交通事故の示談は弁護士に依頼した方がいい?メリットとデメリット
交通事故の示談は、弁護士に依頼して行うことをお勧めします。
交通事故の示談交渉は、弁護士に依頼するかどうかによって、結果に大きな差が出ることが少なくありません。
場合によっては、弁護士が介入したことにより、示談金が数倍にもなることもあるのです。
それに、弁護士に早くから依頼をしていた方が、相手方とのやり取りを任せることができる、疑問や不安が出てきた際に気軽に相談できる、治療の打ち切りや後遺障害等級認定の際もサポートを受けられる、などのメリットもあります。
一方、デメリットとしては、弁護士費用が必要になることが挙げられます。
しかし、これは、弁護士費用特約に加入していれば、ほぼ自己負担なしで弁護士に依頼することができるため、ほとんど問題となりません。
弁護士費用特約に加入していない場合でも、人身事故のケースでは、多くの場合、弁護士に示談交渉を依頼したことによる示談金の増額分によって、弁護士費用を支払うことができるので、大きなデメリットとはならないと言ってよいでしょう。
今回は、弁護士に交通事故の示談を任せるメリット・デメリット、解決までに要する期間、弁護士費用の目安、弁護士に示談について相談すべきタイミングなどについて解説していきます。
皆様のご参考になれば幸いです。
目次
交通事故の示談は弁護士に依頼した方がいい?
交通事故の示談は、弁護士に依頼した方がより有利な示談が期待できます。
交通事故の示談交渉を行うには、
- ① 当事者自身で行う
- ② 保険会社の示談代行サービスを利用する
- ③ 弁護士に依頼して行う
といった方法があります。
このうちで最もお勧めなのが、③弁護士に依頼して行う方法です。
交通事故の示談を弁護士に任せるメリット
交通事故の示談を弁護士に任せることには、以下のようなメリットがあります。
示談金を増額できる
当事者の方がご自身で示談交渉を行う場合、ほとんどのケースでは、相手方が加入している保険会社が提示してくる金額をベースにして話し合いが進みます。
しかし、相手方の保険会社から提示される金額は、実は、被害者にとって決して有利なものにはなっていません。
これは、相手方の保険会社が提示してくる示談金額は、その保険会社の内部基準(任意保険基準)によって算定されていることがほとんどとなっているためです。
実は、任意保険基準による算定額は、弁護士が関与した示談交渉で用いられる基準(弁護士基準。裁判でも用いられるので、「裁判基準」ともいいます。)による算定額よりも低額になることがほとんどなのです。
ケースによっては、弁護士基準による算定額と任意保険基準による算定額の間に数倍の開きがあることもあります。
そのため、交通事故の示談では、弁護士に依頼し、弁護士基準によって算定した金額をベースに交渉する方が、被害者にとって有利になります。
自分で交渉して弁護士基準で示談金をもらえる?
