交通事故の死亡慰謝料の相場とは?遺族がもらえる賠償金

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)


交通事故の死亡慰謝料の相場は、2000万円〜2800万円です。

金額は、被害者の立場(一家の支柱、配偶者、母親など)によって金額は変動します。

ただし、上記金額は目安であり、事案によっては死亡慰謝料が3000万円を超えるケースもあります。

また、事故に遭ってから亡くなるまでに入院治療している場合などには、入院慰謝料も請求することができます。

以下では、死亡慰謝料の金額や適切な賠償金を受け取るためのポイントなどについて、詳しく解説していますので、参考にされてください。

交通事故の死亡慰謝料とは?

交通事故の死亡慰謝料とは、交通事故により被害者が亡くなった際の被害者自身の精神的苦痛に対して支払われるものです。

被害者本人は亡くなっているため、遺族が死亡慰謝料を請求することになります。

死亡慰謝料は、その算定基準によって1000万円以上金額が変わることもあるので、安易に示談せず、弁護士に相談あるいは依頼して示談交渉を進めた方がいいでしょう。

 

死亡慰謝料の他との違い

慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料があります。

入通院慰謝料は、入院や通院をしたことに対する慰謝料で、後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことに対する慰謝料です。

死亡慰謝料は、死亡したことに対する慰謝料です。

それぞれの慰謝料は、被害者本人に対する慰謝料という点で共通しますが、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料は、被害者本人に支払われるのに対し、死亡慰謝料は遺族に支払われるという違いはあります。

遺族固有の慰謝料について

民法711条を根拠に、遺族にも固有の慰謝料請求権が発生します。

民法711条に定められている遺族の範囲は、「被害者の父母、配偶者及び子」です。

もっとも、実質的に見てこれらの列挙されている者と同視できる者(例えば、事実上の親子、内縁配偶者、親代わりに面倒を見てきた兄弟姉妹など)にも固有の慰謝料請求権が発生すると考えられています。

 

 

交通事故の死亡慰謝料の相場

交通事故の死亡慰謝料の相場は、2000万円〜2800万円です。

この相場は、後ほど説明する弁護士基準(裁判基準)によるものであり、遺族の慰謝料も含まれています。

この相場はあくまで目安であり、裁判例の中には3000万円を超える死亡慰謝料を認めたケースもあります。

自動計算機で簡単に死亡慰謝料を計算!

以下の自動計算ツールに必要事項を入力することで、死亡慰謝料の相場の目安を確認することができます。

また、被害者が亡くなった場合には、死亡逸失利益(本来得られたはずの収入が死亡したことで得られなくなったことへの補償)を請求することができます。

死亡逸失利益の計算方法は複雑です。

以下の自動計算ツールは、死亡逸失利益も計算することができるので、是非ご活用ください。

 

交通事故の死亡慰謝料の計算方法

死亡慰謝料には、以下の3つの基準があります。

  1. ① 自賠責保険基準
  2. ② 任意保険基準
  3. ③ 弁護士基準(裁判基準)

以下では、それぞれの基準での算定方法について説明します。

 

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自賠責保険に賠償金を請求した場合に用いられる基準であり、法令で基準内容が決まっている基準です。

自賠責保険は、加害者にお金がなくて被害者が全く補償を受けられないという事態が発生しないように設けられた保険であり、強制加入保険です。

したがって、自賠責保険基準の補償内容は、最低限のものにとどまっており、算定基準の中では最も低い水準となっています。

自賠責保険基準での死亡慰謝料の算定方法は以下のとおりです。

被害者の慰謝料と遺族固有の慰謝料の合計額を請求できます。

被害者の慰謝料
400万円

遺族固有の慰謝料
請求権者 1名 550万円(750万円)
請求権者  2名 650万円(850万円)
請求権者 3名以上 750万円(950万円)

※( )の金額は請求権者に被扶養者がいる場合の金額です

例えば、被害者に扶養している配偶者と子どもが一人いる場合は、400万円 + 850万円で1250万円となります。

なお、自賠責保険から支払われる死亡による損害の上限額は3000万円です。

死亡慰謝料と逸失利益などの損害の合計額が3000万円を超える部分については、加害者の任意保険会社あるいは加害者本人に請求する必要があります。

 

任意保険基準

任意保険会社の基準は、各保険会社が設定している基準ですが、公開されていません。

したがって、具体的に金額を明示することはできませんが、ざっくりとしたイメージとしては、自賠責保険よりも高水準ですが、裁判基準には大きく及ばない水準といったイメージです。

 

弁護士基準(裁判基準)

