交通事故の慰謝料はいつもらえる?早くもらう方法
交通事故の慰謝料は、原則、示談後に支払ってもらえます。
相手方が任意保険に加入している場合は、示談が成立してから1〜2週間程度、裁判所での和解が成立してから1か月程度で被害者の指定する口座に振り込む形でもらえます。
もっとも、相手方が任意保険未加入の場合には、示談ができなかったり、裁判をしてもなかなか支払わなかったりして、慰謝料をなかなか受け取ることができないケースもあります。
慰謝料全額について請求するための示談や裁判を行うためには、治療が終了している必要がありますので、治療が長引いたり、示談交渉が難航するとそれによって慰謝料をもらう時期も遅くなったりします。
慰謝料を早くもらうためには、示談交渉などの段階に応じた手続きをスムーズに進める必要があります。
これから、交通事故の慰謝料はいつもらえるか、早くもらうためのポイントについて解説いたします。
目次
交通事故の慰謝料はいつもらえる?
交通事故の慰謝料は、加害者や加害者側の保険会社と示談が成立してから1〜2週間程度で入金があります。
裁判となった場合には、裁判上の和解の成立から1か月程度、判決となった場合には、加害者側と金額を確定して振り込んでもらうことになりますので、数週間〜2か月程度かかります。
これからさらに、事故の発生から慰謝料が受け取れるまでの流れを説明いたします。
事故の発生から慰謝料が受け取れるまでの流れ
事故発生から慰謝料が受け取れるまでの流れは、大まかには以下の表のとおりです。
被害者が生存している場合の流れ
被害者が生存している場合、慰謝料を含む示談金を受け取るまでの流れは、以下のとおりとなります。
これから、それぞれの段階について詳しくご紹介いたします。
治療
交通事故の慰謝料は、交通事故によって怪我をさせられ、それによって入院や通院をせざるを得なかった精神的苦痛に対する賠償金です。
慰謝料が認められるためには、治療を行っていることが前提となります。
適切な慰謝料を受け取るためにも、事故が発生して、体が揺さぶられたり、どこかに打ちつけたりした場合には、体に大きな異常がなかったとしても、速やかに病院へ行き、医師の診察を受け、必要に応じて治療をするべきでしょう。
事故後、大事にしたくないからと言って病院へ一切行かなかった場合には、慰謝料を受け取ることができなくなりますので、注意が必要です。
治療終了・症状固定
治療を継続し、完治した時、もしくは、これ以上症状がよくならないと主治医に判断された時(症状固定時)に治療を終了します。
治療終了後も症状が強く残っていて日常生活や仕事に大きな支障を来している場合には、後遺障害申請を検討します。
それ以外の場合には、示談交渉へ進みます。
後遺障害申請
後遺障害とは、交通事故を原因とする怪我について、治療を続けても完治することがなく、症状固定となり、身体的あるいは精神的な不具合が将来にわたって残ってしまう状態のうち、その状態が自賠責保険の等級に該当しているものをいいます。
後遺障害があることを認定してもらう手続きのことを後遺障害申請と言います。
後遺障害の有無や程度を判断するのは、自賠責保険会社です。
治療終了後にも、日常生活や仕事に支障を来たすほどの症状があるなど、後遺障害の認定の可能性があるケースでは、自賠責保険会社に対して、後遺障害申請をすることになります。
「後遺障害」として認められるのは、その障害により労働能力の喪失を伴うような場合に限られます。
後遺障害申請を行う場合には、資料の提出から判断まで1か月程度が目安とされていますが、ケースによっては、3か月以上かかることもあります。
後遺障害申請の結果は、症状の内容・程度に応じて、非該当、1〜14級までの等級認定のいずれかになります。
被害者側から後遺障害申請を行い、後遺障害が認定された場合、自賠責保険からの保険金として、一定の金額を受け取ることができます。
各等級における上限を以下の表にお示しします。
認定等級 | 自賠責保険金額(上限額) |
---|---|
1級 | 3000万円(一定の症状により常に介護を要する場合には4000万円) |
2級 | 2590万円(一定の症状により随時介護を要する場合には3000万円) |
3級 | 2219万円 |
4級 | 1889万円 |
5級 | 1574万円 |
6級 | 1296万円 |
7級 | 1051万円 |
8級 | 819万円 |
9級 | 616万円 |
10級 | 461万円 |
11級 | 331万円 |
12級 | 224万円 |
13級 | 139万円 |
14級 | 75万円 |
また各等級に認定された場合の慰謝料の相場を以下の表にお示しします。
