過失割合でゴネ得が許せない!被害者の対処法を解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

交通事故が起きた場合、事故の発生・被害の拡大につき、加害者と被害者の双方に過失がある場合が多くあります。

その場合、両当事者にどういう割合で過失があったのか(過失割合)について決める必要があります。

交通事故の場合、多くのケースでは示談交渉が行われており、過失割合についても、示談交渉の中で、両当事者で話し合って合意することにより決めています。

その際、一方の当事者が、過失割合について自分の有利なようにするため、無理のある主張や強硬な主張を繰り返す(ゴネる)ことがあります。

こうした対応によって利益を得ることを、「ゴネ得」と言います。

ゴネ得を狙って無理な主張を繰り返す相手と交渉するのは大変なことですが、だからと言って相手の主張を安易に飲んでしまうと、本来受け取ることができるはずだった損害賠償額が大幅に減ってしまうことにもなり得ます。

ゴネ得を狙う当事者には、毅然として対応しなければなりません。

今回の記事では、過失割合でのゴネ得とはなにか、相手にゴネられるとどのような影響が生じるか、ゴネる加害者の特徴、ゴネ得を狙う当事者への対処法などについて解説していきます。

過失割合でのゴネ得とは?

交通事故では、加害者と被害者の双方に過失がある場合が多いです。

そのため、損害賠償についての話合い(示談交渉)の際には、発生した損害の額と合わせて過失割合についても協議します。(協議の結果、10対0の過失割合となることもあります。)

その際、自分に有利な主張(往々にして不合理なもの)に固執してゴネることで、交渉相手の主張を変えさせ、自分にとってより有利な過失割合での合意を成立させようとする人がいます。

「過失割合でのゴネ得」とは、このようにしてゴネることで利益を得ることを言います。

なお、過失割合については、以下の記事をご参照ください。

 

過失割合でゴネられるとどうなる?

交渉相手に過失割合についてゴネられると、次のような不都合が生じてきます。

 

示談交渉が長引く

交通事故が起こった場合、多くのケースでは、まずは損害賠償に関する示談交渉が行われます。

示談交渉は、賠償金額や過失割合について双方が合意しなければ進みません。

そのため、一方の当事者が過失割合についてゴネだすと、示談交渉が難航することになって、示談交渉に要する期間が長くなってしまいます。

 

賠償金の受け取りが遅れる

加害者(又は加害者が加入している任意保険会社)からの賠償金は、示談交渉が決着しなければ受け取ることができません。

そのため、交渉相手がゴネ得を狙っていて交渉が長引くと、賠償金を受け取れるまでに時間がかかってしまいます。

 

対応のために時間を奪われる

示談交渉が決着しない間は、話をうやむやにさせてしまわないためにも、相手との交渉を続けなければなりません(裁判などの法的手段をとる場合を除く)。

そのため、定期的に電話などで相手に連絡を取って話をする必要があり、その分、時間を奪われてしまいます。

他にも、

  • 証拠に当たって事実関係を確認する
  • 過失割合に関する資料を検討する
  • 相手の主張にどのように反論するかを検討する

といったことにも時間を取られます。

 

理不尽な主張を突き付けられる

ゴネ得を狙っている当事者は、往々にして、理不尽な主張を展開してきます。

事故に関して理不尽で身勝手な主張を聞かされることは、もう一方の当事者にとっては腹立たしく、大変な苦痛となることがあります。

 

大きなストレスがかかる

示談交渉がいつまでも進まないと、そのこと自体が大きなストレスとなります。

相手がゴネ得を狙っていて示談交渉が進展する気配が見えないとなると、ストレスは更に大きくなります。

相手の言うことがコロコロ変わったり、反論したら新たな主張を展開してきたりすることもありますので、交渉していてもキリがないという徒労感に襲われることもあります。

 

なぜゴネ得しようとするのか?

過失割合でのゴネ得を狙う理由は、主に次の2つになります。

 

損害賠償の金額をより有利にしたいから

ゴネ得をしようとする大きな理由の一つは、損害賠償額をより有利にしたい(加害者なら下げたい、被害者なら上げたい)ということにあります。

示談交渉は双方が合意しなければ進まないので、一方の当事者がゴネはじめると、話し合いが暗礁に乗り上げてしまいます。

そうなると、もう一方の当事者は、いつ問題が解決するのか分からなくなり、大きなストレスを感じることになります。

そして遂には、話を前に進めたいばかりに妥協し、ゴネている当事者の言い分を受け入れてしまうこととなることがあります。

まさに、無理が通れば道理引っ込む、といった具合です。

ゴネ得を狙う当事者は、こうなることを期待して、無理な主張に固執し、相手が折れてくるのを待っているのです。

 

