右直事故の過失割合とは?状況別にわかりやすく解説

執筆者:弁護士 西村裕一 (弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士)

右直事故の過失割合は、信号のある交差点の場合、基本的には直進車20:右折車80となります(自動車同士の事故の場合)。

ただ、信号機の有無、信号の色などによって事故類型が変わってくると、基本となる過失割合も様々に変わってきます。

さらに、速度超過、右折時の徐行なし、右折時の合図なし、早回り右折・大回り右折など、過失割合を修正する要素(修正要素)もあります。

右直事故で過失割合を決める際には、信号の色、事故時の状況などが過失割合に大きな影響を及ぼすため、これらの点について双方の主張が食い違い、争いになることも少なくありません。

今回は、自動車対自動車、自動車対バイクの右直事故についてさまざまなケースでの過失割合をご紹介するとともに、右直事故の過失割合に影響を及ぼす修正要素、右直事故の過失割合についての注意点についても解説していきます。

右直事故の過失割合とは?

右直事故の過失割合は、信号機のある交差点では、基本的に、直進車20:右折車80となります(自動車同士の事故で、双方とも青信号で進入した場合)。

交差点では、道路交通法37条により右折する車よりも直進する車が優先されるため、右折車の過失割合が大きく増やされているのです。

道路交通法
第三十七条 車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。

出典:道路交通法 | e-Gov 法令検索

一方、直進車にも、前方に注意して事故を避ける義務(前方注意義務)がありますので、一定の過失はあるとして、2割の過失が認められています。

ただ、上の過失割合はあくまで基本となる過失割合(基本過失割合)であり、修正要素が認められれば、過失割合が変更されることもあります。

また、信号の色が違えば、基本過失割合も変わってきます。

右直事故の過失割合の修正要素については、右直事故の過失割合が修正されるケースの箇所で詳しく解説します。

 

右直事故とは?

右直事故とは、右折途中の車などが、対面方向から直進してきた車などと接触する事故のことをいいます。

右直事故には、交差点で起こるものだけでなく、路外の施設などに入るために右折している車などと対向方向から直進してくる車などが接触することにより起こるものもあります。

 

右直事故は信号の変わり目に発生しやすい!?

右直事故は、信号の変わり目に発生することも多いようです。

信号の変わり目には、

  • 交差点内で右折待ちをしていた車などが焦って右折する
  • 赤信号になる前に信号を渡ろうとした直進車が焦って進入してくる

といったことが増えるため、右直事故も起こりやすくなると考えられます。

右折の青色矢印信号が出る交差点でも、右直事故が起こることが少なくありません。

通常の青色信号から右折の青色矢印信号に変わるまでにはあまり時間差がもうけられていないことが多く、信号の変わり目に急いで進入してきた直進車と、青色矢印が出たと思って右折を開始した右折車が衝突してしまう事故が起こりやすいのです。

 

直進してきたバイクとの右直事故も起こりやすい

他に起こりやすい右直事故には、直進してきたバイクと右折車が衝突する右直事故があります。

右折車の運転者には、バイクが周辺の自動車よりも小さいことから、

  • バイクまでの距離が実際よりも遠いように感じる
  • バイクのスピードを実際よりも遅めに見積もる

という錯覚に陥る傾向があります。

そのため、右折車の運転手が「バイクがこちらに来るまでにはまだ時間があるはずだから、右折してしまおう」と考えて右折をしてしまい、右直事故を起こしてしまうのです。

右折をする際には、焦ることなく、直進してくるバイクの動静によく注意し、右直事故を起こさないようにしましょう。

ほかにも、対向車両がパッシングなどで「お先にどうぞ」と合図してくれたために急いで右折しようとした車が、対向車両の陰から直進してきたバイクと衝突してしまう「サンキュー事故」も起こっており、注意が必要です。

サンキュー事故の過失割合などに関する詳しい説明は、以下のページをご覧ください。

 

過失割合とは?

