交通事故の後遺障害とは?認定率と賠償金への影響

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

交通事故の後遺障害

「後遺障害」とは、治療を行ったにもかかわらず、身体的または精神的な不具合が将来にわたって存在し、日常生活や仕事をこれまで通りに行いにくくなったことをいいます。

後遺障害については、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、自賠責保険の後遺障害の等級に該当する必要があります。

後遺障害を負った被害者の方が、適切に賠償金を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。

被害者は認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。

この記事では、後遺障害の概要や後遺障害を負った場合の賠償金の相場、後遺障害認定を受けるための手続きなどについて詳しくお伝えいたします。

交通事故における後遺障害とは?

「後遺障害」と「後遺症」の違い

後遺症と後遺障害の違い

交通事故で負傷をして、治療を尽くしたもののケガが完全に治らなかった場合には、「後遺症が残った」と表現されることがあります。

しかし、交通事故における後遺症と後遺障害の意味には大きな違いがあります。

「後遺症」とは、治療を継続したにもかかわらず完治せず、将来的に回復が見込めない身体的または精神的な症状が残っている状態を指します。

一般的に、医師や被害者の方が心配しているものは後遺症であると言えるでしょう。

これに対して、「後遺障害」とは、身体的または精神的な不具合が将来にわたって存在し、日常生活や仕事をこれまで通りに行いにくくなったことをいいます。

このような後遺障害については、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、自賠責保険の後遺障害の等級に該当する必要があります。

つまり、後遺障害は、後遺症のうち、労働能力の喪失を伴い自賠責保険の後遺障害等級に該当する障害であるといえます。

交通事故で「後遺症」が残ったとしても、上記のような条件に当てはまらない場合には、「後遺障害」とは認められません。

 

後遺障害等級認定とは?

後遺障害は、症状の重さに応じて、等級が定められています。

後遺障害等級認定とは、そうした等級の認定のことです。

後遺障害等級には、介護を要する後遺障害として1級〜2級、それ以外の後遺障害として1級〜14級まであります。

後遺障害等級は、等級の数字が小さくなるにつれて、後遺障害は重くなります。

例えば、12級と14級では、12級の方が症状がひどい(症状が重い)後遺障害となります。

 

後遺障害等級認定が必要な理由

後遺障害が残った場合に、適切に賠償金を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。

なぜなら、等級が認定されていない場合には、自賠責保険や加害者側の保険会社は後遺障害に関する賠償金を支払ってくれないからです。

後遺障害の等級認定を受けずに「後遺症が残った」と主張しても、後遺障害が残った場合に請求できる後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料などの損害は原則として認められません。

また、後遺障害逸失利益や後遺障害慰謝料の賠償金額については、認定される後遺障害の等級に応じて異なってくることになるため、その意味でも等級認定は重要となります。

 

 

交通事故の後遺障害等級の認定率

2021年の後遺障害の認定率の円グラフ

損害保険料率算出機構が発表している2021年度版「自動車保険の概況」によると、2021年度に自賠責保険が賠償金を支払った件数は、83万7390件とされています。

その中で、何らかの後遺障害等級に認定された件数は3万8837件です。

そうすると、2021年度の後遺障害の認定率は、約4.6%となります。

なお、参考までに後遺障害で最も多い「むちうち」の後遺症が残った場合には、12級13号や14級9号という比較的軽い等級に認定される可能性があります。

上記データによれば、14級のみの認定件数は2万4417件と発表されています。

したがって、14級の認定率については、約2.9%ということになります。

もっとも、上記の支払件数(83万7390件)は、後遺障害の申請をせずに傷害部分(慰謝料、治療費、通院交通費、休業損害など)のみで申請された案件と死亡案件も含まれているため、純粋に後遺障害申請をした場合の認定率ではありません。

自賠責保険が賠償金を支払った件数に対する後遺障害認定された件数の割合となっていますので、あくまで目安としてご参考にされてください。

後遺障害の認定率については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にされてください。

 

 

後遺障害が認定されたときの賠償金

後遺障害慰謝料はいくら?

後遺障害の慰謝料とは、交通事故によるけがで後遺障害が残ったことによる被害者の精神的な苦痛を補償するお金です。

被害者が「後遺障害」に該当すると認定された場合には、その認定された等級に応じて後遺障害慰謝料を請求することができます。

そして、後遺障害の慰謝料の金額には、以下の3つの基準があります。

  1. ① 自賠責保険の基準
  2. ② 任意保険会社の基準
  3. ③ 弁護士基準(裁判基準)

交通事故の後遺障害慰謝料の3つの基準

以下では、それぞれの基準に基づく後遺障害慰謝料の相場について解説していきます。

 

自賠責保険基準による後遺障害慰謝料

自賠責保険基準は、自動車損害賠償保障施行令において定められており、基準の中では最も低い基準です。

等級の程度と被扶養者の有無などに応じて後遺障害慰謝料の金額が決まっています。

自賠責基準の後遺障害慰謝料は以下のとおりです。

( )に記載している金額は、各等級の限度額です。

後遺障害による損害は、慰謝料と逸失利益がありますが、その合計した金額が( )の金額を超えたとしても( )記載の金額までしか支払いはされません。

自賠法施行令別表1 介護が必要な場合
後遺障害の等級 後遺障害慰謝料額(限度額)
第1級 1650万円
(4000万円)
第2級 1203万円
(3000万円)

※被扶養者がいる場合は、第1級は1800万円、第2級は1333万円です。さらに、初期費用等として、1級には500万円、2級には205万円が加算されます。

 

