非接触事故とは?罰則・賠償金や過失割合、対処法を解説

監修者:弁護士 鈴木啓太 弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

非接触事故とは、事故の相手方と直接接触することはなかったけれども、物的損害や人的損害を生じさせてしまった、という交通事故です。

直接の接触がなくとも、加害者の運転によって何らかの被害が生じた場合は、交通事故となり、警察への通報などが必要になります。

今回は、非接触事故とはどのような事故か、非接触事故の当事者になってしまった場合の対処法、非接触事故に対する罰則、非接触事故の過失割合、非接触事故に関する裁判例などについて解説していきます。

非接触事故とは?

非接触事故とは、事故の相手方との直接的な接触、衝突がなく生じた交通事故のことです。

非接触事故の具体的な例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 相手方の車と出会い頭で衝突しそうになったので急ハンドルで避けたら、道端の電柱やガードレールに激突した
  • 自動車の運転中、急に飛び出してきた自転車を避けるために急ブレーキをかけたら、首に衝撃が加わりむちうちになった
  • 右折してきた自動車を避けようとしたバイクが転倒した
  • 歩行者が、自動車が近づいてきたことに驚いて転倒し、ケガをした

 

 

非接触事故でも警察への報告義務がある?

非接触事故の場合も、警察に報告する義務があります

道路交通法72条1項では、交通事故があったときは、運転者は、警察官に報告しなければならない、と定められています。

上の条文にある「交通事故」は、車両の交通による人の死傷又は物の損壊のことであると法律上定義されており(道路交通法67条2項)、衝突・接触があったかどうかは問われていません。

そのため、非接触事故であっても、人を死なせたりケガをさせたりした、物を壊してしまった、といったことがあれば、「交通事故」となり、警察に報告する義務があります。

非接触事故を起こしてしまった場合は、相手方が立ち去ってしまった場合や、軽いケガ程度の場合であっても、警察に報告するようにしましょう。

根拠条文
道路交通法
(交通事故の場合の措置)
第七十二条 交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。同項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置(第七十五条の二十三第一項及び第三項において「交通事故発生日時等」という。)を報告しなければならない。
2 ・・・


(危険防止の措置)
第六十七条 ・・・
2 前項に定めるもののほか、警察官は、車両等の運転者が車両等の運転に関しこの法律(第六十四条第一項、第六十五条第一項、第六十六条、第七十一条の四第四項から第七項まで及び第八十五条第五項から第七項(第二号を除く。)までを除く。)若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこの法律の規定に基づく処分に違反し、又は車両等の交通による人の死傷若しくは物の損壊(以下「交通事故」という。)を起こした場合において、当該車両等の運転者に引き続き当該車両等を運転させることができるかどうかを確認するため必要があると認めるときは、当該車両等の運転者に対し、第九十二条第一項の運転免許証又は第百七条の二の国際運転免許証若しくは外国運転免許証の提示を求めることができる。

引用:道路交通法 | e-Gov 法令検索

 

報告せずに立ち去ったらどうなる?

非接触事故があったにもかかわらず警察に報告せずにその場を立ち去ってしまうと、道路交通法違反となり、刑事罰(3か月以下の懲役又は5万円以下の罰金)を科されるおそれがあります(道路交通法119条1項十七号)。

根拠条文
第百十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三月以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。
・・・
十七 第七十二条(交通事故の場合の措置)第一項後段に規定する報告をしなかった者

 

 

非接触事故の罰則とは?

非接触事故で人を死傷させてしまった場合、本来的には、通常の自動車事故と同様、過失運転致死傷罪となります(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)。

過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金となります(ケガの程度が軽い場合は、情状により、刑が免除されることがあります。)。

根拠条文
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律
(過失運転致死傷)
第五条 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

引用:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律 | e-Gov 法令検索

ただ、非接触事故では、被害者の運転と生じた結果の因果関係が争いになりやすく、刑事事件として立件することが難しい場合もあります

たとえば、「自動車が近づいてきたことに驚いた歩行者が、転んでけがをした」といった場合、歩行者が転倒した原因が自動車が近づいてきたことだといえるのか(因果関係の有無)を自動車の運転者側が争ってくる可能性があります。

