休業損害証明書とは?書き方・必要書類や注意点【記入例あり】
休業損害証明書とは、事故により仕事を休んで給料が減ってしまったことを証明する書類であり、勤務先に作成してもらう書類です。
会社員などの給与所得者が休業損害を請求する際には、休業損害証明書が大変重要になります。
休業損害証明書の雛形は、保険会社から入手することができます。
休業損害証明書は、雛形の所定の欄に必要事項を記入していくことで作成できるものであり、それほど作成困難なものではありません。
しかし、休業損害証明書を作成する機会はそれほど多いわけではないので、休業損害証明書の作成を担当することになっている方でも、「『休業損害証明書を作成してほしい』と急に言われても、どのように書けばよいのかよくわからない」という方は少なくないと思われます。
また、被害者の方でも、「会社の担当者から書き方などについて説明を求められたが、どう説明すればよいのかわからない」という方もおられるかと思います。
そこで、今回は、休業損害証明書の雛形、書き方、休業損害証明書の書式の入手方法、その他の必要書類、休業損害証明書の注意点などについて、わかりやすく解説していきます。
休業損害証明書のことでお困りの方は、ぜひご一読ください。
目次
休業損害証明書とは?
休業損害証明書とは、交通事故によるケガの治療・療養のために仕事を休んだ際に、休業の状況(休んだ日付、回数、給与の支給の有無など)、事故前の収入など、休業損害の計算のために必要な事項について、勤務先の会社に記載してもらう書類のことです。
休業損害証明書の様式は、基本的には保険会社ごとに決められており、保険会社から指定された書類に必要事項を記載して作成することになります(記載事項はほぼ同じです)。
何のために必要?
休業損害証明書は、給与所得者(会社員、アルバイト等)が休業損害を請求するために必要になります。
休業損害を請求することになるのは、交通事故でケガをし、治療・療養のために仕事を休まなければならなくなり、収入の減少が生じた場合です(有給休暇を利用した場合は、収入が減少していなくても、休業損害を受け取ることができます。)。
この休業損害を算出するためには、会社員などの給与所得者の場合には、
- 基礎収入(事故前3か月間の収入・勤務日数を基に算出する)
- 休業日数
を明らかにする必要があります。
休業損害証明書は、基礎収入を算出するために必要な事故前3か月間の収入・勤務日数と、休業日数などについて、わかりやすく記載できる形式になっています。
しかも、被害者自身ではなく、第三者である勤務先が作成するものになっていますので、信用性も高くなっています。
そのため、休業損害証明書を提出することにより、スムーズに休業損害を受け取ることができるようになります。
休業損害証明書の書き方
休業損害証明書の雛形・記入例
休業損害証明書は、通常、次のような形式になっています。
休業損害証明書の書き方の説明
上の雛形に沿って、休業損害証明書の書き方についてご説明していきます。
①休業期間・内訳
休業損害証明書には、まずは、交通事故によって仕事を休んだ期間を記載します(雛形の1項)。
連続して休んでいない場合は、休み始めた日と休みの最終日を記載します。
例えば、2024年4月3日、10日、18日、24日に欠勤し、それで治療が終了した場合、「2024年4月3日から2024年4月24日までの期間仕事を休んだ」と記載します。
次に、その期間内に実際に休業した日について、欠勤したのか有給休暇を取得したかなどの内訳を記載します(雛形の2項)。
この際、欠勤した日と有給休暇を使用した日は区別して記載します。
遅刻・早退、半日欠勤、半日有給休暇の回数についても記載します。
さらに、具体的に何月何日に休むなどしたかが分かるように、表に記載します(雛形の3項)。
②給与の支払状況
休業した日(有給休暇を除く)の給与の支給状況を記載します(雛形の4項)
一部支給・減給した場合は、その額及び計算根拠(式)を記入します。
③事故前の直近3か月間の収入
基礎収入の算定資料として、事故前直近3か月間の月例給与について記載します(雛形の5項)。
この際、賞与と毎月の給与は区別して取り扱います。
上の書式では賞与は記載しないこととなっていますが、書式によっては、賞与について記入する欄がある場合もあります。
給与の毎月の締切日、所定勤務時間、勤務日数、給与計算の基礎となる月給・日給・時給などについても正確に記載しましょう。
④社会保険給付の有無
労災保険、健康保険等の社会保険から「休業補償給付」「傷病手当金」の給付を受けているかについて記載します(雛形の6項)。
給付を受けている場合は、給付している機関の名称、電話番号を記載します。
休業損害証明書は誰に書いてもらうべき?
休業損害証明書は、勤務先の会社に書いてもらうべきものです。
派遣社員の方の場合は、派遣元の会社に作成してもらいます。
会社が書いてくれない場合自分で書いていいの?