自賠法施行令別表2
等級 後遺障害慰謝料(限度額)
第1級 1150万円
(3000万円)
第2級 998万円
(2590万円)
第3級 861万円
(2219万円)
第4級 737万円
(1889万円)
第5級 618万円
(1574万円)
第6級 512万円
(1296万円)
第7級 419万円
(1051万円)
第8級 331万円
(819万円)
第9級 249万円
(616万円)
第10級 190万円
(461万円)
第11級 136万円
(331万円)
第12級 94万円
(224万円)
第13級 57万円
(139万円)
第14級 32万円
(75万円)

※被扶養者がいる場合は、第1級は1300万円、第2級は1128万円、3級は973万円です。

 

任意保険基準による後遺障害慰謝料

任意保険基準は、保険会社を通じた交渉の際に用いられます。

任意保険基準は、各社によって違いもありますが、多くの場合、自賠責基準よりは高額になっています。

任意保険基準は、各任意保険会社の内部基準で公表されていませんが、過去には統一基準が公表されていましたので、参考までに下表にて紹介します。

旧任意保険基準による後遺障害慰謝料
等級 後遺障害慰謝料
第1級 1600万円
第2級 1300万円
第3級 1100万円
第4級 900万円
第5級 750万円
第6級 600万円
第7級 500万円
第8級 400万円
第9級 300万円
第10級 200万円
第11級 150万円
第12級 100万円
第13級 60万円
第14級 40万円

 

弁護士基準による後遺障害慰謝料

弁護士基準は、裁判をした場合に裁判所が用いる基準でもあるため裁判基準とも言われます。

弁護士基準と裁判基準は同じものと考えていただいて結構です。

弁護士基準(裁判基準)は、3つの基準の中で最も高い賠償基準です。

弁護士基準は、過去の裁判例を踏まえて、適切な慰謝料額となるよう作られた基準であり、妥当で適切な基準となっています。

自賠責基準は、法律で定められた最低限の基準であり、任意保険基準は任意保険会社の都合を踏まえた基準なので、適切な慰謝料額とはいえません。

このように、弁護士基準が、3つの基準の中でも最も適切かつ高い基準であることから、弁護士基準で慰謝料額を請求すべきなのです。

弁護士基準(裁判基準)の後遺障害慰謝料の金額は以下のとおりです。

等級 後遺障害慰謝料
第1級 2800万円
第2級 2370万円
第3級 1990万円
第4級 1670万円
第5級 1400万円
第6級 1180万円
第7級 1000万円
第8級 830万円
第9級 690万円
第10級 550万円
第11級 420万円
第12級 290万円
第13級 180万円
第14級 110万円

なお、後遺障害の慰謝料の相場や増額のポイントなどについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

後遺障害の逸失利益はいくら?

逸失利益(いっしつりえき)とは、仮に事故が起きなかった場合、将来得られたであろう収入の減少分のことをいいます。

交通事故によって、体の痛みや可動域制限(関節の動かしづらさ)などの後遺障害が残ってしまう場合があります。

後遺障害が残ると、労働能力が低下し、将来の収入の減少が予想されます。

このような減収に対する補償のことを、「後遺障害逸失利益」といいます。

このような逸失利益は、交通事故の場合に問題となることが多いですが、暴力事案、労働災害、医療事故などでも生じる可能性があります。

また、事故により被害者が死亡した場合には、被害者が生存していれば得ることができたはずの収入が得られなくなります。

被害者が死亡することによって得られなくなった収入を補償するものを、「死亡逸失利益」といいます。

死亡逸失利益については、相続人である遺族が、加害者に対して請求することができます。

逸失利益は、収入の減少に対する補償ですので、治療費といった支出を余儀なくされるという積極損害ではなく、消極損害と位置づけられます。

 

逸失利益と休業損害の違い

逸失利益と同じく消極損害に位置付けられるものとしては、休業損害があります。

休業損害は、交通事故による入院や通院によって、仕事や家事を休んだことに対する補償です。

休業損害は入院や通院をしている期間の収入減少に対する補償であるのに対し、逸失利益は死亡した時点あるいは症状固定となった時点以降に将来的にどの程度収入が減少するであろうかということに対する補償になります。

事故により労働ができなくなったり労働能力が低下したりすることに対する補償という点で両者は共通しますが、逸失利益は将来に向けての労働能力低下に対する補償であり、予測が含まれるという点で異なります。

 

逸失利益の計算方法

それでは、具体的に後遺障害の逸失利益はどのように計算するのかについて、以下で解説していきます。

逸失利益の計算方法については、計算式が決まっており、以下の数式で求められます。

  • 逸失利益の計算方法
    基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間に対応するライプニッツ係数

したがって、逸失利益を求めるには、

  1. ① 基礎収入
  2. ② 労働能力喪失率
  3. ③ 喪失期間に対応するライプニッツ係数

の3つの数値を確定する必要があります。

以下、この3つの数値の意味について、くわしく解説します。

 

基礎収入とは

基礎収入は、被害者がどの程度の収入を得る見込みがあるかという観点から設定されます。

会社員の場合

会社員の場合、事故前年の源泉徴収票の「支払金額」が基礎収入となります。

 

専業主婦(主夫)の場合

専業主婦(主夫)の逸失利益の場合には、賃金センサスを用いて基礎収入を決定します。

具体的には賃金センサスのうち、女性の学歴計、年齢計の年収額を用います。

賃金センサスは毎年金額が変動しますが、2023年の額は399万6500円となっています。

2023年以前の交通事故については、その年の賃金センサスの額を基礎収入にします。

 