弁護士基準とは、弁護士が示談交渉の際に用いる基準です。

また、裁判になった場合に、裁判所が使用する基準でもあるため、裁判基準とも呼ばれています。

弁護士基準(裁判基準)は、被害者の立場によって慰謝料の金額の目安が定められています。

被害者の立場 金額
一家の支柱の場合 2800万円
一家の支柱に準ずる場合(母親・配偶者など) 2500万円
その他 2000万円〜2500万円

「一家の支柱」とは、被害者家族の家計が被害者の収入によって支えられている場合です。

「その他」とは、独身の男女、子供、幼児のことを指します。

上記の金額には、民法711条の「被害者の父母、配偶者、子」とそれに準ずる者の固有の慰謝料分も含まれています。

具体的な配分は事案により判断されるため、明確な基準は設定されていません。

 

死亡事故の慰謝料の金額は年齢や職業などによって変わる?

死亡事故の慰謝料は、基本的には年齢や職業などによって金額が変わることはありません。

死亡慰謝料の金額の算定方法は、上記したとおりですが、それぞれの基準の中で重視されているのは、被害者本人に扶養している家族がいるかという点です。

自賠責保険基準では、扶養者がいる場合には、200万円が加算されます。

また、弁護士基準以下でも、扶養者がいることを前提とする「一家の支柱」が亡くなった場合の慰謝料金額が最も高い金額となっています。

 

 

死亡事故の慰謝料が増額される場合とは?

慰謝料はこのように一定程度定額化されていますが、以下の場合には増額されることがあります。

加害者に故意もしくは、重過失がある場合

「故意」がある場合とは意図的に交通事故を起こし、被害者を負傷・死亡させた場合です。

「重過失」がある場合の例は以下のとおりです。

  • 無免許運転
  • ひき逃げ
  • 酒酔い運転
  • 著しいスピード違反
  • ことさらに信号無視をした場合
  • 薬物等の影響により正常な運転ができない状態で運転した場合

 

加害者に著しく不誠実な態度がある場合

加害者が、虚偽の事実を述べたり、不合理な弁解を繰り返しているような場合に増額が認められる傾向にあります。

 

被害者に特別な事情がある場合

負傷した部位及びその程度、入通院期間、年齢・性別・職業・既婚未婚の別・社会的地位、資産・収入・生活程度、家庭内における地位・扶養関係などを考慮して、増額すべき特別な事情がある場合に相場よりも高い死亡慰謝料となります。

 

死亡慰謝料が増額された裁判例

判例① 東京地判H平成15年3月17日

加害者の運転手が、飲酒により相当程度酩酊した状態で高速道路を逆走するという危険な運転行為の結果、正面衝突して一家の支柱である被害者が死亡した事案で、合計 3600万円の死亡慰謝料が認められました。

判例② 京都地判平成27年3月9日

加害車両に最大積載量の3.4倍を超える積荷が載せられていた上、最大積載量を偽るステッカーを貼るなど過積載の態様も悪質であったという事案で、死亡した単身者(男・19歳・大学生)につき、合計 2800万円の死亡慰謝料が認められました。

判例③ 東京地判平成16年2月25日

加害者が酒酔い運転で対向車線に進入し事故を起こし、事故後は救護活動を一切せず、捜査段階でも被害者がセンターラインオーバーしていた等と虚偽の供述をしていた事案につき、遺族固有の慰謝料を含め3600万円が認められました。

 

 

死亡事故の慰謝料を受け取れる人はだれ?割合はどうなる?

死亡事故の賠償金を受け取れるのは、被害者の相続人です。

相続人間での分配は、遺族の方々との間で遺産分割協議をして決めることになります。

遺言がある場合には、遺言に沿った分割となります。

なお、民法による法定相続分の主な割合は以下のとおりです。

相続人 相続割合
配偶者と子
  • 配偶者 1/2
  • 子 1/2(子が複数いる場合は人数に応じて均等に分ける)
配偶者と親
  • 配偶者 1/2
  • 親 1/3
配偶者と兄弟姉妹
  • 配偶者 3/4
  • 兄弟姉妹 1/4
複数の子のみ
母親・父親のみ
兄弟姉妹のみ
それぞれ人数に応じて均等に分ける

 

 

死亡慰謝料以外で遺族が請求できる損害賠償金

死亡逸失利益

被害者が亡くなった場合、死亡逸失利益を請求することができます。

死亡逸失利益とは、被害者が亡くならなければ得ることができたであろう収入を補償するものです。

死亡逸失利益は、賠償項目の中で最も金額が大きくなることが多い重要な賠償項目です。

具体的な計算式は、以下のとおりです。

計算式 基礎収入額 ×( 1 - 生活費控除率 )× 就労可能年数に対応するライプニッツ係数 = 死亡による逸失利益

 

