後遺障害14級の認定に必要な通院日数とは?

執筆者:弁護士 北御門晋作 (弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士)


後遺障害14級の認定に必要な通院日数は、むちうちで骨折などがない場合は、半年以上が目安となります。

「交通事故で怪我をしたらむちうちの診断を受けて、通院を継続したけど、なかなか痛みが取れない。」

当事務所には、このような経緯で、多くの方がご相談にいらっしゃいます。

一般に、むちうちで半年以上通院をしても症状が残っているケースでは、後遺障害14級の認定を目指して後遺障害申請を行うことが多いです。

後遺障害14級に認定されると、賠償金が数百万円増額されることがありますので、今後の生活を維持していくためにもしっかりと対策をして、適切な認定を目指していくべきです。

後遺障害14級が認定されるためには、通院期間や通院回数は重要な判断項目です。

これから、後遺障害14級の認定に必要な通院日数、その他のポイントについて解説いたしますので、ぜひ参考にされてください。

なお、14級の中でも通院日数が特に重視されるのは、「局部に神経症状を残すもの」と認められた場合に認定される14級9号ですので、それを念頭においてご説明します。

後遺障害14 級の認定に必要な通院日数とは?

後遺障害14級の認定に必要な通院日数は、むちうちで骨折などがない場合、合計約80回以上の通院が一つの目安になります。

むちうちなどの目立った外傷のない場合には、保険会社から3か月程度で治療終了と言われることもしばしばあります。

しかし、保険会社に言われたからと言って、3か月で治療を終了した場合には、後遺障害14級の認定を受けることはかなり難しいです。

保険会社から「治療費の支払いは終了します。」と言われた段階で完治までしていない場合には、主治医の指示にしたがって、通院を継続した方が良いケースもあります。

 

後遺障害14級に必要な期間は?

後遺障害14の認定に必要な期間は、むちうち症などの明らかな骨折がない場合、目安として半年以上です。

後遺障害14級の審査では、将来の労働能力の喪失があることが要件とされていますので、将来にわたっても回復が難しいということが必要になっています。

将来にわたっても回復が難しいかどうかについては、事故の後にある程度の期間治療を継続してからでないと判断ができません。

そのある程度の期間の目安が半年と言われています。

 

通院の頻度は?

通院の頻度は、1週間あたり3回程度が目安になります。

後遺障害14級が認定されるには、相当程度の症状が残っていて仕事への支障が大きいことが前提になります。

例えば、2週間に1度の通院頻度の場合には、「症状が相当程度あるなら、頻繁に通院するのが普通で、今回はそれほど通院していないため、症状はほとんど存在しない。」と判断されてしまう危険があります。

仕事や家事が忙しい場合であっても、主治医の指示に従って、相応の頻度で治療を行うことをお勧めします。

 

 

後遺障害14 級の認定に必要なその他の条件

後遺障害14級の認定に必要な条件は、「局部に神経症状を残すもの」と認められることです。

先ほどご紹介しました通院日数は、「局部に神経症状」が残ったか否かの重要な手がかりとされます。

 

「局部に神経症状を残すもの」と認められる

後遺障害等級14級の中でも、14級9号は、事故が原因で発生した症状について、諸事情を踏まえて神経症状が残っていると医学的に説明できる場合に「局部に神経症状を残すもの」として認定されます。

神経症状として代表的なものは、頭痛、疼痛(痛み)、めまいが挙げられます。

交通事故の事案における認定基準は、労災の事案を参照しますので、労災における後遺障害の認定基準を示します。

症状 14級9号の認定基準の文言 意味
頭痛 通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの。 通常の仕事を行うことは可能であるものの、頻繁に頭痛が起きやすくなった。
疼痛(痛み) 通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほどんど常時疼痛を残すもの。 通常の仕事を行うことは可能であるものの、ほとんど常に痛みがある。
めまい めまいの自覚症状があるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないものの、めまいがあることが医学的にみて合理的に推測できるもの。 めまいはあるものの、眼球がけいれんしたように動いたり揺れたりすることや平衡機能が正しく働いているかどうかを調べる検査の結果に異常が認められない。
それでも、めまいがあることが医学的、合理的に推測できる。

