むちうちの治療期間とは?治療費打ち切りへの対処法も解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士


むちうちの治療期間は、3か月程度となる場合が多いです。

ただ、ケガの程度は人それぞれであり、6ヶ月以上通院され、後遺障害に認定される方もいます。

しかし、保険会社からは、治療期間が3か月を過ぎたあたりから、治療費の打ち切りについて連絡されることがあります。

治療費の打ち切りを告げられたけれども、症状の改善のためにまだ治療したい、という場合は、治療を続け、その分の治療費は後ほど保険会社に損害賠償として請求する、ということが考えられます(ただし、必ずしも治療費の全額が損害賠償の対象と認められるとは限りません。)。

また、むちうちの場合、治療を終えた後も痛みや痺れが残り、後遺障害等級認定を受けることが必要になる場合もあります。

今回は、むちうちの治療法、平均的な治療期間、整骨院に通院する場合の注意点、治療期間と慰謝料の関係、治療費の打ち切り・後遺障害等級認定への対処法などについて解説します。

むちうちの治療期間の平均

むちうちの平均的な治療期間は、3か月程度と言われることが多いです。

むちうちが完治するまでの期間については、以下のようなデータがあります。

むちうちが完治するまでの期間

出典:香川栄一郎ら・「研究報告交通事故によるいわゆる“むち打ち損傷”の治療期間は長いのか―損害賠償を含む心理社会的側面からの文献考証―」共済総合研究第75号(一般社団法人JA共済総合研究所)

このように、むちうちとなった人の約9割が3か月以内に治療を終えています。

ただ、実際の治療期間はそれぞれの方の状況によって様々であり、1か月以内で治療を終える方もいれば、半年又はそれ以上治療を続ける方もいます。

 

 

むちうちの治療とは?

むちうちの治療は、整形外科で行います。

整骨院で行われる治療としては、以下のようなものがあります。

①薬物療法

湿布薬などの外用薬、痛み止めなどの内服薬が処方されます。

 

②ブロック注射

ブロック注射(痛みのある部位の神経に近くに麻酔薬を注入する治療)を行い、一時的に痛みを和らげます。

 

③理学療法

頸椎牽引、温熱療法、電気療法などの理学療法を行います。

 

④安静にする

痛みがある間は、首に負担をかけないようにすることも大切です。

医師に指示された場合は、首や肩に負担がかかるような激しい運動や長時間にわたる作業は控えるようにしましょう。

場合によっては、医師の指示により、首に固定具を付けることもあります。

むちうちの治療方法については、以下のページでも解説しています。

 

整骨院にも通院できる?

むちうちの場合、整骨院の方が「開業時間が長い」などの利点もあることから、整骨院でマッサージなどの施術を受けることを選択する人も多くいます。

ただし、整骨院に通院する際には、予め医師に伝え、医師から許可・指示をもらうようにしましょう。

医師の許可・指示がないと、整骨院への通院が治療上必要なものと認められず、施術費が損害賠償の対象とならない、整骨院への通院が入通院慰謝料を算定する際に考慮されない、といったことが起こり得ます。

また、整骨院に通っていても、1か月に一回はかかりつけの整形外科に通院するようにしましょう。

整形外科への通院をしていないと、症状の経過に関する記録が診療録に残らない、必要な検査を受けることができない、といったことになり、後々後遺障害等級認定申請が必要となった場合に不利になるおそれが生じます。

 

 

治療期間が長いと交通事故慰謝料も増額される?

交通事故でケガをした場合の慰謝料(入通院慰謝料・傷害慰謝料)は、入通院した期間に応じて決まるので、治療期間が長くなると、基本的には、慰謝料も増額されることになります。

ただし、以下のようなポイントに気を付けていないと、十分な額の慰謝料を受け取れなくなる可能性があります。

適切な頻度で通院する

入通院慰謝料額を最大化するためには、医師の指示に従い、適切な頻度で通院する必要があります。

通院頻度が少なすぎたり、通院の間隔が空きすぎたりしてしまうと、

  • 入通院慰謝料を減額される
  • 入通院慰謝料が一部認められなくなる
  • 治療費の支払いを打ち切られる

といったことが起こってきます。

 

