交通事故にあい線維筋痛症と診断されました。後遺障害になりますか?【弁護士が解説】
後遺障害を認める裁判例はありますが、後遺障害として認められないことが大多数です。
症状
線維筋痛症は、広範囲あるいは部分的に痛みが生じます。
その痛みの程度は軽度のものから激痛が走るものまで患者さんによって異なります。
主な症状は疼痛で、重症化すると立ち上がったり歩行することも困難になり日常生活に支障が出る場合もあります。
男性よりも女性に多く、中高年の方に多い病気です。
線維筋痛症の診断基準
診断にあたっては、1990年にアメリカのリウマチ学会が発表した基準が有用であると指摘しています。
具体的には、以下のチェックポイントがあります。
ここで広範囲とは、右半身と左半身、上半身、下半身、頚椎、前胸部、胸椎、腰椎とされています。
つまり、全身に痛みがあるというのがチェックポイントになっています。
また、触診の強さについて、4kg/cmされており、この強さは押さえるのに使用する指の爪が白くなる程度の力とされています。
この強さで押したときに痛みに対する言葉で出るかどうか、痛いという表情をするかどうかという点をチェックすることになっています。
線維筋痛症として認めてもらうためには、こうした診断基準を満たしていることが必要となります。
原因
線維筋痛症の発症の原因は、明確には解明されていません。
その人の置かれた環境や体調など様々な要因が組み合わさり、何かの拍子で発症します。
交通事故が原因で発症することも考えられますが、レントゲンやMRI等で客観的に証明することはできないため、交通事故が原因で発症したことを立証するのは容易ではありません。
後遺障害認定の問題点
これまで記載しているとおり、線維筋痛症は、その発症の原因が解明されていないため、証明が困難です。
したがって、後遺障害の申請をしたとしても、せいぜい14級9号が認定される程度で、線維筋痛症を全面的に認めた上で、高い等級を獲得することは難しいです。
線維筋痛症で後遺障害等級を認めてもらうためには、裁判所に認定してもらう必要がありますが、それも容易ではありません。
多くの裁判例では、事故と線維筋痛症の因果関係を否定しています。
以下では、交通事故と線維筋痛症の発症を認めて、後遺障害認定がされた事例について、ご紹介します。
判例 事故と線維筋痛症の因果関係が認められた判例
被害者が、原動付自転車で走行していたところ、加害者の車両に接触され転倒し、骨盤等の骨折を負いました。
被害者はこの交通事故により線維筋痛症を発症したと主張して裁判を起こしました。
裁判所は、被害者が前記したアメリカのリウマチ学会の基準を満たすこと等を理由に、被害者が線維筋痛症を発症していることを認定しました。
その上で、以下の事情を指摘して因果関係を認めました。
- 被害者が交通事故前は、概ね健康な人であったこと
- 線維筋痛症が重い負傷を有力な原因として発症するに至ったとされる症例が相当数紹介されていること
- 被害者の主治医らが、線維筋痛症の発症を事故と関連あるものと認識していること
裁判所は、こうした事情を踏まえて、線維筋痛症の発症について、被害者の骨盤骨折等の重傷による肉体的なストレスが作用している蓋然性は優にあると判断して、後遺障害7級4号に該当することを認めたのです。
【京都地裁 平成22年12月2日判決】
このように、交通事故と線維筋痛症の発症を認めた裁判例はありますが、大多数の事例では、その立証は困難を極め、線維筋痛症として後遺障害認定を受けることは難しいのが現状です。