TFCC損傷とは?症状・原因・治療法について解説
TFCC損傷は、手首の小指側にある内部組織を損傷してしまうというケガのことです。
主な症状は、手首をひねったり、外から押したりしたときに、手首の小指側に痛みが出るというものです。
TFCC損傷は、転んで手をついたことや手首を使いすぎたことなどが原因で起こります。
治療としては、テーピング、サポーターをすることが多いですが、ひどい場合には手術をすることもあります。
今回の記事では、TFCC損傷の症状、原因、治療法についてご紹介し、交通事故・労災事故が原因でTFCC損傷となった場合の対処法などについて解説します。
目次
TFCC損傷とは
TFCCとは、手首にある三角繊維軟骨複合体(さんかくせんいなんこつふくごうたい)のことです。
TFCCは、靭帯と繊維軟骨からなる軟部組織であり、骨ではありません。
TFCCは、親指側の腕の骨(橈骨(とうこつ))と小指側の腕の骨(尺骨(しゃっこつ))及び8つの骨からできている手根骨の間にあります。
TFCCには、次の2つの役割があります。
- ① 手首の外側の衝撃を吸収するクッションの役割
- ② 手首を安定させる役割
TFCCが正常に機能していることにより、手首が複雑な動きをすることができるといわれています。
このTFCCが傷つくと、TFCC損傷となります。
TFCC損傷の症状とは?
TFCC損傷があると、手首の小指側に痛みが生じます。
痛みのほかにも、小指側の不安定感が生じるなどします。
TFCC損傷のチェック法
TFCC損傷かどうか確かめたい場合は、次のようなチェック法を試してみましょう。
- 小指側の手首を押してみる
- 手首を小指側に曲げ、ねじってみる
これらを試みてみて、痛みなどが感じられる場合は、TFCC損傷があることが疑われます。
その場合は、整形外科を受診し、医師の診断を受けましょう。
TFCC損傷の原因
TFCC損傷の原因には、主に次のようなものがあります。
TFCC損傷は、転んで手をついたときに起こることがあります。
野球のバッティング、ゴルフのスイング、テニスなどのラケット競技により、TFCC損傷を引き起こすことがあります。
デスクワークで手を多く使うことで、TFCC損傷となることもあります。
交通事故の際に手を強くついた、事故回避のためにハンドルを急いで回した際に手首を強くひねった、というようなことがあり、TFCC損傷を引き起こすことがあります。
仕事中に転んだ、パソコンを使ったデスクワークをしすぎた、といった労災事故によってTFCC損傷が生じることもあります。
TFCC損傷はスマホが原因ですか?
スマホを持つ時間が長すぎる場合も、手首などに負担がかかり、TFCC損傷を引き起こす可能性があります。
ただ、上でご紹介した通り、TFCC損傷には様々な原因がありますので、必ずしもスマホが原因とは限りません。
TFCC損傷の治し方
TFCC損傷にサポーターは有効?
サポーターをして手首を安定させ、患部を安静にすることは、TFCC損傷の治療として有効です。
加えて、サポーターをすることで、手首を動かす時の痛みを軽減することもできます。
TFCC損傷にテーピングは有効?
テーピングも、サポーターと同様、手首を固定して安定させるので、TFCC損傷の治療として有効です。
TFCC損傷は自然治癒する?
TFCC損傷を治療せずに放置しておくと、自然治癒するどころか、痛みが強くなる、動かしていないときでも痛みが出てくる、手首を動かせないほど痛くなる、といったことが起こり得ます。
TFCC損傷で病院に行くべきか?
