警察へ人身事故の届け出なしでも、自賠責保険で治療を受けられる?
警察へ人身事故の届け出をしていなくても、自賠責保険で治療を受けることができます。
ただし、「人身事故証明書入手不能理由書」を提出することになります。
もっとも、人身事故にしなかった場合、事故が軽微と判断されるなどして長期間の治療は認められないケースがあります。
そのため、けががある場合には、警察に診断書を提出しておくのが妥当です。
「人身事故証明書入手不能理由書」とは
「人身事故証明書入手不能理由書」とは、人身事故扱いの交通事故証明書を入手できなかった場合、その理由を書き、提出する書類です。
自賠責保険は、車の修理代などの物損の補償はなく、あくまで人がけがをしたことに対する補償を行います。
そのため、自賠責保険は、原則として交通事故証明書の記載が「人身事故」になっているものを対象としています。
人身事故扱いの交通事故証明書は、医師の発行する診断書を警察へ提出していないと発行されません。
人身事故でない交通事故として取り扱われると、「物件事故」として記載がされます。
このとき自賠責保険は、どうして人身事故にしていなかったのかを確認した上で、自賠責保険による支払いを行うかどうかを決定することになります。
この確認書類が、人身事故証明書入手不能理由書です。
人身事故証明書入手不能理由書へ記入する事項
記載する事項は、「交通事故証明書」と重なる部分がほとんどです。
- 当事者の欄
・氏名
・住所
・生年月日
・車両番号
・自賠責保険番号
・事故時状態(運転か歩行か) - 事故の発生日時
- 事故の発生場所
- 届け出警察署、届け出日時
- 人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない理由
人身事故扱いの交通事故証明書を入手できない理由の記入内容
ここには、人身事故の処理をしなかった理由を記載しなければなりません。
例えば、「職場の駐車場や大学構内での交通事故だったため、交通事故証明書が発行されなかった」というようなものです。
「診断書は取得していたが、提出するのが遅れ、受け付けてくれなかった」ということもあり得ます。
警察も事故処理を速やかに行わなければならないため、交通事故が発生してから1か月も経過すると、診断書の提出を認めてくれないということもあります。
「事故当初は大丈夫だと思っていたが、しばらくして痛みが出てきたため、人身事故の処理は行わなかった」というケースもあるでしょう。
この場合には、自賠責保険が症状と交通事故との因果関係を認めず、補償をしないという判断や補償する治療期間を短く認定したりという可能性が出てきます。
また、物件事故のままで後遺障害の申請をしても認められるケースはほとんどないでしょう。
このように、人身事故の処理をしていない場合に、自賠責保険がけがの治療費を支払うことはありますが、例外的な対応だと考えていただいた方がよいでしょう。
被害者の方の中には、相手方の保険会社(任意保険会社)から、「けがの治療は保険会社が対応しますので、人身事故にしなくても大丈夫です。」という言葉を信頼して、診断書を警察署に提出しなかったというケースもあります。
しかしながら、被害者の方が納得いく期間、治療費の補償をしてもらえず、治療の打ち切りにあってしまうこともよくあります。
このときに、人身事故の処理をしておかないと、十分な補償を受けることができなくなるリスクもあります。
したがって、けががあった場合には、病院で診断書をもらって、警察に出しておくのが無難です。
まとめ
したがって、警察へ事故の発生を届けないことは、道路交通法(72条1項)に違反することで、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法119条1項)と定められています。
警察に届出さえもしていない場合、自賠責の補償を受けることが難しくなります。
したがって、必ず警察への届出はしておくべきでしょう。
交通事故にあった際に押さえておきたい、交通事故発生から解決までの流れはこちらをご覧ください。