休業損害証明書を会社が書いてくれないときの対処法とは?

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

会社が休業損害証明書を書いてくれないときの対処法としては、以下の方法が考えられます。

  1. ① 休業損害証明書の意義、作成方法などについて会社に丁寧に説明する
  2. ② 社内の相談窓口や上司に相談する
  3. ③ 給与明細、源泉徴収票、タイムカードなどの資料を準備する
  4. ④ 交通事故に強い弁護士に相談する

給与所得者(会社員、アルバイトなど)が休業損害を請求する際に必要となる休業損害証明書は、勤め先の会社に書いてもらうものです。

多くの場合は、勤務先の会社は、特に問題なく休業損害証明書の作成を引き受けてくれます。

しかし、中には、休業損害証明書を会社が書いてくれないケースがあります。

このような場合には、上記の方法を検討すべきでしょう。

休業損害証明書は、交通事故によるケガで休養を余儀なくされている間の収入を補償する「休業損害」を適切に受け取るために重要になる書類です。

この記事では、休業損害証明書を会社に作成してもらうために役立てていただけるよう、休業損害証明書を会社が書いてくれないときの対処法について説明していきます。

加えて、休業損害証明書に関して注意すべき事項、よくある質問への回答なども掲載しておりますので、興味のある方はぜひご一読ください。

休業損害証明書を会社が書いてくれない理由

会社が休業損害証明書を書いてくれないことには、何らかの理由があると考えられます。

例えば、以下のような理由が考えられます。

 

トラブルに巻き込まれたくない

休業損害証明書は、交通事故による損害賠償を加害者に請求するためには常に必要となる書類で、特別なものではありません。

ところが、一般の方の中には、「加害者に損害賠償を請求するために必要な書類です」と聞くと、「そんな書類を書いたらトラブルに巻き込まれるのでは?裁判所に呼び出されたり、加害者から文句を言われたりとか・・・」と思ってしまう人もいます。

このように考えて、トラブルに巻き込まれることを嫌った会社側から、「休業損害証明書は書けない」と言われることもあります。

 

休業損害証明書の記載方法がわからない

休業損害証明書は、会社の通常の業務では扱わない書類なので、特に規模の小さい会社では、書き方が分かる人がいない場合があります。

そのため、「休業損害証明書を書いて、と言われても、書き方が分からない」ということで、休業損害証明書を書くことを断られている可能性もあります。

 

休業損害証明書の作成に手間を取られたくない

休業損害証明書は、あくまで社員が損害賠償を請求するためのものなので、作成しても会社にメリットがあるわけではありません。

そのため、「ただでさえ忙しいのに、会社の業務に関係のない休業損害証明書の作成までしたくない」と思われ、休業損害証明書の作成を断られることもあります。

 

 

会社に休業損害証明書の作成義務があるの?

法律的にいうと、会社には、休業損害証明書の作成義務はありません。

交通事故の示談交渉はあくまで被害者と加害者との間のことですので、会社には関係がないからです。

そのため、会社に「休業損害証明書の作成はできない」とあくまで断られた場合、法的手段に訴えて会社に休業損害証明書の作成を強制する、ということはできません。

 

 

会社が書いてくれないときの4つの対処法

休業損害証明書を会社が書いてくれない場合、次のような対処法を試してみましょう。

①休業損害証明書について説明する

上で見たように、休業損害証明書の作成を断られる理由としては、トラブルに巻き込まれたくない、作成の仕方が分からない、手間を取られたくない、などといったことがあります。

こうした懸念を解消するためには、会社に対し、休業損害証明書について丁寧に説明する必要があります。

たとえば、次のような説明方法が考えられます。

 

トラブルに巻き込まれることを恐れている場合

「トラブルに巻き込まれたくない」として、休業損害証明書を会社が書いてくれない場合には、「休業損害証明書は加害者側の保険会社から作成するように言われたものである」「交通事故では普通に使われるもので、特別な書類ではない」といったことを説明しましょう。

ただし、この際、「トラブルに巻き込まれることはない」と断言はしない方が良いです。

一般的ではありませんが、場合によっては、加害者側の保険会社から勤務先の会社に直接、休業状況や給与支払いの状況などについて問い合わせが来ることもあるためです。

最初から「トラブルに巻き込まれることはない」「休業損害証明書を作成してもらう以外の迷惑はかけない」と断言してしまっていると、会社が保険会社からの問い合わせを受けた場合に、会社から、「話が違う。今後の休業損害証明書はもう書かない」と言われてしまうことも、あり得ないではありません。

会社から「トラブルに巻き込まれることはないか」などと聞かれたら、「もしかしたら保険会社から問い合わせが来ることもあるかもしれない」ということは正直に伝えましょう。