認定等級 | 自賠責保険金額(上限額) |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 190万円 |
14級 | 110万円 |
どのような症状・どの程度の症状でどの等級に認定されるかについて詳しくは、こちらをご覧ください。
異議申立て
後遺障害認定の結果に不服のある場合には、異議申立てを検討することになります。
異議申立てとは、自賠責保険会社に対して、再度、後遺障害認定に対する結果を再度検討するように求める手続きです。
異議申立てでは、後遺障害申請の際に提出しなかった資料を新たに提出したり、後遺障害申請の結果の不服のある部分を書面で示したりします。
異議申立ての結果が出るまでは、資料の提出から判断まで概ね2〜6か月程度かかります。
異議申立てを行い、後遺障害が認定された場合、自賠責保険からの保険金として、等級に応じた一定の金額を受け取ることができます。
示談交渉
怪我の程度、治療期間、後遺障害の有無・等級などを元に、加害者側の保険会社と賠償金に関する示談交渉を行います。
示談交渉においては、適切な慰謝料を計算することは必須ですが、慰謝料は通院期間や後遺障害の等級によって計算される相場があります。
そのため、治療が終了し、後遺障害の認定も終えてからようやく示談交渉ができるようになります。
最終的に被害者側と加害者側の保険会社とで、合意がまとまると、2週間程度で慰謝料を含む賠償金が送金されます。
裁判
示談交渉を行っても、被害者側と加害者側の保険会社とで、賠償金に関する合意がまとまらない場合には、裁判を起こすことになります。
弁護士に依頼をしている場合には、弁護士が裁判所での手続きの対応をします。
裁判においては、主張を書面でまとめて、証拠を提出することが必要になります。
裁判になると、加害者側にも弁護士が就くケースがほとんどです。
そのようにして被害者側、加害者側の主張・証拠の提出が一通り終わると、裁判所から和解案が提示されます。
被害者側、加害者側の両方が、裁判所からの和解案に応じた場合、和解成立から、概ね1か月以内に慰謝料を含む賠償金が送金されます。
被害者側、加害者側のどちらかが和解案に応じない場合、尋問(裁判所で証人や当事者に対する質疑応答の手続)が行われ、判決となります。
もっとも、加害者が任意保険に入っていない場合には、判決後に速やかに支払わないこともありますので、1か月以上を要することもあります。
被害者が死亡している場合
被害者が死亡している場合、慰謝料を含む示談金を受け取るまでの流れは、以下のとおりとなります。
これから、それぞれの段階について詳しくご紹介いたします。
治療
交通事故の慰謝料は、交通事故によって怪我をさせられ、それによって受けた精神的苦痛に対する賠償金です。
被害者が結果として死亡した場合であっても、入院・通院治療を行っている場合には、入院・通院を余儀なくされた苦痛についての賠償金である、入通院慰謝料を請求できます。
死亡
被害者が死亡した場合、死亡したことそのものについての苦痛に対する賠償金である死亡慰謝料を請求できます。
もっとも、被害者自身は死亡していますので、被害者の相続人が請求をすることになります。
また、被害者と関係の近い家族は、被害者自身の死亡慰謝料の他に、大事な家族を失ったという精神的苦痛に対する賠償を請求することができます(このような慰謝料を「遺族固有の慰謝料」と言います。)。
葬儀・通夜
葬儀費用についても、賠償請求の対象となります。
そのため、葬儀に関連する領収書は保管するようにしましょう。
示談交渉
示談交渉は、被害者の相続人もしくは、相続人から依頼を受けた弁護士が行います。
死亡事故の場合には、49日を過ぎてから交渉を開始します。
そこから交渉を行い、事案にもよりますが、交渉には数か月程度はかかります。
なお、交通事故の交渉では、事故状況に関する証拠として警察が作成した実況見分調書などの資料を取り寄せることも多いですが、その取り寄せにかなりの期間を要することがあります。
警察の資料の取り寄せは、警察・検察の捜査が終了してから可能になりますが、その捜査に時間が掛かると、資料の取り寄せに期間を要することになります。
裁判
示談交渉を行っても、被害者側と加害者側の保険会社とで、賠償金に関する合意がまとまらない場合には、裁判を起こすことになります。
特に死亡事故の場合には、事故と死亡との関係性の有無、被害者の過失がどの程度かで交渉が難航するケースが多い印象です。
被害者側、加害者側の両方が、和解案に応じた場合、和解成立から、概ね1か月以内に慰謝料を含む賠償金が送金されます。
判決となった場合には、判決の日から概ね1か月以内に慰謝料を含む賠償金が送金されることが多いですが、加害者が任意保険に加入していない場合にはそれ以上の期間かかることもあります。
交通事故の慰謝料とは?