兼業主婦・主夫の場合

同じ主婦(主夫)でも、兼業主婦・主夫の場合には、家事労働だけでなく、他に仕事もして給料を得ているということになります。

この場合の逸失利益の基礎収入は、賃金センサスの額と仕事で得ている収入を比べて、どちらが高いかによって決定します。

もっとも、兼業主婦の場合で、仕事を欠勤していない場合には、家事にも支障なく従事できていたと考えられ、主婦休損の支払いを争われることがよくあります。

 

自営業者の場合

自営業者は、原則として、最新の確定申告の所得額を基礎収入とします。

2024年の交通事故であれば、2023年についての確定申告になります。

確定申告をそもそもしていないという自営業の方の場合には、どれだけの収入を得ているかを具体的に証明することで基礎収入を算定していくことになります。

自営業の場合には、主婦・主夫などと同じく、統計資料である賃金センサスを用いて、基礎収入を算定するという方法もあります。

ただし、主婦と違って、どの切り口で割り出される賃金センサスの額を基礎収入とするかについては、具体的な事案に応じて変わってきます。

このように、事故の被害者が個人事業主の場合には、年によって大きく売上や経費が異なることが多いため、基礎収入を判断するのが難しくなる可能性があります。

なお、逸失利益の基礎収入の算定方法については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

労働能力喪失率とは

労働能力喪失率とは、その後遺障害がどの程度、本来の能力を失わせることになるかというもので、パーセントで表されます。

交通事故にあう前の状態を100%とした場合に、どの程度パフォーマンスが落ちるのかというのが労働能力喪失率ということになります。

これについては、認定された後遺障害の等級に応じて、一応の喪失率の目安が決まっています。

労働能力喪失率については、自賠責保険が定める数値が存在しております。

自賠法施行令別表1 介護が必要な場合
後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%

 

自賠法施行令別表2
後遺障害等級 労働能力喪失率
第1級 100%
第2級 100%
第3級 100%
第4級 92%
第5級 79%
第6級 67%
第7級 56%
第8級 45%
第9級 35%
第10級 27%
第11級 20%
第12級 14%
第13級 9%
第14級 5%

等級が高くなるにしたがって、労働能力喪失率も大きくなっており、3級以上は100%と設定されています。

このように、後遺障害が認定されると認定された等級にあらかじめ設定されている労働能力喪失率が基準となるのが原則ですが、例外的に保険会社と労働能力喪失率を巡って争いになることもあります。

基本的には、上記の表の労働能力喪失率を前提に後遺障害の逸失利益を計算するのですが、後遺障害の種類や職種によっては、必ずしも表のとおりとはいかない場合もあるため、あくまで一定の目安として考えることになります。

 

喪失期間に対応するライプニッツ係数とは

ライプニッツ係数とは、中間利息控除を行うための係数です。

逸失利益は、将来の収入の減少分を示談の段階で一括して先に受け取るものです。

もし、この受け取ったお金を運用した場合、通常は利息がつきます。

そこで、公平の観点から、この将来の利息による増額分は控除すべきと考えられています。

この利息の控除のことを、中間利息といいます。

現在、中間利息は年利3%(令和2年3月までは5%)として計算されていますが、中間利息を控除する計算はとても複雑です。

そこで、ライプニッツ係数という簡易化された数字を使います。

ライプニッツ係数は、下表のように労働能力喪失期間に応じて決められています。

令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償請求に適用する表
ライプニッツ係数表(法定利率3%)
労働能力
喪失期間
(年)
係 数 労働能力
喪失期間
(年)
係 数
1 0.9709 44 24.2543
2 1.9135 45 24.5187
3 2.8286 46 24.7754
4 3.7171 47 25.0247
5 4.5797 48 25.2667
6 5.4172 49 25.5017
7 6.2303 50 25.7298
8 7.0197 51 25.9512
9 7.7861 52 26.1662
10 8.5302 53 26.3750
11 9.2526 54 26.5777
12 9.9540 55 26.7744
13 10.6350 56 26.9655
14 11.2961 57 27.1509
15 11.9379 58 27.3310
16 12.5611 59 27.5058
17 13.1661 60 27.6756
18 13.7535 61 27.8404
19 14.3238 62 28.0003
20 14.8775 63 28.1557
21 15.4150 64 28.3065
22 15.9369 65 28.4529
23 16.4436 66 28.5950
24 16.9355 67 28.7330
25 17.4131 68 28.8670
26 17.8768 69 28.9971
27 18.3270 70 29.1234
28 18.7641 71 29.2460
29 19.1885 72 29.3651
30 19.6004 73 29.4807
31 20.0004 74 29.5929
32 20.3888 75 29.7018
33 20.7658 76 29.8076
34 21.1318 77 29.9103
35 21.4872 78 30.0100
36 21.8323 79 30.1068
37 22.1672 80 30.2008
38 22.4925 81 30.2920
39 22.8082 82 30.3806
40 23.1148 83 30.4666
41 23.4124 84 30.5501
42 23.7014 85 30.6312
43 23.9819 86 30.7099

 

 

後遺障害等級認定のために必要な手続き

後遺障害等級認定の流れ

交通事故から後遺障害が認定されるまでの流れは以下のとおりです。

交通事故から後遺障害が認定されるまでの流れ

症状固定まで治療

事故が発生して治療を開始してから、症状固定と医師に判断されるまで治療を継続する必要があります。

主治医とは日頃から十分にコミュニケーションを取りながら治療に専念することが重要です。

 

後遺障害診断書を作成してもらう等必要書類の準備

症状固定まで治療したら、後遺障害申請に必須の書類である後遺障害診断書を主治医に作成してもらいます。

事前に症状に関するメモを作成し、診察の際に主治医に渡しておけば、症状を漏れなく記載してもらえるでしょう。

後遺障害診断書は、早ければ数日、遅ければ3週間以上かかる場合があります。

 