「自分で弁護士基準を使って示談金を計算し、それを基に交渉すればよいのでは?」と思われた方もおられるかもしれません。
しかし、残念ながら、通常は、当事者自ら弁護士基準を用いて示談金を算定し、示談交渉を行おうとしても、相手方の保険会社が受け入れてくれることはありません。
その理由は、弁護士基準の内容が専門的かつ複雑なものとなっていることにあります。
実は、弁護士基準に則って正確な算定額を割り出すには、注意すべき点、調査すべき点がいくつもあり、裁判例などを調査する必要もあります。
何らかの計算方法に一律に当てはめればよい、というものではないのです。
実際、交通事故事件に詳しい弁護士であっても、それぞれのケースごとに判例や文献を調査して、時間をかけて賠償額を算出しています。
そのため、弁護士でない方が「弁護士基準に従って算定した」と主張して示談金を請求しても、相手方の保険会社としては、「そうは言っても、正確に算定されていると信じることはできない」と考えてしまうこととなり、その金額に基づいた示談交渉に応じてきません。
弁護士でない方が弁護士基準に基づいた賠償金を得ようとする場合、裁判を起こせば、裁判官が、弁護士基準(裁判基準)に基づいて損害額を算定し、判決を出してくれます。
つまり、弁護士基準による賠償額を得るには、弁護士に依頼して示談交渉をするか、裁判を起こすかする必要があるのです。
ただ、裁判を起こすには多大な手間や労力がかかりますし、法律の専門家でない方が有利に訴訟を進めること自体難しいことです。
そのため、結局は、示談交渉の段階で弁護士に依頼する方がよい、ということになるのです。
被害者の立場に立った過失割合を主張してくれる
交通事故では、双方の過失割合が問題となることが多くあります。
過失割合については、事故の態様(出会い頭の事故、右左折中の事故、追突など)によって基本割合が決まっています。
そこに、各種の要素(重過失の有無、大幅なスピード違反の有無など)を総合して、各ケースに応じた過失割合を決めていきます。
この過失割合について交渉する際に、ご本人で示談交渉をしていると、交通事故の示談交渉に慣れた保険会社の社員の理論武装に対抗しきれず、適切な過失割合で合意することができなくなる場合があります。
一方、弁護士であれば、ドライブレコーダーの画像、刑事記録などを取り寄せて事故状況を確認し、過去の裁判例を踏まえるなどして、専門的な観点から、過失割合について検討し、依頼者の方にとって有利になるように主張をしてくれます。
そのため、過失割合については、交通事故の専門家である弁護士に交渉を任せる方が有利になることが多いです。
なお、過失割合のほかにも、後遺障害により労働能力を喪失する期間、後遺障害が仕事に及ぼす支障の程度、慰謝料の増額事由などについても、弁護士に依頼した方が、依頼者にとってより有利になるように主張、証拠を整えてくれることが期待できます。
保険会社とのやり取りを任せることができる
弁護士に示談交渉を依頼すれば、その後は、保険会社など外部とのやりとりは、ほとんど全て弁護士が行ってくれます。
そうすると、被害者の負担は大きく減りますので、治療、生活の立て直しなどにより多くのエネルギーを注ぐことができるようになります。
治療の打ち切りについて交渉などをしてもらえる
交通事故によるケガの治療が長引くと、加害者側の保険会社から、「治療開始から一定の期間(半年、1年など)が経っており、これ以上治療しても良くならない(症状固定した)と考えられるので、治療費の支払い(一括対応)を打ち切ります」などと言われることがあります。
このような場合にも、弁護士に依頼していれば、治療をいつまで続けるかについてアドバイスをしてくれたり、治療(一括対応)の打ち切りを取り止めるよう、保険会社と交渉してくれたりします。
疑問や不安について相談できる
交通事故に遭った後は、以下の例のような様々な疑問・不安が生じてきます。
例
- 先進的な治療・装具の費用は損害賠償に含めて請求できるか
- 整骨院に通う際に注意点はあるか
- 主婦でも休業損害を請求できるか
など
弁護士に示談交渉を依頼していれば、こういった疑問や不安が生じた場合も、すぐに弁護士に相談することができて安心です。
後遺障害認定申請のサポートもしてもらえる
治療を続けても交通事故でのケガによる症状(痛み、動きにくさなど)がなくならない場合には、後遺症が残ったものとして、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