交通事故の場合、事故当事者の両方ともが事故の発生について過失がある場合が多いです。

その場合、双方の落ち度の割合に従って、損害賠償額を減額し、調整します。

これを過失相殺といいます。

過失相殺の基準となる「双方の落ち度の割合」は、過失割合といわれます。

過失割合は、「35:65」「2:8」といった比の形で表されます。

交通事故の損害賠償額は被害者1人当たり数百万円~1億円以上となることもありますので、過失割合が1割違うだけで、賠償金額が数十万円~1千万円以上変わってくることもあります。

示談交渉をする場合、過失割合は当事者間で話し合って決めることになりますが、上でご説明したとおり、少し過失割合が変わるだけで賠償額が大きく変わるため、過失割合に関する交渉は厳しく難しいものになることが少なくありません。

過失割合については、以下のページでも詳しく解説しています。

 

 

自動車同士の右直事故の過失割合

自動車同士の右直事故の過失割合は、事故の起こった場所、信号機の状況などに応じて次のようになっています(東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38号))。

 

信号機の設置された交差点

右折時に双方青信号だった場合

信号機の設置された交差点で、直進車・右折車ともに青信号で交差点に進入した場合、基本の過失割合は、直進車20:右折車80となります。

右折時に双方青信号だった場合

右折時に黄信号だった場合

① 直進車は黄信号で進入した一方、右折車は青信号で進入し、黄信号で右折した場合には直進車70:右折車30の過失割合となります。

この場合、右折車の方が先に青信号で進入しているため、後から、原則として進行が禁止されている黄信号で進入してきた直進車の過失割合が大幅に加重されています。

右折時に黄信号だった場合

直進車も右折車もともに黄信号で進入した場合は、過失割合は直進車40:右折車60となります。

黄信号では原則として進行が禁止されているため、黄信号で交差点に進入した直進車の過失が加重されていると考えられます。

直進車も右折車もともに黄信号で進入した場合

 

右折時に一方又は双方が赤信号だった場合

① 直進車が赤信号で進入し、右折車が青色矢印信号で右折した場合は、過失割合は直進車100:右折車0となります。

直進車のみが信号違反をしているため、上のような過失割合になっていると考えられます。直進車が赤信号で進入し、右折車が青色矢印信号で右折した場合

② 直進車が赤信号で進入し、右折車が青信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車90:右折車10となります。直進車が赤信号で進入し、右折車が青信号で進入、赤信号で右折した場合

③ 直進車が赤信号で進入し、右折車が黄信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車70:右折車30となります。直進車が赤信号で進入し、右折車が黄信号で進入、赤信号で右折した場合

④ 直進車、右折車ともに赤信号で進入した場合、過失割合は直進車50:右折車50となります。

直進車、右折車ともに赤信号で進入した場合

 

信号機のない交差点

信号のない交差点での右直事故では、過失割合は、直進車20:右折車80となります。

信号機のない交差点

 

路外に出るために右折する場合

路外に出るために右折して対向方向から直進してきた自動車と事故になった場合、直進車10:右折車90の過失割合となります。

路外に出るために右折する場合

 

 

自動車とバイクの右直事故の過失割合

自動車とバイクの事故の場合、自動車対自動車の事故の場合と比べ、バイク側の過失割合が軽減される傾向があります。

バイクは自動車と比べると交通弱者に当たるため、車の運転者にはバイクに注意・配慮することが求められ、過失割合が加重されていると考えられます(単車修正)。

自動車とバイクの右直事故の過失割合は、次のようになっています。

 

信号機の設置された交差点

右折時に双方青信号だった場合

① 直進車(バイク)・右折車(自動車)ともに青信号で交差点に進入した場合、過失割合は直進車(バイク)15:右折車(自動車)85となります。

直進車(バイク)・右折車(自動車)ともに青信号で交差点に進入した場合

② 直進車(自動車)・右折車(バイク)ともに青信号で交差点に進入した場合、過失割合は直進車(自動車)30:右折車(バイク)70となります。

 

一方又は双方が黄信号で進入した場合

① 直進車(バイク)は黄信号で進入した一方、右折車(自動車)は青信号で進入し、黄信号で右折した場合には、直進車(バイク)60:右折車(自動車)40の過失割合となります。直進車(バイク)は黄信号で進入した一方、右折車(自動車)は青信号で進入し、黄信号で右折した場合