後遺障害の申請

提出書類の準備ができたら、加害者の自賠責保険へ実際に提出します。

提出書類は、自賠責保険に郵送の方法で提出することができます。

 

自賠責保険会社から自賠責損害調査事務所への提出書類を送付

自賠責保険会社は、受け取った提出書類をチェックし、実質的な認定機関である自賠責損害調査事務所に送付します。

 

自賠責損害調査事務所での調査

自賠責損害調査事務所では、提出書類の内容をじっくり検討し、後遺障害が認定されるかを調査していきます。

調査期間は、多くのケースで1〜2ヶ月程度で完了します。

ただし、事案によっては6ヶ月程度かかることもあります。

 

自賠責損害調査事務所から自賠責保険会社へ調査結果報告

調査が終わったら、自賠責損害調査事務所から自賠責保険会社へ調査結果報告をします。

 

自賠責保険から被害者へ結果の通知

最後に、自賠責保険から被害者へ、後遺障害についての判断結果が記載された書面が郵送されます。

なお、判断結果に納得がいかない場合は、自賠責保険に異議申立て等を検討していくことになります。

被害者請求で後遺障害認定を受けた場合には、その等級に応じて自賠責保険から賠償金の一部が支払われます。

 

後遺障害の申請方法

後遺障害の申請方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があります。

「事前認定」とは、相手方の任意保険会社や人身傷害保険を使った場合の被害者の任意保険会社が後遺障害の申請をすることです。

これに対して、「被害者請求」とは、被害者や被害者の代理人弁護士が後遺障害の申請をする方法を指します。

事前認定と被害者認定

事前認定

事前認定による方法は、保険会社が提出資料をそろえてくれるため、被害者は手間がかかりません。

また、後遺障害診断書作成代以外は、被害者が申請にかかる実費を立替払いしなくてもよいというメリットもあります。

しかし、事前認定では、保険会社は最低限の提出書類しか出さないことが多く、適切な後遺障害の等級認定がなされない可能性があり、また、等級認定が受けられてたとしてもすぐに賠償金の一部を受け取ることができないというデメリットがあります。

 

被害者請求

これに対して、被害者請求の場合は、被害者自ら必要な書類を集めることによって、適切な後遺障害が認定される可能性が高く、加害者請求で後遺障害の等級認定がなされれば、等級に応じた賠償金の一部を比較的すぐに受けとることができます。

そのため、少しでも後遺障害の認定率を上げようと思ったら、提出資料を選べる被害者請求がおすすめです。

特に後遺障害が認定されるか微妙な事案では、適切な提出資料を出せているかどうかで判断が分かれてしまうため、そのような場合は被害者請求にすべきでしょう。

ただ、被害者請求の場合には、必要な書類や資料を自ら集めて提出するという負担があるため、弁護士に依頼して代わりに手続きを行ってもらうことがおすすめです。

 

後遺障害が認定されるまでの期間

後遺障害の申請をしてから結果が出るまでの期間については、多くの場合1〜3ヶ月程度かかります。

なぜ後遺障害認定にこれほど時間がかかるのでしょうか。

後遺障害認定に時間がかかる理由として、審査件数が多いということがあげられます。

2021年度の自賠責損害調査事務所において受付けた自賠責保険の請求事案の件数は97万2281件とされています。

この件数には、後遺障害以外の案件も含まれていますが、それでもかなりの件数があると推測できます。

また、提出書類に不備があると認定までに時間がかかってしまいます。

後遺障害の審査は、一部の特殊な場合を除き、原則書面審査になるため、必要書類が不足していたり、内容に不備があったりすると、訂正・修正が必要となるため手続きに時間がかかってしまいます。

なお、後遺障害の申請方法や期間などについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

後遺障害等級認定のために必要な書類

自賠責保険の請求に必要な書類の様式は、各自賠責保険会社に郵送するよう依頼すれば、必要な様式のセットを送ってくれます。

加害者がどこの自賠責保険に加入しているかは、交通事故証明書に記載されています。

被害者請求によって後遺障害の申請をする場合に、必要となる書類としては、以下のようなものです(必須書類以外のものも挙げています)。

  • 支払請求書兼支払指図書
  • 請求者本人の印鑑証明書
  • 住民票または戸籍謄本住民
  • 交通事故証明書
  • 人身事故証明書入手不能理由書
  • 事故発生状況報告書
  • 診断書、施術証明書及び施術費明細書
  • 診療報酬明細書
  • 後遺障害診断書
  • レントゲン、MRI、CTなどの画像
  • カルテ
  • 実況見分調書
  • 損害レポート
  • 委任状

 

支払請求書兼支払指図書

支払請求書は、自賠責保険から送られてくる申請様式のセットに入っています。

内容としては、交通事故証明書を参照すれば完成できる内容です。

病院の治療費や整骨院の施術費用を直接、病院や整骨院に支払ってもらうためには、支払請求書の口座記入欄に、病院や整骨院の口座を記載する必要があります。

 

請求者本人の印鑑証明書

請求者の印鑑証明書が必要となります。

弁護士が委任を受けて被害者請求する場合には、弁護士の印鑑証明書を添付して請求しています。

 

住民票または戸籍謄本住民

当事者が未成年者の場合に提出する必要があります。

 

交通事故証明書

交通事故証明書は、自動車安全運転センターから取り寄せることができます。

取り寄せ方法は、①証明書申込用紙を記入して郵便局で申し込む方法、②自動車安全運転センターの窓口で申し込む方法、③自動車安全運転センターのホームページから申し込む方法があります。