後遺障害等級認定を受けることで、加害者に対し、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益(後遺障害がなければ得られたはずの利益)の賠償を請求することができるようになります。
ただ、この後遺障害等級の認定は、加害者側の保険会社に任せてしまうと、被害者にとって有利なものとすることができなくなるおそれがあります。
より適切な認定を受けるためには、自らに有利な資料を提出できる被害者請求によって後遺障害等級認定を受けることをお勧めします。
弁護士に依頼していれば、この被害者請求による後遺障害等級認定申請の際にもサポートしてもらうことができます。
交通事故の示談を弁護士に任せるデメリット
弁護士費用
交通事故の示談を弁護士に任せることのデメリットとしては、弁護士費用の負担が思い浮かびます。
しかし、交通事故の人身事故に関しては、弁護士費用の負担がデメリットとなることは、あまりありません。
弁護士費用特約を使える
交通事故に関しては、ご自身かご家族が任意保険の弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用は保険会社が負担してくれます。
そのため、被害者の方は、ほぼ自己負担なく弁護士に示談交渉を依頼することができます。
つまり、弁護士費用特約を使える場合は、弁護士費用が発生することは、当事者の方にとってのデメリットとはならないのです。
示談金の増額分で弁護士費用を補うことができる
弁護士費用特約に加入していない場合でも、人身事故の場合は、弁護士費用の負担がデメリットとなるケースは少ないです。
弁護士に示談交渉を依頼することによって増えた示談金の額と、弁護士費用を比べると、示談金の増額分の方が多くなるケースが多いからです。
このようなことになる理由は、交通事故の示談を弁護士に任せるメリットでもお伝えしたように、弁護士に示談交渉を依頼することで、最も賠償金を高く算定できる弁護士基準を用いることができるようになるからです。
ご自身で交渉したり示談代行サービスを利用したりする場合は、任意保険基準による算定額が基準となりますが、これは、弁護士基準による算定額よりも大幅に低い額となっていることが少なくありません。
そのため、弁護士に依頼すると、示談金額が大幅に増額し、上のように、弁護士費用を賄って余りあるものとなることが多いのです。
さらに、交通事故問題に関しては、着手金無料とし、完全報酬後払いとしている法律事務所も多くありますので、そうした法律事務所を選べば、お手元の資金に余裕がない場合でも、賠償金から弁護士費用を賄うこととして、弁護士に依頼することができます。
弁護士費用の算定方法は法律事務所ごとに異なりますので、詳しくは、ご依頼を検討されている弁護士にお尋ねください。
なお、以下のページでは、当事務所の弁護士費用について解説しております。
ご関心のある方は、ご参照ください。
相手方と直接やり取りできなくなる
弁護士に示談交渉を依頼した場合、相手方とのやり取りは全て弁護士に任せることになるので、自分で直接相手方に話をすることはできなくなります。
ただ、ほとんどの弁護士は、相手方との交渉状況について依頼者に報告してくれますし、依頼者が伝えたいことを相手方に伝えてもくれますので、この点は、それほど大きなデメリットにはならないかと思われます。
弁護士に依頼したときの解決までの期間
弁護士に依頼した場合に示談交渉開始から解決までにかかる期間は、事案によって異なります。
加害者と被害者の間で争いになっている点が多い場合や、賠償金額が高額な場合には、解決までに長い期間を要します。
逆に、争いになっている点がほぼない場合や、賠償金額も比較的低い場合は、短期間で解決することができます。
例えば、被害者の傷が軽い打撲程度で、後遺症もなく完治し、特に争いとなっている点もないような場合には、1~2か月程度で解決することもあります。
場合によっては、1~2週間程度で示談交渉が終了する場合もあります。
他方、過失割合に争いがある、賠償金算定の基礎となる収入額に争いがある、賠償金額が1000万円を超える、といった場合には、3か月又はそれ以上の期間がかかる場合もあります。
交通事故の示談交渉にかかる期間については、以下のページもご参照ください。
依頼した弁護士の対応が遅いときどうすればいい?