非接触事故では、こうした点について加害者の責任を問うための立証をすることが、接触事故に比べて難しくなります。

そのため、非接触事故が疑われても、結局刑事事件として立件されないことが少なからずあると思われます。

 

 

非接触事故の対処法

非接触事故が起こった場合も、通常の交通事故と同様に対処することが必要になります。

非接触事故の場合の対処法を、加害者・被害者の双方の立場から分かりやすく解説します。

なお、交通事故が起こった場合の対処法については、以下のページもご参照ください。

 

被害者の対処法

被接触事故の被害者の対処法

警察に通報する

非接触事故でケガをしたら、まずは警察に通報しましょう。

加害者が、「自分で警察に通報する」と言う場合は、通報を任せてもよいでしょう。

 

証拠を確保する

通報を済ませたら、警察が来るまでに、以下のような事故状況の証拠を確保しておくと良いです。

  • ドライブレコーダーの画像
  • 事故現場の状況の写真(破損している物、ブレーキ痕など)
  • 自分や相手方の車両や自転車等の破損状況の写真
  • 現場周辺の監視カメラの位置の確認
  • 目撃者の有無の確認(目撃者がいる場合には警察への協力を依頼する。可能であれば、連絡先などを聞いておく。)

 

警察官に事情を説明する

警察官が到着したら、警察官に、事故の状況などについて詳しく話しましょう。

特に、非接触事故では、加害者の行動(運転)と生じた被害の間に因果関係があるのかについて争いになることが多いです。

「接触はしていないけれども交通事故があった」ということを示すためにも、事故状況については、自分の言い分をはっきりと警察官に伝えてください

現場周辺に監視カメラがある場合は、警察官にその場所を伝え、画像を確認するよう頼んでおきましょう。

目撃者がいる場合も、警察官にそのことを伝え、目撃者から話を聞いてもらうようにしましょう。

 

保険会社に連絡する

現場での対応が終わったら、自分が加入している保険会社に連絡し、非接触事故にあったことを伝えましょう

連絡が遅れると、保険会社から保険金の支払いに難色を示されたり、保険金が支払われなかったりするおそれがあります。

自分には過失がない、と思われる場合にも、保険会社への連絡はしておきましょう。

「自分には過失はないから、保険を使って賠償する必要もないので、保険会社への連絡は不要ではないか」と思われる方もおられます。

しかし、自分では過失はないと思っていても、最終的に一定の過失が認められる場合もあります。

過失がそれぞれどの程度だったかは後にならなければ確定しませんので、後々保険を使うことになった場合に備え、事故後すぐに保険会社に連絡しておくことが大切です。

また、自分には過失がない場合でも、人身傷害保険、搭乗者傷害保険、車両保険、弁護士費用特約など、活用できる保険もあります。

こうした保険を必要に応じてスムーズに活用するためにも、非接触事故であっても、事故後なるべく早く保険会社に連絡しておきましょう。

 

病院を受診する

非接触事故でケガをした可能性がある場合は、事故後数日の間には病院を受診し、ひととおり検査を受けるようにしましょう。

事故後日にちが経ってから受診すると、「事故の後に他の原因でケガをしたのではないか」と疑われ、損害賠償が減額されたり、支払われなくなったりするおそれがあります。

 

非接触事故での立ち去りにはどう対処する?

非接触事故があったにもかかわらず、加害者が立ち去ろうとする場合、

  • 加害者の運転のせいでケガをした(又はその可能性がある)こと
  • 直接接触はしていなくても交通事故になること
  • 交通事故であるからには警察に通報する義務があること

などを伝え、その場にとどまるように話し、氏名や連絡先、加入している任意保険なども聞きましょう

また、相手方が車両である場合には、車のナンバーを控えておきましょう。

相手方が自転車の場合は、相手方の姿(服装を含む)や自転車を写真に撮っておけると良いです。

それでも加害者が立ち去ってしまう場合は、被害者自ら警察に通報しましょう。

加えて、「証拠を確保する」でご説明した方法で、証拠の確保をしておきます。

特に、加害者が立ち去ってしまった場合、加害者を探し出せることが重要になりますので、ドライブレコーダーに加害者の顔などがはっきりわかる映像が記録されているかに注意して確認しましょう。