もっとも、任意保険会社が関与している場合には、保険会社がすでに取得しています。

したがって、その交通事故証明書の写しに原本証明印を押印してもらったものを送付してもらう方法もあります。

保険会社に、「原本証明印を押した事故証明を下さい」といえば理解してくれます。

 

人身事故証明書入手不能理由書

人身事故証明書入手不能理由書は、交通事故証明書の記載が「物件事故」になっている場合に提出が必要となります。

事故後に、警察に診断書を提出している場合には、「人身事故」との記載になっており、この場合には、人身事故証明書入手不能理由書の提出の必要はありません。

人身事故証明書入手不能理由書では、ケガをしているのに、警察に診断書を提出して人身事故扱いにしなかった理由を記載する必要があります。

 

事故発生状況報告書

事故発生状況報告書は、事故の態様を図で記載し、その図の説明を文章で記載しなければなりません。

図を作成するにあたっては、事故現場の道路の状況を踏まえて、自分の車と加害者の車の衝突までの状況が分かるように記載する必要があります。

事故現場の道路の状況を作成するにあたっては、インターネットで事故現場の住所を入力すると、現場付近の地図を見ることができるので、それを参考にすると作成しやすいでしょう。

 

診断書、施術証明書及び施術費明細書

診断書は、病院に作成のお願いをすることになります。

施術証明書と施術費明細書は、整骨院に通院した場合に必要になりますので、

整骨院の柔道整復師の先生に作成を依頼しましょう。

なお、任意保険会社が関与している場合には、すでに取得している場合もあるため、一度、任意保険会社に確認してみましょう。

 

診療報酬明細書

診療報酬明細書は、病院でどのような治療をしたか等が分かる書類です。

診断書と一緒に、病院に作成を依頼しましょう。

また、診療報酬明細書も任意保険会社が関与している場合には、すでに取得している場合もあるため、一度、任意保険会社に確認してみましょう。

 

後遺障害診断書

後遺障害申請にあたって、最も重要な書類です。

後遺障害の審査は、後遺障害診断書に記載されている症状について審査されるため、記載漏れがないように十分確認が必要です。

後遺障害診断書の作成は医師に依頼する必要があります。

整骨院では後遺障害診断書は作成できませんのでご注意下さい。

 

レントゲン、MRI、CTなどの画像

レントゲン、MRI、CTなどの画像を撮影している場合には提出する必要があります。

画像撮影をした医療機関から取り寄せることになります。

 

実況見分調書、損害レポート

実況見分調書や損害レポートについては任意で提出することができます。

実況見分調書は、検察庁から取り寄せることができます。

検察庁から取り寄せる際には、警察から事故についての情報提供を受ける必要がありますが、加害者の処罰が決定するまでは原則入手不能ですので注意が必要です。

また、損害レポートについては、加害者の保険会社から入手することができます。

損害レポートとは、物損に関する損害状況や修理費用に関する資料です。

 

委任状

弁護士に依頼をして被害者請求をする場合には提出が必須となります。

保険会社から書式を入手し、被害者が署名及び実印の押印をします。

後遺障害認定のための必要書類については、以下の記事で解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

後遺障害等級認定にかかる費用

後遺障害申請をするための手数料等は不要です。

ただし、後遺障害診断書代などの実費は負担する必要があります。

被害者請求を行う場合と、事前認定を行う場合に違いがありますので、それぞれ説明いたします。

 

事前認定の場合の費用

事前認定の場合には、任意保険会社が必要書類を集めますので、費用はほとんどかかりません。

もっとも、後遺障害診断書の作成費用は、被害者が負担することになります。

後遺障害診断書の作成費用は病院によって異なりますが、5000円〜1万円程度のケースが多いです。

また、後遺障害の認定がなされた場合には、相手保険会社に後遺障害診断書の作成費用を請求することができます。

 

被害者請求の場合の費用

被害者請求の場合、被害者が資料を集める必要があるため、費用が発生します。

費用には、大きく、実費と弁護士費用があります。

被害者請求の場合にかかってくる費用については、以下の表のとおりです。

項目 費用
実費 請求者の印鑑登録証明書 1通300円程度
交通事故証明書 1通600円
診断書 病院や診断書の枚数によります。
診療報酬明細書 病院や診療報酬明細書の枚数によります。
後遺障害診断書 病院によりますが、1通5000〜1万円のことが多いです。
住民票の写し 1通300円程度
MRIなどの画像 病院によって異なります。
カルテ 病院やカルテの枚数によります。
実況見分調書 不要
(弁護士が調査を行う場合には、警察への問い合わせの費用が5000円〜1万円程度かかります。)
郵送・FAX費用 1回あたり数十円程度
弁護士費用 着手金 弁護士事務所によりますが、数十万円以上はかかります。
報酬金 弁護士事務所によりますが、数十万円〜数百万円はかかります。

 

交通事故証明書や診断書、診療報酬明細など、任意保険会社から取り寄せることができる資料もありますので、被害者請求をするにあたっては弁護士に相談されることをおすすめします。

