交通事故の示談金とは?相場や計算方法をわかりやすく
交通事故の示談金とは、被害者と加害者側(加害者・加害者が加入している保険会社)との間で、交通事故により発生した損害について、加害者側から被害者に対して事故解決を図るために支払われるお金のことをいいます。
交通事故示談金といってもその内訳には慰謝料だけでなく、治療費や休業損害といった様々な損害項目があります。
なお、交通事故示談金は、交通事故の数だけバリエーションがあります。
交通事故示談金の中には、車の修理費用といった実際に発生した損害を補填するためのお金も含まれています。
この場合、例えば、修理費用が100万円であった場合には、修理項目の妥当性が認められれば、100万円がそのまま修理費用として交通事故示談金として支払われることになります。
このように、実際に発生した損害の額に応じた賠償がされる損害項目もあることから、交通事故示談金について一律にこの金額であるとお示しすることはできません。
もっとも、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料のように一定の相場が形成されている損害項目もあります。
交通事故の慰謝料については、入通院慰謝料で通院1日あたり最高で約9333円、入院1日あたり最高で1万7666円、後遺障害慰謝料で110万円〜2800万円程度、そして死亡慰謝料で2000万円〜2800万円程度となります。
そこで、下記では、交通事故示談金の内訳と一定の相場が作られている損害項目についてご説明いたします。
目次
交通事故の示談金とは?
交通事故の示談金は、既にご説明したとおり、事故解決のため加害者側から支払われるお金のことをいいます。
交通事故示談金と慰謝料との違い
交通事故示談金は、慰謝料を始めとして交通事故により発生した損害(例えば、治療費・休業損害等)を全て含んだお金の総称をいいます。
つまり、慰謝料は交通事故示談金の1つです。
交通事故示談金の内訳
交通事故示談金の内訳のなかで代表的なものは以下の損害項目です。
①治療関係費
治療関係費とは、整形外科といった病院での治療費や整骨院での施術費用などが含まれます。
治療関係費として認められるためには、交通事故による怪我が原因で治療が必要となったという関係性が必要です(専門用語で「相当因果関係」があることが必要です。)
なお、交通事故の治療関係費を請求できるのは、症状固定日までです。
症状固定とは、痛みや体の動かしづらさは残っているものの、医学的見地からみて、これ以上は改善しない状態をいいます。
症状固定の詳細につきましては下記ページをご覧ください。
②通院交通費
通院交通費とは、病院に通院するための移動手段に発生した費用のことをいいます。
バスや電車といった公共交通機関については、例えば自宅から病院に公共交通機関を利用して通院した場合は、その際にかかった費用が通院交通費として計上されます。
通院のためにタクシーを利用した場合も、実際に発生した費用について通院交通費として認められます。
もっとも、タクシーについては、公共交通機関より高額となることが多いため、必要性が否定されやすい傾向にあります。
そこで、医者からタクシーの利用を指示されている等の事情が必要となります。
通院手段としてタクシーを利用する場合の注意点については下記のページをご覧ください。
③休業損害
休業損害とは、交通事故による怪我のため通院せざるを得なくなったことから、仕事を休んだり、時間を短くして勤務した場合の収入の減収のことをいいます。
④入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故による怪我の治療のため、通院・入院をせざるを得なくなったことによる精神的な苦痛を金銭に換算したものをいいます。
⑤車の修理費用
交通事故により、車が壊れてしまった場合には、その修理費用を請求することができます。
⑥車のレッカー、レンタカー費用
事故によって車が大破してしまい、自走できない状態になった場合には、事故現場から移動させるためにレッカー費用が発生します。
また、車を修理している間に日常的に車を使う必要がある場合に、レンタカーを借りた費用が発生します。
そこで、車のレッカー、レンタカー費用も交通事故により発生した損害として交通事故示談金に含まれます。
交通事故の損害項目に関する詳細につきましては下記のページをご覧ください。
交通事故示談金の相場はいくら?