画像上、異常が見られないむちうちが原因での症状の場合には、他の人が目で見てわかるものではないため、画像以外の事情を考慮して判断されることになります。

具体的な考慮事情としては、先ほどご紹介した通院回数以外にも、事故規模、事故態様、治療の経過・内容、症状の一貫性・連続性、画像上の所見の有無、神経学的検査の結果、などを考慮して判断されます。

 

事故規模

事故規模が大きいほど、14級を含む後遺障害認定の可能性が高くなります。

例えば追突事故では、トランクが少し凹んだ比較的小規模な事故と、車の骨格まで損傷するような大規模な事故を比較すると、後者の方が認定の可能性が高いです。

実際に、事故規模が大きいことを示すために自動車の修理に関する資料を提出するケースもあります。

 

事故態様

事故態様も後遺障害認定の際に考慮されている印象です。

例えば、車同士の事故と車対歩行者の事故を比較すると歩行者の事故では、生身で加害者側自動車の衝撃を受けることになりますので、大怪我をしやすいと思われる傾向にあります。

事故態様は、事故証明書や警察の作成した書類からわかります。

 

治療の経過・内容、症状の一貫性・連続性

治療の経過・内容、症状の一貫性・連続性についても考慮されます。

例えば、事故の翌日にはなかった症状を治療開始から2か月経ってから治療し始めても、「事故によって神経症状を負うことになったのが本当かどうかわからない」として、認定されないケースがあります。

また、治療を継続していくと症状に変化があることはありますが、二転三転していると、「事故によって神経症状を負うことになったのが本当かどうかわからない」として、認定されないケースがあります。

 

画像撮影の所見の有無

病院で画像を撮影してもらって、異常がある場合には、14級を含む後遺障害に認定される可能性が上がります。

いわゆるむちうち症の場合には、骨折などの明確な外傷がない場合もありますが、MRIの撮影などによって、変質などが発見される可能性があります。

そのような変質が原因で痛みなどの神経症状があると考えられる場合には、14級に認定される可能性が高まります。

 

神経学的検査

神経学的検査とは、神経の機能を確認するために行われるテストや質問による検査を指します。

神経学的検査の結果、医師が陽性(+)・陰性(−)の判断を行いますが、これが陽性(+)の場合には、後遺障害の認定の際に有利に考慮されます。

 

 

後遺障害14級の認定の4つのポイント

後遺障害14級の認定を受けるには、先ほど紹介しました条件が必須になります。

その条件を達成し、認定を受けられる可能性を高めるための4つのポイントを紹介します。

後遺障害14級の認定の4つのポイント

 

①早期に病院に行く

早期に病院に行くことが認定を受けられる可能性を高めるためのポイントとして挙げられます。

事故と怪我との関係性が証明できることが後遺障害14級の認定の要件になります。

交通事故の賠償金の対象となるのは、交通事故と関係性が認められる損害に限られます。

「事故が原因で怪我をした場合には、すぐに病院に行くだろう」という考えが実務的に多いので、速やかに病院で診察を受けるべきです。

基本的には、事故の当日、遅くとも翌日には、病院での診察を受けましょう。

交通事故から時間が経って診断を受けた場合には、「事故当初から症状はそんなに重くなかった」として、後遺障害の認定が受けられない危険性があります。

 