② 直進車(自動車)は黄信号で進入した一方、右折車(バイク)は青信号で進入し、黄信号で右折した場合には、直進車(自動車)75:右折車(バイク)25の過失割合となります。

③ 直進車(バイク)も右折車(自動車)もともに黄信号で進入した場合は、過失割合は直進車(バイク)30:右折車(自動車)70となります。

直進車(バイク)も右折車(自動車)もともに黄信号で進入した場合

④ 直進車(自動車)も右折車(バイク)もともに黄信号で進入した場合は、過失割合は直進車(自動車)50:右折車(バイク)50となります。

直進車(自動車)も右折車(バイク)もともに黄信号で進入した場合は

 

右折時に一方又は双方が赤信号だった場合

① 直進車(バイク)が赤信号で進入し、右折車(自動車)が青色矢印信号で右折した場合は、過失割合は直進車100:右折車0となります。

直進車(バイク)が赤信号で進入し、右折車(自動車)が青色矢印信号で右折した場合

② 直進車(自動車)が赤信号で進入し、右折車(バイク)が青色矢印信号で右折した場合は、過失割合は直進車(自動車)100:右折車(バイク)0となります。

③ 直進車(バイク)が赤信号で進入し、右折車(自動車)が青信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車(バイク)80:右折車(自動車)20となります。直進車(バイク)が赤信号で進入し、右折車(自動車)が青信号で進入、赤信号で右折した場合

④ 直進車(自動車)が赤信号で進入し、右折車(バイク)が青信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車(自動車)90:右折車(バイク)10となります。

⑤ 直進車(バイク)が赤色で進入し、右折車(自動車)が黄信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車(バイク)60:右折車(自動車)40となります。直進車(バイク)が赤色で進入し、右折車(自動車)が黄信号で進入、赤信号で右折した場合

⑥ 直進車(自動車)が赤色で進入し、右折車(バイク)が黄信号で進入、赤信号で右折した場合は、過失割合は直進車(自動車)80:右折車(バイク)20となります。

⑦ 直進車(バイク)、右折車(自動車)ともに赤信号で進入した場合、過失割合は直進車(バイク)40:右折車(自動車)60となります。直進車(バイク)、右折車(自動車)ともに赤信号で進入した場合

⑧ 直進車(自動車)、右折車(バイク)ともに赤信号で進入した場合、過失割合は直進車(自動車)60:右折車(バイク)40となります。

 

信号機のない交差点

① バイクが直進車、自動車が右折車の場合、直進車(バイク)15:右折車(自動車)85の過失割合となります。

バイクが直進車、自動車が右折車の場合

② 自動車が直進車、バイクが右折車の場合、直進車(自動車)30:右折車(バイク)70の過失割合となります。

 

路外に出るために右折する場合

自動車が路外に出るために右折して、直進してきたバイクと事故を起こした場合、直進車(バイク)10:右折車(自動車)90の過失割合となります。

自動車が路外に出るために右折して、直進してきたバイクと事故を起こした場合

 

 

右直事故の過失割合が修正されるケース

上で解説した過失割合は、あくまで基本となる過失割合です。

個別のケースにおいて過失割合を修正すべき要素(修正要素)があれば、基本過失割合が修正されます。

右直事故の過失割合の修正要素となるものには、以下のようなものがあります(ただし、信号や道路の状況によっては、以下に挙げる事情が修正要素とならない場合もあります。)。

交通事故の過失割合の修正要素については、以下のページでも説明しています。

 

右折車が徐行していない

交差点で右折する際には徐行しなければならないと義務付けられています(道路交通法34条2項)ので、これを怠ると、右折車の過失割合が加重されます。

道路交通法(左折又は右折)
第三十四条 ・・・
2自動車、一般原動機付自転車又はトロリーバスは、右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を徐行しなければならない。

 

右折禁止違反

右折が禁止されている場所で右折をした場合、右折車の過失割合が加重されます。

 

直近右折

直近右折とは、右折車が直進車の至近距離で右折することをいいます。

この場合、直進車にとって事故を回避することが難しい状況であるにもかかわらず右折を行った右折車に落ち度があるとして、右折車の過失割合が加重されます。

 

