後遺障害14級に認定されるには?弁護士が解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

後遺障害14級に認定されるための必要な条件として、以下のような4つがあげられます。

  • 事故後速やかに病院を受診する
  • 医師の指示に従い症状固定まで通院する
  • 後遺障害を申請する
  • 症状が後遺障害等級の認定基準にあてはまる

また、後遺障害14級の認定を受けるためには、以下のようなポイントがあげられます。

  • しっかりと通院を行う
  • 医師にしっかりと症状を説明する
  • 神経学的検査や画像撮影を行う
  • 後遺障害に強い弁護士に相談する

以下では、交通事故で負傷して後遺障害14級に認定されるために重要となるポイントなどについて解説していますので、参考にされてください。

後遺障害14級に認定される4つの条件

後遺障害14級に認定される4つの条件

後遺障害14級に認定されるための必要な条件として、以下のような4つがあげられます。

①事故後速やかに病院を受診する

後遺障害の認定を受けるためには、交通事故に遭ったあと、すぐに病院に行き医師による診断を受ける必要があります

交通事故に遭った直後、明らかにひどい負傷をしていたり、意識を失っていたりする場合には、救急車により病院に搬送されることになるでしょう。

他方、意識がしっかりしていて会話ができ、自分で歩くことができる場合であっても、すぐに病院で診断を受ける必要があります。

特に後遺障害14級に該当する場合、交通事故に遭った直後には、自覚症状がなくご自身ではまったく何ともないと感じられることがありますが、実際には身体に大きな損傷を負っている可能性があります

事故後速やかに病院で受診していないと、その後身体に不調があらわれても、交通事故との因果関係を証明することができません。

軽い負傷の場合ほど、時間の経過に応じて交通事故を原因とするものか否かがわからなくなり、交通事故による負傷であると医師に診断書を書いてもらうことが難しくなります。

したがって、交通事故に遭った場合には、因果関係を証明できるように、必ず事故直後に治療を受けてください

 

②医師の指示に従い症状固定まで通院する

後遺障害の認定を受けるためには、医師の指示に従い治療を続け、症状固定まで通院する必要があります

症状固定とは、一定期間治療を継続していた怪我が、今後治療を行っても症状の改善が見られない状態のことです。

症状固定は医学的判断ですので、基本的には主治医の判断が尊重されることになりますが、裁判になると、事故の規模・態様や、症状の経過、治療内容なども考慮に入れて裁判官が判断することになります。

症状固定が行われることで、症状固定前後の賠償が区別されて算出されることになります。

すなわち、症状固定前までは傷害分の賠償となり、症状固定後は後遺傷害分の賠償となります。

症状固定となると、治療費、休業損害が打ち切りとなり、傷害慰謝料が確定します。

 

③後遺障害を申請する

後遺障害を申請しない場合には、後遺障害の認定がされることはありません。

後遺障害の申請とは、後遺障害がある可能性のある症状が残っている場合に、この症状を後遺障害として認定してもらう申請の手続きになります。

申請の方法には、被害者請求と事前認定の2つがあります。

被害者請求は、被害者が行う後遺障害申請です。

被害者が、必要資料を集めて、書類に必要事項を記入し、加害者の自賠責保険会社へ申請を行うことになるため、資料を集める手間や時間がかかる可能性があります。

これに対して、事前認定は、加害者の任意保険会社が行う後遺障害申請です。

被害者は、医師に後遺障害診断書を作成してもらい任意保険会社に提出すれば、あとは任意保険会社が、後遺障害申請に必要な資料を揃えて、自賠責保険会社へ書類を提出してくれます。

ただし、事前認定の場合には、賠償金を払う側である加害者の任意保険会社が資料を集めて申請を行うため、後遺障害の認定に有利な資料を集めて追加提出を行うことは期待できません

後遺障害の申請については、以下のページで詳しく解説しておりますので、参考になさってください。

 