②病院でしっかりと治療をする

病院でしっかりと治療をすることも、後遺障害14級の認定に必須です。

しっかり通院するとは、病院メインで通院をすること、それなりの頻度で通院をすること、症状に対して一貫した治療を行うことを指します。

病院メインで通院をする

病院メインで通院をすることも重要です。

病院の診察時間になかなか通院できないため、その代わりに整骨院で施術を受けようと考えている方がいらっしゃいます。

これまでの後遺障害申請の傾向から、後遺障害認定に関しましては、治療はあくまで病院で行うものであり、整骨院はその補助という位置付けで考えている印象を受けます。

そのため、病院をメインで通院をすることが認定を受ける上で重要になります。

少なくとも、週1〜2回は病院で診察・治療を受けることをお勧めします。

 

それなりの頻度で通院をする

それなりの頻度で通院をすることもポイントになります。

概ね週3回程度が目安になります。

後遺障害14級は、症状が残り、日常生活や仕事に大きな支障がある場合に認定されます。

後遺障害申請において、それほど通院の頻度がない場合には、「そんなに通院に行っていないので、症状が重くない。」と判断される危険があります。

事実と違う判断を回避するためにも、治療の必要に応じてそれなりの頻度で通院を行うことも大事です。

 

症状に対して一貫した治療を行う

症状に対して一貫した治療を行うことも後遺障害14級の認定のために必要となります。

例えば、首の痛みを症状として訴えている場合に、痛み止めの処方など痛みに対する処方が一切取られていない場合には、「症状に適応した治療を行なっていないため、痛みがあるとは認められない。」として後遺障害に認定されない可能性があります。

 

③病院で検査を実施してもらう

治療の経過に応じて、検査を実施してもらい、その結果をしっかりと残すことも大事です。

後遺障害14級に向けた検査には、画像撮影、神経学的テストなどが代表的なものとして挙げられます。

 

画像撮影

病院で画像を撮影してもらって、異常がある場合には、後遺障害に認定される可能性が上がります。

そのため、主治医と相談のもと、適切なタイミングで画像撮影をしてもらいましょう。

画像撮影には、レントゲン撮影、CT、MRIがありますが、むちうちの場合には、MRIの撮影を行うことが多いです。

MRIは、機械によって強力な磁場を発生させて、体の内部の状況を確認する検査です。

いわゆるむちうちと診断されるケースでは、骨の変化がなく、軟部組織の変化の可能性が高いので、軟部組織の撮影ができるMRIが用いられることが多いです。

なお、首などの痛みを訴えている場合、むちうちの診断をする前に、レントゲン撮影を行い、骨の変化を確認することはかなり多く見られます。

 

神経学的検査

神経学的検査とは、神経の機能を確認するために行われるテストや質問による検査を指します。

神経学的検査の実施方法は様々ですが、代表的な検査として、ジャクソンテスト、スパーリングテストが挙げられます。

ジャクソンテストは、首のむちうちについて、首から腕の方に走る神経の異常の有無を調べる検査です。

このテストでは、医師が後ろから被害者の頭を掴んで症状のある方へ傾け、さらに首を後ろに反らして神経根の出口を狭めます。

神経根に障害がある場合には、その神経根の支配領域に痛みや痺れ感が生じます。

そのような反応があった場合には、ジャクソンテストは陽性(+)とされます。

スパーリングテストも、首のむちうちについて、首から腕の方に走る神経の異常の有無を調べる検査です。

このテストでは、医師が後ろから被害者の頭を掴んで後ろへ傾け、神経根の出口を狭めます。

神経根に障害がある場合には、その神経根の支配領域に痛みや痺れ感が生じます。

そのような反応があった場合には、スパーリングテストは陽性(+)とされます。

なお、これらの神経学的検査は被害者自身の「痛みがある」という申告によって陽性、陰性が判断されるため、結果の結果陽性であったから必ず後遺障害14級が認定されるというものではありません。

 

④後遺障害に強い弁護士に相談する

後遺障害認定に向けて、後遺障害に強い弁護士に相談することを強くお勧めします。

完治せず、仕事や日常生活に支障がある場合には、後遺障害の申請を検討することもあります。

そして、複数のポイントがあるように後遺障害の認定に向けて、事故直後から意識すべき点が存在します。

そのため、早い段階から弁護士に相談をし、今後の治療に際してどのようなことに気をつけるか、主治医にはどのように症状を伝えるべきかなどのアドバイスを受けるなどの、サポートを受けることが大事になります。