上記のとおり、TFCC損傷を放置すると症状が悪化し、日常生活に支障を来すおそれもあります。
TFCC損傷が疑われる場合は、早いうちに病院(整形外科)を受診し、治療を受けるようにしましょう。
交通事故・労災事故などが原因のTFCC損傷について
TFCC損傷の後遺障害認定の特徴と注意点
交通事故・労災事故などが原因でTFCC損傷を起こし、治療したけれども症状(後遺障害)が残ってしまった場合、後遺障害等級認定を受けて、損害賠償や労災保険を請求することになります。
TFCC損傷の場合に認められる可能性がある後遺障害等級には、次のようなものがあります。
①運動障害
TFCC損傷により、手首の動きが制限される後遺障害(運動障害)が残る場合があります。
このような場合に認定される可能性がある後遺障害には、以下のようなものがあります。
「用を廃した」とは、健側(ケガをしていない側)の手首と比べ、可動域が10%以下に制限されている場合をいいます。
「機能に著しい障害を残す」とは、健側の手首と比べ、可動域が2分の1以下に制限されている場合をいいます。
「機能に障害を残す」とは、健側の手首と比べ、可動域が4分の3以下に制限されている場合をいいます。
②神経障害
TFCC損傷により、治療後も痛みや痺れ(神経症状)が残ってしまう場合があります(神経障害)。
このような場合に認められる可能性がある後遺障害としては、以下のようなものがあります。
- 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号 局部に神経症状を残すもの
画像検査の結果などの客観的な資料(他覚所見)があると、12級13号と認められる場合が多いです。
逆に、他覚所見がなく、患者の訴え以外に痛みがあることを示す資料がないものの場合は、事故規模・態様、治療経過、症状の一貫性・連続性などから痛みの存在を医学的に説明できる場合には、14級9号とされることが多いです。
なお、痛みに関する他覚所見がない場合には、患者が痛みを訴えていても、後遺障害があるとは認められないケースもあります。
参考:後遺障害等級|一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構 (jibai-adr.or.jp)
TFCC損傷の後遺障害認定の注意点
TFCC損傷について後遺障害等級認定を受ける可能性がある場合、以下のことに注意しましょう。
TFCC損傷について後遺障害等級認定を受けようとする際には、「TFCC損傷はレントゲンだけでは分からないため、MRI検査が必要だ」ということに注意が必要です。
TFCCは骨ではないため、レントゲンに映りません。
そのため、レントゲンでは、他の疾患(尺骨突き上げ症候群、尺骨茎状突起の剥離骨折など)がないかを確認できるだけで、TFCCが損傷していることを直接確かめることはできません。
一方、MRIであれば、TFCCの状態を直接撮影することができます。
後遺障害等級認定を受ける際には、事故後早い段階でTFCC損傷があったことを明確に示すことができるよう、早い段階でMRI検査を受け、画像を提出することが望ましいです。
事故後しばらく経ったあとであっても、MRI検査が未了であれば、実施してもらい、画像を提出した方が良いです。
TFCC損傷が疑われる場合は、レントゲンだけでなくMRIも撮影してもらえるよう、医師に相談してみましょう。
後遺障害等級認定の申請をすると、もはや症状が固定し、治療は終了した(症状固定した)、ということになり、その後の治療費、リハビリ費は、損害賠償に含めて請求することができなくなります。
そのため、後遺障害等級認定は、十分に治療を行った後に申請する必要があります。
治療の終了時期を把握して、効率よく後遺障害等級認定の準備を進めるために、どの程度の時期に治療を終了させるかについて、医師との間で話をしておくとよいでしょう。
なお、治療が長引くと、加害者側の保険会社から、「症状が固定したから、治療費の支払いを打ち切る」と言われることがあります。
しかし、治療の終了時期(症状固定の時期)を決めるのは、保険会社ではありません。
必要だった治療費は、保険会社がどう言っていたかに関わらず、損害賠償に含めて請求できる可能性がありますので、医師や弁護士とよく相談し、治療の終了時期を考えるようにしましょう。