また、弁護士に後遺障害認定の手続きを依頼すると、弁護士費用がかかることになります。

弁護士費用の負担をできるだけ軽くしたいという場合には、無料法律相談を実施している事務所を利用したり、弁護士費用特約を利用する方法があります。

弁護士費用特約とは、交通事故事件を弁護士に依頼する場合に、その弁護士費用を加入している保険会社が支払ってくれる保険特約です。

弁護士費用特約のほとんどは、上限300万円までの弁護士費用をカバーしているため、被害者は弁護士費用を負担することなく弁護士に依頼することができます。

したがって、弁護士費用特約に加入されている方は、弁護士に依頼をすることも検討した方が良いでしょう。

なお、後遺障害認定に必要となる費用については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

後遺障害の認定結果に納得がいかないときの対処法

後遺障害の認定結果になっとくがいかない場合には、どうすればいいのでしょうか。

「非該当」という結果になれば、保険会社との示談交渉の中で、後遺障害が残存していることを前提に示談することは極めて困難です。

保険会社は、自賠責保険が非該当の結果を出している以上、後遺障害はないものとして、示談交渉に臨んできます。

また、低い等級認定がなされた場合にも、相手方はそのような認定結果を前提として交渉を進めようとします。

こうした場合に、認定を覆し、後遺障害を認めてもらうための手段としては、以下の方法があります。

  • 異議申立てを行う
  • 紛争処理機構に申立を行う
  • 訴訟を提起する

以下、それぞれの方法についてお伝えいたします。

 

異議申立て

後遺障害の結果に不服がある場合は、原則として、自賠責保険に対する異議申立て手続きを利用することができます。

後遺障害の異議申立てとは、後遺障害の認定結果に不服がある場合に再審査を求めることをいいます。

交通事故において、後遺障害の申請をしても、必ずしも後遺障害等級が認定されるわけではありません。

非該当になったり、ある等級が認定されたとしても認定された等級に不服があったりする場合には、異議申立てという手続きを行うことで、再度、自賠責保険(共済)に後遺障害の審査をしてもらうことができます。

この異議申立てを行うためには、不服の理由を記載した異議申立書とそれを裏付ける資料があれば、それらを添付して自賠責保険に提出することになります。

異議申立ては、後遺障害の結果が戻ってきてから3年、異議申立てをした場合は、異議申立ての結果が戻ってきた時点から3年で申立てができなくなりますが、それ以外に期限や回数に制限はありません。

ただし、「納得いかない」とだけ言い続けても結果が変わるわけではありません。無駄な時間がかかり、結果が変わらず、示談も遅れる可能性があります。

そのため、異議申立てを検討する場合、どのような資料を追加するかを検討することが重要です。

異議申立てには郵送費などの実費がかかりますが、手続きそのものには料金はかかりません。

 

紛争処理機構に申立を行う

自賠責の調査事務所による後遺障害等級認定の判断に異議がある場合は、まずはその認定をした自賠責損害調査事務所に対して異議申請をします。

しかし、これを繰り返しても結果が思わしくない場合や、自賠責調査事務所の判断理由に納得できない、あるいはその判断内容に疑義があるような場合は、「紛争処理機構」に申立てを行って判断を仰ぐことができます。

紛争処理機構は、自賠責保険(共済)が下した判断に誤りがないかどうかを審査する機関です。

紛争処理機構への申し立てには、自賠責保険(共済)の判断が誤っていることを具体的に説明する必要があります。

そのため、自賠責保険が認定をした理由を正確に分析することが重要です。

自賠責保険の認定に事実誤認がないか、重要な事実を考慮できていないのではないか、または考慮できていたとしてもその評価が適切ではないのではないか、といった点を細かく精査する必要があります。

以上のような分析を行ったうえで、自賠責保険の認定が適切ではなかったことを具体的に主張していくことになります。

紛争処理機構に申請する場合の申請先は、大阪支部あるいは東京本部に申請することになります。

近畿、中国、四国、九州・沖縄は、大阪支部です。

それ以外の地域は、東京本部に申請することになります。

また、紛争処理機構は、自賠責保険(共済)が下した判断の成否を審査する機関なので、自賠責保険(共済)に提出していない新たな証拠は提出することはできません。

申請の費用は無料です。

ただし、資料を揃えるための費用や郵送費用などの実費は、被害者が負担しなければなりません。

紛争処理機構への申し立ては、法律の素人である被害者自身にとって難しい可能性が高いため、弁護士に相談することをおすすめします。

 

訴訟を提起する

後遺障害の認定結果に不満があり、異議申立を繰り返したり、紛争処理機構への申立を行ったりしても覆らなかったという場合には、訴訟を提起して後遺障害等級を争うという方法もあります。

この場合には、民事訴訟を提起して、適切な後遺障害等級に基づく賠償額の支払いを請求していくことになります。

適切な後遺障害等級の認定がなされなかったと主張する場合には、自賠責保険の異議申立て手続きを利用することができます。

しかし、新たな医学的証拠などの有力な証拠がなければ、異議申し立てはなかなか認められません。

異議申立て手続きはあくまで当初の認定と同じ自賠責保険の中の手続きであるため、自賠責保険特有の判断基準によって行われることは変わりません。

しかし、裁判所における訴訟手続きについては、裁判官は自賠責保険の判断に拘束されるものではなく、判断基準も自賠責保険とまったく同じわけではありません。

自賠責保険では、障害等級が認められなかったものの、裁判では認められたというケースも多数存在しています。

ただし、裁判所は自賠責保険の判断を尊重する傾向があるため、望むような後遺障害等級の認定がなされなかったからと言って安易に訴訟を提起することはおすすめできません。

そのため、後遺障害認定に対してどのような手続きを進めていくべきかを判断するためには、交通事故事件の解決実績が豊富な弁護士に相談するようにしてください。

後遺障害認定の結果に納得できない場合のサポートについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

交通事故における後遺障害の4つのポイント

交通事故で後遺症を負って、適切に後遺障害の認定を受けるためには、以下の4つのポイントがあります。

  1. ① 症状固定までしっかり治療する
  2. ② 必要十分な後遺障害診断書の作成
  3. ③ 適切な認定を得られなかった場合には異議申立てを行う
  4. ④ 後遺障害に強い弁護士に相談する