一般的には、週に2、3回程度通院すると良いです。

ただし、通院の必要性はケースごとに異なりますので、詳しくは、担当医の指示を聞いた上、交通事故に詳しい弁護士に相談しましょう。

逆に、医師の指示もないのに毎日のように通院するのも適切ではありません。

医師の指示もないのに毎日通院してしまうと、不必要な治療をしていると受け取られ、

  • 治療費の一部が損害賠償の対象と認められなくなる
  • 治療費支払いの打ち切りが早まる

といったことになるおそれがあります。

 

整骨院に通うことについて医師から指示等をもらう

上でもご説明したとおり、整骨院に通う場合には、医師から指示等をもらうようにしましょう。

医師の指示等がないと、整骨院への通院の必要性が認められず、

  • 入通院慰謝料算定の際に整骨院への通院が考慮されない
  • 整骨院での施術費が損害賠償の対象とならない

ということになる可能性があります。

また、上でも解説したとおり、整骨院に通う場合も、整形外科にも月1回程度は通院するようにしましょう。

 

整骨院に通う場合はあらかじめ保険会社に連絡する

整骨院に通う場合は、あらかじめ相手方の保険会社にその旨を連絡しておきましょう。

そうすれば、後々保険会社から「整骨院に通うとは聞いていない」などと言われて争いになることを予防することができます。

また、保険会社に連絡しておけば、病院での治療費に加えて整骨院での施術費についても、保険会社から整骨院に直接支払いをする一括対応を取ってくれる可能性もあります。

整骨院に通う場合の注意点については、以下のページも参考になります。

 

 

保険会社によるむちうちの治療費の打ち切り

むちうちは3ヶ月で治療費が打ち切り?

むちうちの場合、多くのケースで治療期間は3か月程度になっています。

そのため、治療が開始してから3か月程度経つと、相手方の保険会社から、「むちうちの治療に必要な期間は経過したので、治療費の支払い(一括対応)を打ち切ります」と言われてしまうことが少なくありません。

しかし、むちうちだからといって、治療を3か月で切り上げなければいけないという決まりはありません。

ご紹介した統計でもわかるとおり、半年、1年又はそれ以上の期間治療を続けるケースも実際にあります。

 

治療費打ち切りへの対処法

保険会社は、「むちうちで3か月経ったら治療打ち切り」などと紋切り型の取扱いで治療打ち切りを通告してくることも少なくありません。

しかし、実際には、事故の規模、態様などにより、被害者それぞれでケガの程度は違いますし、治療に要する期間も異なります。

実際には治療が必要な状態であるのならば、保険会社がどのように言っていても、諦めずに治療を続ける方が、痛みなどの症状が改善する可能性が高くなりますし、その後の生活への支障もより小さくなる可能性が高まります。

治療を安心して続けるためにも、治療打ち切りに納得がいかない場合は、ぜひ一度、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

交通事故に詳しい弁護士に相談すれば、治療費の打ち切りが妥当かどうかについて、同種の事例に関する豊富な経験を基に、主治医の意見、事故の状況などを踏まえ、アドバイスしてくれます。

さらに弁護士に依頼すれば、弁護士が、治療の打ち切りについて相手方の保険会社と交渉してくれます。

当事務所の取扱い事例で、むちうちの治療期間について当事務所の弁護士が交渉し、約1年間打ち切られることなく治療を続けることができたケースがあります。

以下のページでご紹介しておりますので、関心がおありの方は、ぜひご一読ください。

 

 

治療期間終了後も後遺症が残ったらどうする?

後遺障害等級認定を受ける

治療期間終了後も後遺症が残った場合、後遺障害等級認定の申請を行い、後遺障害等級の認定を受けましょう。

後遺障害等級認定を受けることができれば、加害者に対し、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益を請求することができます。

 

むちうちの場合の後遺障害等級

むちうちの場合に認定される可能性がある後遺障害は、以下の2つです。

  • 12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
  • 14級9号(局部に神経症状を残すもの)

この二つを比較すると、12級13号の方が重い後遺障害であり、請求できる後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益も高額になります。

12級13号の認定を得るためには、神経症状(痛みや痺れ)があるということだけでなく、次のような要件を満たす必要があります。

  • 画像検査(レントゲン、CT、MRI画像)で神経が圧迫されていることが認められる
  • 痛みの訴えや神経学的検査の結果が、他の客観的な資料と整合している

画像検査などの客観的な資料(他覚所見)がない場合でも、事故の規模・態様、治療経過、症状の一貫性・連続性などから痛みの存在を医学的に説明できる場合には、14級9号と認定される可能性があります。