④症状が後遺障害等級の認定基準にあてはまる

「後遺障害」とは、交通事故が原因であることが医学的に証明されるとともに、労働能力の低下あるいは喪失が認められ、さらに、その程度が自賠責保険の等級に該当するものと定義されています。

後遺障害14級に認定されるためには、14級の中の9種類のうちの後遺障害基準にあてはまる必要があります

後遺障害14級として認定される後遺症については、以下の表のとおりです。

症状
1号 1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2号 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3号 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
4号 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
5号 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
6号 1手のおや指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
7号 1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
8号 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
9号 局部に神経症状を残すもの

上記の号の中で特に認定されることが多いのは14級9号「局部に神経症状を残すもの」です。

頚椎捻挫、腰椎捻挫のようなむちうち症の場合に後遺障害に認定されるのは、ほとんどが14級9号です。

なお、後遺障害14級に関して詳しく知りたいという方は、以下のページを参考になさってください。

 

 

後遺障害14級の認定は難しい?認定率

それでは、実際に後遺障害14級が認定される割合はどのくらいなのでしょうか。

損害保険料率算出機構が公表している統計データによると、2021年度に自賠責保険が賠償金を支払った件数は、83万7390件とされています(2021年度版「自動車保険の概況」より)。

そして、83万7390件のうち何らかの後遺障害等級に認定された件数は3万8837件でした。

後遺障害14級のみに認定されたものは2万4417件でした。

したがって、後遺障害の全体の認定率は約4.6%となり、14級の認定率は約2.9%ということになります。

後遺障害14級の認定率

ただし、全体の件数(83万7390件)には、後遺障害の申請をせずに慰謝料・治療費・休業損害(傷害部分)のみで申請されたものや、被害者が死亡したものも含まれています。

したがって、純粋に後遺障害を申請した場合に認定された割合ではないという点には注意が必要です。

以上のようなデータからは、後遺障害等級の認定されている割合は決して高くないことが分かりますが、認定された内訳を見てみると6割以上が14級認定がされた事案であることが分かります。

14級に認定された中で、各号の認定の内訳は明らかではありませんが、実務的な感覚では圧倒的に14級9号が多いと考えられます。

後遺障害14級の認定率などについて詳しく知りたいという場合には、以下のページを参考になさってください。

 

 

後遺障害14級に認定されるポイント

後遺障害14級に認定されるポイント

後遺障害14級の認定を受けるために重要なポイントとして、以下の4つがあげられます。

 

①しっかりと通院を行う

後遺障害14級に認定されるためには、まずはしっかりと通院をすることが重要です。

交通事故で後遺障害認定を受けるためには、事故当日か遅くとも翌日から症状固定(それ以上治療を継続しても症状の改善が望めない状態)まで医師の指示に従い通院する必要があります。

交通事故から数日経過してから病院を受診すると、「交通事故から受診までの間に負ったケガである可能性」を排除することが難しくなります。

交通事故との関連性を証明するためにも、事故後すぐに病院を受診する必要があります。

また事故後は必ず病院を受診するようにしてください。

整骨院や接骨院では、MRIやCT検査などの詳しい検査ができないため、交通事故で受けた負傷について正確な診断を受けられないおそれがあります。

さらに、通院期間が短かったり、通院頻度が少なかったりする場合には、後遺障害の認定がされない可能性があります。

通院期間が数か月や2週間に1回程度の通院の場合、「症状が軽微であるから、通院期間が短い・通院頻度が少ないのだろう」と判断されて、後遺障害が否定されてしまうおそれがあります。

むちうちで後遺障害14級の認定がされる場合の通院期間については、6ヶ月程度を経過しているケースが多い印象です。

また、通院頻度についても週1回程度では、後遺障害の認定を受けるのは厳しいように感じられます。

 