基礎収入額

基礎収入額は、原則として事故前年の年収額となります。

もっとも、将来、年収が増額する可能性がある場合には、平均賃金を用いて計算する場合もあります。

例えば、被害者が20代である場合、20代の年収額が生涯続く可能性は低く、年齢を重ねるにつれて収入も増えていくことが予想されるため、平均賃金で計算するのです。

また、資格を取得するなどして収入が増額する見込みがある場合にも平均賃金を用いる場合があります。

なお、平均賃金は賃金センサスを参考にします。

 

生活費控除率について

被害者が亡くなった場合、被害者の将来の生活費が不要になります。

したがって、逸失利益の算定にあたっては、不要になった生活費を控除して算出する必要があります。

生活費控除率は、被害者の立場によって変わってきます。

家族関係、性別、年齢に照らして下表の割合が目安とされています。

被害者の立場 生活費控除率
一家の支柱 被扶養者が1名 40%
被扶養者が2名以上 30%
女性(主婦、独身、幼児等含む) 30%
男性(独身、幼児等含む) 50%
年金受給者 通常よりも高い割合(50~70%)

上記は目安であり、個別事情によって変動します。

 

就労可能年数

就労可能年数とは、被害者が事故により死亡しなかったら、働けていたはずの年数のことです。

一般に就労可能な年齢は67歳とされているため、死亡時から67歳までの年数が就労可能年数ということになります。

もっとも、平均余命の2分の1の年数が、死亡時の年齢から67歳までの年数よりも長い場合には、平均余命の2分の1の年数を就労可能年数とします。

また、67歳以上の方は、平均余命の2分の1を就労可能年数とします。

ただし、定年して再就職の見込みが無いような場合には、上記にかかわらず、一定の年数に制限されることもあります。

 

ライプニッツ係数

逸失利益は、将来にわたり時間をかけて得るはずのお金を一時金として先に支払いを受けるものです。

つまり、未来に得ることができたお金をすぐにまとめて支払ってもらうことになり、その金額をそのまま受け取ると、本来受け取ることができる時点(未来)までに発生する利息分も補償されることになります。

こうした利息(中間利息)控除するための係数としてライプニッツ係数が用いられています。

なお、民法改正の影響で2020年3月31日までの事故と、2020年4月1日以降の事故では、用いるライプニッツ係数が異なります。

死亡逸失利益について、概算をすぐに知りたいという方は、下記の交通事故賠償金計算シミュレーターも活用してご参考にされて下さい。

また、逸失利益の考え方や計算方法についてはこちらに詳しく記載しています。

 

休業損害

被害者が事故に遭ってから亡くなるまでの間、会社を休まざるを得なくなり、その分解者からの給与が減額された場合には、休業損害を請求することができます。

また、主婦である場合には、主婦休損を請求することができます。

亡くなった以降の収入の補償は上記した逸失利益で補償されることになります。

 

治療費、入院費

治療費や入院費は、治療の必要性や相当性が認められなければ加害者に請求できないのが原則です。

もっとも、被害者が死亡するまでの間に支出した治療費や入院費は、必要性や相当性が肯定されることがほとんどですので、加害者に請求できます。

 

入通院慰謝料

交通事故に遭った後、亡くなるまでに一定期間入院されていた場合には、その分の入通院慰謝料を請求することができます。

入通院慰謝料は、交通事故により入通院せざるを得なくなったことに対する補償です。

入院1ヶ月で53万円、2ヶ月で101万円、3ヶ月で145万円です。

入通院慰謝料について、計算方法など詳しくはこちらをご覧ください。

 

付添看護費用

遺族が、被害者が死亡するまで病院に付き添い、看護したときの付添看護費も、加害者に請求することができます。

請求できる額は、概ね1日につき 6500円です。

判例 東京地判 平成25年3月7日

19日間の入院後に死亡した被害者(17歳)につき、遺族の付添看護費として、19日間につき日額 6500円を認めた事例。

 

付添人交通費

被害者が死亡するような重篤な症状の場合、付添人交通費は比較的争いなく損害として認められる傾向にあります。

 

葬儀費用

最高裁判例(S43. 10.3)では、葬儀費用に関して以下のような判断がされています。

損害として認められた支出
  • 火葬、埋葬料
  • 読経、法名料
  • 布施、供物代
  • 花代
  • 通信費
  • 新聞広告費
  • 葬儀社への支払
  • 遺族の交通費
  • 49日までの法要費
積極損害として認められない支出
  • 遺族以外の弔問客の交通費
  • 引き出物代
  • 香典返し
  • 49日以降の法要費