交通事故の慰謝料とは、交通事故によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことを言います。
交通事故の慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。
入通院慰謝料は、事故が原因で怪我を負ってしまい、入院や通院を余儀なくされたという精神的苦痛に対する賠償金です。
後遺障害慰謝料は、事故が原因の怪我で後遺障害が残ってしまい、日常生活や仕事をしにくくなったという精神的苦痛に対する賠償金です。
死亡慰謝料は、事故が原因で死亡してしまったという精神的苦痛に対する賠償金です。
交通事故の慰謝料について詳しくはこちらをご覧ください。
なぜ遅い?支払いが遅れるケースとは?
交通事故の慰謝料の支払いが遅れるケースは、示談や裁判上の和解に向けた手続きが遅れている場合です。
事故後〜示談の成立までの流れの各ポイントで手続きが遅れる要素があります。
これから支払いが遅れるケースに関する詳細をご説明します。
交通事故の慰謝料が支払われるまでの流れ
交通事故の慰謝料が支払われるまで、示談成立、もしくは、裁判所での和解や判決を経ることになります。
それそれの場合によって流れが異なるので、場合を分けて説明いたします。
示談が成立した場合
示談が成立した場合、その後、2週間程度で慰謝料を含む賠償金の入金があります。
示談〜入金の流れは以下のとおりです。
免責証書にサイン・押印をすることは、「この賠償金を受け取ることで、交通事故に関する賠償は終わり」という意味になります。
免責証書の内容に不備がないかを確認の上、サイン・押印しましょう。
裁判所で和解が成立した場合
裁判所で和解が成立した場合、その後、1か月程度で慰謝料を含む賠償金の入金があります。
裁判所で和解が成立する場合、裁判官の立会いのもと、和解成立の日からおおよそ1か月程度の期限が定められます。
相手方の保険会社からは、その期限内に慰謝料を含む賠償金が被害者の指定する銀行口座宛に送金されます。
裁判の結果判決となった場合
裁判の結果、判決となった場合には、いつまでに入金をするかは決められていません。
加害者が任意保険に加入している場合、加害者側の保険会社から、概ね1か月以内に慰謝料を含む賠償金が送金されます。
慰謝料の支払いが遅れる理由
慰謝料の支払いが遅れる理由は、示談等の成立までに時間がかかっているためです。
慰謝料を含む賠償金は、示談が成立するか、裁判所で賠償金が定められる必要があります。
これらの手続きに時間がかかっている場合には、慰謝料の支払いが遅れることになります。
支払いが遅れるケース
支払いが遅れるケースは、示談等の成立までに時間がかかっているためですが、その要因としては以下のものが挙げられます。
- 交渉が難航している
- 被害者が後遺障害に認定されていたり、死亡している
- 交渉が成立する余地がなく、裁判をしている
- 書類に不備がある
交渉が難航している
交渉が難航しているケースでは、示談の成立が遅くなり、それに伴って、賠償金の支払いが遅くなります。
どの部分で難航するかもケースバイケースですが、①過失割合に争いがあるケース、②加害者側の保険会社の提示の金額が低すぎるケースが比較てい多いです。
過失割合が決まらないと、加害者側の保険会社が賠償金としていくら支払うべきかが確定しません。
特に、被害者側、加害者側で事故の状況について食い違いがあり、双方ともにドライブレコーダーなどの映像の資料を提出できない場合には、過失割合の交渉に難航する傾向にあります。
加害者側の保険会社の提示金額が低すぎるケースも交渉に難航することがあります。
最終的に調整ができれば示談が成立しますが、加害者側の保険会社の提示金額が安すぎる場合には、より適切な解決のために交渉が長引くケースが多いです。
後遺障害が認定されていたり死亡している
後遺障害が認定されているたり死亡しているケースでも示談の成立が遅くなる傾向にあります。
後遺障害が認定されたり、死亡しているケースでは、後遺障害慰謝料や死亡慰謝料など被害者の状況に応じた賠償項目が加算され、それに伴い、賠償金の総額も高くなります。
