高次脳機能障害がある家族への対応の仕方とは?
家族が高次脳機能障害になってしまった場合、それぞれの方の症状に合わせた対応の仕方をし、生活環境を整えていきましょう。
高次脳機能障害になると、
- ものを覚えること・思い出すことが難しくなる
- 計画を立ててものごとを進めることが難しくなる
- 注意が散漫になる
- イライラしやすくなり怒りっぽくなる
などの症状が現れます。
こうした症状は、周りにいるご家族にも大きな影響を及ぼし、場合によっては、介護が必要になることもあります。
ご家族とご本人両方の負担を減らすためには、それぞれの方の症状に合った対応の仕方をし、できるだけスムーズに暮らせる環境を整えていけると良いと思われます。
また、事故により高次脳機能障害になった場合には、後遺障害等級認定を受けて適切な補償を受けるためにも、
- 専門医を受診する
- 日常生活に生じている支障について記録する
- 事故にくわしい弁護士に相談する
といった対応も大切になります。
今回の記事では、高次脳機能障害の方への対応の仕方、接し方への注意点をご紹介し、高次脳機能障害により日常生活に生じる影響、ご家族の置かれている状況などに触れ、事故で高次脳機能障害になった場合の対応方法についても解説していきたいと思います。
目次
高次脳機能障害への対応の仕方とは?
高次脳機能障害がある方を支援するときには、次のような対応の仕方をしていくとよいです。
高次脳機能障害の方全般に共通する対応の仕方
何ができて何ができないかを明らかにする
高次脳機能障害になったからといって、全てのことができなくなるわけではありません。
まずは、何が得意で何が苦手なのか、何ができて何ができないのかを、ご本人とご家族の間で確認していきましょう。
そのうえで、ご本人ができないこと、苦手なことはなるべくしなくてよいように生活を組み立てていきましょう。
そうすれば、生活していく上で困ることも減り、より快適に暮らすことができるようになります。
加えて、今も得意なこと、できることを活用して、ご本人が日常生活の中で何らかの役割を見つけられるようにすると、ご本人の自己評価も高まります。
参考:障害福祉サービス等事業者向け高次脳機能障害支援マニュアル
ご本人やご家族だけで対応の仕方を考えるのではなく、専門の医師、リハビリを担当している作業療法士・理学療法士・看護師などにもアドバイスをもらえると、よりご本人の症状に合った対応の仕方を見つけることができます。
高次脳機能障害による様々な症状への対応の仕方
高次脳機能障害では、様々な症状が現れます。
高次脳機能障害の症状については、以下のページで詳しく解説しています。
それぞれの症状について、対応方法の例をご紹介します。
注意障害への対応の仕方
高次脳機能障害になると、集中できない、ぼんやりしている、ミスが多いなどの注意障害が出てくる場合があります。
このような症状に対しては、次のような対応の仕方が考えられます。
- 気を散らす刺激(テレビなど)をなくし、集中しやすい環境を作る
- 何かをするときには十分な時間をとる
- 頻繁に確認を促し、注意を持続できるようにする
- 話す時は、相手に視線を向け、言葉だけでなくジェスチャーも交え、注意を引く
- ミスがないかの確認をするよう促す
記憶障害への対応の仕方
高次脳機能障害では、新しいことが覚えられなくなる、物の置き場所を忘れる、以前のことを思い出せなくなる、予定や約束を忘れるなどの記憶障害の症状が出ることもあります。
このような症状に対しては、次のような対応の仕方が考えられます。
- 何かを伝えるときは、短くして伝える
- 何度も声に出すなどして、繰り返し復習するよう促す
- メモや手帳、カレンダー、やることのリスト、タイマーなどを活用する
- メモや日記を書く習慣をつけるよう促す
- 本人が自分でメモを残すことが難しい場合は、メモを作って渡すようにする
- 二人以上で情報を共有し、本人が忘れたら確認できるようにしておく
- 聞く、見る、実行するなど様々な覚え方を試し、本人にあったものを採用する
遂行機能障害への対応の仕方
高次脳機能障害になると、計画を立てて行動できない、間違いを修正できない、こだわりが強くなり、予定外のことに対応できない、金銭管理が難しくなるなどの遂行機能障害が出てくることもあります。
このような症状に対しては、次のような対応の仕方があります。
- 情報を伝える際には、要点を確実に、短くはっきりと伝える
- 作業の順番を書いた手順書を作る
- 指示をするときは、具体的に書いて示す
- あいまいな指示ではなく、具体的に分かりやすい言い方で話す
- 作業などの見通しを、分かりやすく伝える
- 分からないときには質問することを習慣化させる
社会的行動障害などへの対応の仕方
高次脳機能障害があると、感情のコントロールができなくなる、行動を抑制できなくなるといった社会的行動障害が起こったり、自信喪失によって意欲が低下する、抑うつ状態になるなどの二次的な障害が出てくることがあります。