ほかにも、加害者の顔や姿を見ていた目撃者(事故自体は目撃していなくともよい)、事故前後の加害者が写っている可能性がある監視カメラなどを見つけることを心がけましょう。

加害者が立ち去ってしまった場合も、自分が加入している保険会社(傷害保険、自動車保険、自転車保険など)への連絡や病院の受診は速やかに済ませておきましょう

保険の内容によっては、加害者が立ち去ってしまった場合にも保険金を受け取れる場合があります(人身傷害保険、搭乗者傷害保険、無保険車傷害保険、車両保険など)。

しかし、事故直後に保険会社に連絡することを怠っていると、保険を使おうとした際にトラブルになり、最悪の場合保険金が支払われなくなる可能性があります。

病院も、加害者が見つからないからといって受診をしないでいると、いざ加害者が見つかった時にも、ケガに関する損害賠償請求ができなくなる可能性があります。

 

加害者の対処法

被接触事故の加害者の対処法

警察への通報・被害者の救護

非接触事故の加害者になってしまった、又はその可能性がある場合は、被害者がケガをしていれば、安全な場所に避難させる、必要であれば救急車を呼ぶなどといった救護措置をとります。

それから、車を安全なところに移動させ、警察に通報します。

被害者が「軽いケガだから」などと言って警察を呼ばなくてもよいなどと言ったとしても、警察への通報はきちんとしておきましょう。

ここで通報を怠ってしまうと、道路交通法違反(通報義務違反)となってしまいます。

その上、後日、被害者に実は大きなケガがあった、自分の方にもブレーキの際の衝撃などでケガが生じていた、といったことがあった場合に、自動車保険(任意保険)などを使おうとしても、警察に通報していないと交通事故証明書を取得することができず、保険が使えなくなる可能性があります。

被害者がその場を立ち去ってしまったとしても、警察への通報は済ませておくようにしましょう

その時は通報する気がなかった被害者でも、後日ケガがあったことが分かった場合などに、警察に通報することもあり得ます。

そうなったときに、加害者が通報していなかったとなると、「ひき逃げ」「当て逃げ」を疑われかねません。

 

証拠の確保

加害者になった(又はその可能性がある)場合も、被害者になった場合と同様、事故状況に関する証拠の確保をしておきましょう。

非接触事故の場合、加害者とされた人の運転と被害者の転倒などの間に因果関係がない、とされ、加害者とされた人の責任が否定されることも数多くあります。

そのため、加害者とされる立場であっても証拠をきちんと確保することが大切になります。

 

警察官への説明

警察官にも、事故状況について、自分の認識をはっきりと説明しておきましょう

警察官が、「これは交通事故とはいえない」と判断すれば、交通事故証明書に加害者として記載されることもなく済む場合もあります。

 

保険会社への連絡

非接触事故の加害者となった可能性がある場合は、自分では「これは事故とはいえない」と思う場合でも、警察官からも交通事故と判断されず加害者ともされなかった場合でも、保険会社に連絡はしておきましょう

連絡が遅れると、保険をスムーズに使えない、保険会社が支払をしてくれない、といったことにもなりかねませんので、ご注意ください。

 

 

非接触事故の過失割合はどう判断する?

非接触事故であっても、過失割合は、通常の事故での過失割合を決定する手順と同様に判断していきます。

過失割合を決めていく手順は、以下のようになります。

過失割合を決めていく手順

それぞれについて説明していきます。

 

①事故態様・責任の有無を確定する

まずは、事故態様を確定することが必要になります。

非接触事故の場合、加害者の運転等と被害の発生の間に因果関係があるか(被害者に回避可能性(事故を避ける他の方法)はなかったか)が問題になることが多いので、

  • 加害者がどのように行動(運転)したのか
  • 当時の周辺の交通状況、道路状況はどのようなものだったか
  • 被害者はどのように行動したのか、また、そのような行動をしたのはなぜか
  • 被害者がケガをする原因となったことは何か
  • 被害者は事故を回避できなかったのか