ただ、場合によっては、14級9号の認定も受けられず、後遺障害があるとは認められないこともあります。

 

後遺障害等級認定の申請をする際の注意点

後遺障害等級認定の申請は症状固定後に行う

後遺障害等級認定の申請は、これ以上治療を続けても症状が改善する見込みがなくなり、症状固定した後に行います。

治療が続いているうちは後遺障害等級認定申請を行うことはできませんので、ご注意ください。

 

後遺障害診断書の作成時には、医師としっかりコミュニケーションをとる

後遺障害等級認定では、主治医が作成した後遺障害診断書が重要な資料になります。

しかし、医師の中には、後遺障害診断書にどのような記載をすれば良いのかに詳しくない医師もいます。

そのため、医師に任せておくだけで適切な後遺障害診断書が出来上がるとは限りません。

後遺障害診断書を作成してもらう際には、医師に、「痛みによって○○の動作ができなくなっているので、そのことを診断書に書いてほしい」「診断書で○○といった表現を用いるのは止めてほしい」といったことをきちんと伝え、コミュニケーションを十分に取っておくことが重要になります。

医師に伝えたいことをメモに書いて渡すのも効果的です。

ただ、どのようなことを医師に伝えれば良いのかは、個別のケースにより様々です。

後遺障害診断書を作成してもらう前には、一度交通事故に詳しい弁護士に相談し、どのようなことを医師に伝えれば良いのかについてアドバイスをもらうことをお勧めします。

 

後遺障害等級認定の申請方法として被害者請求も検討する

後遺障害等級認定は、加害者が加入している自賠責保険の保険会社に申請して行います(ただ、実際の認定は、損害保険料算出機構の自賠責損害調査事務所が行います)。

申請方法としては、以下の二つがあります。

  • 加害者側の保険会社が申請を行う事前認定
  • 被害者から申請を行う被害者請求

事前認定の場合、申請に必要な事務手続きは全て加害者側の保険会社が行ってくれますので、被害者の負担は少なくて済みます。

ただ、事前認定の場合、加害者側の保険会社が資料等を全て準備するので、被害者にとって有利な資料や事情(事故の規模を示す写真、痛みの経過や日常生活での支障に関する被害者の言い分など)が十分に提出されないおそれがあります。

そのため、被害者にとって適切な後遺障害等級認定がなされず、損害賠償などの場面で不利になるおそれがあります。

より有利な後遺障害等級認定を得たい場合には、被害者請求を行うことをお勧めします。

被害者請求を行えば、被害者自ら資料を準備しますので、事故の衝撃の大きさを示す資料(事故時の写真、破損した自動車の写真など)や痛みによる日常生活への支障を示す資料(被害者の陳述書など)などを提出することができます。

ただ、被害者請求を行う場合、手続きも資料の準備も被害者側でしなければならないので手間がかかります。

被害者請求を行う場合は、交通事故に詳しい弁護士に依頼し、サポートを受けることをお勧めします。

後遺障害等級認定については、以下のページで詳しく解説しています。

 

 

交通事故の4つのポイント

交通事故の4つのポイント

①事故後なるべく早く一通り検査を受ける

交通事故に遭ったら、ケガがない・軽いと思われた場合でも、念のため、なるべく早く病院を受診し、一通りの検査を受けるようにしましょう。

受診や検査が遅れると、見つかったケガが交通事故と因果関係のあるものかがはっきりしなくなり、「他の原因で生じたケガではないか」と疑われ、損害賠償を受け取ることができなくなる可能性があります。

交通事故では、最初は大した痛みがないと思っていたのに痛みがひどくなってきた、痛みが改善せず長引いてしまった、検査を受けていなかったら、思わぬ大けががあったと後から分かった、といったことが起こり得ます。

交通事故に遭ったら、なるべく早いうちに一度病院を受診し、必要な検査を一通り受けるようにしましょう。

 