このような症状に対しては、次のような対応の仕方が考えられます。
- いったん怒りの原因から離れ、クールダウンする(場所を変える、話題を変えるなど)
- 本人から聴き取りをし、怒っている原因を探る
- 不適切な行動・発言については、冷静に指摘する
- 怒りの引き金となるものに近づかないよう工夫する
- 本人を責めたり怒ったりしない
- 本人がリラックスできる方法を見つけられるようにする
失語症への対応の仕方
高次脳機能障害により、失語症(人の言うことがわからない、上手く話せない、字の読み書きが難しいなど)になることもあります。
失語症への対応の仕方には、次のようなものがあります。
- 短い文や単語で、ゆっくりと話す
- ジェスチャーや絵など、言葉以外でのコミュニケーションも利用する
- 本人の話をさえぎったり、話を先取りしたりしない
- 「はい」か「いいえ」で答えられるような質問をする
失行症への対応の仕方
歯磨きや着替えなどの日常の何気ない動作が上手くできなくなる失行症も、高次脳機能障害の症状の一つです。
こうした症状に対しては、次のような対応の仕方が考えられます。
- 本人をよく観察し、何に困難を感じているのかなどを把握する
- 動作の仕方・手順を絵や写真にして貼っておく
- 作業が簡単になる物を使うようにする(本人が来やすい服など)
失認症への対応の仕方
見る(視覚)、聞く(聴覚)、触る(触覚)といったことの機能自体には問題がないにもかかわらず、見るなどしたものが何だか分からなくなる失認症も、高次脳機能障害の症状になります。
知っている人を見ても、その人が誰だか分からない、ということもあります。
失認症への対応の仕方には、次のようなものが考えられます。
- 「見て分からないものも、触ればわかる」「顔を見ても分からないが、声を聞けば誰だかわかる」といったこともあるので、問題が生じていない感覚を利用できるよう支援する
- 知能や視覚の障害とは異なるので、本人を傷つけるような対応をしないよう注意する
半側空間無視への対応の仕方
脳の一方の側に障害が生じたことにより、片側の空間への注意が低下するという半側空間無視の症状が生じることもあります。
半側空間無視になると、左側(又は右側)にある物などに気づかず、人や物にぶつかる、置かれた食事に気づかない、顔や目が一方向を向きがちになるなどの症状が出てきます(多くの場合、左側に気が付かなくなる「左側半側空間無視」が生じます。)。
こうした症状に対しては、次のような対応の仕方が考えられます(左側半側空間無視の場合)。
- 大事なことを伝えるときは、本人からみて右側から話しかける
- 食事を右側に置く
- 顔や目を左側に向けるよう促す
易疲労性への対応の仕方
脳を損傷すると、脳の疲労が起こりやすくなるので、疲れやすくなります(易疲労性)。
こうした症状には、次のような対応の仕方があります。
- こまめに休憩するよう促す
- 疲れている様子であれば、休憩を促す
- 疲れやすいことに配慮したスケジュールを立てる
- 運動して体力をつけるよう促す
高次脳機能障害の日常への影響
高次脳機能障害になると、次のように、日常生活にも影響が出てきます。
- 気が散ってしまい、落ち着きがなくなる
- 段取りを立ててものごとを進めることができなくなる
- 予定外のことに臨機応変に対応することができなくなる
- 言ったこと、言われたことを忘れてしまう
- 何度も同じことを言う
- 新しいことを覚えられない
- 怒りやすくなり、暴力を振るうこともある
- お金の管理が難しくなる
上に挙げたほかにも、様々な影響が出ることがあります。
こうした影響により、周囲の人との関係が悪化する、症状が重い場合には介護なしには日常生活を送ることができなくなる、といったこともあります。
高次脳機能障害がある家族への接し方の注意点
精神論ではなく、具体的な対策を立てていく
高次脳機能障害になると、脳に生じた障害により、いくら頑張ってもできなくなることが出てきてしまいます。
そのようなときに、失敗を繰り返すご本人に対し、ご家族などが、「もっとしっかりして」「もっと注意を払って行動して」などと言っても、「頑張っているけど無理なのに・・・」と思われてしまい、信頼関係を損ねてしまいかねません。
そのようなことにならないよう、精神論的な言い方ではなく、より具体的な方策を立てていくことについて話し合っていきましょう。
たとえば、音が気になって集中できない、という症状がある場合には、静かな環境を整えて作業する、耳栓をするなどといったように、具体的な対策を立て、実行していくようにしましょう。
それぞれの方の症状への対応の仕方については、後の・高次脳機能障害による様々な症状への対応の仕方でご紹介しています。
生活環境などを整える