同時に、

  • 会社が休業損害証明書を作成しない場合でも、被害者自身で休業損害を請求すれば、確認のため保険会社から会社に問い合わせがあるかもしれないこと
  • 休業損害証明書を作成してもらえないと、被害者は休業損害を請求する際の手間が増えるし、十分な休業損害を受け取れるかも分からなくなること

を説明し、なんとか休業損害証明書を作成してもらえるようお願いしてみましょう。

 

作成の仕方が分からない場合

休業損害証明書を書く場面は少ないので、会社の担当者が作成方法を知らない場合も少なくありません。

そのため、「書き方が分からないから、作成できない」と思われている可能性もあります。

そのような場合には、休業損害証明書の書き方を丁寧に説明した記載例があることを伝え、実際に記載例を渡すなどしましょう。

休業損害証明書の記載例は、各保険会社のHPに掲載されていたり、保険会社から送付してもらったりできます。

休業損害証明書と記載例の入手方法、ダウンロード等ができるサイトについては、以下のページをご覧ください。

 

手間を取られたくない

誰しも自分の仕事で十分に忙しいので、休業損害証明書の作成のような通常業務と違うこと、しかも会社に特にメリットがないことをしてほしいと言われても、「そんな手間はかけたくない」と思ってしまうこともあり得ます。

それでも休業損害証明書の作成を引き受けてもらうためには、休業損害証明書の作成にはそれほど手間はかからないことを説明し、丁寧にお願いしましょう。

実際、休業損害証明書は、用意された書類の指定の欄を埋めていくだけのものですので、作成にそれほど手間がかかるわけではないはずです。

記載例を示してそれほど面倒な書類ではないと納得してもらい、また、自分の生活を維持するためにとても大切な書類なのだということを伝え、協力してもらえるよう頼んでいきましょう。

 

②社内の相談窓口や上司に相談する

休業損害証明書作成の担当部署(又は担当者)と話しても、どうしても書いてくれないときは、社内の相談窓口や(自分又は担当者の)上司に相談してみることも一つの手段です。

先ほどもご説明したとおり、休業損害証明書を作成することは会社の法的義務ではないのですが、相談窓口や上司に困っていることを伝えたら、担当部署や担当者と話をし、休業損害証明書を書くよう説得してくれる可能性があります。

 

③他の資料を整える

どうしても休業損害証明書を会社が書いてくれない場合は、給与明細、源泉徴収票、勤怠表、賃金台帳、タイムカードなどの資料を整え、休業損害証明書の代わりに保険会社に提出し、休業損害を請求しましょう。

ただし、この場合、資料を集めたり保険会社に説明したりする労力もかかりますし、休業損害が希望どおりに認められる可能性も高いとはいえません。

できれば、休業損害証明書を会社に書いてもらう方が望ましいです。

休業損害証明書をどうしても会社が書いてくれない場合は、次にご説明するとおり、一度、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。

 

④交通事故に強い弁護士に相談する

上に挙げたような対処法を行おうとする際、一人で進めていくよりも、専門家である弁護士に相談した方が安心です。

特に、交通事故問題の経験が豊富な弁護士であれば、休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対処法にも通じている可能性が高いので、

  • どのように会社と話をすればよいか
  • 休業損害証明書の代わりとなる資料にはどのようなものがあるか

といったことについてアドバイスをしてくれるでしょう。

交通事故の被害に遭うと、休業損害証明書のほかにも、治療方針、通院頻度はどのようにしたらよいかいつごろ治療を打ち切る必要があるのかなど、様々な問題に直面します。

早めに弁護士に相談・依頼しておけば、対処に困った時すぐに弁護士からのアドバイスを受けることができます。

示談交渉も弁護士が窓口となって行ってくれますので、ご自身は治療や生活の立て直しに専念することもできるようになります。

交通事故の被害に遭った際には、なるべく早く、交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。

交通事故について早期に弁護士に相談するメリット、交通事故に強い弁護士の探し方については、以下のページで詳しく解説しています。

弁護士に依頼するというと、弁護士費用のことを心配される方が多くおられます。

しかし、交通事故の場合、自動車保険で弁護士費用特約に加入していれば、ほぼ自己負担なく、弁護士に依頼することができます。

家族が弁護士費用特約に加入している場合でも、これを利用することが可能です。

弁護士費用特約、弁護士費用について、詳しくは以下のページをご覧ください。

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休業損害証明書の作成上の注意点

自分で書くのはNG

休業損害証明書を会社が書いてくれないときも、自分で書くのはNGです。

休業損害証明書は勤務先に作成してもらうことが前提となっている書類です。

これを自分で書いてしまうと、保険会社は、「会社に休業損害証明書を書いてもらえないのはおかしいのではないか?内容は本当に間違いないのか?」と怪しむことがあります。

そうなると、その後の示談交渉にも支障を来します。

「自分の名前を出さずに、会社の関係者のふりをして署名し、会社名の印鑑もこしらえて押してしまい、会社で作成したような形にすれば良いのでは?」と思う方もおられるかもしれません。