②医師にしっかりと症状を説明する

後遺障害14級の認定を受けるためには、医師にしっかりとご自身の症状を説明することも重要です。

例えば、頸部痛がある場合、事故後はじめて病院を受診した時から、一貫してカルテに「頸部痛がある」と記載されていることが理想的です。

通院開始してから数週間後に痛みがあると伝えた場合や、一度痛みが治ったと記載されてしまうと、後遺障害の認定が否定されてしまうおそれがあります。

ただし実際むち打ちによる手のしびれや首の痛みなどは、事故後一定期間経過してから発症するケースも少なくありません。

そのような場合にはすぐに医師に症状を伝えてカルテに記載してもらうことが重要でしょう。

また、初診時に自覚症状のある痛みについては、すべて医師に伝えておくことも大切です。

初診時には一番強い痛みの部位のみ医師に伝え、それ以外は症状については省略して申告していなかったというケースも散見されます。

しかし、交通事故から時間が経過してカルテに追加された症状については後遺障害認定が否定される可能性が高いと考えられます。

症状を医師に伝える際には、伝え方も大切です。

後遺障害14級に認定される症状は常に痛みを伴う、常時痛・安静時痛であることが必要であると考えられています。

したがって、「雨の時に痛みがある」などと記載されてしまうと、常時痛ではないとみなされてしまうおそれがあります。

普段から痛みはあるものの雨の日や気圧が変化したときには、特に痛みが強まるということを正確に医師に伝える必要があります。

そのような場合、カルテには「雨の日には痛みが増強される」と正確に記載してもらうことが重要です。

 

③神経学的検査や画像撮影を行う

14級9号は、事故が原因で発生した症状について、諸事情を踏まえて神経症状が残っていると医学的に説明できる場合に「局部に神経症状を残すもの」として認定されます。

後遺障害認定では、交通事故によるケガの症状が残っていることを客観的に審査機関に伝える必要があります。

そのため、CT画像やMRI画像などを撮影して画像診断による異常が確認できることが理想的です。

CT画像やMRI画像などで異常が確認できない場合であっても、神経学的検査によって症状を医学的に説明できることが必要となります。

神経学的検査は様々ありますが、代表的な検査としては、スパーリングテストやジャクソンテストなどがあります。

スパーリングテストは、頭を傾けて下方に押し付け神経根の出口を狭めます。

神経根に障害がある場合には、その神経根の支配領域に放漫痛・痺れ感が生じます。

こういった放漫痛・痺れ感が生じた場合には陽性、そうでない場合は陰性ということになります。

ジャクソンテストは、頭を後方に傾け、上腕や手の痺れを誘発しているかどうかを検査する方法です。

もっとも、神経学的検査は患者さんの訴えにより結果が左右されうるため、結果の客観性については一定の限界があります。

したがって、認定にあたっては、患者さんの訴えと得られている客観的な資料とを総合して認定されるのが実情のようです。

画像にて神経の圧迫が認められるものの、神経学的検査では、画像上で圧迫されている部分が支配する領域とは異なる領域に異常が出るなど、画像所見と神経学的検査が整合しないような場合には、医学的証明まで認められないこともあります。

 

④後遺障害に強い弁護士に相談する

後遺障害14級の認定を受けるためには、後遺障害について正確な知識・経験のある弁護士に相談することが重要です。

交通事故の被害者の方は、けがをして治療をしなければならず、日常生活にも大きな影響を受けますが、それだけではなく、保険会社との間でも知識量・情報量の点で大きく後退しています。

後遺障害についても同様で、被害者の方は、痛みや動きの制限、骨の変形などが残っても、どのような補償が受けられるのか、自分の症状が後遺障害になるかどうかなど、わからないという方がほとんどでしょう。

そこで、交通事故を専門とする弁護士に相談することで、後遺障害のことについて、アドバイスを受けることができます

また、すでに後遺障害の認定結果が出ているケースでは、弁護士に相談することで、その認定結果が妥当なものなのかどうか、専門家の視点からチェックしてもらうことができます。

さらに、後遺障害も含めて、今回のケースでどのくらいの賠償金が妥当な金額なのかについて、専門家である弁護士からアドバイスを受けることができます。

後遺障害について弁護士に依頼すべきか否かについては、以下のページで詳しく解説しておりますので、ぜひ参考になさってください。

 

 