などといったことを証拠により確定していきます。

こうした事故態様が確定できたら、非接触事故の場合は、加害者の運転等と生じた被害の間に因果関係があるといえるのかが問題になりやすいので、これについて検討していきます。

因果関係の有無を検討する際のポイントは、「④過失割合を確定する」をご参照ください。

因果関係があるとはいえないようであれば、過失割合について検討するまでもなく、加害者への損害賠償請求は認められませんので、検討は終了となります。

因果関係があるといえるようであれば、基本過失割合の検討に進みます。

 

②基本過失割合を確定する

基本過失割合については、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(東京地裁民事交通訴訟研究会・編)(以下では、「別冊判例タイムズ」といいます。)を参照して定めます。

この本には、さまざまな事故類型の基本過失割合が記載されています。

非接触事故でよくみられるケースについては、以下のような基本過失割合が定められています。

 

交差点での事故

非接触事故でよくみられるものとして、交差点で急に前方に出現した車をよけるため、急ハンドルを切り、付近の電柱などに衝突するケースがあります。

別冊判例タイムズでは、信号のない交差点での出会い頭の事故の基本過失割合は、左方車40:右方車60とされています(双方の速度が同程度の場合)。

信号のない交差点での出会い頭の事故

右折車と直進車の事故については、双方が青信号で進行してきた場合、直進車20:右折車80が基本過失割合となります。

右折車と直進車の事故

右折車と直進車の事故(右直事故)の過失割合については、以下のページもご覧ください。

 

進路変更時の事故

非接触事故としてよくみられるものには、前方の車が進路変更をしたところ、後方から来ていたバイクが衝突を回避しようとして転倒してしまった、というものがあります。

この場合の基本過失割合は、バイク20:車80となります。

 

歩行者の転倒

道路を横断しようとしたところ、近づいてきた車両に驚いて歩行者が転倒した、車との衝突を回避しようとして歩行者が転倒した、という事故もあります。

この場合、歩行者が横断しようとしていた場所や信号の色などによって、過失割合に違いが生じてきます。

たとえば、歩行者が青信号で横断を開始したところ、車が赤信号で横から進行してきて事故になった場合には、基本過失割合は車100:歩行者0となります。

歩行者が青信号、車が赤信号の事故

一方、信号も横断歩道もない場所で歩行者が横断し、横からきた車と事故を起こした、という場合、基本過失割合は車80:歩行者20となります。

信号も横断歩道での歩行者と車の事故

上にご紹介した以外の事故類型別の過失割合については、以下のページもご参照ください。

 

③修正要素の有無、修正される過失割合を確定する

別冊判例タイムズでは、事故類型ごとに、基本過失割合を修正する要素(修正要素)が定められています。

修正要素としては、たとえば以下のようなものがあります。

  • 夜間の事故
  • 横断禁止場所での事故
  • 被害者が子供や高齢者の事故
  • 著しい過失(脇見運転、酒気帯び運転、おおむね15㎞以上30㎞未満の速度違反など)
  • 重過失(居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、30㎞以上の速度違反など)

事故類型によって修正要素はそれぞれ異なりますので、詳しくは、別冊判例タイムズを参照するか弁護士にお尋ねください。

著しい過失、重過失については、以下のページでも詳しく解説しています。

非接触事故の場合、上記のような修正要素のほかにも、「被害者がより早く相手方の動きに気付き、適切な回避措置をとるべきであった」などとされることや非接触事故であること自体により、過失割合が修正されることがあります。

 

④過失割合を確定する

修正要素も確定したら、最終的な過失割合が決まってきます。

ただ、相手方は相手方で過失割合や責任の有無を検討しています。

示談交渉においては、こうした双方の意見を突き合わせ、双方が納得できる過失割合を決めていかなければなりません

特に、非接触事故では、加害者の運転等と被害の発生の間に因果関係があるかどうかが、加害者と被害者の間で厳しく争われる傾向にあります。

因果関係については、次のような点に着目して主張・立証をしていきます。

  • 被害者がとった回避行動は、適切かつ必要なものだったかどうか(例:急ブレーキ、急ハンドルが必要な状況だったか)
  • 被害者の回避行動の結果、転倒したり周辺の物(ガードレールなど)に衝突したりしたことは、やむを得ないことであったかどうか(例:より早く加害者側の行動を予測し、より安全な回避措置をとることができなかったかどうか)