損害賠償の支払を先延ばしにしたいから

過失割合でゴネる主な理由としては、加害者が損害賠償金の支払いを先延ばしにすることを狙っているということもあります。

交通事故の場合、多くのケースでは賠償金は保険会社が支払いますが、以下のように、加害者自らも賠償金を支払わなければならない場合があります。

  • 任意保険に加入しておらず、賠償金を自ら支払わなければならない場合
  • 任意保険に加入していても、免責金額が設定されているなど、当事者自身にも一定の金銭負担が生じる場合

このような場合に、少しでも支払いを先送りにしたいがため、過失割合に関してゴネて、示談交渉を長引かせようとする人もいます。

上に挙げた2点がゴネ得を狙う主な理由になります。

過失割合についてゴネる理由には他にも、

  • 自分の過失が大きかったとは認めたくない
  • 自分の言い分が認められなければ気が済まない
  • 相手に対して腹を立てており、困らせてやりたいと思っている
  • 「自分は被害者だ」という意識が強い

といったものがある場合もあります。

 

ゴネる加害者の特徴とは?

ゴネる加害者の特徴としてよく見られるものとしては、損害賠償について何らかの自己負担がある、ということが挙げられます。

他にも、

  • お金に対する執着が強い
  • 自分の考えに固執する
  • 自分の思い通りにならないと気が済まない
  • 感情的になりやすい
  • 被害者意識が強い

といった特徴をもつ人もいます。

 

 

過失割合で妥協すべきでない理由

過失割合についてゴネられた場合、「示談交渉を早く終わらせて、賠償金を支払ってもらいたいから・・・」と、妥協してしまいたくなるかもしれません。

しかし、過失割合の問題については、妥協はすべきではありません。

なぜなら、過失割合は、賠償金の額に大きな影響を与えるからです。

特に人身事故で後遺障害が残った場合や被害者が死亡した場合には要注意です。

このような場合、賠償金額は数千万円に及ぶことがあります。

そうすると、過失割合が1割変わる(例:4:6から3:7になる)だけでも、得られる賠償金額が数百万円変わってしまいます。

賠償金は被害者が受けた被害を回復し、その後の生活を支える大切なものですので、相手がゴネるからといって妥協してしまわないようにしましょう。

交通事故の損害賠償と過失割合の関係については、以下のページをご覧ください。

 

 

ゴネ得への対処法とは?

ゴネ得を狙う相手方への対処法としては、以下のようなものがあります。

ゴネ得への対処法とは?

それぞれのポイントについてご説明します。

 

証拠や資料を示して話し合うようにする

相手がゴネ得を狙って不合理な言い分を繰り返す場合は、自分の言い分について、証拠や資料を示して話すようにしましょう。

例えば、こちら側が、「事故の時、こちらの信号は青で、相手の信号は赤だった」「こちらは車を止めていたのに、相手からぶつかってきた」と主張しているのに、相手が反対のことを言ってきた場合には、ドライブレコーダーの記録を見せ、信号の色や車の動きを確認してもらうことが考えられます。

他にも、警察の実況見分調書などの捜査資料、目撃者の証言などを示すことも考えられます。

過失割合についての文献や裁判例を提示することも、過失割合でゴネ得を狙う相手への対策となり得ます。

それでも相手が不合理な主張を繰り返すようであれば、相手にも証拠や資料を示すように求めてみましょう。

証拠や資料を提出できないとなると、相手も、ゴネ得を狙うのを諦める可能性があります。

ただ、結局のところ示談に応じるか否かは当事者の意思に委ねられていますので、こちらが自分に有利な証拠を示し、相手からは証拠が提出できない状況であるにもかかわらず、相手がゴネ得を狙うのを諦めないことも十分にあり得ます。

 

相手の言い分を書面にしてもらう

ゴネ得を狙っている当事者の言い分は、筋の通らない、不合理なものになっていることが大半です。

そのため、電話などで相手の言い分を聞いていても、一体相手が何を言いたいのか分からなくなってしまうことが多々あります。

そのような場合には、相手に、自分の言い分を書面にしてまとめてもらうよう働きかけてみることが考えられます。

そうして言い分を書面にしてもらうことができれば、改めて相手の主張が理にかなったものとなっているか確かめ、交渉を進めることができるようになる可能性があります。

ただ、相手には自分の言い分に関する書面を提出する義務があるわけではありませんので、必ずしも応じてもらえるわけではないことにはご注意ください。

 