そのため、加害者側の保険会社も示談案を出す際には慎重になることも多く、その保険会社と連携している医師の見解を確認することもあるようです。
そのような理由により、加害者側の保険会社からの返答や示談案の提示が遅くなり、それに伴い、示談の成立も遅くなる傾向にあります。
示談が成立する余地がなく裁判をしている
示談交渉の結果、交渉が決裂し、裁判をする場合には、慰謝料を含む賠償金をもらえる時期が遅れます。
裁判を行い、被害者側、加害者側の双方の主張や証拠提出を一通り行った後に、裁判所から案が出て和解をするという流れになります。
裁判を起こして、和解案が出されるまでの期間は、ケースにもよりますが概ね半年〜1年程度が多く、その期間慰謝料を受け取ることができません。
また、裁判になっているケースは、基本的に交渉が難航した末での決裂であることが多数のため、治療終了から裁判所の和解案の提示まで1年以上かかることも珍しくはありません。
書類に不備がある
書類の不備も示談金の送金が遅れる理由になり得ます。
すぐに修正ができる不備であればすぐに対応すれば大きな遅れにはなりませんが、入手に時間のかかる書類に不備があると、再取得に時間がかかることもあります。
書類の不備にはくれぐれも注意しましょう。
慰謝料の支払いが遅いときの対処法
慰謝料の支払いが遅いときは、遅くなっている原因を解消するか、そのほかの手続きを可能な限り早く進めることが対処法になります。
原因ごとに対処法をご紹介します。
交渉が難航している場合
交渉が難航している場合、被害者側の請求が裁判上なかなか認められないケース、加害者側の賠償案が適切な金額とは到底言えないような場合があります。
いずれにせよ、示談交渉の余地がないと判断したタイミングで、交渉を打ち切り、早めに裁判を起こすことによって、最終的に賠償金を受け取ることのできる時期が早まることもあります。
特に、加害者側の賠償案が適切な金額と到底言えないような場合には早々に裁判を起こした方が良いケースが多い印象です。
被害者に後遺障害が認定されてたり、死亡したケース
被害者に後遺障害が認定されたり、死亡したケースでは、加害者側の保険会社も交渉に対して検討に慎重になる傾向にあります。
被害者やその遺族の側で証拠となる資料をしっかりと準備することによって、加害者側の保険会社の検討が早くなる可能性があります。
裁判となっている場合
裁判を行い、被害者側、加害者側の双方の主張や証拠提出を一通り行った後に、裁判所から案が出て和解をするという流れになります。
早期に和解案を受け取るためには、被害者側が入手可能な証拠を可能な限り早く集めて、整理をして裁判所に提出することが対処法になります。
書類に不備がある
書類の不備については、弁護士が介入している場合には、防ぐことのできる者がほとんどです。
書類の作成・提出に関してご不安がある場合には、お近くの弁護士に一度相談のうえ、内容を確認してもらうことをお勧めします。
慰謝料の支払いを早くするポイント
慰謝料の支払いを早くするポイントは4つあります。
-
①事故の状況に関する資料をしっかり残す
事故の状況に関する資料をしっかり残すことは慰謝料の支払いを早くすることに繋がります。
慰謝料を含む賠償金は、示談の成立や裁判所で賠償金額が定められた後に受け取ることができます。
事故の状況について被害者側と加害者側で認識が大きく異なっていると、交渉が難航し、示談が長引いたり、裁判を起こしたりすることになる可能性が高いです。
そのような事態を避けるためにも、事故の状況に関する資料をしっかり残すことは、慰謝料を早く受け取るために重要です。
事故の状況に関する資料として、代表的なものは、以下のものになります。
- ドライブレコーダー
- 実況見分調書
- 物件事故報告書
- 目撃者
ドライブレコーダー
ドライブレコーダーは、事故の状況を映像として保存するものであるため、有力な証拠になり得ます。
もし、乗っていた車にドライブレコーダーが搭載されている場合には、保存をしておくことを忘れないようにしましょう。
また、事故の加害者にもドライブレコーダーを持っていないかを聞いてみても良いでしょう。
事故の前から自衛のためにドライブレコーダーを設置しておくことを強くお勧めします。
