高速道路のETC専用車線での追突事故。過失割合は何対何?
基本過失として追突された先行車0:追突した後続車100になります。
先行車に過失の修正要素がある場合は、基本過失割合を修正します。
ETC車線の通行方法
ETCは、高速道路の渋滞緩和に大きく役立っており、一般にも普及しているシステムです。
大変便利なETCですが、ゲートが開かないため停車した車と後続車の追突事故も発生するようになりました。
ETCを通行するにあたっては、高速道路会社の定めた「高速道路営業規則」第9条による「ETCシステム利用規程」第8条1項による通行方法を守ることが大切です。
主に以下のようなルールがあります。
基本過失割合の基準となる本には掲載されていない事例なので裁判例を紹介します。
ETCでの追突事故の過失割合
過失割合を検討するにあたっては、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」(東京地裁民事交通訴訟研究会 編)を参考にすることになりますが、「ETCでの追突事故」という類型は同書籍には掲載されていません。
そこで、過去の裁判例を踏まえて説明します。
判例 横浜地判H19.9.28
先行車がETC車線内で徐行していたところ、開閉棒が開かないため急ブレーキを踏んだところ、後続車に追突された事故。
【 結論 】
先行車0:後続車100
【 理由 】
「ETCシステム利用規程」第8条1項には、『ETC車線は徐行して通行すること』、『前車が停止することがあるので、必要な車間距離を保持すること』とされており、ETCシステム利用規程実施細則4条に『ETC車線内で前車が停止した場合、開閉棒が開かないもしくは閉じる場合その他通行するに当たり安全が確保できない事象が生じた場合であっても、前車または開閉棒その他施設に衝突しないよう安全に停止することができるような速度で通行』すべきことが定められている」と判示しました。
裁判所は、先行車が、開閉棒が開かず急ブレーキを掛けたとしても、後続車は、安全に停止できるような速度で通行すべきというETCシステム利用規程実施細則の規定に沿って判断しています。
こうした規定に違反して追突してしまった後続車に100%の過失があると判断しているのです。
判例 名古屋地判H19.4.20
先行車のETC車載器が断線し、ETC非対応車と認識され開閉棒が開かず、急停止したところ、後続車が追突した事故。
【 結論 】
先行車0:後続車100
【 理由 】
先行車のETCの不具合については道路運送車両法47条の点検基準にETCは掲げてられていないことから、先行車の過失を認めませんでした。
さらに、「先行車に後続してETCレーンに進入する車両の運転手は、何らかの不具合によってETCゲートが開かず、そのため先行車が停止を余儀なくされる事態もあり得ることを予見した上で、減速および車間距離保持をすべき義務があるというべきである」。後続車には「減速義務違反又は車間距離保持義務違反の過失を認めるのが相当である」としました。
過失の修正要素
上記のように、ETCでの追突事故が発生した場合には、追突した後続車に100%の過失が認められることが多いでしょう。
しかし、先行車の制動灯が故障していたり、先行者の運転手が酒気帯び運転をしているような場合には、著しい過失として過失割合が修正される可能性があります。
また、酒酔い運転などの重過失がある場合にも過失は修正される可能性があります。