交通事故のとき受診すべき病院とは?治療費の請求や示談のポイント
交通事故で体を負傷した場合には整形外科を受診し、頭を打った場合には脳神経外科を受診しましょう。
また、眼科、耳鼻科など症状に合わせて必要な診療科を受診しましょう。
症状が全身に及ぶ場合は、整形外科、脳神経外科、耳鼻科を有する総合病院を受診し、ひととおり全身的な検査を受けることが望ましいです。
交通事故でケガをした場合には、継続的に週2、3回程度通院する必要がある上、痛みなどが残った場合には後遺障害診断書を作成してもらう必要があるなど、病院との関わりが深くなってきます。
そのため、安心して通える病院を選ぶことが大切です。
今回は、交通事故に遭ったときに受診すべき病院、病院選びのポイント、病院を受診した方が良い場合、病院受診後の示談交渉のポイントなどについて解説していきます。
目次
交通事故のとき受診すべき病院とは?
交通事故は何科を受診すべき?
受診すべき診療科は、症状によりますが、体を痛めた場合には、整形外科を受診すべきでしょう。
頭を打っている場合には脳神経外科を受診します。
出ている症状に合わせて、耳鼻科、眼科などを受診するようにしましょう。
緊急の場合は救急車を呼ぶ
交通事故で大けがをして動きにくい、意識がぼんやりする、骨折している疑いがある、頭を打ったなどという場合は、その場で救急車を呼びましょう。
特に、衝撃の大きい事故だった場合は、緊急を要するケガがある可能性もありますので、遠慮せず救急車を要請しましょう。
救急車で搬送してもらえれば、病院などの方で必要な診療科に回してもらえます。
救急車を呼ぶ必要があるかどうか判断に迷う場合には、救急相談センター(#7119)に電話して、アドバイスをもらうこともできます(ただし、一部利用できない地域もあります。)。
参考:救急安心センター事業(#7119)ってナニ? | 救急車の適時・適切な利用(適正利用) | 総務省消防庁 (fdma.go.jp)
自分で病院を受診する場合
症状に合わせて、必要な診療科の病院を受診することになりますが、症状が全身に及んでいる場合は、総合病院を受診されることをお勧めします。
交通事故の場合、骨折・打撲・むちうちなどの整形外科の対象となるケガ、頭を打ったことによる脳の損傷など脳神経外科の対象となるケガ、耳鳴りなど耳鼻科の対象となるケガが発生することが多いためです。
総合病院で検査を受ければ、複数の箇所について検査してもらうことができますし、検査結果に応じて、適切な診療科を紹介してもらうこともできます。
既に症状がはっきりしている場合は、
むちうち、打撲、骨折であれば整形外科
頭を打った、頭痛やめまい。吐き気があるといった場合には脳神経外科
耳鳴りがする場合は耳鼻科
など、症状に応じた診療科を受診しても良い場合もあります。
どの診療科を受診すればよいか分からない場合には、お近くの医療安全支援センターに相談することもできます。
引用元:全国の医療安全支援センター
交通事故の病院選びのポイント
評判が良い病院を選ぶ
病院を選ぶ際には、評判の良い病院を選ぶと良いです。
特に、交通事故によるケガの取扱い実績が豊富な病院かどうか、交通事故によるケガへの対応に力を入れているかどうかを確認すると良いでしょう。
交通事故によるケガの治療では、病院側でも、保険会社への対応、後遺障害診断書の作成などが必要となります。
こうした対応に慣れている病院に通う方が、安心して治療を続けられる可能性が高いです。
通いやすい病院を選ぶ
交通事故のケガの治療では、週に2~3回程度通院するケースが多いです。
そのため、交通の便が悪い、遠すぎるなど通いにくい病院を選んでしまうと、通院の負担が大きくなってしまい、病院から足が遠のいてしまうことにもなりかねません。
通院頻度が少なくなると、ケガの治り具合にも影響しますし、入通院慰謝料の算定の際にも不利になります。
継続的に通院する病院を選ぶ際には、ご自身にとっての通いやすさにも注意しましょう。
土日や夜遅くに開業しているなど、開業日時に気を付けることも大切です。
なお、事故後最初に検査を受ける際には総合病院を受診した方が良いですが、その後継続的に通院する病院については、通いやすさも重視し、個人病院などを選ぶことも考えましょう。
病院と合わせて整骨院にも通う人も多くおられます。