実況見分調書
実況見分調書とは、警察が、事故の状況について被害者・加害者から聞き取りを行い、それを図面として記載した書面です。
被害者側に弁護士が就いている場合、弁護士が警察から実況見分調書を取り寄せます。
実況見分調書は、警察に人身事故として届け出た場合に作成されます。
物件事故報告書
物件事故報告書とは、警察が、事故の状況について被害者・加害者から聞き取りを行い、それを図面として記載した書面です。
物件事故報告書は、警察に物件事故として届け出た場合に作成されます。
こちらも被害者側に弁護士が就いている場合、弁護士が警察から実況見分調書を取り寄せます。
先ほどの実況見分調書に比べると、かなり簡略に記載されます。
そのため、被害者自身や同乗者に怪我がある場合には、人身事故で警察に届出をして手続きを行いましょう。
目撃者
目撃者も事故の状況に関する証拠になります。
そのため、事故現場に目撃者がいる場合には、連絡先を交換しておくと良いでしょう。
また、周辺を運転していた車にドライブレコーダーが付いている場合には、映像を提供してもらえるように依頼をすることをお勧めします。
保険会社にきっちりと情報を伝える
自分の保険会社や加害者側の保険会社にきっちり情報を伝えることも、慰謝料の支払いを早くすることに繋がります。
保険会社の担当者が慰謝料などの賠償金を支払うためには、事故の内容や被害者の状況について正確に把握する必要があります。
保険会社の担当者が早期にしっかりと事故状況を把握していれば、担当者の手続きもスムーズに進み、結果として、慰謝料の支払いを早くすることに繋がります。
事故に遭った場合、双方の保険会社の担当者には、どのような事故の状況であったか、それを示す資料はどのようなものがあるか、どの病院で治療を受けるのかについては、早期に伝えた方が良いでしょう。
主治医にきっちりと症状を伝える
主治医にきっちりと症状と伝えることも、慰謝料の支払いを早くするために有用です。
主治医にきっちりと症状を伝えると、主治医は症状に関する治療を行ったり、その症状を診断書やカルテに残されたりします。
しっかりと治療を行うことによって、治療の終了を早めて、最終的に早く慰謝料を受け取ることに繋がります。
また、加害者側の保険会社の担当者も、どのような症状でどのような治療を行ったかという明確な証拠があるため、内容の把握がより詳細に可能となり、示談がスムーズに進むことにも繋がります。
早期から弁護士に相談をする
早期から弁護士に相談をしておくことも慰謝料の支払いを早くするために有用です。
弁護士に依頼をした場合のメリットは、以下のとおりです。
- 見通しを立てながら交渉ができる
- 手続きに応じて必要となる資料を把握している
- 慰謝料の増額が見込める
見通しを立てながら交渉ができる
弁護士は、事故の状況やその事故に関する証拠を元に、見通しを立てながら根拠を示して交渉を行います。
加害者側の保険会社は弁護士から示された主張の根拠を検討し、主張に応じることを見込めますので、早期に慰謝料を含む賠償金ついての合意をすることが期待できます。
手続きに応じて必要となる資料を把握している
弁護士は、事故後行うことになる各手続きに応じて必要となる資料を把握しています。
交通事故の被害に遭われた方からは、加害者側の保険会社から複数の資料を渡され、その資料が何の意味かよくわからないというお話を伺うことがあります。
その資料はどのような意味があるのか分かなかったり、今後の手続きで必要な資料がわからず、集められないとなると、手続きが進まず、慰謝料を受け取る時期がどんどん後になってしまいます。
そのような事態を避けるためにも、適宜、弁護士からのアドバイスを受けることは有用です。
慰謝料の増額が見込める
慰謝料の増額が見込めることもメリットです。
弁護士が介入している場合、していない場合によって、提示する慰謝料が変わります。
弁護士が介入している場合には、裁判になったときのことも想定していますので、比較的適切に近い案を提示されます。
その上で交渉を行えば、適切な慰謝料を早期に受け取ることができることに繋がります。
交通事故慰謝料の支払い時期のQ&A
慰謝料の一部を先に受け取れないか?