ケース別の相場
交通事故によって発生する損害は被害者ごとによって異なります。
そのため、全損害項目について相場を出すことは極めて困難です。
以下では、交通事故示談金のうち入通院慰謝料・後遺障害慰謝料に着目した相場をご紹介いたします。
なお、入通院慰謝料の計算方法の詳細につきましては、下記のページをご覧ください。
ケース1 入通院慰謝料の計算
【むちうち症で3ヶ月通院(実際に通院した日数が各月15日以上の場合)した場合】
自賠責基準で計算した場合、38万7000円となります。
弁護士基準(裁判基準)で計算した場合、53万円となります。
このように、弁護士基準(裁判基準)で計算することで14万3000円の増額が見込めます。
ケース2 後遺障害がある場合の計算
【年収400万円、年齢40歳の方で、頸椎捻挫のため治療後、後遺障害等級14級が認定された場合】
自賠責基準の場合、後遺障害等級14級の認定があるため、後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益として75万円が支払われます。
一方、弁護士基準(裁判基準)で計算した場合、後遺障害慰謝料については110万円となります。
また、後遺障害逸失利益は下記の計算式により算定されます。
このように、弁護士基準(裁判基準)で計算することで126万5940円の増額が見込めます。
なお、後遺障害等級14級の場合について就労可能年数を5年を前提としたライプニッツ係数が採用される傾向にあります。
詳細につきましては下記の後遺障害逸失利益の計算方法をご覧ください。
以上のケース別に交通示談金の相場を確認していただいて分かる通り、弁護士基準(裁判基準)で賠償額を計算することで被害者の方々の手元に入る金額が増加します。
ケース3 物損の計算
【車の骨格部分に損傷があり、初年度登録が事故前3年以内、走行距離1万キロ、修理費用60万円の場合】
車の時価額が60万円以上であれば、修理費用として60万円の支払いを受けることができます。
また、評価損といって、事故によって車の評価が落ちてしまう損害についても請求できる可能性があります。
上記ケースにおいては、修理費用の1〜3割である6万円から18万円の幅で評価損が認められる可能性があります。
評価損の詳細につきましては下記のページをご覧ください。
スマホで簡単に示談金の相場を計算!
交通事故の示談金は個々の交通事故における過失割合や通院期間等によって変わります。
そこで、自身の交通事故の示談金がおおよそいくらになるのかについて自動計算機をご活用ください。
下記自動計算機では、慰謝料、休業損害、逸失利益について計算をすることができます。
交通事故示談金の計算方法
交通事故示談金の計算方法は、各損害項目によって決められています。
各損害項目について計算方法を理解しておけば、被害者の方々がご自身で獲得できる交通事故示談金の額を予測することができます。
下記サイトでは各損害項目の計算方法を詳細に解説しておりますのでご覧ください。
慰謝料の計算方法
入通院慰謝料の計算方法については、入院・通院期間に応じて計算されます。
後遺障害慰謝料については、各等級に応じて慰謝料が定まっています。
なお、後遺障害慰謝料においても、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判基準)によって金額が異なります。
慰謝料の計算方法の詳細については下記のページをご覧ください。
自賠責基準の場合
*なお、後遺障害による損害には、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の2つがあるところ、その合計額が下記表中の()内に記載している金額を超えたとしても()内の金額までしか支払いを受けることができません。
後遺障害等級 | 自賠責基準での慰謝料金額 |
---|---|
第1級 | 1650万円(4000万円) |
第2級 | 1203万円(3000万円) |
後遺障害等級 | 自賠責基準での慰謝料金額 |
---|---|
第1級 | 1150万円(3000万円) |
第2級 | 998万円(2590万円) |
第3級 | 861万円(2219万円) |
第4級 | 737万円(1889万円) |
第5級 | 618万円(1574万円) |
第6級 | 512万円(1296万円) |
第7級 | 419万円(1051万円) |
第8級 | 331万円(819万円) |
第9級 | 249万円(616万円) |
第10級 | 190万円(461万円) |
第11級 | 136万円(331万円) |
第12級 | 94万円(224万円) |
第13級 | 57万円(139万円) |
第14級 | 32万円(75万円) |
弁護士基準(裁判基準)の場合