会社が書いてくれない場合も、休業損害証明書を自分で書いてはいけません。
休業損害証明書は勤務先の会社に作成してもらうことを予定している書類なので、被害者自身で作成することはできません。
被害者自身で作成してしまうと、保険会社から、「会社に休業損害証明書を書いてもらえないのはおかしいのでは?内容に嘘があるのでは?」と疑われてしまいかねません。
保険会社にそのような印象を持たれると、その後の示談交渉にも影響するおそれがあります。
休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対処法としては、
- 休業損害証明書を書いてくれるよう会社を説得する
- 上司や社内の相談窓口に相談する
- 給与明細、源泉徴収票、タイムカードなどの資料を揃える
といったものがあります。
いずれの方法をとるにせよ、押さえておくべきポイントや注意すべき点などがありますので、会社が休業損害証明書を書いてくれない場合は、一度、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
なお、会社関係者のフリをして休業損害証明書に署名・押印する、会社印を勝手に作って(又は使って)押してしまう、などといったことをすると、有印私文書偽造という犯罪になりますので、絶対にやめましょう。
休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対処法などについては、以下のページで詳しく解説しております。 お困りの方は、ぜひ一度ご覧ください。
休業損害証明書の様式や雛形はどこでもらえる?
保険会社からの郵送
休業損害証明書は、加害者側の保険会社に依頼すれば、保険会社から郵送してもらうことができます。
保険会社と電話で話す際などに、交通事故によるケガで休業していることを説明し、休業損害証明書を送るよう頼んでみましょう。
各保険会社ウェブサイトからのダウンロード
最近では、保険会社の中には、自社のウェブサイトから休業損害証明書の書式や記載例をダウンロードすることなどができるようにしているところもあります。
いくつかの例をご紹介します。
損保ジャパン
損保ジャパンでは、ウェブサイトから、休業損害証明書の記載例をダウンロードできるようになっています。
この記載例には、休業損害証明書を作成する際の注意点についても詳しく書かれていますので、勤務先の会社に休業損害証明書の作成を依頼する際に、休業損害証明書の書式と合わせて渡すようにするとよいでしょう。
参考:休業損害証明書はどのように書けばいいですか?|損保ジャパン
イーデザイン損保
イーデザイン損保では、休業損害証明書の記載例をサイト上で紹介しています。
休業損害証明書の作成方法に関する簡単な説明も掲載されていますので、ご活用ください。
三井住友海上
三井住友海上では、休業損害に関する説明や休業損害証明書の記載方法の説明を、記事にして取り上げています。
この記事の中に、休業損害証明書の見本も掲載されています。
記事ではほかにも、健康保険、労災保険と休業損害の関係、休業損害を請求する際の必要書類などについても解説されています。
参考:休業損害証明書とは?記載項目や保険金請求手続きに必要な書類を解説|三井住友海上
チューリッヒ
チューリッヒでは、以下のページから、休業損害証明書の雛形をダウンロードすることができます。
このページでは、休業損害証明書の書き方、記載例、休業損害を請求する際の必要書類などについても解説しています。
参考:休業損害証明書の書き方とひな形(テンプレート)|チューリッヒ
ソニー損保
ソニー損保では、以下のページから、休業損害証明書の雛形(テンプレート)をダウンロードすることができます。
このページには、休業損害証明書の記載例、記載方法に関する説明も掲載されています。
休業損害の請求で必要となるその他の書類
休業損害を請求する場合には、休業損害証明書のほかにも提出すべき書類があります。
提出すべき書類は、被害者の職業によって異なります。
給与所得者(会社員、アルバイトなど)の場合
会社員、アルバイトなどの給与所得者の場合は、休業損害証明書に加えて事故前年の源泉徴収票を提出します。
就職したばかりであるなどの事情により源泉徴収票が提出できない場合は、賃金台帳の写し、雇用契約書、労働条件通知書などを提出します。
源泉徴収票を紛失した場合には、市役所などで所得証明書を発行してもらえば、源泉徴収票の代わりになります。
会社が休業損害証明書を書いてくれない場合
会社が休業損害証明書を書いてくれない場合は、給与明細、源泉徴収票、勤怠表、賃金台帳の写し、タイムカードなどの資料を揃え、保険会社に提出することになります。
ただ、これらの資料を整えても、休業損害証明書がないと、十分な休業損害を受け取ることができない場合があります。
そのため、できれば、勤務先の会社を説得し、休業損害証明書を書いてもらいたいところです。
休業損害証明書を会社に作成してもらえない場合は、一度、交通事故問題に詳しい弁護士に相談して、対応策を検討してみましょう。
会社が休業損害証明書を書いてくれない場合の対処法については、以下のページでも詳しく解説しています。
自営業者・個人事業主の場合
自営業者や個人事業主の場合には、休業損害証明書は原則として不要となっており、代わりに前年の確定申告書の写しを提出します。
ただし、保険会社によっては、自営業者等である被害者に、自ら休業損害証明書を作成するよう求めているところもあります。
詳しくは、相手方の保険会社に問い合わせてみましょう。
休業損害はいくらもらえる?
