休んだり、家事ができなくなってしまうことになります。

このように、入院をしなければ仕事や家事をすることができたのにできなかったことを金銭的に評価したものを休業損害といいます。

休業損害は、

1日あたりの収入額 × 休業日数

で計算します。

1日あたりの収入額は事故前年度の源泉徴収票や平均賃金センサス等を用いて判断します。

サラリーマンの休業損害については以下をご覧ください。

主婦/主夫の休業損害が認められた事例については以下をご覧ください。

 

 

慰謝料

交通事故の慰謝料には入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

  1. 入通院慰謝料
  2. 後遺障害慰謝料
  3. 死亡慰謝料

*なお、各種慰謝料については自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)の3つの基準に従って計算されます。

各基準の詳細につきましては、下記ページをご覧ください。

①入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、その名のとおり、交通事故による怪我のために通院や入院をしたことに対する慰謝料です。

入通院慰謝料は、怪我の程度と入通院期間の長さによって決まります。

②後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、後遺症が後遺障害と認定された場合に認定された等級に応じて支払われる慰謝料です。

脳出血によって認定される可能性のある等級ごとの慰謝料は下記の表の通りです。

なお、後遺障害による損害は、慰謝料逸失利益がありますが、その合計額が()の金額を超える場合、()記載の金額が上限となります。

後遺障害等級 自賠責基準での慰謝料
*()内の金額は限度額
弁護士基準での慰謝料
別表第1 1級1号 1650万円
(4000万円)
2800万円
別表第1 2級1号 1203万円
(3000万円)
2370万円
別表第2 3級3号 861万円
(2219万円)
1990万円
別表第2 5級2号 618万円
(1574万円)
1400万円
別表第2 7級4号 419万円
(1051万円)
1000万円
別表第2 9級10号 249万円
(616万円)
690万円
別表第2 12級13号 94万円
(224万円)
290万円
別表第2 14級9号 32万円
(75万円)
110万円

なお、別表1及び別表2の1〜3級の認定を受けて、かつ被扶養者がいる場合には上記慰謝料に加算される場合があります。

上記の表をご覧いただいて分かる通り、弁護士基準の方が慰謝料が高くなります。

③死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故によって被害者が死亡した場合に被害者本人やそのご遺族の精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。

死亡慰謝料は被害者の属性によって金額が異なります。

一家の支柱 2800万円
母親、配偶者 2500万円
その他 2000万円 〜 2500万円

*その他とは、独身の男女、子供、幼児等です。

 

後遺障害逸失利益

後遺障害逸失利益とは、交通事故による後遺障害により、将来被害者の方々が得ることができた利益を失ったことを金銭的に評価した損害のことをいいます。

後遺障害逸失利益は下記の計算式で計算されます。

基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

基礎収入とは、被害者の年収額のことをいいます。

労働能力喪失率とは、後遺障害等級に応じて定められています。

労働能力喪失は下記の表の通りです。

後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

 

 

脳出血の後遺症についてQ&A

脳出血の後遺症が残る確率は?

脳卒中患者を対象とした厚生労働省が発表している統計を見ると、脳卒中患者(18歳〜65歳)の予後として後遺症が残る確率は、約78%です。

脳出血は脳卒中の一種であるため、上記確率が参考になります。

引用元:脳卒中患者(18-65歳)の予後|厚生労働省

 

脳出血は回復する可能性ありますか?

脳出血自体は一度発症した以上、脳内に傷跡が残ることになります。

一方、脳出血による後遺症については回復する可能性があります。

参考となるのが厚生労働省が発表している脳卒中の予後に関するデータです。

平成30年度の厚生労働省の統計では、18歳から65歳で脳卒中患者について、発症3ヶ月の時点で約69%の方が自分の身の回りのことは介助なしで行えるまでに機能回復しており、約64%が入院でのリハビリテーションなどを終えて自宅で生活を送っています。

これを参考にすると、脳出血の後遺症については回復する可能性があります。

引用元:平成30年版 厚生労働白書|厚生労働省

 

 

まとめ

以上、脳出血による後遺症について説明いたしました。

交通事故によって脳出血が発生した場合、多くの場合は入院することになります。

入院中や退院後も通院を継続しながらリハビリに取り組むことになるでしょう。

それでも、脳出血によって後遺症が残ってしまった場合には、後遺障害申請をした方が良いでしょう。

後遺症に対して適切な後遺障害等級の認定を受けることができれば適切な賠償金を獲得することができます。

当法律事務所は人身傷害部を設置しており、交通事故を専門とする弁護士が所属しており、後遺障害に悩む被害者をサポートできる体制が整っております。

被害者の方が加入している保険会社において、弁護士費用特約を付けられている場合は、特殊な場合を除き弁護士費用は実質0円でご依頼いただけます。

LINE等のオンラインや電話相談を活用して全国対応も行っていますのでお気軽にご相談ください。

 

 

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