葬儀費用が認められる額は、裁判基準で原則150万円です。

もっとも、個別事情を踏まえて、150万円以上の葬儀費用を認めた裁判例もあります。

150万円を下回る場合は、実際に支出した金額が損害として認められます。

また、香典として受け取った分を葬儀費用から差し引く(損益相殺)ことはありません。

なお、自賠責保険の基準では、葬儀費用は一律100万円です。

 

弁護士費用

示談交渉の段階では、弁護士費用は請求することはできません。

しかし、訴訟になった場合には、裁判所が認定した賠償支払額の10%の金額が弁護士費用として認められます。

例えば、賠償の支払額が5000万円認定された場合には、その10%である500万円を請求することができます。

遅延損害金

加害者は、交通事故の賠償金について、事故発生日から支払義務を負うと考えられています。

したがって、事故発生日から支払いを遅延していることになります。

この遅延に対する補償が遅延損害金です。

遅延損害金は、年3%請求することができます(2020年3月31日以前の事故は年5%)。

例えば、賠償額が6000万円で、事故発生から支払いまで2年を要した場合には、6000万円 ✕ 3% ✕ 2年 = 360万円を遅延損害金として請求することができます。

遅延損害金についても、裁判になった場合にのみ請求することができます。

示談交渉段階で保険会社に請求しても認められる可能性は低いです。

 

 

死亡事故の賠償金に対する課税

死亡事故による慰謝料には、原則として課税はされません。

その他、治療費、休業損害、逸失利益等についても課税はされません。

もっとも、事案によっては、税金が生じる場合もあります。

例えば、以下の場合、受領した保険金や賠償金は課税対象とされることがあります。

  • 人身傷害保険から被害者の過失割合分の保険金を受領した場合
  • 過剰な賠償金を受領した場合
  • 生命保険の死亡保険金

 

 

遺族が死亡慰謝料を請求できないケース

被害者の過失割合が100%の場合

交通事故が発生したことについて、亡くなった方に100%の過失割合が認められる場合には、遺族は死亡慰謝料を請求することはできません。

過失割合とは、事故を発生させた落ち度の程度のことです。

事故が発生したことについて、相手方に全く落ち度がない場合には、死亡慰謝料を請求できないのです。

例えば、赤信号で完全に停車している車に追突した結果、追突した車の運転手には100%の過失割合が認められます。

こうした場合には、追突した運転手の遺族は、死亡慰謝料を請求することができません。

 

自損事故の場合

自損事故も交通事故ですが、自損事故の場合には、被害者本人が自分で事故を起こしてしまっているので、請求する相手がいません。

したがって、自損事故の場合にも遺族は、死亡慰謝料を請求することはできません。

ただし、被害者が人身障害保険に加入している場合には、人身障害保険の契約内容に従って、死亡慰謝料を受け取ることができます。

 

 

交通事故の死亡慰謝料等が支払われるまでの流れ

死亡慰謝料の請求までの流れは以下のとおりです。

死亡慰謝料の請求までの流れ

 

死亡事故の発生

死亡事故が発生後、被害者の葬儀が終わった後に保険会社と示談交渉を開始することができます。

多くの場合、49日が過ぎてから交渉を開始することが多いです。

 

弁護士に相談

死亡事故の場合には、賠償金が高額になる可能性が高く、賠償の計算方法によって、賠償金が数千万円変わってくる可能性があります。

また、ご家族が突然交通事故により亡くなって間もなくに、保険会社の対応をすることはとても大変です。

弁護士に依頼した場合には、弁護士が全て窓口となって対応するため、ご遺族の負担を軽減することができます。

賠償についてや保険会社の対応に少しでも不安や疑問がある場合には、弁護士に相談されることをおすすめします。

 

示談交渉

弁護士に依頼している場合には、弁護士が弁護士基準(最も高い基準)で損害額の計算をして保険会社に提示し、交渉します。

弁護士に依頼していない場合には、保険会社から賠償額の提示が送られてきます。

その提示は、自賠責保険基準や任意保険基準で計算されたものであり、十分な補償でないことがほとんどなので、示談する前に弁護士に提示内容を見てもらうようにしましょう。

 