慰謝料の一部を先に受け取る方法は4つあります。
- 加害者の自賠責保険に被害者請求をする
- 加害者の自賠責保険に仮渡金請求をする
- 加害者側の保険会社から内払いを受ける
- 被害者の加入している保険から保険金を受け取る
加害者の自賠責保険へ請求を行う
被害者請求とは、交通事故の被害者が加害者の加入する自賠責保険会社に対して賠償金を請求することを言います。
自賠責保険へ請求を行うと、加害者側の保険会社との示談成立前に、自賠責保険会社からの自賠責保険の基準で慰謝料を含む保険金を受け取ることができます。
被害者請求は、相手方保険会社から病院への治療費の支払対応(一括対応)の期間が終了したのちにできます。
自賠責保険からの入通院慰謝料は、対象日数1日あたり4300円となっています。
対象日数は、下記の日数のどちらか小さい方になります。
- 通院期間
- 通院に行った実日数 × 2
以下に例をあげて説明いたします。
例1) 通院期間100日、通院に行った実日数40回の場合
- 通院期間 100日
- 通院回数 × 2 40 × 2=80
→少ない方の80日が対象日数になります。
この場合の自賠責基準の慰謝料は、80 × 4300=34万4000円です。
例2) 通院期間50日、通院に行った実日数30回の場合
- 通院期間 50日
- 通院回数 × 2 30 × 2=60
→少ない方の50日が対象日数になります。
この場合の自賠責基準の慰謝料は、50 × 4300=21万5000円です。
なお、自賠責保険の金額は、傷害部分(治療費、入通院慰謝料、休業損害等)については、120万円の上限が定められています。
その中でも治療費が優先して支払われる運用になっていますので、治療費期間が長い場合には、120万円の上限により、上記自賠責の基準の全額までは受け取れないケースがあります。
自賠責保険から受け取ることのできなかった慰謝料などの賠償金については、加害者本人や加害者側の保険会社に請求をすることになります。
後遺障害が残った場合には、後遺障害等級に応じて慰謝料が設定されています。
等級に応じた自賠責基準の慰謝料は、以下のとおりです。
認定等級 | 自賠責基準の慰謝料 |
---|---|
1級 | 1150万円(一定の症状により常に介護を要する場合には1650万円)
※被害者に扶養されている人がいる場合には、1375万円(一定の症状により常に介護を要する場合には1850万円) |
2級 | 998万円(一定の症状により随時介護を要する場合には1203万円)
※被害者に扶養されている人がいる場合には、1350万円(一定の症状により常に介護を要する場合には1168万円) |
3級 | 861万円 |
4級 | 737万円 |
5級 | 618万円 |
6級 | 512万円 |
7級 | 419万円 |
8級 | 331万円 |
9級 | 249万円 |
10級 | 190万円 |
11級 | 136万円 |
12級 | 94万円 |
13級 | 57万円 |
14級 | 32万円 |
死亡事故については、以下のとおりの慰謝料が定められています。
被害者本人の慰謝料 | 400万円 |
被害者の父母、配偶者、子 |
|
以下に例をあげて説明いたします。
例)被害者、その配偶者、扶養されている子供の3人がいる場合(被害者の両親は死亡)
- 被害者本人の慰謝料・・・400万円
- 被害者の父母、配偶者、子・・・550万円(該当者2人)
- 扶養されている子供の加算・・・200万円
- 400万 + 550万 + 200万 = 1150万円
よって、上記の例では、自賠責基準での死亡慰謝料は1150万円になります。
自賠責保険会社から補償を受けられなかった部分については、加害者や加害者の加入する任意保険会社に請求をすることができます。
被害者請求を行えば、示談成立前でも自賠責基準による慰謝料を受け取ることができますが、必要な書類が複数ありますので、被害者自身で被害者請求行うのは容易ではありません。
被害者請求をしようと考えたタイミングで交通事故に詳しい弁護士に相談をすることをお勧めします。
自賠責保険について詳しくは、こちらをご覧ください。
なお、被害者請求の結果、受け取ったお金は、賠償金の前払いとなりますので最終的に受け取ることのできる金額が、自賠責保険から支払われた金額だけ減ることになります。
自賠責保険の仮渡金請求をする
自賠責保険の仮渡金請求の制度とは、被害者が、自賠責保険から、当面の生活や治療のために一定の金額を受け取ることのできる制度です。
この制度は、加害者から何も支払いを受けていない場合に利用することができます。
被害者の怪我の状況に応じて、5〜40万円(死亡の場合は290万円)仮渡金が定められています。
被害者の状況 | 金額 |
---|---|
