ジャクソンテストとは?スパーリングテストとの違いを解説
ジャクソンテストとは、首から手に通じている神経に障害が生じているかどうかを確かめるための検査です。
ジャクソンテストを行う場合は、医師などが患者の首を後ろに曲げさせ、上から頭部に手を当て、下向きに圧力を加えます。
これによって痛みや痺れといった症状が現れた(又は増強した)という場合には、神経に障害が生じていることになります。
ジャクソンテストと似たものにスパークリングテストがありますが、これは、首を左右のどちらかに傾けて行う検査になります。
ジャクソンテストやスパークリングテストは、後遺障害等級認定の際にも参考にされますので、交通事故でむち打ちになった(又はその可能性がある)場合には、きちんと受けておいた方が良い大事な検査です。
今回は、ジャクソンテストとスパークリングテストについてご紹介し、これらの検査の違いや交通事故の際に気を付けるべきポイントについても解説していきます。
ジャクソンテストとは?
ジャクソンテストとは、頸椎を後ろに反らせ、頭部を下に向かって圧迫することにより、上肢痛、肩甲部痛を誘発させるテストです。
このようにして圧力を加えることで神経を圧迫し、痛み、痺れなどの症状を誘発して、頸椎から手に向かって走行している神経に障害があるかどうかを調べています。
ジャクソンテストを行ったことにより痛みが出れば、神経に障害があるということであり、検査結果は陽性となります。
ジャクソンテストのやり方
ジャクソンテストを行う際は、患者を座らせ、医師などの検査をする人がその後ろに立ちます。
そして、患者の頭部を後ろに曲げさせ、医師などが患者の頭に両手を置きます。
その手で下に向かって垂直に圧迫することで、痛みを誘発させ、神経損傷の有無を検査します。
この検査を行うことで後頭部・頸部・上肢への放散痛が感じられた(又は強まった)場合は、検査結果は陽性となり、神経障害があることが示されます。
痛みを感じる場所は、神経障害が生じている場所によって異なります。
スパーリングテストとは?
スパーリングテストも、頸椎から手に向かって走行している神経に障害が生じていないかを確かめるための検査です。
スパーリングテストでは、頸椎を左右どちらかの後ろ側に倒させて圧力を加え、痛みなどの状況を確認します。
スパーリングテストを行う際は、左右の状態の違いを確認するため、頭を左右それぞれに傾けた場合について検査を行います。
スパーリングテストのやり方
スパーリングテストを行う場合、患者を座らせてその後ろに検査をする医師等が立ちます。
それから、患者の頭部を後ろに曲げさせ、左右のどちらかに傾かせます。
そして、医師等が患者の頭部に手を当て、上から下へと垂直方向に圧力をかけ、痛みなどの症状が生じる(又は増強する)かどうかを調べます。
こうすることにより、患側の上肢や肩甲部の疼痛が引き起こされ(又は増強され)たり、異常感覚が生じ(又は増強し)たりすれば、検査結果は陽性となり、首を倒した側に異常があることがわかります。
ジャクソンテストとスパーリングテストとの違い
ジャクソンテストとスパーリングテストの違いは、頸部をまっすぐ後ろに倒すか(ジャクソンテスト)、左右のいずれかに傾けるか(スパーリングテスト)、という点にあります。
また、ジャクソンテストの場合は真後ろ側一方向についての検査だけで済みますが、スパーリングテストの場合は左右二方向についてのテストが必要であるという点も、両者の違いとなります。
交通事故におけるジャクソンテストのポイント
事故後なるべく早く整形外科のある病院で検査を受ける
交通事故にあった場合は、なるべく早く整形外科のある病院を受診し、ジャクソンテストなどの必要な検査を受けるようにしましょう。
交通事故にあった場合、興奮していることなどから、ケガをしていても痛みなどの症状にすぐには気づかない場合も少なからずあります。
ところが、痛みなどの症状がないからといって病院を受診しないままに過ごしてしまい、後から症状が出てはじめて病院を受診してしまうと、事故と受診までに間があることから、加害者側に「事故後に別の原因でケガをした可能性がある」と疑われてしまいかねません。
このように疑われると、示談交渉でトラブルになったり、損害賠償を受けられなくなったりするなど、大きな不利益を被るおそれがあります。
交通事故にあってしまったら、事故後数日のうちには、目立った症状がなくとも病院を受診し、MRIやジャクソンテストなどひととおりの検査を受けるようにしましょう。
交通事故後の病院の受診に関する注意点については、以下のページをご覧ください。
ジャクソンテストはむちうちで後遺障害等級認定を受ける際に重要
交通事故でむちうちが疑われる場合は、ジャクソンテストやスパーリングテストといった神経学的検査を受けることが大切です。
それは、後に痛みや痺れといった後遺症が残った場合に、適切な後遺障害等級認定を受けるために重要になるからです。
むちうちについて後遺障害等級認定を受ける場合、
- 12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号 局部に神経症状を残すもの
のいずれかに認定される可能性があります。
これらのうちでより重度の12級13号に認定されるためには、痛みや痺れなどの神経症状に関する以下のような他覚所見が必要となります。