裁判

保険会社の提示内容に納得できず、交渉が決裂した場合には、裁判をすることになります。

裁判をすべきかどうかは、示談交渉において保険会社が最終提示している金額と、裁判をした場合の増額あるいは減額の見通しを検討して判断することになります。

こうした見通しを立てるには専門的な知識が必要になりますので、弁護士に相談して決めるようにしましょう。

また、裁判となった場合には、少なくとも半年以上は時間がかかります。

長い裁判では数年を要することもありますので、こうした事情も踏まえて裁判をするかどうか決めることになります。

 

解決

保険会社と示談交渉で合意できた場合には、免責証書あるいは承諾書という書面に署名押印して解決となります。

免責証書あるいは承諾書を保険会社に返送して1〜2週間程度で指定の口座に慰謝料を含めた賠償金が支払われます。

裁判において、和解が成立した場合には、和解成立後、1ヶ月以内で入金されることが多いです。

判決になった場合には、判決後、遅延損害金などの計算をして双方の弁護士で金額を確定させた後、振込となります。

 

死亡慰謝料を請求するための必要な書類

自賠責保険に死亡慰謝料を請求する場合には、以下の書類が必要になります。

必要書類 取得方法
自動車損害賠償責任保険支払請求書兼支払指図書 自賠責保険から様式を取り寄せて作成
交通事故証明書 自動車安全センターから取り寄せ
事故発生状況説明書 自賠責保険から様式を取り寄せて作成
印鑑証明書 各自治体の市区町村で取得
死体検案書又は死亡診断書 亡くなった病院で取得
戸籍謄本 各自治体の市区町村で取得

加害者が任意保険に加入しており、その保険会社が窓口となって交渉する場合には、死体検案書又は死亡診断書、戸籍謄本を取得すればたりることが多いです。

 

死亡慰謝料の請求のための証拠

死亡慰謝料を請求するには、加害者の過失によって被害者が死亡したことが認められる必要があります。

具体的には、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. ① 加害者の過失
  2. ② 被害者が死亡したこと
  3. ③ 加害者の過失が原因で被害者が死亡したこと(因果関係)

したがって、死亡慰謝料を請求するには、上記の3つの条件を根拠づける証拠が必要となります。

①加害者の過失

加害者の過失は、交通事故が発生につき、加害者に落ち度がある場合に認められます。

落ち度があるかどうかは、事故態様によって決まります。

したがって、証拠としては、ドライブレコーダーの映像、実況見分調書(警察が作成した事故の状況図)、防犯カメラ映像などが重要な証拠となります。

 

②被害者が死亡したこと

被害者が亡くなった証拠は、死亡診断書あるいは死体検案書が証拠となります。

 

③加害者の過失が原因で被害者が死亡したこと(因果関係)

交通事故が発生してから一定期間経過してから亡くなった場合には、保険会社が、事故と死亡の関係性を争ってくることがあります。

こうした場合には、医療記録が重要な証拠となります。

特に事故から亡くなるまでのカルテが重要な証拠です。

また、死亡診断書には、亡くなった原因についても記載されているため、死亡診断書も重要な証拠となります。

 

 

適正な死亡慰謝料等を受け取るポイント

慰謝料の相場を知る

すでに「交通事故の死亡慰謝料の計算方法」にて説明したとおり、死亡慰謝料の金額には相場の目安があります。

また、被害者のが置かれている立場(被扶養者の数など)によって、目安の金額も増額できることもあります。

したがって、基本となる相場をきちんと把握して、保険会社からの賠償の提示を鵜呑みにしないことが大切です。

 

遺族の間で意思統一をする

被害者が亡くなったことによる賠償金は、原則として法定相続分に従って遺族に支払われることになります。

したがって、遺族全員の利害に関わってくるので、遺族間においても示談交渉で早期解決するのか、裁判をして解決するのかなど意思統一をすることが大切です。

 

弁護士費用特約の利用

弁護士費用特約とは、弁護士費用を保険会社が支払ってくれる保険特約であり、被害者側が加入している必要があります。

弁護士費用特約の適用範囲は広く、被害者が契約者本人でなくても使用することができます。

弁護士特約の補償対象は以下のとおりです。

  1. ① 契約者(被保険者)本人
  2. ② 契約者(被保険者)の配偶者
  3. ③ 契約者(被保険者)の同居の親族
    (例)同居中の父母、兄弟姉妹、子、配偶者の親族
  4. ④ 契約者(被保険者)の別居未婚の子
    (例)実家を出て暮らしている結婚していない子ども
  5. ⑤ 契約車に搭乗中の者
  6. ⑥ 契約車の所有者