不合理な主張には屈しないという毅然とした姿勢を見せる

相手がゴネ得を狙っている場合は、「いくら不合理な主張をされても、こちらが屈することはない」という毅然とした姿勢を見せることも大切です。

こちらが一歩も引かないということをはっきりと示せば、相手も、「これ以上ゴネ得を狙っていても無駄だ」と諦め、それまでの不合理な主張を取り下げる可能性があります。

 

冷静さを保ち、焦らないように心がける

交渉の際には、冷静さを保ち、焦りを見せないようにすることが大切です。

ゴネ得を狙った相手の理不尽な主張を聞いていると、腹が立ってくることも少なくありません。

しかし、そこで感情的な言葉をぶつけてしまうと、相手とけんかになってしまい、さらに示談交渉が難航することになります。

また、交渉を早く済ませたいと焦っている様子を見せてしまうことも避けなければなりません。

焦っている様子を見せてしまうと、ゴネ得を狙っている相手に足元を見られ、

「早く交渉を済ませたいなら、こちらの言っている案を飲め」と相手から迫られる
「このままゴネていれば、早く交渉を済ませたい相手が折れてくる」思われ、相手が態度を硬化させてしまう

といったことになるおそれがあります。

 

自賠責への被害者請求を行う

「交渉を焦らないようにしよう」といっても、賠償金の受け取りが遅れていることで経済的に厳しい状態にあると、どうしても焦りが生じてきます。

そのような場合には、自賠責保険に対して被害者請求を行い、賠償金の一部について先払いを受けることを検討してみましょう(ただし、物損のみの事故の場合は、被害者請求はできません。)。

被害者請求をすることができれば、示談交渉が決着していなくとも、賠償金の支払いを受けることができます(120万円が上限)。

ただし、被害者請求をするためには、自ら手続に必要な書類を準備し、請求手続きを行わなければならないため、手間がかかりますし、手続きに関する知識も必要になります。

特に、後遺症が残っており後遺障害等級認定を受ける必要がある場合には、より有利な後遺障害等級認定を得るための専門的な知識も必要になります。

被害者請求をする場合には、交通事故に詳しい弁護士に相談し、サポートを受けることをお勧めします。

被害者請求については、以下のページで詳しく解説しています。

 

交通事故に詳しい弁護士に交渉を依頼する

相手がゴネ得を狙っている場合には、上のような対応をしても、相手が態度を変えず、交渉が進まないことも少なからずあります。

相手が過失割合でゴネ得を狙っていると思われる場合には、早いうちに弁護士に相談し、交渉を依頼することをお勧めします。

弁護士が交渉の窓口になると、相手方がゴネ得することを諦め、示談交渉に応じてくることも数多くあります。

それに、弁護士に交渉を依頼すれば、被害者にとって最も有利な弁護士基準によって損害賠償額を算定し、それを基礎に示談交渉を進めることが可能になります。

弁護士に依頼をするメリットについては、弁護士に依頼するメリットの箇所で詳しくご説明します。

 

裁判を提起する

上でご紹介したような対応を行ったり弁護士に依頼したりしても、相手がゴネ得を諦めないとなると、示談交渉で適切な過失割合を決めることには、どこかで見切りをつける必要があります。

示談交渉では決着を着けられないと思われる場合には、裁判を提起し、法的手段を取っていきましょう。

裁判を行えば、過失割合については、証拠などに基づいて裁判官が判断してくれます。

 

 

弁護士に依頼するメリット

弁護士に示談交渉への対応を依頼することには、次のようなメリットがあります。

弁護士に依頼するメリット

 

相手がゴネ得を諦める可能性がある

それまではゴネ得を狙って無理な主張ばかりしていた相手でも、弁護士が出て対応すると態度を変え、こちらの案に同意してくることがあります。

示談交渉のプロである弁護士が代理人に立てば、「ゴネ得を狙っても無駄だ」と相手に諦めさせることができる場合が少なくないのです。

この点は、弁護士に交渉を依頼することの大きなメリットとなります。

 

適切な過失割合で解決できる

弁護士が交渉を担当すれば、相手方の理不尽な主張に屈することなく対応してくれますので、適切な過失割合で示談することが可能になります。

相手がゴネ得を諦めないようであれば、スムーズに裁判を提起し、適切な過失割合での判決を得ることができるように尽力してくれます。

 

被害者に最も有利な弁護士基準で算定した損害賠償を請求できる

交通事故の損害賠償の算定基準には、

  • 自賠責基準(自賠責保険からの支払額を算定する際に用いられる基準)
  • 任意保険基準(任意保険会社各社が内部的に定めている支払い基準)
  • 弁護士基準(弁護士が関与した示談交渉や裁判で用いられる基準)