整骨院の方が開業時間が長く、交通アクセスも良いところにあることが多いので、通いやすいことが多いのです。
整骨院に通う場合は、
- 医師の了解を得てから通う
- 月に一度は病院も受診する
- 加害者側の保険会社にも知らせておく
など、注意すべき点があります。
整骨院に通う場合の注意点については、以下のページで詳しく解説しています。
医師と話がしやすい
交通事故のケガの治療では、ケガの症状を明確に伝えて医師に理解してもらう必要がありますし、治療をいつ頃終えるか、どのような検査をするか、後遺障害診断書にどのような内容を記載してもらうかなど、医師に相談するべきことがたくさんあります。
こうしたことについて十分に意思疎通を図るためにも、かかりつけ医には話をしやすい医師を選ぶと良いでしょう。
対応が良くなければ病院を変えることも検討
病院の対応が良くないなど病院を変えたい場合には、転院することも可能です。
遠方で通いにくい、開業日時に都合を合わせにくいといった場合にも、転院を検討してみましょう。
転院する場合には、それまでのかかりつけ医にその旨を伝え、紹介状を作成してもらいましょう。
紹介状を作成してもらう際には、誤って「治癒」「治療中止」などと書かれると示談交渉の際などに面倒なこととなる可能性がありますので、間違いなく「転医」と記載してもらいましょう。
転院することについては、加害者側の保険会社にも一言連絡しておきましょう。
そうすれば、新しい通院先でも、保険会社が病院に治療費を直接支払う一括対応を取ってもらえる可能性があります。
交通事故で病院を受診した方が良い状況とは?
ケガをした様子がなくても少しでも違和感があれば病院を受診した方が良い
事故による体への衝撃がほとんどなかったような場合や、全くケガをしている様子がない場合を除き、少しでも体に違和感があるのであれば、念のため病院を受診しておきましょう。
事故の時やその直後には明確に気が付かなくとも、事故の瞬間に思わぬ負傷をしていて、後から痛みなどの症状が出てくることも、実際にあります。
事故後しばらくは気分が高揚していて気が付かなかったけれども、後になって痛みや痺れがあることに気が付くということもあります。
こうした場合に、事故後すぐには病院に行っておらず、日にちが経ってから初めて病院を受診したとなると、「事故があってから病院を受診するまでの間に、事故とは別の原因で負ったケガではないか」などと、交通事故とケガの因果関係を疑われてしまうおそれがあります。
そうなると、示談交渉が難航したり、本来受け取ることができたはずの損害賠償が減額されたりしてしまったりする可能性があります。
そのようなことにならないためにも、交通事故の被害に遭った場合は、ケガをした様子がなくとも、念のためにできるだけ早く病院を受診し、ひととおり検査を受けるようにしましょう。
はっきりとしたケガの症状がある場合
交通事故によってケガをしたことがはっきりしている場合は、なるべく早いうちに病院に行きましょう。
たとえ軽い打撲程度だと思っても、後から痛みがひどくなったり、症状が思いの外長引いてしまったりすることもあり得ます。
そうなった後に受診すると、上での説明と同様の理由で、事故とケガの因果関係を疑われてしまいかねません。
診断書を早期に警察に提出しないと、人身事故扱いにしてもらえないという問題もあります。
警察で人身事故として取り扱ってもらっていないと、人身事故であることを示す交通事故証明書を発行してもらうことができなくなり、任意保険会社に支払いを請求する際や自賠責に被害者請求をする際に人身事故証明入手不能理由書を作成しなければならないなど、余計な手間がかかります。
診断書の提出が遅れてしまうと警察で人身事故として扱ってもらうことができなくなりますので、交通事故でケガをした場合は、できるだけ早いうちに病院を受診し、警察に診断書を提出するようにしましょう。
子どもが同乗していた場合
子どもはまだ身体が成長しきっていないので、比較的小さな衝撃でもケガをしてしまう可能性があります。
それに、子どもは自分の症状を上手く説明できませんし、親を心配させまいとすることもありますので、痛み・痺れや違和感を感じていても、「だいじょうぶ」などと言ってしまうことがあります。
子どもが同乗している時に交通事故に遭った場合は、ケガをした様子がなくとも、一度は病院を受診することをお勧めします。
病院を受診した場合に治療費を請求できる?