- MRIやCT、レントゲンなどの画像所見により神経が圧迫されていることが認められること
- 痛みの訴えやジャクソンテストなどの神経学的検査の結果が、他の客観的な資料と整合していること
そのため、ジャクソンテストを適切に受けていないと、12級13号の認定を受けるための資料がそろわず、実際には12級13号に相当する状態だったとしても、適切な認定を受けることができなくなってしまうおそれがあるのです。
また、むちうちでは画像所見(MRI、レントゲンなど)で異常が見つけられない場合もあります。
その場合でも、ジャクソンテストなどの神経学的検査で異常があることを裏付けることができれば、痛みなどが交通事故を原因として生じていることを医学的に説明できると認められ、14級9号に認定される可能性があります。
なお、ジャクソンテストなどが陽性であっても、場合によっては、14級9号の認定も受けることができず、後遺障害があるとは認められないこともありますので、ご注意ください。
ジャクソンテストでは痛みなどについて嘘をつかない
ジャクソンテストやスパーリングテストでは、医師等が首や頭に圧力を加え、それによって生じた痛みや痺れを患者から自己申告し、その申告内容を基に神経障害の有無を診断します。
そのため、「ジャクソンテストをしても別に痛みは出ないけれど、嘘をついて痛みが出たことにすれば、陽性と診断されるだろう」と考える方もおられるかもしれません。
しかし、実際には、嘘をついて医療者の目をごまかすのは止めた方がよいです。
ジャクソンテストやスパーリングテストでは、神経の損傷部位によって、どこにどのような痛みが出るかといった結果に違いが生じます。
そのため、痛みについて嘘をついた際に、うっかりと神経損傷が見られる箇所に対応しないところに痛みが出てしまったなどと言ってしまうと、嘘がバレてしまうおそれがあります。
検査で嘘をついたことがバレてしまうと、「この患者は、いつも痛みや痺れがあると訴えているけれども、それも嘘なのではないか」と医師から疑われてしまうおそれもあります。
そうすると、カルテや後遺障害診断書に症状に関する訴えを十分に記載してもらえなくなり、後遺障害等級認定の際に支障を来すこともあるかもしれません。
医師との信頼関係を大切にするためにも、ジャクソンテストなどの際に嘘をつくのは止めましょう。
痛みや痺れについては医師に正確に伝える
むちうちで後遺障害等級認定を受けようとする場合、ジャクソンテストなどの検査結果が揃っているだけでは足りない可能性があります。
日常的に生じている痛みや痺れの状況、程度も重要になりますし、こうした症状に一貫性が見られることも重要です。
このような自覚症状について記録に残すためには、医師に症状を正確に伝え、カルテに残してもらうことが大切です(自分自身で日記をつけることも有効です。)。
交通事故のケガで医師の診察を受ける際には、医師に症状についてしっかりと伝えることを意識しましょう。
整骨院でのジャクソンテストでは後遺障害診断書に記載できない
後遺障害等級認定を受ける際には、後遺障害診断書を用意する必要があります。
この後遺障害診断書は、整骨院で作ってもらうことはできず、医師に作成してもらう必要があります。
そのため、整骨院でジャクソンテストを受けているだけでは、その結果を後遺障害診断書に反映することができません。
十分な内容の後遺障害診断書を作成してもらうためにも、整骨院に通っている場合でも、少なくとも月に1回は病院を受診し、必要な診察や検査を受けるようにしましょう。
後遺障害診断書を作成してもらう際には、医師に症状を詳しく伝えて診断書に記載してもらえるよう依頼するなど、適切な後遺障害診断書を作成してもらうための工夫が必要になる場合があります。
後遺障害診断書を作成してもらう際のポイントについては、以下のページをご覧ください。
治療の必要がある限り治療を続ける
交通事故によりむちうちで治療を受けるとき、多くのケースでは、加害者側の保険会社が被害者の病院に直接治療費を支払う一括対応が取られます。
一括対応が取られると、被害者は、病院の窓口で治療費を負担することなく治療を受けることができます。
ところが、治療を始めてからある程度期間が過ぎると、保険会社から、「そろそろ治療しても症状が改善しない状態(症状固定)になるころなので、治療費を打ち切ります」と通告されてしまうことがあります。
このように言われると、被害者の方の中には、「保険会社もこう言っているし、もう治療を止めなければいけないのか・・・」と思ってしまう方もおられます。
しかし、保険会社から治療費を打切ると言われたからといって、治療を諦める必要はありません。
医師や弁護士と相談し、まだ治療を続けることで症状がより軽くなることが期待できるようであれば、仮に治療費を打切られたとしても、治療を続けましょう。
保険会社から言われたからといって治療を諦めてしまうと、痛みなどが残って後遺障害等級認定の申請をした際に、「十分な治療がなされていない」「通院を止めたということは痛みもそれほど残っていないのではないか」などとの心証を抱かれ、不利になるおそれがあります。
治療費を打切られた後は健康保険を使うことを検討しよう
治療費の打切り後に治療を続ける場合は、健康保険を活用して負担を抑えることも可能です。