このように、弁護士費用特約の適用範囲は広いので、特約を使えるケースでも使えないと勘違いして相談にこられる方もいらっしゃいます。

多くの保険会社では、弁護士費用特約の上限額は300万円です。

死亡事故の場合、弁護士費用が300万円を超えることもありますが、300万円分は保険会社に補填してもらえますので、大きな補償といえます。

保険を使用した場合には、保険等級が変動し保険料が高くなるイメージが有るかと思いますが、弁護士費用特約は使用したとしても保険等級に影響しません。

したがって、弁護士費用特約に加入されている場合には、特約を使用しない理由はないといっても過言ではありません。

弁護士特約に加入されている場合には、積極的に利用することをおすすめします。

 

交通事故の死亡慰謝料等で困ったら弁護士へ相談

交通事故に強い弁護士であれば、慰謝料の相場は当然把握していますので、相談することで、慰謝料金額の目安を知ることができます。

また、慰謝料の部分のみでなく、逸失利益など重要な損害項目について、適切な金額を算出することができ、損害総額の全体像を知ることができます。

こうした弁護士の相談を踏まえて、弁護士に示談交渉を依頼するのか、そのまま示談した方がいいのか決断されるべきでしょう。

多くのケースでは、弁護士が示談交渉をすることで増額が見込めます。

相談時に弁護士に増額の見込みについて、確認されるとよいでしょう。

 

死亡事故の弁護士費用の相場

弁護士費用としては、相談料、着手金、報酬金がメインです。

相談料に関しては、無料相談を実施している法律事務所も多くあります。

有料の法律事務所の場合、30分5500円〜の事務所が比較的多いでしょう。

着手金については、加害者への請求額によって変わってきます。

着手金を0円として、加害者側から回収した賠償金から報酬金のみを請求する法律事務所もあります。

この場合、ご遺族としては、弁護士に依頼するにあたって初期費用はかかりません。

報酬金は、回収金額に応じて10〜20%程度の事務所が多いでしょう。

 

 

交通事故の死亡慰謝料のよくあるQ&A

高齢者でも交通事故の死亡慰謝料をもらえる?

高齢者は、慰謝料相場の分類としては、「その他」に分類され2000万円〜2500万円が相場とされています。

 

しかし、高齢者であっても、母親あるいは配偶者としての立場もあり、必ずしも「その他」に分類されるとは限りません。

保険会社からの提示では、2000万円を下回る死亡慰謝料の提示がなされることがありますが、裁判となった場合には、2000万円を下回る慰謝料金額は少なく、2200万円を上回る慰謝料を認めている裁判例が数多くあります。

被害者側としては、被害者の立場(母親、配偶者、一家の支柱)を踏まえて、最大限の慰謝料を請求していくべきです。

90歳の場合

裁判例において、91歳で年金生活の女性について、2200万円(近親者慰謝料含む)の死亡慰謝料を認めたものがあります(大阪地判平成18年3月10日)。

 

80歳の場合

裁判例において、年金生活の男性82歳の死亡慰謝料について2600万円(近親者慰謝料含む)を認めたものもあります(京都地判平成27年5月25日)。

 

70歳の場合

裁判例において、年金生活の76歳男性について、2700万円(近親者慰謝料含む)の死亡慰謝料を認めたものがあります(東京地判平成27年5月25日)。

 

高齢者の死亡逸失利益はどのように計算する?

死亡逸失利益は、基礎収入 ✕(1 ー 生活費控除率)✕ 就労可能年数に対応するライプニッツ係数の計算式で計算します。

 

基礎収入について

高齢者の場合、年金収入が基礎収入になることが多いです。

もっとも、就労して収入がある場合には、その収入も加味します。

また、他人のために家事をされている家事従事者と評価できる場合には、賃金センサス(平均賃金)の年収額を基礎収入として請求できる場合もあります。

 

生活費控除率について

高齢者の生活費控除率について、年金収入は通常より高い控除率とされる傾向にあります。

もっとも、控除率を30%とする裁判例もありますので、形式的に考えるのではなく、実質をみて控除率の主張をすべきでしょう。

 

ライプニッツ係数について

通常の場合、ライプニッツ係数は、就労可能年数に対応する係数を使用しますが、年金の場合は、平均余命の年数に対応するライプニッツ係数となります。

 

死亡事故の賠償金は保険金で出ますか?

死亡事故の加害者が任意保険に加入していない場合には、被害者自身が加入していた保険の利用を検討することになります。

 

被害者が人身傷害保険に加入している場合には、人身傷害保険の契約内容に沿って保険金が支払われます。

 

交通事故の死亡慰謝料はいつ受け取ることができますか?