交通事故に遭った場合、ケガがないかどうかを確かめるために念のために受診したときでも、診療費、検査費用、通院費用を損害賠償として加害者に請求することができます。
検査の結果ケガをしていることが判明すれば、そのケガを治療するための治療費や通院費用も、加害者に損害賠償として請求することができます。
病院受診後の示談の5つのポイント
治療費の打ち切りを告げられたからといって、すぐに治療を止めてしまわない
交通事故のケガでの通院中には、加害者側の任意保険会社が病院に直接治療費を支払ってくれる(一括対応)ことが多くあります。
ところが、治療期間が長くなってくると、加害者側の任意保険会社は、「これ以上治療を続けても症状が良くならない状態(症状固定)になる時期なので、治療費の支払いを打ち切ります」などと一方的に通告してくることがあります。
こうした治療費打ち切りの時期について、保険会社は、往々にして、「むちうちなら3か月」などといった画一的な基準をもとに決めています。
しかし、ケガの程度や回復状況は人によって様々ですので、治療費の打ち切りを告げられた時点ではまだ、治療を続けることで症状が改善すると見込まれる方も数多くおられます。
治療費打ち切りを告げられたけれどもまだ痛みなどがあり、治療を続けている最中である場合には、一度医師や弁護士と相談してみましょう。
そして、まだ治療により症状が改善する見込みがあるようであれば、諦めず治療を続けるようにしましょう。
そうした方が、痛みなどがより軽くなり、より良い状態に回復できる可能性があります。
それに、痛みなどの後遺症が残ってしまって後遺障害等級認定の申請をすることになった場合にも、症状が固定するまできちんと治療を継続していないと、適切な認定を受けることができなくなるおそれがありますので、注意しなければなりません。
治療費打ち切り後の治療費は自己負担?
任意保険会社による治療費打ち切り後は、病院窓口で支払う治療費等は、とりあえずは被害者自身で負担することになります。
自己負担した治療費については、被害者請求により自賠責保険に請求することを検討します。
自賠責保険の傷害部分(治療費、慰謝料、休業損害など)は120万円の限度額がありますが、限度額を超えていなければ、自賠責保険から治療費を回収できる可能性があるのです。
詳しくは、専門の弁護士に相談される来をお勧めします。
こうした対応を取らない場合でも、後で損害賠償を請求する際に、治療費打ち切り後に負担した治療費等を賠償金に含めて請求することもできます。
ただし、「治療費打ち切りの時点で症状固定となっており、その後の治療は不必要なものだった」と判断されてしまうと、自腹で負担した治療費等を損害賠償に含めることはできなくなる可能性が高いです。
このように、治療費打ち切り後の治療費を自己負担しなければならない場合もあることは、お知りおきください。
痛みなどが残っている場合は後遺障害等級認定の申請をする
通院治療を続けていても、ケガの影響による痛みや痺れなどが残ってしまい、これ以上治療を続けても良くなる見込みがない状態になってしまうことがあります。
このような場合には、後遺障害等級認定申請を行いましょう。
後遺障害等級の認定を受けることができれば、治療費や休業損害、入通院慰謝料に加え、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益を請求できるようになります。
賠償金額については自分で見積もっておく
交通事故の示談交渉では、加害者側の保険会社から示談案が提示されることが多いです。
ところが、この示談案は、保険会社の内部基準(任意保険基準)で算定されており、被害者にとっては不十分な内容となっていることも少なくありません。
適切な額の損害賠償を受け取るには、被害者にとって最も有利な算定基準である弁護士基準(弁護士が示談交渉する際や裁判になった際に用いられる基準)により賠償金額を見積もり、それを基に示談案の内容が十分なものかを検討することが重要です。
ただ、弁護士基準による損害賠償額を見積もるためには、弁護士基準の内容を調べる必要があるなど手間がかかります。
そこで、当事務所では、どなたでも簡単に弁護士基準による損害賠償額を見積もっていただくことができるよう、交通事故賠償金計算シミュレーターをご用意いたしました。
このシミュレーターをご利用いただけば、被害者のご年齢、年収、後遺障害等級、過失割合などをご入力いただくだけで、休業損害、逸失利益、慰謝料の相場をご覧いただくことができます(ただし、治療費については実費が損害賠償額となるため、当シミュレーターで算定することはできません)。
