交通事故で自賠責保険金が支払われないことや減らされることはある?
交通事故でけがをした場合でも、自賠責保険が一切支払われない場合や減額となってしまう事例はあります。
自賠責保険は被害者を救済する目的の保険です。
被害者の自損事故、加害者に過失がない事故、保険請求権が時効で消滅した場合などでは、自賠責保険金は支払われません。
また、被害者の過失割合が7割を超えるとき、支払われる保険金が減額されます。
交通事故にあった場合には、自賠責保険のことも含めて早めに弁護士に相談しておくことをおすすめします。
自賠責保険の内容について、以下で詳しく解説いたします。
自賠責保険金の支払われる条件
自賠責保険は、以下の条件を満たしたとき支払われます。
自動車の運行によって他人を死傷させたとき
たとえば、以下のような事故です。
- 自動車の走行中の事故
- 自動車のドアの開閉が原因での事故
- 駐車しようとしているさなかの事故
- クレーン車でのクレーン作業、ダンプカーの荷卸し中の事故
加害者が法律上(人身事故の)損害賠償責任を負う場合
交通事故で加害者となりうるのは、以下の通りです。
- ① 事故を起こした運転手
- ② 事故を起こした運転手の使用者
- ③ 運行供用者
②の事故を起こした運転手の使用者は、タクシーの運転手が起こした交通事故で、雇用しているタクシー会社が賠償責任を負うような場合です。
また、③の運行供用者とは、車の所有名義人が主に考えられます。
例えば、友人に車を貸していたところ、その友人が交通事故を起こした場合、友人はもちろん、自動車を所有している貸した方も賠償責任を負うことになります。
自賠責保険金が支払われないケース
次のいずれかに該当すれば、自賠責保険は支払われません。
加害者に責任がない場合
自賠責保険では、加害者が以下の1.から3.を証明した場合には、加害者には責任がないものとして、自賠責保険は支払われないことになります。
- 1. 自動車の運行中に関し注意を怠らなかったこと
- 2. 被害者または運転手以外の第三者に故意または過失があったこと
- 3. 自動車に構造上の欠陥または機能の障害がなかったこと
基本的には、事故態様で明らかな場合が多いです。
例えば、追突事故の追突した方の運転手やセンターラインオーバーの交通事故で、センターラインをこえて逆走をした運転手などです。
自損事故により運転手自らが死傷した場合
上記の加害者に責任がない場合と同じく、運転者が自分の運転ミスでガードレールにぶつかったような場合には、自賠責保険は支払いの対象外となります。
ただし、同乗していた方が以下で説明する「他人」ということで認定される場合には、同乗者に関しては、自賠責保険が支払われます。
被害者の死傷が自動車の運行と関係のない場合
たとえば、完全に駐車中の車両に歩行者が衝突して死傷した場合です。
被害者が「他人」でない場合
たとえば、他の人が運転する自分の車に同乗中所有者が怪我をした場合です。
自動車の名義人は、その車の所有者であり、自らが運行供用者となりますので、たとえ、別の人が交通事故当時に運転していたとしても、自賠責保険の支払いはされません。
この点、過去の裁判例で、自動車の名義人の配偶者は、自賠責保険上は「他人」と取り扱われることになっています。
したがって、ご主人名義の車に奥様が同乗して交通事故にあった場合には、奥様の方はご主人の自賠責保険が使用できる可能性があります。
保険請求権が時効により消滅した場合
保険請求権にも時効があります。
加害者請求は、被害者に賠償金を支払ったときから3年です。
- 傷害の場合、事故発生時より3年
- 後遺障害の場合は症状固定時より3年
- 死亡の場合は死亡時より3年
※平成22年3月31日以前の事故の関しては、いずれの場合も2年で時効となります。
したがって、時効が迫っている場合には、保険会社に理由を説明して、時効中断承認書という書類を取得しておくのが必要になります。
自賠責保険金が減額されるケース
交通事故の過失割合において、被害者の過失が7割以上の場合、自賠責保険金が減額されます。
逆にいえば、6割の過失であれば、減額がされないということになります。これは任意保険との大きな違いになります。
この違いは被害者救済という自賠責保険の目的が反映されたルールです。
傷害に関する減額は一律で2割となっています。
死亡・後遺障害に関する保険金について
7割以下の場合 | 減額なし |
7割以上8割未満の場合 | 2割減額 |
8割以上9割未満の場合 | 3割減額 |
9割以上10割未満の場合 | 5割減額 |
傷害の場合と異なり、後遺障害や死亡の場合には、過失の程度によって、減額の幅が異なっており、最大5割の減額となってしまいます。
自賠責保険などの保険の問題
交通事故においては、必ず自賠責保険も含めた保険が問題となります。しかし、この保険について、被害者の方はそれほど詳しくないでしょう。
ご自分で加入されている生命保険もその内容を完全に熟知されている方は少ないと思います。それだけ保険というのは複雑で難しいものなのです。
しかしながら、保険について「知らなかった」ということで損をすることは避けたいはずです。
まして、交通事故にあわれた方は、けがやその後の後遺症に苦しんでおられるわけですから、しっかりと補償を受けなければなりません。