上肢・下肢の三大関節の後遺障害は?

執筆者:弁護士 鈴木啓太 (弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)

3大関節後遺障害

交通事故によって、上肢や下肢の関節が動かしづらくなった場合には、機能障害として後遺障害に認定される可能性があります。

ここでは、上肢・下肢の三大関節の後遺障害について解説します。

 

三大関節とは

上肢・下肢にそれぞれ3大関節といわれる箇所があります。

 

 

機能障害の等級

上肢3大関節の機能障害の等級

1級4号 両上肢の用を全廃したもの
5級6号 1上肢の用を全廃したもの
6級6号 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級6号 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級10号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

下肢3大関節の機能障害の等級

1級6号 両下肢の用を全廃したもの
5級7号 1下肢の用を全廃したもの
6級7号 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

参考:自賠責保険(共済)における後遺障害の等級と保険金額|指定紛争処理機関 一般財団法人 自賠責保険・共済紛争処理機構

「用を全廃した」とは「用を全廃した」とは、上肢または下肢の三大関節のすべての関節が強直し、手または足指の全部が用を廃することをいいます。

「強直」とは、関節がまったく動かなくなることです。
「強直」は「用を廃する」と同じ意味です。

「用を廃した」とは「用を廃した」とは、以下のような場合をいいます。

  1. ① 関節が強直またはこれに近い状態にあるもの
    「これに近い状態」とは、自動(自分で動かすこと)で健側(ケガをしていない側)の可動域の10%程度以下に制限された状態です。
  2. ② 関節の完全弛緩性麻痺又はこれに近い状態にあるもの
  3. 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側(ケガをしていない側)の1/2以下の可動域角度に制限されているもの
「著しい運動障害を残す」とは  怪我をした腕や脚の関節運動が健側(ケガをしていない側)の1/2以下の可動域角度に制限されている場合のことです。
「機能に障害を残す」とは  怪我をした腕や脚の関節運動が健側(ケガをしていない側)の3/4以下の可動域角度に制限されている場合のことです。

 

 

可動域の測定方法

可動域の測定の対象となる運動には、主要運動と参考運動があります。

原則として、主要運動の可動域によって等級の認定がされますが、主要運動では、わずかに等級の認定には至らない場合などには、参考運動も踏まえて等級の認定がなされます。

また、可動域を測る方法として、自動と他動があります。

自動とは、自らの力でどこまで可動するかを測ります。

他動とは、他者の力で動かしてもらいどこまで動くかを測定します。

原則として、他動の可動域により後遺障害等級が認定されますが、上肢や下肢が麻痺しているような場合には、自動を参考にして等級認定されます。

上肢の可動域の測定方法

肩関節

肩関節の主要運動は、屈曲、外転・内転です。

参考運動は、伸展、外旋・内旋です。

屈曲は、手を下ろして体につけている状態から前方に手を挙げる動作です。

伸展は、手を下ろして体につけている状態から後方に手を挙げる動作です。

外転は、手を下ろしている状態から、外側に手を挙げる動作です。

内転は、手を下ろしている状態から、体の方に手を動かす動作です。

外旋は、肘を体につけたまま前方に90度に曲げて外側に動かす動作です。

内旋は、肘を体につけたまま前方に90度に曲げて内側に動かす動作です。

肘関節

肘関節の主要運動は、屈曲・伸展です。

参考運動はありません。

屈曲は、手を下ろした状態から、肘関節を前方に曲げる動作です。

伸展は、手を下ろした状態から、肘関節を後方に曲げる動作です。

手関節

手関節の主要運動は、屈曲・伸展です。

参考運動は、橈屈・尺屈です。

屈曲は、手関節を伸ばしてして下に曲げる動作です。

伸展は、手関節を伸ばして上に曲げる動作です。

橈屈は、手関節を伸ばして、左側に手関節を曲げる動作です。

尺屈は、手関節を伸ばして、左側に手関節を曲げる動作です。

下肢の可動域測定方法

股関節

股関節の主要運動は、屈曲・伸展、外転・内転です。

参考運動は、外旋・内旋です。

屈曲は、仰向けになって、股関節を体側に動かします。

伸展は、うつ伏せになって、股関節を上に動かします。

外転は、仰向けになり、片足の膝関節を曲げて、伸ばしている方の足を外側に開く動作です。

内転は、仰向けになり、片足の膝関節を曲げて、伸ばしている方の足を内側に動かす動作です。

外旋は、仰向けになり、片方の膝関節を90度に曲げ、その膝を中心に外側に動かす動作です。

内旋は、仰向けになり、片方の膝関節を90度に曲げ、その膝を中心に内側に動かす動作です。

 

膝関節

膝関節の主要運動は、屈曲・伸展です。

参考運動はありません

屈曲は、太もも部分を軸に膝関節を太ももの方向に動かす動作です。

伸展は、太ももを軸に膝関節を真っ直ぐにする動作です。

足関節

足関節の主要運動は、屈曲と伸展です。

参考運動はありません。

屈曲は、足関節を外側(体と逆側)に動かす動作です。

伸展は、足関節を体側に動かす動作です。

 

 

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