後遺障害等級認定では、ケガによって手首の可動域が制限される症状が残っているか否かが重要になります。
そのため、後遺障害等級認定の申請をする際には、病院で可動域検査を行い、結果を後遺障害診断書に記載してもらうことが重要です。
後遺障害等級認定の際には、痛みの状況や日常生活でどのような支障が生じているかについても明確にすることが重要です。
これらの事情は、医師に、後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。
後遺障害診断書を作成してもらう際には、医師に、「日常生活でこんなことができなくなってしまった」といったことを明確に伝え、それらについて後遺障害診断書に記載してほしいと頼んでおきましょう。
必要に応じて、メモに症状などをまとめて医師に渡しておくことも考えられます。
また、後遺障害診断書とは別に、資料にするために、症状などに関する日記をつけておくことも効果的です。
他に、TFCC損傷の特徴として、手首を動かしたときにクリック音がするというものがありますので、そのような症状がある場合も、医師に伝えておきましょう。
TFCC損傷の後遺障害等級認定については、以下のページもご参照ください。
TFCC損傷で適切な賠償金を得る5つのポイント
①我慢せずに治療を受ける
交通事故や労災事故でTFCC損傷を負ってしまった方の中には、痛みを我慢して、通院治療よりも仕事や家事を優先してしまう方がおられます。
しかし、交通事故や労災事故でのTFCC損傷については、できる限り、通院して治療を受けることをお勧めします。
上でもご説明した通り、TFCC損傷は、治療をせずに自然に治るものではありません。
できるだけ回復させるためにも、しっかりと通院治療を行うことが大切です。
また、通院回数は、通院慰謝料(傷害慰謝料)の金額にも影響してきます。
通院頻度が少なすぎたり、通院期間が短かったりすると、治療をきちんと続けていればもらえたはずの入通院慰謝料が減額されてしまう可能性がありますので、注意が必要なのです。
通院日数と入通院慰謝料の関係については、以下のページをご覧ください。
②後遺障害を適切に認定してもらう
後遺障害が残った場合、賠償金の額は、どの後遺障害等級と認定されるかによって大きく変わってきます。
後遺障害がある場合には、
- 事故によるケガがなければ得られたはずの後遺障害逸失利益
- 後遺障害が残ったことによる精神的苦痛を償うための後遺障害慰謝料
が支払われますが、これらの額は、後遺障害等級が何級かによって大きく左右されます。
そのため、適切な後遺障害等級認定を受けることができるよう、必要な検査を全て受ける、後遺障害診断書に十分な記載をしてもらう、といったことに特に気をつける必要があります。
具体的には、TFCC損傷の後遺障害認定の注意点でご紹介した注意点をよく確認してください。
③適切な賠償金の金額を算定する
賠償金を請求する前に、あらかじめ、自ら、適切な賠償金の金額を算定しておくことも大切です。
相手方から出されてくる示談案は、多くの場合、被害者にとって最も有利な算定基準(弁護士基準)による算定額よりも低い額で提示されます。
場合によっては、相手方の提示額と弁護士基準で算定した額の間に、数倍の開きがあることもあります。
そのため、あらかじめ自ら弁護士基準に基づいた適切な賠償額を算定しておかないと、相手からの提案に引きずられ、大変不利な内容で示談することになってしまう可能性があります。
ただ、賠償額を算定するといっても、弁護士基準の内容、計算方法などを調べなければなりませんので、損害賠償の計算に慣れていない方にとっては大変な作業になります。
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- 被害者の方のご年齢
- 性別
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ご関心がおありの方は、ぜひ一度お試しください。加害者側が提示する示談内容は専門家に確認してもらう
加害者側から提示された示談内容は、一度専門家に確認してもらいましょう。
先にご説明した通り、加害者側から提示される示談金の額は、被害者にとって最も有利な弁護士基準による算定額と比べると、大幅に低額なものとなっている場合が多々あります。
