被害者が未成年のとき、人身事故の損害賠償請求は誰がする?
原則は、人身事故の被害者本人が損害賠償請求をします。
しかし、被害者が未成年のときは、未成年者の親権者、被害者の方が事故により植物状態となってしまった場合には、家庭裁判所において、成年後見人を選任してもらい損害賠償請求をすることになります。
損害賠償請求について弁護士に依頼するのは、損害賠償請求ができる人となります。
請求者は被害者本人
交通事故の損害賠償は、原則被害者本人が請求をします。
人身事故の場合、被害者本人が賠償請求できるのは、
- 治療費、入院費などの積極損害
- 休業損害、逸失利益などの消極損害
- 事故による肉体的、精神的苦痛への慰謝料
です。
また、車の破損などの物損も生じている場合には、車の修理費用、車の買い替えに必要な費用などの物について生じた損害についても損害賠償請求の対象となります。
なお、物損が生じた場合には、その物の所有者が損害賠償請求をすることができます。
では、被害者が亡くなってしまったり、なんらかの障害が残り、被害者本人が自ら請求できないとき、損害賠償請求はどうなるのでしょうか?
本人が請求できないとき
被害者が死亡したとき、被害者の相続人が請求
交通事故の被害者が死亡すると、被害者の相続が始まります。
相続人は、積極損害・消極損害・慰謝料などの損害賠償請求権を相続するので、これに基づき加害者に請求することになります。
被害者が未成年者のとき
未成年者は財産を処分する行為能力がありません。
だから、未成年者が損害賠償請求や示談を未成年者単独ではできません。
そこで法定代理人である親権者が賠償請求します。
また未成年者に代わって加害者と交渉する代理人の選任する際も、親権者が未成年者と共同で選任します。
被害者が重度の精神障害など事理弁識能力を書くとき
たとえば、植物状態になってしまった、重度な知的障害となってしまったなど被害者が損害賠償について正しい判断をできない状態のとき、家庭裁判所によって選任された成年後見人が、損害賠償を請求します。
慰謝料請求について
被害者の相続人である近親者は、被害者に慰謝料請求権のほかに 近親者固有の慰謝料請求権を有しています(民法711条)。
ただ、近親者固有の慰謝料請求は、被害者本人の死、または死と同視できる重症の場合にのみ請求することができるとするのが判例です。
企業損害について
交通事故の被害者が会社代表者などである場合には、会社に対しても損害が発生することがあります。
このような個人の受傷によって会社に発生した損害のことを企業損害といいます。
企業損害については、会社が賠償請求していくことになります。
もっとも、企業損害についての賠償請求は、相当因果関係が認められないとして、請求が認められないことが多いです。
なお、例外的なものとしては、実質上個人営業である会社の代表者の負傷事故の事案で、被害者が会社にとって代替性がなく、個人と会社が一体をなしていると認め、被害者個人の受傷と会社の利益喪失との間に相当因果関係があるとしたケース(最判昭和43年11月15日)があります。
請求者となったら
請求者への支払いを行う義務があるのは、加害者です。
もっとも、実際に請求者への支払いを行うのは、加害者の加入している保険会社であることが多いです。
そのため、事故による保険金や賠償金を請求する人は、保険会社からの支払いを受けるための手続や加害者からの支払いを請求していくことになります。
保険金の請求についてくわしくは、こちらをご覧ください。