しかし、そのように他人のふりをして署名・押印し、休業損害証明書を作成することは、有印私文書偽造罪という犯罪になります。

刑事事件にまでならなかったとしても、休業損害証明書を偽造したことがバレると、加害者側の保険会社からの信頼を失ってしまいますので、その後の交渉が大変難しくなります。

休業損害証明書は、必ず勤務先の会社に書いてもらいましょう。

 

虚偽の内容を記載しない

休業損害証明書に虚偽の内容(休業日数の水増しなど)を記載してもらってはいけません。

虚偽の内容の休業損害証明書を提出して本来よりも多額の休業損害を得ようとすることは、詐欺罪に当たります。

仮に刑事事件にまでならなかったとしても、嘘がバレると、交渉相手である加害者側の保険会社との信頼関係が崩れてしまいますので、その後の交渉が大変困難なものになります。

休業損害証明書を自分で作成すること、虚偽の内容を記載することのリスクは、以下のページでも解説しています。

 

休業損害の適正額を計算する

休業損害証明書を作成してもらったら、それを基に、自分でも休業損害の試算をしてみましょう。

そうすれば、後々保険会社と交渉する際、保険会社が提示してきている金額が妥当なものなのかの目安になります。

休業損害の計算方法については、以下のページで詳しく解説しています。

ただ、休業損害の計算は、慣れていない一般の方には難しいかもしれません。

そこで、当事務所では、皆様にお手軽に休業損害を試算していただけるよう、インターネット上で、休業損害計算ツールを無料でご提供しております。

メールアドレス、電話番号などの個人情報を入力する必要もなく、結果もその場でご覧いただけます。

後日当事務所からご連絡することもございません。

どうぞお気軽にご利用ください。

休業損害計算ツール

 

交通事故に強い弁護士に相談する

上でもご説明したとおり、交通事故の被害に遭った場合は、なるべく早く、交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

交通事故に強い弁護士に相談すれば、休業損害証明書を会社が書いてくれない場合の対応方法、治療中や損害賠償を請求する際の注意点などについて法的なアドバイスをもらうことができますし、損害賠償の適正額についても助言してもらえます。

それに、弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者に最も有利な算定方法である弁護士基準で計算したものにより近い額の損害賠償金を獲得できる可能性が上がります。

事案によっては、弁護士基準で算定した賠償金額は、加害者側の保険会社が提案してきた金額の数倍となることもあります。

加えて、弁護士が交渉の窓口になってくれますので、被害者の方自身は、治療や生活の立て直しに力を注ぐことができます。

交通事故問題は弁護士に依頼した方が良い理由については、以下のページでより詳しく解説しています。

 

 

休業損害証明書についてのQ&A

休業損害証明書は会社に提出するのですか?

保険会社から入手した休業損害証明書の用紙(未記入のもの)は、会社に内容を記載してもらう必要があるので、会社に提出します。

会社に内容を記載してもらったら、加害者側の保険会社に提出し、休業損害を請求します。

 

休業損害がもらえないケースは?

休業して治療する必要性がないのに休業していた場合には、休業損害をもらえない可能性があります。

本来は休業して治療する必要があったにもかかわらず休業していなかった場合にも、休業損害はもらえません。

また、休業していても減収がない場合にも、休業損害はもらえません。

ただし、有給休暇を使用した場合には、減収が生じていなくても休業損害がもらえます。

 

休業損害証明書は誰に書いてもらう?

休業損害証明書は、勤務先の会社で書いてもらいます。

休業損害証明書の作成を担当する部署は、人事部、労務部、総務部などとなっている場合が多いです。

小規模な会社だと、社長が直接書いてくれることもあります。

 

 

まとめ

今回は、休業損害証明書を会社が書いてくれない理由、休業損害証明書を会社に書いてもらうための対処法、休業損害証明書に関する注意点などについて解説しました。

会社は、多くの場合は休業損害証明書の作成に問題なく応じてくれます。

しかし、中には、休業損害証明書を会社が書いてくれないケースもあります。

この場合、会社には休業損害証明書を作成する法的義務はないため、休業損害証明書の意義や作成方法を丁寧に説明するなどして、なんとか説得し、納得してもらうことが必要になります。

しかし、こうした説得が常に上手くいくとは限りません。

休業損害証明書をどうしても会社が書いてくれない場合は、一度交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所でも、交通事故の被害に遭った皆さまのサポートに力を入れております。

当事務所で交通事故被害者のサポートに当たるのは、人身傷害部に所属し、交通事故事件に精通した弁護士たちです。

交通事故のご相談には初回無料で対応しておりますので、交通事故の被害に遭われた方は、ぜひ一度お気軽に、当事務所までご相談ください。

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