ところが、そのことを知らないままに、相手方に保険会社がついていることから、「事故の賠償に詳しい保険会社が言うことだから間違いないのだろう」と考えて、加害者側からの提案をそのまま受け入れてしまっている方が数多くおられます。
しかし、それでは、被害者の方は、正当な補償を受けることができないままになってしまいます。
特に、後遺障害が残った場合や被害者が亡くなった場合、損害賠償金は、その後の被害者やご家族の生活を支える非常に重要なものになります。
適切な賠償金を得るためにも、加害者側に示談案を提示されたときは、一度弁護士に相談し、提案額が適切なものか、本来はどの程度の額とするのが適切か、についてアドバイスをもらいましょう。
以下のページでは、示談の流れ、請求できる賠償金の内容、スムーズに示談するためのポイントなどについて解説しております。
ぜひ一度ご参照ください。
④示談書へのサインは慎重に
示談書にサインをすると、「示談契約」が成立してしまい、その後、示談内容を変更することは大変難しくなります。
「当面の生活資金が不足しているからとりあえずサインして、困ったことが出てきたら後で交渉しよう」などと考えてサインをしてしまうと、大変なことになりかねません。
示談書にサインするかどうかは、慎重に考えましょう。
生活資金にお困りの場合は、交通事故の場合であれば、休業損害の先払いを求める、自賠責に仮渡金を請求する、被害者請求をするなどの対応方法がありますし、労災事故の場合には、労災保険に休業補償を請求することもできます。
相手方からの示談提案が妥当なものであるかと併せて、当座の生活資金についても、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
⑤後遺障害に詳しい弁護士に早い段階で相談する
TFCC損傷について賠償金を請求する可能性がある場合は、なるべく早く後遺障害に詳しい弁護士に相談しましょう。
早い段階で弁護士に相談していれば、後遺障害診断書を医師に作ってもらう際にもアドバイスがもらえます。
賠償金についても、弁護士に直接相談していれば、個別の方の事情に応じた適正額を算定し、アドバイスしてくれます。
弁護士に示談交渉や訴訟追行を依頼すれば、交渉などの窓口にもなってもらえますので、ご自身は安心して治療や生活の立て直しに専念することができます。
交通事故の場合について、弁護士に早いうちから相談するメリット、弁護士を選ぶ際のポイントを以下のページでご紹介しています。
TFCC損傷についてのQ&A
TFCC損傷を放置するとどうなる?
TFCC損傷を放置すると、安静にしていても痛んだり、痛みが強くなって手首が動かせなくなったりするおそれがあります。
症状がひどくなると、手術をしなければならなくなる可能性もあります。
TFCC損傷が疑われる場合は、早めに整形外科を受診しましょう。
TFCC損傷の確認方法は?
このようにしたときに痛みを感じるようであれば、TFCC損傷が疑われますので、整形外科を受診しましょう。
整形外科を受診すれば、画像検査を行う、触診する、といった方法で、TFCC損傷かどうかを診断してくれます。
まとめ
TFCC損傷は、日常生活で重要な役割を果たす手首の動きに関わるケガなので、放置して悪化させてしまうと、生活に支障を来すおそれがあります。
TFCC損傷が疑われる場合は、早めに整形外科を受診することをお勧めします。
交通事故や労災事故でTFCC損傷が生じてしまった場合は、治療費などについて、加害者や雇用主に損害賠償を求めたり、労災保険を請求したりすることができる可能性があります。
後遺障害が残ってしまった場合にも、後遺障害等級認定を申請するなど適切に対処することで、損害賠償・労災保険などにより慰謝料や逸失利益を補償してもらうことができるようになります。
損害賠償などの請求や後遺障害等級認定に適切に対応するためにも、交通事故や労災事故でTFCC損傷を起こした場合は、早い段階で、後遺障害に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所も、交通事故・労災事故に関する事案、後遺障害が生じた事案を集中的に取り扱う人身障害部を設け、ケガをされた方々が十分な補償を受けられるようにするためのサポートに力を入れております。
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