死亡 | 290万円 |
重症の場合(以下の①〜⑤のどれかの場合)
十四日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの |
40万円 |
相当程度の症状の場合(以下の①〜⑤のどれかの場合)
|
20万円 |
上記の状況を除いて、11日以上、病院で治療が必要な場合 | 5万円 |
以下の必要資料を集めて提出すると、自賠責保険から1週間程度で仮渡金の入金があります。
- 支払指図書(仮渡金用)
- 被害者の印鑑登録証明書
- 事故証明書
- (物件事故として警察に届出をしている場合には、人身事故証明書入手不能理由書)
- 事故発生状況報告書
仮渡金の請求は、1つの事故の被害者につき1度しかできません。
なお、仮渡金として受け取ったお金は、賠償金の前払いとなりますので最終的に受け取ることのできる金額が、仮渡金の額だけ減ることになります。
加害者側の任意保険会社からの内払い
加害者側の任意保険会社からの内払いを要請することも手段の一つです。
内払いとは、示談後に受け取れる賠償金の一部を示談の前に受け取ることを言います。
任意保険会社は内払いに応じる法的義務はありませんが、示談が成立すると支払うお金ですので、対応してもらえるケースも少なくはありません。
特に長期間の治療がすでに実施されて、慰謝料もそれなりの金額が発生することが明らかであるような場合には、対応してもらえる傾向にあります。
弁護士に依頼をしている場合には、弁護士に対して、加害者側の保険会社に内払いの対応をしてもらえるかどうかを聞いてみても良いと思われます。
弁護士に依頼をしていない場合には、加害者側の保険会社の担当者に対して直接問い合わせて内払いの依頼をすることになります。
なお、加害者側の保険会社から内払い金として受け取ったお金は、賠償金の前払いとなりますので最終的に受け取ることのできる金額が、内払いの金額だけ減ることになります。
被害者の加入している保険を使用する
被害者自身が加入している人身傷害保険や、搭乗者傷害保険を使用することによって示談前に補償を受け取ることができます。
人身傷害保険とは、交通事故で怪我をした場合に、治療費や仕事ができなかった期間の収入を補填する保険です。
事故直後の治療費については、人身傷害保険が病院へ直接治療費を支払うので、被害者自身の手出しがなく治療を継続することができます。
また、治療が終了した後には、人身傷害保険会社が、その保険会社独自の基準で保険金を計算します。
被害者は、計算結果について確認の上、署名押印をすると、人身傷害保険から保険金を受け取ることができます。
この保険金には、加害者側の保険会社に請求をする慰謝料が含まれていますので、人身傷害保険を使用することによって実質的に慰謝料を示談前に受け取ることができます。
人身傷害保険について詳しくはこちらをご覧ください。
搭乗者傷害保険とは、保険適用対象の自動車に搭乗中の人が事故で死亡したり怪我をしたりしたときに、治療日数や部位・症状別ごとにあらかじめ定められた保険金額に基づいて支払われる保険です。
搭乗者傷害保険は、実際の損失に応じて補償するというものではなく、状況に応じて一定の金額が支払われる保険です。
搭乗者傷害保険について詳しくはこちらをご覧ください。
もらい事故でお金をいつもらえる?
もらい事故とは、信号待ちで停車中に追突された事故のように被害者側の過失が0の事故を指します。
もらい事故の場合も他の事故と同様に示談が成立してから2週間程度で賠償金の入金があります。
もっとも、被害者側の過失が0であることが明らかな場合には、示談交渉の際に、過失割合について交渉を行う必要がないので、比較的スムーズに示談が完了する傾向にあります。
まとめ
ここまで、交通事故の慰謝料はいつもらえるかということや早くもらうためのポイントについて解説しました。
交通事故の慰謝料は、被害者の方にとっては、今後の生活のために受け取るべきものです。
しかも、事故の前と同じように仕事や日常生活ができるとは限りませんので、いつ、慰謝料を受け取ることができるかについて生活を続ける上でかなり重要なものになります。
そのため、慰謝料をはじめとする賠償金の受け取りに関して、ご不明な点があれば、一度交通事故に詳しい弁護士に相談をすることをお勧めします。
当事務所は、交通事故をはじめとする人身障害に特化した部を編成し、交通事故被害者に対して協力にサポートを行います。
また、当事務所は、オフィスでの対面での相談はもちろん、ZoomやLine、FaceTimeを使用したオンライン相談にも対応し、全国どこからでもご相談が可能です。
交通事故の事案に関しましては、初回相談無料ですので、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。