後遺障害等級 | 弁護士基準(裁判基準)での慰謝料金額 |
---|---|
第1級 | 2800万円 |
第2級 | 2370万円 |
第3級 | 1990万円 |
第4級 | 1670万円 |
第5級 | 1400万円 |
第6級 | 1180万円 |
第7級 | 1000万円 |
第8級 | 830万円 |
第9級 | 690万円 |
第10級 | 550万円 |
第11級 | 420万円 |
第12級 | 290万円 |
第13級 | 180万円 |
第14級 | 110万円 |
休業損害の計算方法
休業損害の計算式は下記の通りです。
休業損害についても、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料と同じく、弁護士基準(裁判基準)、任意保険基準、自賠責基準の3つの基準が存在します。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準(裁判基準)では、事故前直近3ヶ月の給与の合計を稼働日数で割って1日の単価を出し、その金額に休業日数を乗じて計算します。
任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社が内部的に定めている賠償の基準であるため、外部に明確には公表されていません。
したがって、各社によって異なる部分はありますが、裁判基準よりは低い賠償水準になることがあります。
自賠責基準
自賠責基準とは、交通事故の場合に自賠責保険が賠償金を計算する場合の基準をいいます。
自賠責基準では、1日あたりの金額が原則として6100円となっています。
休業損害の計算方法の詳細については下記のページをご覧ください。
逸失利益の計算方法
逸失利益とは、仮に事故が起きなかった場合、将来得られたであろう収入の減少分の損害をいいます。
後遺障害による将来の減ってしまう収入をあらかじめ補償するものが逸失利益です。
逸失利益の計算方法は以下の計算式で計算します。
基礎収入とは、事故前年度の年収をいいます。
これは、将来の収入を考える上で基本となる収入を決める必要があり、事故にもっとも近い事故前年度の年収が参考にされます。
労働能力喪失率とは、その後後遺障害がどの程度、本来の労働能力を失わせることになるかというもので、パーセントで表されます。
労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に応じて労働能力喪失率が決まっています。
労働能力喪失は下記の表の通りです。
後遺障害等級 | 労働能力喪失率 |
---|---|
第1級 | 100% |
第2級 | 100% |
第3級 | 100% |
第4級 | 92% |
第5級 | 79% |
第6級 | 67% |
第7級 | 56% |
第8級 | 45% |
第9級 | 35% |
第10級 | 27% |
第11級 | 20% |
第12級 | 14% |
第13級 | 9% |
第14級 | 5% |
参照:労働能力喪失率表
逸失利益の詳細な計算方法については下記のページをご覧ください。
喪失期間に対応するライプニッツ係数
ライプニッツ係数とは、中間利息控除を行うための係数です。
後遺障害逸失利益は、将来発生する金額を現時点で一括で受け取るため、いわば先取りの状態になります。
そうすると、本来よりも早めに受け取ったお金を運用できてしまい、その運用によって多くの利息を得ることができてしまいます(これは実際に運用していなくても生じてしまう問題です。)。
そこで、この取りすぎた利息分を調整するためにライプニッツ係数が後遺障害逸失利益の計算において考慮されるのです。
具体例 事故時年齢が30歳、年収300万円で後遺障害等級が12級を認定された場合
上記場合の計算式は以下の通りとなります。
300万円(基礎収入)× 14% × 8.5302 = 358万2684円
注意点としては、喪失期間に対応するライプニッツ係数です。
通常であれば、平均余命である67歳から事故時の年齢を引いた数を踏まえてライプニッツ係数を割り出します。
しかし、後遺障害等級12級あるいは14級の場合には、喪失期間を限定するケースが多くあります。
後遺障害等級12級であれば10年、14級であれば5年です。
そのため、上記具体例では、本来であれば、67歳から30歳を差し引いた37年間を喪失期間としてライプニッツ係数を割り出しますが、後遺障害等級14級の認定を受けているため10年間の喪失期間としてライプニッツ係数(8.5302)で計算しております。
このように、実際の交渉の段階では、計算式に従った金額が必ず獲得できるわけではなく、上記具体例のような交渉実務上の運用があります。
