交通事故の過失割合の修正要素って何ですか?
交通事故の過失割合の修正要素とは、別冊判例タイムズの『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』などの基本過失割合を変更する加算要素や減算要素です。
過失割合とは
過失割合とは、交通事故の当事者同士に、それぞれどの程度の過失があるかを示すものです。
損害賠償額は、過失割合に応じて過失相殺がなされ、最終的な金額を算出します。
例えば、事故により被害者に生じた損害が1000万円だったとしても、自己に過失が2割あれば、800万円しか加害者に請求できないことになります。
過失の修正要素の必要性
保険会社では、実際に交通事故の裁判例での事故を集積した別冊判例タイムズの『民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』(東京地裁民事交通訴訟研究会編)という本を使い、交通事故の当事者間の過失割合を判断しています。
この本では、道路交通法等の法令上の優先関係や事故態様によって、過失割合を類型化しています。
具体的な基本過失割合
- 左方車優先
- 広路車優先
- 非停止規制車優先
- 優先道路走行車優先
- 信号の色
- 追突事故
- 追越し
- 進路変更
- 転回
- 対向車のセンターオーバー
- ドア開放事故
上記のように基本過失割合が決められています。
しかし、事故の一方当事者の酒酔い運転など、交通事故特有の事実などがあるため、基本過失割合を修正しなければいけない場合があります。
そこで過失の修正要素を使い基本過失割合を修正します。
著しい過失と重過失
修正要素のうち代表的な例として「著しい過失」と「重過失」があります。
どちらも基本過失より程度の重い過失です。
「著しい過失」と通常想定されている程度を超えるような過失のこと、「重過失」とは故意に比肩する重大な過失のことをいいます。
自動車、単車に「著しい過失」と「重過失」があると認められると原則として、「著しい過失」が10%、「重過失」が20%の基本過失を加算または減算修正します。
自動車の場合
- 脇見運転等の著しい前方不注視(道交法70条)
- 著しいハンドル・ブレーキの操作不適切(道交法70条)
- 携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用、画像を注視しながらの運転(道交法71条5号の5)
- おおむね時速15キロメートル以上30キロメートル未満の速度違反(但し高速道路を除く。)(道交法125条)
- 酒気帯び運転(道交法65条1項)
- 酒酔い運転(道交法65条1項、道交法117条の2第1号)
- 居眠り運転
- 無免許運転(道交法117条の2の2第1号)
- おおむね時速30キロメートル以上の速度違反(但し、高速道路を除く。)
- 過労、病気及び薬物の影響その他の理由により正常な運転ができないおそれがある場合(道交法66条)
単車(自動二輪車、原動機付自転車)
- ヘルメットの不着用(道交法71条の4)
- 高速道路におけるヘルメット不着用(自動二輪車)
- 殊更に危険な体勢での運転
歩行者の場合
修正要素として「著しい過失」「重過失」はありません。
児童・幼児・高齢者・身体障害者等
歩行者が児童・幼児・高齢者・身体障害者等の場合、基本過失割合が修正されます。
- 児童とは、6歳以上13歳未満の者
- 幼児とは、6歳未満の者
- 高齢者とは、おおむね65歳以上の者
- 身体障害者等とは
- 身体障害者用の車いすを通行させている者
- 杖を携え、又は盲導犬を連れている目が見えない者
- 杖を携えている耳が聞こえない者
- 道路の通行に著しい支障がある程度の肢体不自由、視覚障害、聴覚障害、平衡機能障害のある者で杖を携えている者
修正される過失割合は、歩行者が児童・高齢者の場合でおおむね5%〜10%、幼児・身体障害者等の場合でおおむね5%〜20%、歩行者に有利に減算修正します。
集団横断・通行
歩行者が集団で道路を横断・通行していた場合も基本過失割合が修正されます。
集団登下校が典型例です。
集団とは、数人が外形的に見て同様の行動をしていれば足りるので、全員が互いに意思を通じて横断・通行している必要はありません。
修正される過失割合は、集団横断・通行していた歩行者に、おおむね5%〜10%有利に減算修正します。
この他にも、事故態様等によって過失の修正要素は変わってきます。
また、過失割合が類型化されていない複雑な事故も存在します。