の3種類があります。

このうち、最も被害者に有利な算定結果が得られるのは、弁護士基準になります。

弁護士に示談交渉を依頼すれば、被害者にとって最善の弁護士基準による算定結果を前提として損害賠償を請求することができますので、結果的にも得られる損害賠償額が増える傾向にあります。

弁護士基準とその他の基準では、損害賠償の算定額に数倍の開きが出ることもありますので、弁護士基準での算定額を前提に示談交渉を進めることができることは、弁護士に依頼することの大きなメリットとなっています。

 

損害賠償額の相場についてアドバイスをもらえる

示談交渉では、相手の主張に振り回されないためにも、自ら損害賠償額の相場について調べておくことが大切です。

弁護士に示談交渉を依頼していれば、気軽に弁護士に相談し、自分のケースでの損害賠償額の相場についてアドバイスしてもらうことが可能です。

 

交渉の窓口を任せることができる

弁護士に示談交渉を依頼すると、その後は、相手とのやり取りを全て弁護士に任せることができます。

そうすれば、もう相手の不合理な弁解を直接聞かされることはなくなりますし、交渉のための電話をする時間や相手方との交渉方法について考える時間を取る必要もなくなりますので、依頼者ご本人の負担は軽減されます。

 

治療中などに発生する様々な問題について相談できる

交通事故に遭うと、ケガの治療に関する問題(整骨院に通っても大丈夫かなど)、後遺障害に関する問題などが色々と生じてきます。

早いうちから弁護士に依頼していれば、こうした疑問が生じた際に、その都度相談することができ、手軽にアドバイスを得ることができます。

 

治療費の打ち切り・後遺障害等級認定の申請にも対応できる

早いうちから弁護士に依頼をしていれば、

  • 保険会社から治療費の打ち切りを通告された
  • 後遺障害等級認定申請が必要になった

という場合でも、すぐに弁護士に対応を任せることができます。

交通事故について弁護士に依頼することのメリット、交通事故にくわしい弁護士の選び方については、以下のページでより詳しく解説しています。

なお、交通事故の場合、弁護士費用特約を使い、弁護士費用を自分で負担することなく、弁護士に依頼することができる方がたくさんおられます。

交通事故の被害に遭われた場合は、早いうちに一度、ご自身やご家族の任意保険を確認し、弁護士費用特約が使えるかどうか調べておきましょう。

弁護士費用特約を使えない場合でも、交通事故については、初回相談料無料、着手金無料で対応している法律事務所もありますので、HPなどで調べ、まずは一度、気軽に相談してみることをお勧めします。

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過失割合のゴネ得についてのQ&A

過失割合はいつ決まるのですか?

過失割合は、示談交渉の場合であれば双方が合意した時に、裁判をした場合には判決が出た時又は和解が成立した時に決まります。

示談交渉で過失割合を決める手順を簡単にご説明すると、以下のようになります。

  1. ① 証拠などにより、事故状況に関する事実関係を確認する。
  2. ② 文献や裁判例を調べ、基本となる過失割合(基本過失割合)を選択する。
  3. ③ 基本過失割合の修正要素に当たる事実の有無を確認する。
  4. ④ 修正要素に従って基本過失割合を修正し、最終的な過失割合に関する結論を出す。
  5. ⑤こうした過程を経て出た結論を前提として、相手方と交渉する。

過失割合の決め方については、以下のページでより詳しく解説しています。

 

 

まとめ

今回は、過失割合についてゴネ得を狙われるとどうなるか、ゴネ得を狙う当事者の特徴、ゴネ得を狙われた場合の対応方法などについて解説しました。

交通事故の賠償金は、被害を回復するための大切なものです。

特に、交通事故により大きなケガをして長期の休業を余儀なくされた、後遺障害を負った、被害者が死亡した、といった場合には、被害者や家族の将来の生活を支えるための非常に重要なものとなります。

過失割合はこの賠償金額に大きな影響を与えるものですので、相手がゴネているからといって簡単に妥協してはいけません。

相手が過失割合でゴネ得を狙っていてお困りの場合は、なるべく早く、交通事故に詳しい弁護士にご相談ください。

弁護士に相談し、交渉を依頼すれば、毅然とした態度で相手の要求を拒否し、適切に交渉や手続きを進めてくれます。

当事務所では、交通事故を集中的に取り扱う交通事故チームを設けており、交通事故問題に精通した弁護士たちが、交通事故の示談交渉でお困りの方のサポートを行っております。

電話又はオンラインによる全国対応も行っています。

過失割合に関することをはじめ、示談交渉でお困りの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご連絡ください。

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