依頼した弁護士の対応が遅い場合は、まず、その弁護士に、「もっと早く対応してほしい」と申し入れてみることが考えられます。
そうすると、弁護士も、依頼者が対応のスピード感に満足していないことが分かりますので、より迅速な対応を心がけてくれることが多いです。
それでも納得のいく対応がなされない場合には、他の弁護士のセカンドオピニオンを求めてみることが考えられます。
そうすれば、依頼している弁護士の対応が適切なものであるかについて、他の弁護士の意見を聴くことができ、参考になります。
その上で、やはり現在依頼している弁護士の対応には納得できない、他の弁護士に依頼したい、ということであれば、弁護士を変更することも可能です。
その場合、現在の弁護士との契約を解除し、改めて他の弁護士に依頼することになります。
弁護士を変更する方法、注意点などについては、以下のページをご覧ください。
対応が遅い弁護士などに依頼して後悔しないためのポイントについては、以下のページをご覧ください。
交通事故の示談の弁護士にかかる費用
交通事故の示談を弁護士に依頼する際にかかる費用は、一般的には、以下のようになっています。
項目 | 内容 | 目安額 |
---|---|---|
法律相談料 | 弁護士に法律相談をする際に支払う費用 | 30分5500円~ |
着手金 | 弁護士に示談交渉を依頼する際に最初に支払う費用 | 数十万円~(着手金無料の法律事務所もあります) |
報酬金 | 示談が成立したときに支払う費用 | 得られた経済的利益に応じて定める。(タイムチャージ制の法律事務所もあります。) |
実費 | 示談交渉に要した費用(郵便費用、日当など) | 実額による。日当は、弁護士によって異なる。 |
このように、弁護士に示談交渉を依頼する場合、合計数十万円~数百万円の弁護士費用が必要となります。
ただ、交通事故の場合、ご自身又はご家族が任意保険の弁護士費用特約に加入していれば、弁護士費用はほとんど保険会社が負担してくれます(契約によって上限額が設定されていることがあります。)。
弁護士費用特約に加入していない場合でも、多くの場合、弁護士に示談交渉を依頼する方が、経済的にも得になります。
それは、弁護士に示談交渉を依頼することで、被害者にとって最も有利な弁護士基準によって算定した金額を基準に示談交渉ができるため、弁護士が付いていない場合よりも示談金額を上げることができ、その増額分で弁護士費用を十分に賄うことができるケースが多いからです。
弁護士費用の詳しい説明、具体的なケースを用いた弁護士費用の計算例については、以下のページをご覧ください。
交通事故の示談を弁護士に依頼するタイミングとは?
交通事故の示談を弁護士に依頼するのは、事故後なるべく早い時期が望ましいです。
早くから依頼することで、治療中の疑問・不安についていつでも弁護士に相談できるようになりますし、加害者側の保険会社から治療の打ち切りを打診された時もすぐに対応してもらえます。
保険会社とのやりとりも、依頼後すぐに弁護士にまかせてしまうことができます。
後遺障害等級認定の際にも、既に弁護士に依頼してあれば、申請のためのサポートをしてもらうことができます。
このように、早い時期に弁護士に依頼した方が、弁護士に示談交渉を依頼するメリットを十分に活用することができます。
なお、既に相手方との間で示談を成立させてしまった場合、弁護士に依頼しても、示談内容を覆すことはほぼ不可能です。
*「後遺障害部分については後から示談する」など一部のみについて示談を成立させた場合は、残りの部分については交渉可能です。
弁護士に依頼する場合は、示談を成立させる前には依頼するようにしましょう。
交通事故の示談と弁護士についてのQ&A
交通事故の示談で相手弁護士が出てきたらどうすればいい?
弁護士は示談交渉の専門家ですので、一般の方では、弁護士を相手に有利に交渉を進めることは難しいです。
ご自身の事情を十分に主張し、より有利な条件で示談するためにも、相手方が弁護士を立ててきた場合は、ご自身も弁護士に示談交渉を依頼するようにしましょう。
まとめ
交通事故の示談交渉は、弁護士に依頼して行う方が有利になる場合が多いです。
特に、弁護士に示談交渉を任せれば、賠償額が最も高額となる傾向のある弁護士基準によって算定した額を基礎に交渉できることは、弁護士に交通事故の示談交渉を任せることの大きなメリットです。
他にも、弁護士に保険会社とのやりとりを任せることができ、ご自身は安心して治療や生活の立て直しに集中できる、治療中などに疑問や不安が出てきた場合も気軽に相談できる、など、弁護士に示談交渉を依頼することには、数多くのメリットがあります。
交通事故に遭われた場合は、なるべく早く、交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所でも、交通事故事件に注力する人身障害部を設け、交通事故でお困りの皆様を強力にサポートしています。
全国からのお電話・オンラインによるご相談にも対応しています。
交通事故の示談を任せる弁護士をお探しの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご連絡ください。