そこで、一度交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めいたします。
通院交通費
自家用車で通院した場合には、1キロあたり15円でガソリン代を請求することができます。
もっとも、通院の往復経路が合理的な経路を外れている場合には、Googleマップ等のツールで出された合理的な経路をもって距離を再計算されることがあるので注意しましょう。
具体例 通院日数が60日で、自宅と病院との間の往復の距離が6kmの場合の計算式
6km × 15円 × 60日 = 5400円
入院付添費
交通事故のために入院を余儀なくされた場合、被害者の両親が付添で看護をした場合、入院付添費として被害者自身に発生した損害として加害者側に請求できる場合があります。
入院付添費として請求できる金額としては以下の通りです。
近親者付添人(例えば被害者の両親) |
|
職業付添人 | 職業付添人に支払う必要があった実費全額 |
入院付添費の詳細については下記のページをご覧ください。
通院付添費
通院付添費とは、交通事故により怪我をして、病院に通院する必要がある時に、事故の被害者本人以外の人が通院に付き添った場合に生じる費用をいいます。
通院付添費として請求できる金額としては以下の通りです。
近親者付添人(例えば被害者の両親) |
|
職業付添人(例えばヘルパー) | 職業付添人に支払う必要があった実費全額 |
通院付添費の詳細については、下記のページをご覧ください。
交通事故示談金を受け取る流れ
交通事故示談金を受け取るまでの流れは下記の通りです。
③-1 症状固定
症状固定とは、治療をしたとしてもこれ以上治らない状態に至っている状態をいいます。
症状固定に至っているか否かについては基本的に主治医が判断します。
症状固定の詳細につきましては、下記のページをご覧ください。
③-2 治癒
治癒とは、事故による怪我の症状が治ったことをいいます。
④後遺障害申請
症状固定となった段階で、加害者側と示談をするのか、後遺障害申請を行うのかについて選択することができます。
骨折等の重症事案においては、症状固定となった場合、後遺障害申請を行う場合が多いです。
後遺障害申請をする場合には、通常、申請準備から認定結果が出るまでに2〜3ヶ月を要します。
また、認定結果が非該当であった場合には、不服申立ての手続きとして異議申立てがあります。
異議申立ては、申立をしてから結果が戻ってくるまでに、通常の場合だと、異議申立てから2〜3ヶ月程度、長い場合には半年を超える場合もあります。
後遺障害申請の詳細につきましては、下記のページをご覧ください。
⑤示談交渉
③の症状固定あるいは治癒となった段階あるいは、後遺障害申請の結果が出た段階で、お怪我の件について保険会社と交通事故示談金について交渉を開始することになります。
なお、物損につきましては、①の段階から③の段階に至るまでに先行して示談することもできます。
もっとも、過失割合について当事者間で争いがある場合には、交渉が長期化し、結果的にお怪我の示談と同じ時期に示談となる場合もあります。
加害者側との交通事故示談金について被害者が納得した段階で示談となります。
⑥裁判
交通事故示談金を獲得する上で必ず裁判が必要になるわけではありません。
裁判にまで発展するケースとしては、加害者が保険を使わずに損害を賠償する気がない場合や加害者側が提案する賠償額が不十分な場合です。
裁判をするメリットとしては、弁護士基準(裁判基準)に従った損害額が認められることや遅延損害金を請求できるところです。
一方、デメリットとしては、以下のものがあげられます。
- 整骨院の施術費用が否定される可能性がある
- 後遺障害等級の認定が覆る可能性がある
- 解決までに年単位の時間がかかる可能性がある
交通事故に関する裁判を起こすことについてのメリット・デメリットの詳細につきましては下記のページをご覧ください。
交通事故で適正な示談金を獲得するポイント
交通事故で適正な示談金を獲得するポイントは以下の5つです。
①病院に定期的に通院すること
交通事故示談金の中で入通院慰謝料は、既にご説明した通り、入院・通院期間に応じて金額が決まっています。
被害者の方々の中には「整形外科に通院するのは面倒だ」「仕事が忙しくて通院できない」と思われて通院をしない方々もいらっしゃいます。
しかし、病院に通院しない場合、通院慰謝料を獲得することはできません。
そのため、適切な慰謝料を獲得するためには定期的に通院する必要があります。
また、通院する病院としては整形外科と整骨院の2つが考えられます。
被害者の方々としては、時間の調整がしやすい整骨院をメインに通院される方もいらっしゃいます。
もっとも、整骨院をメインに通院することについては注意が必要です。
整形外科と整骨院では治療・施術をする主体が異なります。