②損害賠償の相場を自ら確認しておく

交通事故に遭った場合、加害者又は加害者が加入している任意保険会社との間で、損害賠償に関する示談交渉をすることになります。

示談交渉では、多くの場合、加害者側の保険会社から示談案が提示されます。

しかし、この示談案は、多くの場合、各保険会社の内部基準により算定されており、被害者にとっては不利な内容となっています。

そのため、損害賠償の相場については、被害者側でも自ら調査し、見積もっておくことが大切です。

そうしないと、相手方から示された示談案に引きずられてしまい、妥当な額の損害賠償とするように示談交渉することが難しくなります。

損害賠償の見積もりをする際は、被害者にとって最も有利な弁護士基準により算定しましょう。

当事務所では、弁護士基準による算定額の目安を手軽にご覧いただけるよう、どなたでも無料で利用できる交通事故賠償金計算シミュレーターをご用意しております。

個人情報の入力は必要なく、結果もその場でご覧いただけます。

後日当事務所からご連絡することもございません。

以下のリンクから、どうぞお気軽にご利用ください。

交通事故賠償金計算シミュレーター

 

③加害者側の保険会社が提示してきた示談案にすぐにサインをしない

上でご説明したとおり、加害者側の任意保険会社が提示してくる損害賠償額は、被害者にとって不利な内容となっていることが多くあります。

このような示談案であっても、一度サインをし、了承してしまうと、「示談契約」が成立してしまい、内容を変更することがほとんど不可能になってしまいます。

加害者側の保険会社から示談案を提示された場合は、一度弁護士に相談し、内容を確認してもらうなどして、妥当な金額となっているかを確認することをお勧めします。

 

④交通事故にくわしい弁護士に相談する

交通事故の被害に遭った場合、なるべく早く、交通事故にくわしい弁護士に相談することをお勧めします。

早いうちから弁護士に相談・依頼していれば、

  • 整骨院に通院する際の注意点についてアドバイスを受けられる
  • 治療費の打ち切りを通告された時に、すぐに相談できる
  • 依頼すれば、治療費を打ち切らないよう保険会社と交渉してくれる
  • 妥当な損害賠償額を計算してくれる
  • 加害者側から提示された示談案が妥当かについてアドバイスしてくれる
  • 後遺障害診断書を作成する際に、医師にどのようなことを伝えればよいかアドバイスしてくれる
  • 依頼すれば、後遺障害等級認定のための被害者請求の手続きを行ってくれる
  • 依頼すれば、保険会社などとのやり取りを代わりに行ってくれる

といったメリットがあります。

弁護士に依頼する、というと、弁護士費用を気にされる方が多いと思います。

しかし、交通事故の場合、自分や家族の任意保険で、付帯している弁護士費用特約に加入している方が多く、実質自己負担なしで弁護士に相談・依頼することができることが多いです。

交通事故に遭われた場合は、自分や家族の弁護士費用特約が使えないかどうか、一度確認してみることをお勧めします。

あわせて読みたい
弁護士費用

交通事故にくわしい弁護士に相談するメリット、交通事故にくわしい弁護士を選ぶ際のポイントについては、以下のページをご参照ください。

 

 

まとめ

むちうちの平均的な治療期間は約3か月となっていますが、それ以上の期間の治療を必要とする方も少なくありません。

しかし、保険会社は、治療開始から3か月を過ぎたころから治療の打ち切りを通告してくることがあります。

治療の打ち切りを通告されても、実際にはまだ治療の必要性があるという場合は、弁護士・主治医と相談の上、治療を続けることをお勧めします。

また、むち打ちの場合、十分な治療を行っても、痛みや痺れなどの神経症状が残ってしまう場合があります。

そのような場合には、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。

ただ、後遺障害等級認定で思ったような等級が認められないこともあります。

後遺障害等級認定に不安・不満がある場合は、弁護士に相談するようにしましょう。

当事務所でも、交通事故対応を集中的に担当している交通事故チームの弁護士が、交通事故の被害に遭われた方、治療打切りを通告された方、後遺障害等級認定に関してお困りの方のご相談に対応しております。

電話・オンラインによる全国からのご相談も可能です。

お困りの方はぜひ一度、お気軽に当事務所までご相談ください。

あわせて読みたい
無料相談の流れ

 

 

交通事故全般


 
賠償金の計算方法

なぜ交通事故は弁護士選びが重要なのか

続きを読む