因果関係が認められることについて当事者間で合意ができれば、過失割合に関する協議に移ります。

因果関係、過失割合について合意ができない場合は、裁判、ADRなどの手続を利用し、責任の有無や過失割合に関する結論を出していきます。

示談交渉の進め方、ポイントについては、以下のページもご参照ください。

 

 

非接触事故の過失割合の裁判例

車線変更の際に後ろから来たバイクが転倒したケース

事案
前方車両(中型貨物自動車)が第二車線から第一車線に進路変更したところ、第一車線を後方から走行してきていたバイクが急ブレーキをかけて転倒した
裁判所の判断
裁判所は、バイクの転倒が前方車両の車線変更によるものと認めた一方、バイク側についても、速度超過があったこと、前方不注視の過失が大きかったこと、非接触事故であることなどを指摘して、過失割合を50:50と認めた

(大阪地裁平成28年9月2日・ウェストロージャパン)

 

右折してきた自動車と対向方向から直進してきたバイクとの非接触事故のケース

事案
道路を直進していたバイクが、信号機のある交差点で右折してきた自動車との接触を避けようとして転倒した
裁判所の判断
裁判所は、自動車側に進行妨害の過失を認めた一方、バイク側にも、右折車を確認後も走行車線の右寄りを走行していること、非接触事故であることなどからすると、自動車の動静を十分注視し、自動車の横を通り抜ける際には慎重なハンドル及びブレーキ操作をすべきであったのに、これを怠った過失がある、として、過失割合を、バイク25:自動車75とした

(大阪地裁平成29年11月14日・ウェストロージャパン)

 

 

非接触事故の4つの注意点

警察・保険会社には必ず連絡する

非接触事故を起こしてしまった、又は、相手方から「非接触事故だ」などと言われた場合は、必ず、警察に通報し、保険会社にも連絡しましょう

こうしたことに直面した方の中には、「事故ではないのに、警察や保険会社に連絡などしたくない」「自分は関係ない」と思われる方もおられるかもしれません。

しかし、もし非接触事故だったとされた場合は、警察への通報を怠っていると、「当て逃げ」「ひき逃げ」とされてしまうおそれがあります。

保険についても、事故直後にきちんと連絡しておかないと、後に非接触事故が問題となったときに保険金の支払いについてトラブルになりかねません

自分を守るためにも、事故ではない、自分は関係ないなどと思ったとしても、警察、保険会社には必ず連絡するようにしましょう。

 

因果関係や過失割合で争いになりやすい

非接触事故では、因果関係や過失割合が争いになりやすいです。

こうした点について自分の言い分を主張する場合は、ドライブレコーダーの画像、壊れた車両や周辺の物、ブレーキ痕などの写真、実況見分調書などの証拠に基づいて主張していきましょう。

 

保険会社の言うことを鵜呑みにしない

交通事故では、加害者側の保険会社と示談交渉をすることが多くなります。

このとき、加害者側の保険会社は、あくまでも加害者の立場に沿うことを原則として活動します。

そのため、加害者側の保険会社には、

  • 加害者の言い分に従って加害者の責任を否定する
  • 過失割合、損害額についても加害者の有利なように主張する
  • 示談金額を低めに提示する

といった傾向があります。

交通事故問題に不慣れな被害者の中には、「交通事故にくわしい保険会社の言うことなのだから、そのとおりなのだろう」と思ってしまう方もおられるのですが、保険会社はあくまで、加害者側という立場から行動していることを忘れないようにしてください。

 