休業損害の金額は、ケガの状況、被害者の職業、収入によって様々であり、相場がいくら程度か、とは一概にはいえません。
休業損害の計算式は、以下のようになります(弁護士や裁判所が用いる弁護士基準(裁判基準)の場合)。
つまり、休業損害は、基礎収入と休業日数によって決まります。
基礎収入は、被害者の職業(会社員、自営業、個人事業主、会社役員、無職者、主婦など)によって算定方法が異なります。
基礎収入の算定方法に関する詳細は、以下のページをご覧ください。
休業日数は、実際にケガの治療・療養などのために仕事を休んだ日数になります。
そのため、休業日数は、ケガの程度などによって変わってきます。
また、医師からや仕事を休むように言われていても、仕事の都合で休むことができなかった場合には、休業日数には含まれず、休業損害は発生しません。
なお、主婦のように実際に休業していたかがはっきりしない場合、加害者の保険会社との間で、休業日数について争いになるケースがよくあります。
以上のように、休業損害は事案によって様々なので、それぞれのケースに即して計算しなければ、金額を見積もることができません。
この計算をどなたでも簡単に行えるよう、当事務所では、休業損害計算ツールを無料でご提供しております。
この計算ツールを使えば、職業、給与・収入額、事故前の実勤務日数、休業日数などから、休業損害を自動的に算出することができます。
計算ツールのご利用時には、お名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報の入力は必要ありませんし、後日当事務所からご連絡することもございません。
休業損害証明書の注意点
嘘を書かないこと
休業損害証明書には、嘘の内容を記載してはいけません。
休業した日数や事故前の収入の水増しなどをしようとして、休業損害証明書に嘘の記載をすると、結局は自分自身が不利益を被ります。
虚偽記載がバレたらどうなる?
休業損害証明書に虚偽の記載をし、本来よりも多額の休業損害を得た(又は得ようとした)ことがバレると、詐欺罪(又は詐欺未遂罪)で摘発される可能性があります。
そこまでの事態にはならなかった場合でも、休業損害証明書に虚偽の記載をしたとなると、相手方の保険会社との信頼関係が崩れてしまうので、その後の示談交渉が大変難しくなります。
有給休暇を使ったら休業損害はどうなる?
有給休暇を使った場合、減収は生じませんが、休業損害は請求することができます。
休業損害は実際に収入が減少していなければ請求することができないのが原則なのですが、有給休暇を使った場合は例外です。
有給休暇を使った場合、「被害者は、本来自由に使えたはずの有給休暇をケガの治療のために取得せざるを得なくなっており、損害を被っている」と捉えられるのです。
他方、傷病休暇を取得した場合、傷病休暇は負傷又は病気のため療養する必要がある場合に限って取得できるものであって、有給休暇のように自由に使用できるものではないことなどから、傷病休暇を取得した日の分として支給された給与は、休業損害から差し引かれることが多いです(名古屋地裁令和2年11月30日判決・交民53-6-1563参照)。
全額支給された判例
有給休暇を使用した日について休業損害が全額支給された判例としては、以下のものがあります。
土木建設会社の部長が有給休暇を取得したケースで、本来なら自分のために自由に使用できる有給休暇を事故による傷害のために欠勤せざるを得ない日に充てたのであるから、有給休暇を取得した日も休業損害算定の基礎日数とすべきであるとして、休業損害を認めたケース
―神戸地裁平成13年1月17日判決・交民34-1-23
毎月の支払いが少ない場合は示談で請求
休業損害は、多くのケースでは治療等が終了して示談が成立した後に支払われます。
ただ、加害者側の保険会社が応じてくれれば、治療のために休業しているうちから休業損害を受け取ることができます(休業損害の先払い)。
しかし、休業損害の先払いを受ける場合、毎月の支払い額が低く抑えられる可能性があります。
現在の実務では、保険会社が休業損害の先払いに応じることは一般的でないため、被害者としては、先払いに応じてもらうために、金額面では我慢せざるを得ない状況があるためです。
とはいえ、先払いを受ける際に低い金額で我慢してしまった場合(=毎月受け取っている休業損害の額が少ない場合)は、「休業損害については先払い分以上請求しない」との合意でもしていない限り、最終的な示談交渉で適正額との差額を請求することができます。
毎月の支払い額が少ない場合は、後の示談交渉で不足分について請求しましょう。
休業損害にくわしい弁護士に相談する
休業損害や休業損害証明書の記載方法について疑問があるときは、休業損害にくわしい弁護士に相談しましょう。