交通事故の死亡慰謝料の受取時期は事案によってことなります。

 

以下では、下記の状況に分けて説明します。

  1. ① 加害者が任意保険会社に加入し示談で解決した場合
  2. ② 加害者が任意保険会社に加入していない場合
  3. ③ 裁判で解決した場合

 

①加害者が任意保険会社に加入し示談で解決した場合

加害者が任意保険会社に加入している場合、被害者の四十九日が終わった後頃から、賠償の交渉を開始します。

交渉に要する時間は事案によって異なりますが、死亡事故の場合、賠償額が高額になる傾向があるため、スムーズにいっても数ヶ月を要します。

交渉がまとまると、保険会社から免責証書(承諾書)が送られてきます。

免責証書にサインをして保険会社に送り返すと、1〜2週間以内には、保険会社から指定の口座に死亡慰謝料を含めた賠償金の入金があります。

 

②加害者が任意保険会社に加入していない場合

加害者が任意保険に加入していない場合、多くのケースでは、まずは自賠責保険に請求を行います。

この請求を被害者請求といいます。

加害者に十分なお金があれば、加害者と交渉して賠償金を支払ってもらえばいいですが、死亡事故の賠償金は数千万円になることもあり、簡単に支払える金額ではありません。

そこで、まずは自賠責保険に被害者請求をするのです。

この場合、被害者請求をしてから、スムーズに行けば2〜3ヶ月程度で自賠責保険から賠償金が振り込まれます。

事故態様や事故と死亡との因果関係に疑義があるような場合には、6ヶ月以上かかることもあります。

自賠責保険からの賠償金で不十分な場合には、残額を加害者本人に請求します。

加害者本人から賠償金を受け取るのは、加害者との間で合意が成立した後です。

金額が高額になることが多いので、分割払いになる可能性もあります。

 

③裁判で解決した場合

裁判になった場合、裁判の中で和解して解決するか、判決による解決になるかで変わってきます。

和解で解決する場合には、和解の条項の中に支払期限が定められます。

多くの場合、和解成立日から1ヶ月程度を支払期限とすることが多いです。

賠償金の実際の振込み時期は、余裕をもって振り込まれることが多いので、和解成立後2週間程度で振り込まれます。

判決での解決となった場合には、判決が確定した後、双方の弁護士で遅延損害金の金額等を確定させ、支払日を決めることが多いです。

 

自賠責で死亡慰謝料はいくらもらえる?

自賠責保険の被害者本人の死亡慰謝料は400万円です。
これに加えて、遺族固有の慰謝料が請求できます。

遺族固有の慰謝料は、請求権のある遺族1名の場合550万円、2名の場合650万円、3名以上の場合750万円となり、遺族の中に被害者の被扶養者がいる場合には、さらに200万円が加算されます。

詳しくは、上記の「交通事故の死亡慰謝料の計算方法」をご参照ください。

 

自賠責保険からの支払いと相続による支払いは別々に行われますか?

賠償金の支払いが認められた場合には、その指定口座にまとめて入金されます。

 

自賠責保険に請求するにあたっては、賠償金の振込口座を指定することになります。

自賠責保険において、調査され、賠償金の支払いが認められた場合には、その指定口座にまとめて入金されます。

その後、相続人の協議によって、各相続人にそれぞれの取り分を分配することになります。

 

交通事故で死亡した場合の慰謝料の最高額はいくらですか?

死亡慰謝料の相場としては、被害者の立場が「一家の支柱」である場合が最も高額であり2800万円とされています。

 

もっとも、この金額はあくまで目安であり、被害者の家族の固有の慰謝料を含め3000万円以上の死亡慰謝料が認められた裁判例もあります。

東京地裁平成20年8月26日判決では、遺族固有の慰謝料も含め合計3400万円が認められています

 

遺族間で慰謝料はどのように分配したらいいですか?

遺言がある場合には、遺言に従って分配することになります。
遺言がない場合には、相続人同士で遺産分割協議をして分配を決めます。

もっとも、交通事故は突然発生するものであり、遺言がないことも多いでしょう。

遺言がない場合には、相続人同士で遺産分割協議をして分配を決めます。

遺産分割協議は、相続人間の話し合いなので、話し合いの結果、どのように分配するかは自由です。

もっとも、法定相続分(民法900条)を参考にして分配することも多いでしょう。

以下は、法定相続分をまとめた表です。

遺族 法定相続分
配偶者と子
  • 配偶者2分の1
  • 子2分の1
配偶者と被害者の親
  • 配偶者3分の2
  • 親3分の1
配偶者と被害者の兄弟姉妹
  • 配偶者4分の3
  • 親4分の1
子が複数いる場合 それぞれ均等分配