後遺障害14級に認定されないときの対処法

後遺障害14級に認定されなかった場合には、どうすればよいのでしょうか。

自賠責保険に対して、後遺障害の申請を行って、何の等級にも認定されないことを「非該当」といいます。

「非該当」という結果になれば、保険会社との示談交渉の中で、後遺障害が残存していることを前提に示談することは極めて困難です。

保険会社は、自賠責保険が非該当の結果を出している以上、後遺障害はないものとして、示談交渉に臨んできます。

こうした場合に、認定を覆し、後遺障害を認めてもらうための手段としては、以下の方法があります。

  • 異議申立てを行う
  • 紛争処理機構に申立を行う
  • 訴訟を提起する

 

異議申立てを行う

後遺障害の認定がされなかった場合には、異議申立てをすることができます。

異議申立てとは、再び自賠責保険に後遺障害の審査をしてもらうために行うことです。

異議申立てをするにあたっては、異議申し立て書と後遺障害の認定に有利となる新たな証拠を自賠責保険に提出する必要があります。

新たな証拠はなくても異議申し立て自体は可能ですが、認定を覆すことは難しいでしょう。

 

紛争処理機構に申立を行う

次に、紛争処理機構とは、自賠責保険が下した判断に誤りがないかどうかを審査する機関です。

紛争処理機構への申し立てにあたっては、自賠責保険(共済)の判断が誤っていることを具体的に説明しなければなりません。

したがって、まず、自賠責保険(共済)がどのような理由で認定しなかったのかを分析する必要があります。

自賠責保険(共済)の事実認定に誤りがないかどうか、判断過程において矛盾がないか、重要視すべき事実を軽視し、重要でない事実を重要視していないか等、既に提出済の証拠と認定理由を見比べながら分析する必要があります。

 

訴訟を提起する

異議申立てや紛争処理機関に申立てを行ったけれども等級認定されなかった場合には、裁判を提起する方法があります。

訴訟を提起する場合には、適切な後遺障害等級に基づく賠償金額を主張していきます

通常、後遺障害の認定は審査機関である損害保険料率算出機構が決定しますが、訴訟の場合には、裁判所が独自に後遺障害等級の判断を行うことができます

ただし、裁判所も過去の判断や同種の事例などに照らして後遺障害等級を判断することになるため、審査機関の審査結果を覆すことができるような証拠や資料を提出して、説得力のある主張を行う必要があります。

裁判で後遺障害が認められるハードルは決して低くはなく、1年以上の期間がかかる可能性もあります。

なお、後遺障害14級に認定されないときの対処法については、以下のページで詳しく解説しておりますので、参考にされてください。

 

 

後遺障害14級の認定に関するQ&A

後遺障害14級は誰が決めるのですか?

後遺障害等級は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所によって審査が行われ、等級が決定されます。

損害保険料率算出機構は、「損害保険料率算出団体に関する法律」に基づいて設立されています。

認定が不服である場合には、訴訟提起をして裁判所に判断してもらうことも可能です。

裁判官は、損害保険料率算出機構の判断にかかわらず、別の等級の認定をすることができます。

したがって、裁判での主張が認められれば、自賠責損害調査事務所が認定した等級とは異なる等級を裁判所が認めてくれる可能性があります。

 

 

まとめ

この記事では、交通事故でケガを負った場合に後遺障害14級に認定されるために重要となるポイントなどについて解説してきました。

被害者請求で後遺障害の申請をする場合には、被害者側が必要な資料や書類を収集して提出する必要があり、時間や労力を要します。

そのため、スムーズに後遺障害の認定を受けるためには、交通事故事件に詳しい弁護士に相談・依頼されることがおすすめです。

当事務所には、交通事故案件を日常的に処理する弁護士が所属する人身障害部があります。

交通事故のご相談やご依頼後の事件処理は、すべて人身障害部の弁護士が対応いたしますので、安心してご相談ください。

電話相談、オンライン相談(LINE、Meet、FaceTime、Zoom)にて、全国対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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