高次脳機能障害の方でも、症状の程度によっては、生活環境を整えることでスムーズに生活を送ることができる場合もあります。
そうなれば、手伝いが必要なことが減っていくので、ご家族の負担も軽減されます。
それぞれの方の症状によって対応の仕方は異なりますが、例えば次のように生活環境を整えることにより、生活がしやすくなることがあります。
- 目立つところに、するべきこと・覚えておくべきことを書いた紙などを貼っておく
- ホワイトボードを見やすい場所に備え付ける
- 物を置く場所を決めておく(鍵の置き場所など)
- 説明やコミュニケーションに使うための絵や写真を準備する
- ご本人にとって使いやすい物(着やすい衣服など)を準備する
外部の支援を活用する
ご家族が高次脳機能障害になってしまった場合には、外部の支援を活用し、ご本人とご家族の負担を軽くしていくことも大切です。
たとえば、障害福祉サービスや介護保険サービスを利用できる場合があります。
ほかにも利用できる支援がある場合や、家族会を案内してもらえることもありますので、お住いの市町村の相談窓口、各都道府県の精神保健福祉センター、各市町村の保健所・保健センター、各都道府県に設置されている国立障害者リハビリテーションセンターなどに相談してみましょう。
地域によっては、高次脳機能障害の方が活用できる支援がさらに整っている場合があります。
たとえば、茨木県では、高次脳機能障害支援センターを設け、ご本人やご家族の相談に応じています。
茨木県ではほかにも、高次脳機能障害支援マップを作成していますし、家族会もあります。
京都市も、高次脳機能障害者支援センターを設けたり、高次脳機能障害支援マップを作成したりしています。
お住まいの地域でも、高次脳機能障害がある方への支援があるかもしれませんので、一度調べてみることをお勧めします。
高次脳機能障害の家族の苦悩
高次脳機能障害の方のご家族は、様々な苦悩を抱えています。
ここでは、高次脳機能障害の方のご家族が抱えがちな苦悩について解説していきます。
ストレスを感じやすい
高次脳機能障害になると、ご本人に、「ひどく忘れっぽくなった、これまでできたことができなくなった、怒りっぽくなった」などといった症状が現れ、ご家族が、戸惑いを感じたり、ショックを受けたりすることが多いです。
ときには、「これまで穏やかな人だったのに、ひどく怒りっぽくなった」など、ご本人の性格・人格が変わってしまったように見え、「これまでとは別人になってしまった」などと喪失感を感じることもあります。
ほかにも、ご家族が高次脳機能障害になったことで、介護が必要になるなど生活が大きく変わってしまうこともありますし、「仕事や学校はどうなるのか、これから生活していけるのか」など将来への不安も強くなってしまうことがあります。
それに、高次脳機能障害は「見えにくい障害」などと言われるとおり、外から見ても障害があるとは分かりにくいので、ご家族以外の近所の人や親族、学校や職場の関係者にも、障害があることを理解してもらいにくいことが少なくありません。
このようなことにより、高次脳機能障害の方のご家族は、ストレスを感じやすくなります。
適切な診断を受けられないことがある
高次脳機能障害は、外見からは障害があることが分かりにくいうえ、症状は日常生活で見られることが多く、診察時には発見しにくい、画像検査(CT,MRIなど)でも異常を見つけられないことがある、といったこともあり、医師でも発見できないことが珍しくありません。
そのため、いくつかの医療機関を受診しても、「異常はない」「事故の心理的ショックによるものだろう」などと言われ、適切な診断を受けることができない場合があります。
適切な診断を受けることができないと、適切なリハビリ、支援なども受けることができず、症状も生活状況も改善しないままとなり、ご家族が苦悩を抱え込んでしまうことになる場合があります。
高次脳機能障害の家族の介護で疲れを感じている
高次脳機能障害のご家族には、介護が必要になる場合があります。
障害の程度によっては、日常生活全般について介護が必要になってしまいます。
しかも、高次脳機能障害の方の中には、社会的行動障害などのために、イライラしやすく、怒りっぽくなる方もいます。
場合によっては、ご本人がご家族に暴力を振るうこともあります。
このように、高次脳機能障害の方の介護は、ご家族に重い負担となってのしかかり、ご家族が介護疲れを感じてしまうこともあります。
事故で高次脳機能障害となった方の対応
専門の病院を受診する
高次脳機能障害は、「見えにくい障害」とも言われるとおり、外見からや検査結果から直ちに診断のつく場合ばかりではなく、くわしくない医師だと見落としてしまうことが少なくありません。
高次脳機能障害ではないかと思われる場合は、高次脳機能障害を専門とする病院を受診することを考えてみましょう。
日常生活での支障を記録する