以下、それぞれのポイントについて詳しくお伝えいたします。

 

①症状固定までしっかり治療する

まずは、症状固定までしっかり治療し、それでも治らなかった時に後遺障害の申請を検討していくことになります。

交通事故のケガの治療を行っていくと、症状が一進一退で、なかなかこれ以上は改善を見込めそうにないという状況にいたります。

通常、被害者に生じる症状は、交通事故にあった直後が一番重く、そこから治療をしていく中で徐々に症状の程度が緩和されていきます。

症状の程度が緩和されている場合には、治療の効果が出ているということになります。

もっとも、一定期間治療を行っていると、その効果も緩やかになってきます。

このように、これ以上治療を行っても症状の改善を期待することができないであろうという時点を「症状固定」といいます。

症状固定まで治療せず、途中で後遺障害を申請しても認定は厳しくなります。

極端な例でいうと、むちうちの症状で、1ヶ月しか通院していないのに後遺障害の申請をしてもまず認定されないでしょう。

そして、症状固定の判断は、医学的な判断になります。

したがって、医学的知見を持って、もっとも患者に接している主治医の意見が最も参考にされることになります。

突然、加害者側の保険会社から「症状固定とします」、「治療費を打ち切る」と告げられることがありますが、保険会社の担当者が判断できることではありません。

保険会社から、症状固定と一方的に言われた場合には、主治医に相談することをおすすめします。

主治医の先生に症状固定と言われた場合には、何か余程の事情がない限りは、その時点で治療費は打ち切られることになります。

症状固定後は、後遺障害等級の申請をするか、あるいは、示談交渉に入ることになります。

ただし、主治医から症状固定と言われたとしても、治療を止めなければならないというわけではありません。

治療費の補償を交通事故の加害者に請求することは困難ですが、被害者の方の健康保険を使用して、自費で治療を継続することは可能です。

医師に、突然、症状固定と言われないためにも、主治医とは日頃から十分にコミュニケーションを取ることが大切です。

症状固定時期について、相手方と争いになって話し合いで決まらない場合には、裁判所に決めてもらうことになります。

裁判所は、事故の規模、傷病名、治療の経過、症状の推移、医師の見解など様々な事情を考慮して、症状固定日を確定することになります。

症状固定した後は、後遺障害の申請を検討することになります。

症状固定になった時点で、違和感程度の症状であれば後遺障害申請の必要はないかもしれませんが、痛みが残っているのであれば、申請された方がいいでしょう。

 

②必要十分な後遺障害診断書の作成

後遺障害診断書とは、後遺症が残ってしまった場合に医師にその症状などを書いてもらう書類のことをいいます。

後遺障害診断書は、整骨院の柔道整復師では作成することができず、医師のみが作成できる診断書です。

したがって、後遺症の不安がある場合には、定期的に病院に通院することをお勧めします。

作成費用は病院によって異なりますが、多くの病院では5000円〜1万円程度です。

後遺障害の申請を行うにあたっては、必ず後遺障害診断書が必要となります。

後遺障害等級の審査は、後遺障害診断書に記載されている事項について審査されるため、審査の対象としてほしいことは全て記載しておく必要があります。

後遺障害診断書に記載されていない事柄は、他の診断書に記載されていても審査の対象とはなりませんので、後遺障害診断書の記載内容はとても重要です。

特に、以下の点の記載に漏れがないかチェックしてください。

  • 「自覚症状」の欄は、被害者が訴えていた症状が網羅的に記載されているか容
  • 「他覚症状および検査結果」の欄は、必要な検査をした上でその結果がしっかり記載されているか
  • 可動域の記載は、右左(負傷部位と異常がない方どちらも)両方とも記載があるか
    可動域制限は、基本的に患側(負傷部位)と健側(異常がない方)を比較して後遺障害を判断します。

後遺障害申請は、後遺障害申請に関する知識、医学的な理解、提出する証拠資料の精査など専門的なノウハウが必要です。

そのため、後遺障害申請する際には、後遺障害に詳しい弁護士に相談され、適切なアドバイスを受けるようにすることが重要です。

もちろん、アドバイスだけではなく、弁護士であれば後遺障害の申請を代理でおこなってくれる場合もありますので、一度弁護士を探されることをお勧めします。

 

③適切な認定を得られなかった場合には異議申立てを行う

自賠責保険会社の決定の内容に納得がいかない場合には、異議の申立を行うことも考えられます。

後遺障害申請に対する決定の内容は、1〜14級までの等級あるいは、非該当(後遺障害には該当しない)のいずれかが記載されています。

その決定に対して不服がある場合には、新しい証拠を提出して、再度の検討を請求する異議申立てという制度があります。

異議申立てをすることによって、後遺障害の認定結果が覆ることもあります。

そのため、自賠責保険会社の決定の内容に納得がいかない場合には、適切な賠償金の獲得を目指すために異議申立てを行うことも有用です。

後遺障害の異議申立てを成功させるためには、なぜ希望どおりの後遺障害の等級に認定されなかったのかを分析することが重要です。

まず、自賠責保険からの認定結果が記載されている通知文書とその「別紙」で、後遺障害の認定(非該当)の理由を確認します。

次に、その理由に対して、現状の証拠で反論できないか検討します。

現状の証拠で反論できなさそうな場合には、反論するために必要となりそうな新たな証拠がないか検討します。

例えば、非該当の認定の理由が「画像所見がない」という理由であれば、本当に画像所見がないのか、主治医に確認して必要に応じて意見書を作成してもらうことを検討します。

また、画像鑑定の専門業者に依頼して、本当に「画像所見がない」のかを鑑定してもらうことも検討すべきでしょう。

また、症状の一貫性や連続性に疑いがあるのであれば、それを払拭するために病院のカルテを取得することを検討すべきでしょう。

このように、認定結果の理由を分析して、それに反論できる証拠がないかを十分に分析することが大切になってきます。

 