もちろん、治療費の打切り後に被害者自ら支払った治療費は、治療の必要性が認められれば、後から加害者側に損害賠償として請求することができます。
しかし、結果的に治療の必要性が認められず、治療費打切り後の治療費は被害者の自己負担となることもあり得ます。
そうなった場合に備え、健康保険を活用することも検討されることをお勧めします。
交通事故の治療で健康保険を使うことのメリット・デメリット、健康保険を使うことを検討すべきケース、健康保険を使う際の注意点などについては、以下のページをご覧ください。
治療費打ち切りについて交渉しよう
治療費の打切りについて打診された段階で、治療費を打ち切らないよう保険会社と交渉することも可能です。
保険会社との交渉では主治医の意見が重要になりますので、まずは主治医に相談し、治療を続けることで症状が改善する見込みがあるかについての意見を聴きましょう。
その意見を踏まえた上で保険会社と話をし、治療費の打切りを思いとどまるよう話し合ってみましょう。
こうした交渉は、弁護士に依頼することもできます。
当事務所でも、治療費の打切りに対する対応を行っております。
詳しいサポート内容につきましては、以下のページをご覧ください。
当事務所での取扱い事例で、弁護士が交渉することで、治療費打切りまでの期間を延ばすことに成功した事例を、以下のページでご紹介しております。
興味のある方は、ぜひご一読ください。
被害者請求を活用する
交通事故でケガをし、後遺障害が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定の申請をすることになります。
後遺障害等級認定の申請には、
- 事前認定(加害者側の保険会社が申請を行う)
- 被害者請求(被害者が申請を行う)
の二種類があります。
このうち、事前認定であれば、被害者はほとんど何もしなくとも後遺障害等級認定の審査を受けることができ、手間がかかりません。
しかし、事前認定の場合、提出する資料を準備するのは加害者側の保険会社になるので、被害者にとって有利な資料が漏れなく提出される保証はなく、適切な後遺障害等級認定がなされないおそれがあります。
適切な後遺障害等級認定を受けられる可能性を上げるためには、被害者自ら資料を準備して提出することができる被害者請求を行うことがおすすめです。
被害者請求であれば、
- 事故の激しさを示す実況見分調書や事故現場・被害車両の写真
- 被害者の症状を詳細に説明した陳述書
なども提出することができます。
これにより、被害者が置かれている状況をより詳細かつ具体的に主張することができるようになりますので、より適切な後遺障害等級認定を受けることができる可能性が高くなるのです。
被害者請求に関する詳細は、以下のページをご覧ください。
交通事故に強い弁護士に相談する
交通事故の被害にあったときは、病院の受診の仕方、必要な検査、保険会社への対応方法など、気を付けるべきポイントが多数あります。
こうした点に適切に対応するためにも、なるべく早いうちに、交通事故に強い弁護士に相談し、対応を依頼しましょう。
そうすれば、治療を受けている段階から、疑問点・不安などについて気軽に相談することができ、専門家のアドバイスに従った適切な対応をとることができます。
交通事故に強い弁護士に相談・依頼することには、ほかにも以下のようなメリットがあります。
- 被害者にとって最も有利な弁護士基準による算定額を基準に示談交渉を進められるため、賠償金の増額が期待できる
- 整骨院に通院する際の対応方法についてアドバイスを受けられる
- 治療費の打切りに関する交渉を頼むことができる
- 後遺障害診断書を作成するときに、医師にどのようなことを伝えればよいかアドバイスしてくれる
- 被害者請求の手続きを行ってくれる
- 加害者や保険会社などとのやり取りを代わりに行ってくれる
- 加害者側から提示された示談案が妥当か、適正な損害賠償額はいくらかについてアドバイスしてくれる
交通事故に強い弁護士に相談するメリット、交通事故に強い弁護士を選ぶ際のポイントについては、以下のページをご参照ください。
まとめ
今回は、ジャクソンテスト・スパークリングテストとそれらの違い、交通事故の際に気を付けるべきポイントについてご紹介しました。
ジャクソンテストは、後遺障害等級認定を受ける際に参照される検査の一つです。
交通事故でむちうちが疑われる場合には、事故後数日のうちには病院を受診し、レントゲン、MRIなどの画像検査、ジャクソンテストなどの神経学的検査を受けるようにしましょう。
また、交通事故でむちうちになった場合には、医師とどのようにコミュニケーションをとるか、いつまで治療を続けるか、治療費を打ち切られた際にどのように対応するか、といったことを考えながら治療を進める必要があります。
このようなポイントに適切に対応するためにも、交通事故でケガをした場合は、なるべく早く弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
当事務所でも、交通事故対応を集中的に担当している交通事故チームの弁護士が、交通事故でケガをされた方のご相談に対応しております。
電話・オンラインによる全国からのご相談も可能です。
お困りの方はぜひ一度、お気軽に当事務所までご相談ください。