交通事故の同乗者は治療費を請求できる?弁護士が解説
交通事故の同乗者は、ケガをした場合には治療費を請求することができます。
もっとも、運転手が飲酒運転でそのことを知って同乗していたような場合には、賠償額が減額される可能性があります。
この記事では、同乗者の賠償額が減額されるケースについて解説していますので、参考にされてください。
同乗者は治療費を請求できる
運転手は、車に同乗者が乗っている場合には、同乗者にケガをさせないように運転する義務があります。
運転手の過失によって、事故が発生し、同乗者がケガをした場合には、運転手は同乗者に対して不法行為責任(民法709条)を負うことになり、損害賠償をしなければならなくなるのです。
他方で、運転手が飲酒運転をしているなど、事故を起こしてしまう危険性があることを知った上で、同乗している場合には、賠償額が減額されてしまう可能性があります。
以下では、賠償額の減額が否定された事例と肯定された事例を紹介します。
賠償額の減額が否定された事例
4人で休憩をとりながら深夜ドライブをしていた際に発生した事故について、裁判所は賠償額の減額を認めませんでした。
その理由としては、被害者が事故発生の危険性を増大させていないこと、同乗者に事故が発生したことについて非がないこと等があげられています。
賠償額の減額が肯定された事例
飲酒運転の場合
運転手が飲酒していることを知りながら同乗した場合や、運転手と被害者が一緒に飲酒をした場合には、減額される傾向にあります。
無免許運転の場合
16歳の少年Aが自ら所有するバイクを15歳の少年B(無免許)に運転させ、少年Aが後部座席に同乗していたところ、事故を起こした事例
少年Aが少年Bの無免許であることを認識しながら、バイクを運転するよう積極的に誘い同乗したことを理由に、賠償額の減額を認めました。
オートマ車限定免許しか有していない者が、同乗者を乗せた上でマニュアル車を運転し事故起こし、同乗者が死亡した事例
同乗者は、運転者がマニュアル車の運転免許を有していないことを知っていたことに加え、運転を制止せず、車両から降りようとした形跡がないことから、賠償額の減額を認めました。
運転者の反規範的な運転態度
暴走族の集団暴走行為、単にスリルを楽しんだり、パトカーの追跡から逃れるため信号無視やスピード違反を繰り返したりすることを承知で同乗した場合には賠償額が減額される傾向にあります。
また、事故前の同乗の機会に運転者の乱暴な運転を経験していたにもかかわらず、当該運転者の運転する車両に同乗した場合にも賠償額は減額される傾向にあります。
疲労運転
高校時代の友人に頼まれて、友人とその仲間をスキー場に案内した者が、その帰途に前夜の睡眠不足とスキーの疲れから居眠り運転し、対向車との衝突により同乗者を即死させた事例
前夜友人らを迎え、当日は往路運転、スキー後も帰路を運転していた運転者の立場に対する周囲の配慮が不足していたとして、賠償額の減額を認めました。
未熟運転
免許を取得したばかりの初心者であると知りながら、無理な運転をさせた場合に賠償額が減額されることがあります。
シートベルト不着用・ヘルメット不着用
シートベルトを着用せず同乗、単車でヘルメット着用せず同乗した場合にも賠償額が減額される可能性があります。
箱乗り
同乗者が車両の窓から上半身を乗り出したり、窓枠に腰掛けたりする行為をしているような場合も賠償額が減額されることがあります。
減額される割合
裁判例で認められる減額の程度は、事案によって異なりますが、概ね10%〜25%程度です。
同乗者が車体右後部の窓枠から身を乗り出して乗車したため、車両が交差点を時速40キロメートルで左折しようとした際に右に横転して同乗者が死亡した事例につき、同乗者に25%の過失を認めました。
このように同乗者でも治療費などの賠償金が減額されることがあります。
まとめ
原則として同乗者は、同乗していただけでは賠償額を減額されることはありません。
しかし、加害者が飲酒運転や無免許運転などを知っている場合には、事故を起こしてしまう危険性について認識しているため、賠償額が減額される可能性が出てきます。
賠償額の減額の可否や程度については、裁判例等をふまえてしっかりと交渉することが大切です。
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