整形外科の場合は医師、整骨院の場合は柔道整復師です。
柔道整復師による施術は厳密には医療行為ではありません。
そのため、保険会社としては、治療の必要性を判断するために医師の診断書を重視します。
そこで、整骨院に通院するとしても、整形外科にも定期的に通院し、主治医に現在の症状を伝えた上でその旨を診断書にきちんと反映してもらうようにしましょう。
②休業損害の立証に必要な証拠を準備すること
通院のために仕事を休まざるを得なくなったことにより、欠勤や有給を使ってしまった場合、休業損害として加害者側に請求することができます。
もっとも、いくら休業損害が発生したと口で説明したとしても保険会社は休業損害を支払ってくれません。
客観的に休業損害が発生したことを証拠により説明する必要があります。
会社に勤めている方々は「休業損害証明書」という書面を勤務先に提出してもらい、記入してもらうようにしましょう。
また、事故が発生した年の前年度の源泉徴収票(あるいは所得証明書)も必要となります。
個人事業主の場合は、事故が発生した年の前年度の確定申告書と治療のために売上が減少したことを示す資料が必要となります。
なお、個人事業主の場合は、会社に勤めている方々と違って売上が月毎に安定していない場合がありますので休業損害として認められにくい傾向にあります。
そのため、事故によってどのくらい売り上げが下がったかをしっかりと説明する必要があるのです。
専業主婦といった家事従事者の場合には、「住民票」を用意しておく必要があります。
「住民票」によって家族のために家事をしていることを示すことになります。
また、兼業主婦の場合には、事故が発生した年の前年度の「所得証明書」を用意する必要があります。
例えば、パートやアルバイトによって年間の売上がほとんどないことを示すために「所得証明書」が必要となります。
③後遺障害申請を行うこと
治療を一定期間続けても痛みや痺れが取れない場合や骨折によって骨が変形したり関節が動かしづらくなった場合には、後遺障害申請を検討する必要があります。
後遺障害申請の結果、後遺症に後遺障害等級が認定された場合、認定された等級に応じて後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益が支払われます。
注意すべき点としては、後遺症と後遺障害の違いです。
被害者の方々の中には、痛みが残っていれば何もせずとも後遺障害となると思われている方もいらっしゃいます。
これは、後遺症と後遺障害について正しく区別できていないことが原因です。
一般的な用語としての後遺症は、治療をしたとしても症状が改善しなかった状態を指しますが、これをもって後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益が認められることにはなりません。
後遺障害慰謝料及び後遺障害逸失利益を獲得するためには後遺障害として認定を受ける必要があります。
この後遺障害の認定を受けるための手続きとして後遺障害申請手続きがあるのです。
また、後遺障害等級の関係でよく問題となるのがむちうち症による痛みや痺れについての等級認定です。
むちうち症の場合、認定される可能性がある後遺障害等級は12級あるいは14級です。
むちうち症による痛みや痺れについて後遺障害等級を獲得するためには定期的な整形外科の通院が必要不可欠になります。
むちうち症に関する後遺障害申請のポイントの詳細につきましては下記のページをご覧ください。
④物損の立証資料を準備すること
交通事故の示談金の中には、物損という項目があります。
物損には、車の修理費用だけでなく、カーナビやスマホといった所持品が壊れてしまった場合も物損が発生したといえます。
そこで、所持品についてもきちんと賠償してもらうようにしましょう。
所持品の賠償を求めるにあたって注意すべき点としては、3つあります。
1つ目は、交通事故から間もない時間に壊れた所持品の写真を撮影することです。
これは、所持品が壊れた原因が交通事故によるものであることをはっきりさせるためです。
もし、写真を撮っていないと後々加害者側からこの傷は事故とは無関係の傷ではないかと疑われてしまう可能性があります。
そこで、きちんと事故と関係のある傷や破損であることを写真に撮って残しておくようにしましょう。
2つ目は、壊れてしまった所持品の領収書を探しておくことです。
所持品の価値については減価償却という考え方が用いられます。
減価償却とは、簡単に言えば、実際に購入してから年数が経つことによって、カーナビの価値が減っていくと考え、減った分の価値を事故当時のカーナビに反映することをいいます。
このように、所持品等について購入時の金額全てが損害としてカウントされません。
この減価償却のカウントは購入時から始まります。