弁護士に早い段階で相談するメリットについては、以下をご覧ください。

 

 

後遺障害14級の認定を受ける方法

後遺障害14級の認定を受けるには、相手方の自賠責保険へ後遺障害申請を行い、調査・検討してもらう必要があります。

後遺障害申請の方法は、被害者請求、事前認定の2つがあります。

 

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身もしくは、被害者側の弁護士が加害者側自賠責保険会社に賠償金を請求する手続です。

被害者請求では、被害者側で資料を準備して、加害者側自賠責保険会社へ申請を行い、その会社において、後遺障害があるかどうか、ある場合にはその等級が判断されることになります。

被害者請求のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 被害者にとっては比較的透明性の高い手続きとなる
  • 被害者が有利な証拠を提出することができる
  • 認定された場合、自賠責基準での保険金を先に受け取ることができる
  • 被害者の負担が大きい

被害者請求のメリットは、被害者にとっては比較的透明性の高い手続きとなること、被害者が有利な証拠を集めることができること、後遺障害に認定された場合、自賠責基準での保険金を先に受け取ることができることの3点です。

被害者請求では、被害者が主導して資料を集めて手続を行いますので、自賠責保険会社がどのような資料を参照して判断をしたかが分かり、被害者にとっては透明性の高い手続きになります。

被害者側が申請の準備を進めることになりますので、事故の重大さを示すために物損資料を添付するなど、有利な証拠を提出することができます。

また、被害者請求を行い、無事に後遺障害認定がされると、等級に応じた自賠責基準での賠償金を先に受け取ることができます。

反対に、被害者請求では、被害者が主導して準備を進めることになりますので、被害者自身の負担が大きいです。

また、提出書類も複雑であり、提出してしまうと不利になってしまうような資料を出してしまう可能性も否定できません。

これらのデメリットは、交通事故に弁護士に依頼をすることで解決できますので、被害者請求を検討されている方は、一度交通事故に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

事前認定

事前認定とは、加害者側任意保険会社が、加害者側自賠責保険へ後遺障害等級の認定申請を行う手続きです。

事前認定では、加害者側任意保険会社が主導して必要資料を集めることになります。

弁護士に依頼をしていない場合には、多くのケースで事前認定による後遺障害申請が行われます。

事前認定のメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット デメリット
  • 被害者の負担が小さい
  • 被害者にとっては不透明な手続きになる
  • 最低限の資料しか出されない可能性が高い

事前認定は、加害者側保険会社が後遺障害申請の手続きを行いますので、被害者にとっては手間がかからず、負担が小さいことがメリットです。

反対に、加害者側任意保険会社が後遺障害申請に必要な資料を集めて提出しますが、どのような資料を提出したかは被害者に通知されませんので、被害者にとっては、不透明な手続きとなります。

また、加害者側任意保険会社にとっては、被害者が後遺障害に認定されても経済的なメリットはありませんので、必要最低限の資料しか出されない可能性が高いです。

 

 

まとめ

ここまで、後遺障害14級の認定に関して必要な通院日数などのポイントについて解説しました。

後遺障害の申請に向けて注意をすべきポイントは複数あり被害者自身のみで適宜対応しようとするのは、精神的にも負担がありますし、専門的な知識も必要とします。

そのため、後遺障害の申請を考えた段階で、一度は交通事故に詳しい弁護士に相談をするべきです。

当事務所は、交通事故をはじめとする人身障害に特化した部を編成し、交通事故被害者に対して強力にサポートを行います。

また、当事務所は、オフィスでの対面での相談はもちろん、ZoomやLine、FaceTimeを使用したオンライン相談にも対応し、全国どこからでもご相談が可能です。

交通事故の事案に関しましては、初回相談無料ですので、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。

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