事故で高次脳機能障害になった場合、後遺障害等級認定を受けることで、より充実した保障を受けることができるようになる可能性があります。
しかし、高次脳機能障害によって後遺障害等級認定を受けることは、簡単ではありません。
後遺障害等級認定を申請する際の資料を充実させるためにも、日記をつけるなどして、日常生活でどのような支障が生じているか、どのような症状が出ているのかを記録しておきましょう。
こうした記録は、医師に正確な診断をしてもらうためにも役に立つことがあります。
事故に強い弁護士に相談する
事故で高次脳機能障害になったことが疑われる場合は、なるべく早いうちに、事故に強い弁護士に相談しましょう。
高次脳機能障害について適切な後遺障害等級認定を受けるためには、
- 医師に十分に症状を伝え、カルテに残してもらう
- 必要な検査を十分に受ける
- 症状の記録を残しておく
といったことが大切になります。
こうした対策を十分に行うためにも、早めに事故に強い弁護士に相談、依頼し、医師とどのように話しをするかなどについて、アドバイスを受けることをお勧めします。
事故に強い弁護士に依頼をすることには、次のようなメリットもあります。
- 交通事故の場合、被害者にもっとも有利な弁護士基準で損害賠償を算定できるようになり、賠償額が増額することが多い
- 過失割合についても、証拠を揃え、適切な主張をしてくれる
- 交通事故の場合、保険会社とのやり取りの窓口になってもらうことができ、治療打切りについても交渉してもらえる
- 疑問点や不安な点について、すぐに相談できる
交通事故について弁護士に相談すべき理由、弁護士の選び方については、以下のページでも詳しく解説しています。
高次脳機能障害に対応する方のQ&A
高次脳機能障害で怒りやすくなっている場合の対応とは?
高次脳機能障害の方の中には、感情のコントロールが難しくなり、怒りやすくなってしまう方もおられます。
こうした状態の方にご家族が対応する方法としては、
- どうして怒りを感じたのかの背景(本人がどう感じているのか、何に困っているのかなど)をよく聴き取る
- 怒る原因となったものから遠ざける(場所を変えるなど)
- イライラした様子の場合は、話題を変えてクールダウンさせる
などといったものがあります。
ほかにも、日ごろからご本人に自信をつけさせるように接する(できたことを具体的にほめる、できることをする役割を与えるなど)ことで、怒ることを減らせる場合もあります。
ご本人にも、次のような方法で、怒りの感情に対応するよう伝えてみるとよいかもしれません。
- 新しいことを始める前に一呼吸入れることを習慣にする
- リラックス法を見つける
- イライラしたら、怒りだす前にその場を離れる
- 運動することで、すっきりできるようにする
また、怒鳴ったり暴れたりした場合には、そうした行動は不適切であることを、ご本人に冷静に伝えることも大切です。
それぞれの方の状況を見ながら、ご本人やご家族に合った対策を見つけていきましょう。
高次脳機能障害の高齢者への対応とは?

ただ、高齢者の場合、加齢により体力が落ちているなどといったこともありますので、そうした点にも注意が必要です。
また、認知症など他の疾患も出てくる場合があります。
認知症と高次脳機能障害には、
- 認知症の場合は症状が進行するけれども、高次脳機能障害の場合には進行することはない
- 高次脳機能障害の場合は知能が低下することは少ない
という違いがあります。
リハビリの方法や治療方法も変わってくる可能性がありますので、ご本人の症状を観察し、認知症の兆候がないかにも注意を払っていきましょう。
まとめ
今回の記事では、高次脳機能障害がある家族への対応の仕方などについて紹介しました。
高次脳機能障害を発症すると、日常生活に支障が生じ、近くにいるご家族にも負担がかかってきます。
しかも、高次脳機能障害は「見えにくい障害」といわれ、周囲の人に理解してもらえない、正確な診断がつかないといったことも多く、このこともご家族やご本人の負担となります。
家族が高次脳機能障害になった場合には、それぞれの方の症状に応じた対応の仕方をし、生活をよりスムーズに送れるよう、生活環境を整えることが大切です。
各種の相談窓口も活用し、外部の支援を積極的に取り入れるようにもしていきましょう。
そうしてご本人やご家族の負担を軽くすることで、生活が改善していく可能性もあります。
事故で高次脳機能障害になった場合には、適切な後遺障害等級認定を受けるため、専門医を受診する、事故にくわしい弁護士に相談するといった対応も重要になります。
当事務所でも、事故による人身障害を集中して取り扱う人身障害部が、高次脳機能障害による後遺障害等級認定のサポートに尽力しています。
電話・オンラインによる全国からのご相談もお受けしております。
お困りの方は、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。