当シミュレーターのご利用に際しては、連絡先などの個人情報を入力する必要はございませんし、結果もその場ですぐにご覧いただくことができます。
興味がおありの方は、以下のリンクから、どうぞお気軽にご利用ください。
示談書にサインをするかどうかは慎重に考える
示談交渉が進んでくると、示談書を渡され、サインするよう求められることがあります。
この示談書にサインをしてしまうと、「示談契約」が成立してしまいます。
そうすると、実は不十分な内容の示談だったことが後から判明したとしても、もはや契約内容を覆すことはほとんど不可能になります。
示談書にサインすることは、それだけの重みをもつことなのです。
示談書にサインをする前には、一度弁護士に相談して内容を見てもらい、適切な内容になっているか、不利な条項はないかといったことを確認してもらうことをお勧めします。
示談書の記載内容や効力に関する解説は、以下のページをご覧ください。
交通事故にくわしい弁護士に相談する
交通事故の治療、示談交渉に際しては、上に挙げた以外にも様々な注意点があります。
損害賠償額の見積もりにしても、各ケースでの個別の事情を十分に考慮し、増額・減額要素についてまで検討して適切な見積もりをするには、高度な専門知識が必要になります。
それに、被害者にとって最も有利な弁護士基準に沿った損害賠償を獲得するためには、弁護士に交渉を依頼するか裁判を提起する必要があります。
そのため、交通事故の被害に遭った場合には、なるべく早いうちに、弁護士に対応を依頼することをお勧めします。
交通事故の示談交渉を弁護士に相談、依頼することには、次のようなメリットがあります。
- 弁護士基準による算定額に近い賠償金を得られる可能性が高くなる
- 適切な過失割合で合意できる可能性が高くなる
- 治療中の注意ポイント、損害賠償額の適正額などについてアドバイスを受けられる
- 治療費の打ち切り、後遺障害等級認定申請などにも適切に対応してくれる
- 保険会社などのとの交渉窓口を弁護士に任せることができる
交通事故について弁護士に依頼するメリット、交通事故にくわしい弁護士の選び方については、以下のページもご参照ください。
交通事故と病院についてのQ&A
交通事故から何日以内に病院?
ケガの急性期に治療を開始できた方が順調に回復する可能性が高くなりますので、事故翌日から3日以内に受診して検査を受ける方がより望ましいです。
初回の診療・検査が遅れると、「検査に行かなかった間に他の原因でケガをしたのではないか」と疑われてしまい、治療費や入通院慰謝料を損害賠償に含めて請求することができなくなってしまうおそれがあります。
そのようなことにならないためにも、交通事故に遭った場合は、なるべく早く病院を受診しましょう。
交通事故でケガをしたら毎日通院したほうがいい?
もちろん医師から毎日通院するように言われた場合は別ですが、そうでなければ、毎日は通院しなくともよいです。
確かに、通院頻度が少なすぎると、入通院慰謝料が減額される可能性はあります。
しかし、入通院慰謝料を減額されないために必要となる通院回数は、週に2~3回程度です。
むしろ、毎日通院してしまうと、加害者側から「不必要に多く通院している」と見られてしまい、治療費の一部について損害賠償の対象とすることを拒否されてしまうなどの不都合が生じる可能性があります。
交通事故でケガをした際に毎日通院することの問題点については、以下のページでも解説しています。
まとめ
まとめ
今回は、交通事故に遭った場合の病院受診に関する注意点などについて解説しました。
交通事故の被害に遭った場合は、ケガがない又は軽いように思えても、念のため、早いうちに一度病院を受診し、検査を受けることが大切です。
その結果ケガがあったことが判明したら、診断書をもらい、すぐに警察に提出しましょう。
そして、加害者側にも、ケガをしたことにより発生した損害の賠償を請求していきます。
交通事故でケガをしてしまった場合には、治療中から注意すべきポイントもありますので、なるべく早いうちに弁護士に相談することをお勧めします。
当事務所でも、交通事故でのケガに関する問題を取り扱う人身障害部を設け、交通事故でケガをしてお困りの方々のサポートに力を尽くしております。
初回相談・着手金は無料となっておりますし、弁護士費用特約もご利用いただけます。
電話・オンラインによる全国からのご相談にも対応しております。
お困りの方はぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。