交通事故問題の経験が豊富な弁護士であれば、休業損害にも詳しいことが多いです。
休業損害に詳しい弁護士であれば、休業損害証明書の書き方はもちろん、ケースに応じた休業損害の算出方法、休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対応方法、休業損害の先払いを受けたい場合の対処法などについてもアドバイスをしてくれます。
さらに、弁護士に損害賠償の示談交渉を依頼すれば、
- 被害者に最も有利な弁護士基準での算定額に近い賠償金を得られる可能性が高まる
- 示談交渉の窓口を弁護士に任せ、自分は治療や生活・仕事の立て直しに専念することができる
- 治療方針などについて困ったことがあったときに、気軽に相談することができる
などのメリットもあります。
弁護士費用については、交通事故被害の場合、自動車保険の弁護士費用特約に加入していれば、保険によってまかなうことができる場合が多いです。
交通事故については早いうちから弁護士に相談すべきである理由、交通事故に詳しい弁護士の探し方については、以下のページをご覧ください。
休業損害証明書についてのQ&A
休業損害は月毎に請求できますか?
休業損害の先払いを受けるための方法には、以下のようなものがあります。
- ① 加害者側の保険会社に請求する
- ② 自賠責に仮渡金の請求をする
- ③ 自賠責に被害者請求をする
- ④ 裁判所に仮払い仮処分の申立てをする
毎月休業損害の支払いを受けたい場合は、上のうちの①を選ぶことが多いです。
①の場合、加害者側の保険会社が納得してくれれば、毎月休業損害が支払われるようになります。
毎月休業損害の支払いを受ける場合、会社員などの給与所得者であれば、休業損害証明書を毎月提出する必要があります。
もっとも、事案や保険会社の方針によっては、先払いを断られることがあります。
「先払いに応じるのだから」と、毎月の支払い額を低く抑えられてしまうこともあります。
また、労災保険や健康保険から休業補償や傷病手当金を受け取っている場合、休業損害と両方受け取ることはできませんので、注意が必要です(労災保険からの特別支給金は、休業損害と関係なく受け取ることができます)。
交通事故の傷病手当金については、以下のページをご覧ください。
休業損害の先払いを受ける方法、注意点などについては、以下のページにて詳しく解説しております。
休業損害証明書は自分で書けますか?
休業損害証明書を被害者自身で書いてしまうと、保険会社から、「会社に書いてもらうべき書類を自分で書いてくるとは、何か隠し事をしているのではないか」などと疑われ、その後の交渉にも支障をきたしかねません。
会社や担当者の名前を勝手に使って署名・押印し、休業損害証明書を作成してしまうと、有印私文書偽造罪という犯罪になり、逮捕などされる可能性もあります。
休業損害証明書は、必ず勤務先の会社に作成してもらいましょう。
会社が休業損害証明書を作成してくれない場合には、
- ① 休業損害証明書の書き方、必要性などを丁寧に説明し、作成してもらえるようお願いする
- ② 社内の相談窓口や上司に相談する
- ③ 賃金台帳、給与明細、源泉徴収票、タイムカードなどの資料を集める
- ④ 交通事故に詳しい弁護士に相談する
といった対応方法が考えられます。
休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対処法については、以下のページで詳しく解説しています。
まとめ
今回は、休業損害証明書の雛型、書き方、入手方法、休業損害証明書の注意点などについて解説しました。
休業損害証明書は、会社員などの給与所得者が休業損害を請求する際に大切になる書類です。
休業損害証明書には雛型があり、所定の欄を埋めていくだけで作成することができます。
そのため、休業損害証明書は、作成にそれほど手間がかかるものではありません。
被害者にとって重要な書類となりますので、この記事を参考に、ご作成いただければ幸いです。
休業損害証明書のことで分からないこと、困ったことがあるときは、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
交通事故に詳しい弁護士であれば、休業損害証明書の書き方、休業損害証明書を書く際の注意点などについても、個別のケースに即してアドバイスしてくれるでしょう。
当事務所でも、交通事故に関するご相談を受け付けております。
当事務所で交通事故事件の被害者のサポートに当たる弁護士は、交通事故を集中的に取り扱う人身傷害部に所属して経験を積んだ弁護士たちです。
交通事故に関する相談は初回無料となっておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。