④後遺障害に強い弁護士に相談する

被害者は、けがをして治療をしなければならず、日常生活にも大きな影響を受けますが、それだけではなく、保険会社との間でも情報弱者となってしまいます。

後遺障害についても同様で、被害者の方は、痛みや動きの制限、骨の変形などが残っても、どのような補償が受けられるのか、自分の症状は後遺障害になるかどうかなど、わからないことがたくさんあるのです。

そこで、交通事故を専門とする弁護士に相談することで、後遺障害のことについて、アドバイスを受けることができます。

その上で、後遺障害についての申請も必要書類の収集など、被害者が自分で行うことはとても大変な手続きです。

そのため、弁護士に相談して、依頼をすれば、後遺障害の申請に向けた書類の準備や整理、後遺障害診断書の作成についてのアドバイス、サポートを受けることができます。

また、すでに後遺障害の認定結果が出ているケースでは、弁護士に相談することで、その認定結果が妥当なものなのかどうか、専門家の視点からチェックしてもらうことができます。

チェックの結果、結論が変わる可能性があると判断できれば、先ほど紹介した後遺障害の再調査=異議申立てのサポートを受けることも可能です。

具体的には、異議申立て書の作成やその根拠となる資料の収集、分析を弁護士に行ってもらうことができます。

さらに、後遺障害も含めて、今回のケースでどのくらいの賠償金が妥当な金額なのかについて、専門家である弁護士からアドバイスを受けることができます。

そのため、被害者自身が弁護士に相談することで、賠償金の目安を把握することができるという点も弁護士に相談することで得られる大きなメリットといえます。

なお、弁護士に対応を依頼する場合には、費用と時間がかかることになりますが、被害者が弁護士費用特約に加入しているケースでは、弁護士に依頼する際にかかる費用をご自身の保険会社が負担してくれることになります。

そのため、原則自己負担なしで弁護士によるサポートを受けることができます。

この弁護士費用特約は保険会社との示談交渉だけでなく、後遺障害の申請などのサポートも対象となっていますので、活用をすべきでしょう。

なお、後遺障害で弁護士に相談するメリットや弁護士費用などについては、以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考にしてください。

 

 

交通事故における後遺障害のQ&A

後遺障害等級認定はどのタイミングで申請する?

後遺障害の申請の時期は、症状固定に至った時期です。

症状固定とは、体の痛みや動かしづらさは残存しているものの、現代医学ではこれ以上改善が望めない状態です。

症状固定は、医学的判断になりますので、その時期がいつの時点になるかは、主治医の先生の意見が最も重要となります。

最終的に訴訟となった場合には、裁判官が判断することになりますが、医学の専門家である医師でしかも被害者の治療経過を把握している主治医の意見は参考にされます。

保険会社から症状固定だから後遺障害申請をして下さいと言われてもそれを鵜呑みにしてはいけません。

保険会社からこのように言われた場合には、主治医の先生と相談し、専門の弁護士に相談されるべきです。

むちうち等の他覚所見がない場合(レントゲンやMRIで異常が見られない場合)には、治療期間が6ヶ月よりも短いと認定されづらい傾向にあります。

保険会社から治療の打ち切りを受けたとしても、症状が強く残っている場合には、健康保険を使用するなどして治療を継続し、6ヶ月程度は通院を継続しなければ、後遺障害に認定される可能性は低いでしょう。

もちろん例外もあり、骨折などでうまく骨がくっつかなかったような場合であれば、3ヶ月程度で症状固定に至った場合でも後遺障害に認定される可能性はあります。

 

後遺障害に認定されるデメリットとは?

後遺障害の認定は適切な方法を選択すればデメリットはありません。

むしろ後遺障害認定を受けることによって後遺障害等級に応じた金額をもらうことができ、賠償金の増額に繋がります。

事故に遭った後、通院を続けていたにもかかわらず完治しないことにより、生活や仕事に支障が出るような症状が残ってしまった場合は、後遺障害の認定を受けた方が良いでしょう。

ただし、後遺障害の申請認定の方法によっては被害者の方々が損をする可能性があるので注意が必要です。

被害者の方々が損をしないためにも交通事故を専門とする弁護士に被害者請求を依頼することをお勧めします。

 

 

 

まとめ

この記事では、後遺障害の概要や後遺障害を負った場合の賠償金の相場、後遺障害認定を受けるための手続きについて解説してきました。

事故にあって後遺障害が残ってしまうということは、被害者の方にとって、その後の生活にもとても大きな影響を与えることになります。

少しでも不安を取り除き、安心して生活をするためにも、適切な後遺障害の等級を受けること、適切な賠償金を受けることは非常に重要です。

そのためには、交通事故を専門的に取り扱う弁護士に相談、依頼することが重要です。

当事務所には、交通事故案件を日常的に処理する弁護士が所属する人身障害部があります。

交通事故のご相談やご依頼後の事件処理は、すべて人身障害部の弁護士が対応いたしますので、安心してご相談ください。

電話相談、オンライン相談(LINE、Meet、FaceTime、Zoom)にて、全国対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

 

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