そのため、いつ所持品を購入したかを確認するために壊れてしまった所持品の領収書が必要となります。
3つ目は、領収書がなかったとしても、いつの時点に買ったかが分かる資料を探すことです。
例えば、ネット上で買った場合には、パソコン上に購入履歴が残っているためこの購入履歴が一つの資料となり得ます。
どうしても資料がない場合には、被害者の記憶を頼りに自己申告で購入時期を決めるしかありません。
自己申告をした上で加害者側がこれを争わなければ、この時期を基点として価値を算定することになります。
⑤交通事故に強い弁護士に相談する
交通事故示談金の損害項目の中で弁護士基準(裁判基準)で計算するものが多々あったと思います。
これはその名の通り、弁護士が被害者と加害者側との間に入ることによって採用される賠償基準です。
弁護士基準(裁判基準)で計算した場合、他の賠償基準で計算するよりも基本的に金額は高くなります。
そのため、被害者の方々がご自身で交渉されるよりも弁護士に依頼する方が交通事故示談金の増額が見込めるのです。
なお、弁護士に依頼する際には着手金や報酬金が発生します。
ただ、被害者の方々が加入している保険の特約として弁護士費用特約に加入していれば基本的に弁護士に依頼する費用はかかりません。
そこで、一度弁護士に相談することをお勧めします。
また、相談される際には、被害者の方々が損をしないように金額の見通しが立つ交通事故に強い弁護士にご相談されることをお勧めします。
交通事故に強い弁護士に相談すべき理由の詳細につきましては下記のページをご覧ください。
交通事故示談金についての知恵袋
事故の示談金は誰が払うのですか?
①加害者本人
加害者が自賠責保険や任意保険に加入していない場合には、加害者本人から交通事故示談金を支払ってもらう必要があります。
②加害者が加入する自賠責保険(任意保険には未加入)
加害者が任意保険に加入しておらず、交通事故示談金を払ってくれない場合には、加害者が加入する自賠責保険に支払ってもらう必要があります。
なお、自賠責保険の場合、物損に関する賠償金は支払われません。
そのため、物損については加害者本人に請求せざるを得ません。
③加害者が加入する任意保険
加害者が任意保険に加入している場合には、任意保険から交通事故示談金を支払ってもらえます。
示談金はどうやって決めますか?
交渉で決まらない場合には、被害者が裁判をして決定することになります。
多くの場合は、保険会社側から被害者に賠償の提示があり、それを踏まえて交渉し示談金が決定されているケースが多いでしょう。
加害者が保険に加入していない場合には、加害者本人と交渉する必要があるので、示談金の決定が難航する可能性があります。
交通事故示談金はいつ振り込まれる?
この約束は口約束の場合もあれば、示談書という形で紙に残す場合もあります。
被害者としては、後々問題が起こらないようにするために示談書という形で書面で合意するようにしましょう。
交通事故示談金の振込時期は、上記約束の内容によります。
例えば、約束の中身が1週間後に支払うというものであれば1週間後が支払期限になります。
弁護士が加害者側の保険会社と示談する場合には、通常1〜2週間程度で相手方保険会社から振り込まれます。
交通事故示談金の税金はどうなる?
もっとも、相場を超えて賠償がなされた場合など例外的に課税の対象になることもあるので、注意しましょう。
まとめ
以上の通り、交通事故の示談金の相場や計算方法について解説いたしました。
交通事故の示談金には、治療費や慰謝料を始めとして様々な損害項目があります。
そのため、交通事故の示談金は、被害者ごとに金額が変わってきます。
もっとも、入通院慰謝料や後遺障害慰謝料のように事前に金額が予測できる損害項目もあります。
また、交通事故の示談金の中には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準(裁判基準)のように賠償基準が複数存在する損害もあります。
既にご説明している通り、基本的には弁護士基準(裁判基準)で計算される金額が他の基準と比較して高額になる傾向にあります。
そこで、一度交通事故を専門とする弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当法律事務所には、交通事故を専門とする弁護士が所属しております。
被害者の方々が適切な交通事故示談金を獲得できるようにサポートできる体制が整っております。
被害者の方の保険会社で、弁護士費用特約を付けられている場合は、特殊な場合を除き弁護士費用は実質0円でご依頼いただけます。
LINE等のオンラインや電話相談を活用して全国対応も行っていますので、交通事故全般についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。