 

 

最短で死亡慰謝料を受け取る方法を教えて下さい。

早く賠償金を受け取る方法としては、自賠責保険の仮渡金制度を利用することが考えられます。

 

仮渡金制度とは、事故によって緊急にお金を支出する必要がある場合に当座のお金として支払ってもらう制度です。

被害者が死亡している場合には、290万円が支払われます。

仮渡金は、自賠責保険に必要書類を提出して、問題なくスムーズに手続きが進めば、1週間程度で受取ができます。

なお、仮渡金を受け取るには、加害者側から賠償を受けていないことが条件です。

また、あくまで賠償金の一部の先払いになるので、最終的な賠償金から290万円は差し引かれることになります。

 

死亡慰謝料はいつまで請求できる?

死亡慰謝料も消滅時効が完成すると請求することができなくなります。

 

2017年4月1日以降に発生した交通事故の場合、加害者への賠償金請求権は、事故によって死亡した翌日から5年で消滅時効が完成します。

また、被害者が加入している保険会社への保険金請求は死亡した翌日から3年で消滅時効が完成します。

時効が完成間近な場合には、時効をストップさせるための措置を取る必要があります。

取り急ぎの方法としては、加害者側に支払いの催告をすることが考えられます。

催告した場合には、催告の時から6ヶ月、時効の完成が猶予されますが、催告は1度しか行うことができないので、その間に訴訟提起の準備をする必要があります。

訴訟提起すれば、訴訟手続が終了するまでは時効の完成が猶予されます。

 

死亡慰謝料が減額されることはある?

過失割合がある場合や、素因減額がある場合には、死亡慰謝料が減額されます。

 

過失割合とは、事故が発生したことに対する落ち度の程度です。

例えば、死亡慰謝料が2500万円認められる事案で、被害者に過失割合が10%ある場合には、2500万円 ✕ 10%=250万円が減額されます。

素因減額とは、被害者の疾患などが原因で、損害が発生拡大した場合に認められるものです。

被害者が死亡したことについて、被害者の持病も死亡する原因の一端となっている場合には、素因減額される可能性があるのです。

例えば、死亡慰謝料が2800万円の場合に、素因減額20%が認められた場合には、2800万円 ✕ 20% = 560万円が減額されることになります。

 

示談すると加害者の罪が軽くなる?

事案によっては、裁判所も示談の主張を加味して罪を軽くする(量刑を軽くする)こともあるでしょう。

 

示談して遺族に補償が支払われた場合、加害者としては示談の成立と補償の支払いを刑事裁判で主張して罪を軽くするよう主張してくるでしょう。

事案によっては、裁判所も示談の主張を加味して罪を軽くする(量刑を軽くする)こともあるでしょう。

こうした主張を望まない場合には、事故後、刑事裁判が終わるまでは示談に応じないという選択もありえます。

 

 

当事務所の死亡慰謝料増額事例

事例1

Aさんは、友人の運転する車に乗ってドライブしていたところ、電柱に衝突し、車内前方に投げ出され、脳挫傷等の傷害を負い、事故から2週間で亡くなりました。

保険会社からの提示額は、合計3175万円でしたが、当事務所の弁護士が示談交渉することで最終的に6000万円で解決することができました。

特に死亡慰謝料については、1000万円の提示から2350万円にまで増額することができました。

 

事例2

Tさんは、青信号の横断歩道を横断していたところ、右折してきた車に衝突され、頭を強く打ってしまい、事故から4時間ほどで亡くなってしまいました。

保険会社からは、死亡慰謝料は1400万円が提示されていましたが、当事務所の弁護士が交渉することで最終的には2200万円まで増額することができました。

 

まとめ

死亡慰謝料には相場がありますが、保険会社からの賠償提示は、その相場を下回ることが多く、交渉を要することがとても多いです。

また、慰謝料だけでなく、逸失利益は高額になる傾向があり、計算方法も複雑です。

したがって、適切な補償を受け取るには専門の弁護士に相談、依頼されることをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、弁護士が全て窓口となって対応するため、ご遺族のご負担を大きく減らすことができます。

当事務所では、交通事故事件を日常的に取り扱う弁護士が所属する人身障害部を設けています。

交通事故相談に関しては、相談対応から事件処理まで全て人身障害部の弁護士が対応していますので、ご安心してご相談ください。

また、電話相談、オンライン相談(LINE、Meet、FaceTime、Zoom)を利用して全国の交通事故相談に対応していますので、どの地域の方でもお気軽にお問い合わせください。

 

 

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