交通事故に強い弁護士に相談する

非接触事故は、因果関係や過失割合について争いになりやすく、示談交渉が難航する危険性が比較的高くなります。

非接触事故の当事者となってしまった(又は非接触事故を起こしたと主張された)場合は、なるべく早く交通事故に強い弁護士に相談するようにしましょう。

弁護士に相談、依頼すれば、次のようなメリットがあります。

  • 保険会社と同等以上の知識、経験をもって、示談交渉を有利に進めてくれることが期待できる
  • 被害者に最も有利な弁護士基準で慰謝料などを算定することができるため、賠償金を増額できることが多い
  • 加害者や保険会社とのやり取りを任せることができる
  • 因果関係、過失割合について、依頼者の立場に立って、証拠を示しながら説得力のある主張をしてくれる
  • 後遺障害等級認定申請、被害者請求などの各種手続きにも協力してくれる
  • 治療中、示談交渉中の疑問・不安について気軽に相談できる

交通事故に強い弁護士に相談、依頼することのメリット、交通事故に強い弁護士を選ぶ際のポイントについては、以下のページで詳しく解説しています。

 

 

非接触事故についてのQ&A

非接触事故の場合、後日警察から連絡がありますか?

非接触事故の直後に警察に連絡し、実況見分などを済ませている場合、後日警察から連絡が来ることなく済む可能性もあります。

ただ、追加の捜査などが行われている、起訴などの刑事処分が検討されている、といった場合には、警察から後日連絡があるかもしれません。

警察から連絡があった場合は、適宜出頭するなど、誠実に対応するようにしましょう。

非接触事故があったにもかかわらず警察に通報することなく立ち去ってしまった場合、相手方が通報していれば、警察から後日連絡がくる可能性があります。

このような場合には、「ひき逃げ」「当て逃げ」の疑いをかけられる可能性もありますので、事故の状況や立ち去った理由について、自分の言い分を警察に話すようにしましょう。

たとえば、「事故があったことに気が付かなかった」という場合には、そのことをはっきりと警察に伝えるようにしましょう。

ドライブレコーダーの画像なども必要になるかもしれませんので、事故時の画像が自動で上書きされてしまわないよう、忘れず保存しておくようにしましょう。

 

非接触事故を起こしたかもしれません、どうすればいい?

非接触事故を起こした可能性がある場合、その場ですぐに警察に連絡しましょう。

被害者が「たいしたことはない」と言って立ち去ってしまった場合でも、その場で連絡しておくようにしましょう。

そうすれば、後日被害者が、「実は思った以上のケガをしていた」と言って警察に届け出た場合にも、通報しなかった責任を問われることがありません。

もし既に通報しないままに現場を立ち去ってしまっている場合は、後からでも、警察に、「実はこういう事故があった」ということを自ら届け出ることが考えられます。

 

非接触事故が言いがかりの場合、どうすればいい?

「非接触事故だ」などと言いがかりをつけられた場合は、まずは警察に通報しましょう。

警察に通報することで、警察官に、車両の状況や現場の状況を調べて記録に残してもらうことができますし、双方の言い分を記録に留めてもらうこともできます。

また、相手方だけに通報されてしまうと、相手方の言い分だけを前提に捜査が進められてしまうおそれもあります。

すぐに通報しておくことで、「通報義務に違反した」という弱みを握られずに済むという利点もあります。

通報後は、非接触事故でないことを立証するためにも、ドライブレコーダーの画像や目撃者、車両の状況の写真など、事故状況に関する証拠を確保しておくことも大切です。

また、結果的に「非接触事故があった」とされた場合に備え、自分が加入している自動車保険会社(自転車の場合は自転車保険の保険会社)にも連絡を入れておきましょう。

 

 

まとめ

今回は、非接触事故について解説しました。

非接触事故では、加害者とされた側の行為(運転)と被害の発生の間に因果関係があるのかがはっきりしない場合も多く、当事者間で争いが起こりやすくなります。

非接触事故に巻き込まれてしまった場合は、なるべく早く交通事故に強い弁護士に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。

当事務所でも、交通事故対応を集中的に担当する交通事故チームを設け、非接触事故に関するご相談に対応しております。

電話・オンラインによる全国からのご相談も可能です。

お困りの方はぜひ一度、お気軽に当事務所までご相談ください。

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