早回り右折・大回り右折

早回り右折は、交差点の中央まで進まずに右折を行うことをいいます。

大回り右折は、あらかじめ道路の中央(右側)に寄ることなく右折することをいいます。

こうした右折方法は、「右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、かつ、交差点の中心の直近の内側・・・を徐行しなければならない。」と定めた道路交通法34条2項に違反しています。

そのため、早回り右折や大回り右折があった場合は、右折車側の過失割合が加重されます。

 

ウィンカーを出していない

右折をする際には、ウィンカーにより合図をしなければなりません(道路交通法53条1項)。

この合図を出さずに右折をすると、右折車に違反があるため、右折車の過失割合が加重されます。

道路交通法(合図)
第五十三条 車両(自転車以外の軽車両を除く。次項及び第四項において同じ。)の運転者は、左折し、右折し、転回し、徐行し、停止し、後退し、又は同一方向に進行しながら進路を変えるときは、手、方向指示器又は灯火により合図をし、かつ、これらの行為が終わるまで当該合図を継続しなければならない。

 

著しい過失・重過失

一方の運転者に著しい過失・重過失があると、その運転者の過失割合が加重されます。

著しい過失は、通常想定されている程度を超える過失のことをいいます。

著しい過失には、たとえば以下のようなものがあります。

  • 著しい前方不注意(わき見運転など)
  • ハンドル・ブレーキの操作が著しく不適切であったこと
  • 携帯電話の使用、画面の注視をしながらの運転
  • ナビの操作・画面の注視をしながらの運転
  • 酒気帯び運転
  • 一般道でヘルメットを装着していない(バイクの場合)

重過失は、著しい過失よりも大きな過失です。

重過失には、たとえば以下のようなものがあります。

  • 酒酔い運転
  • 居眠り運転
  • 無免許運転
  • 薬物を使用しての運転
  • 高速道路でヘルメットを装着していない(バイクの場合)

交通事故の著しい過失・重過失については、以下のページで詳しく解説しています。

 

直進車の速度違反

直進車に速度違反があった場合、直進車の過失割合が加重されます。

加重される過失割合は、15キロ以上30キロ未満の場合と30キロ以上の場合で異なります。

30キロ以上の速度超過の場合、15キロ以上30キロ未満の場合に比べ、加重される過失割合が2倍となっていることがほとんどです。

 

右折車が既に右折した後の事故

右折車が既に右折を終えた後になって直進車が接触してきたという場合、直進車の過失割合が加重されます。

右折車が右折を既に終えているということは、直進車から右折車の動きを確認し、対応するための時間的余裕が十分にあったと考えられるため、それでも事故を回避できなかった直進車の過失割合が通常の場合より大きいと考えられているのです。

ただ、「右折車が既に右折を終えていた」と認められるかどうかは争いになることが多く、ドライブレコーダーなどの記録、双方の車の損傷個所、ブレーキ痕などの状況などを資料として判断していくことになります。

 

道路交通法50条違反の交差点進入

道路交通法50条は、前方の車両の状況により、

  • 交差点に入ると交差点内で停止することになり、交差道路の通行の妨害となるおそれがあるとき
  • 横断歩道、自転車横断帯、踏切又は道路標識によって区画された部分に入って停止することとなるおそれがある場合

には、交差点や横断歩道などの部分に入ってはならないとしています。

道路交通法(交差点等への進入禁止)
第五十条 交通整理の行なわれている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点(交差点内に道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線をこえた部分。以下この項において同じ。)に入つた場合においては当該交差点内で停止することとなり、よつて交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入つてはならない。
2 車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、横断歩道、自転車横断帯、踏切又は道路標示によつて区画された部分に入つた場合においてはその部分で停止することとなるおそれがあるときは、これらの部分に入つてはならない。

直進車がこの規定に反して交差点内に進入し、右折車と接触して右直事故を起こした場合、直進車の側の過失が加重されます。

当事務所の取扱い事例で、右直事故の過失割合を修正することができたケースを以下のページでご紹介しています。

どうぞご参照ください。

 

 

右直事故の過失割合が10対0になるケース

右直事故の基本過失割合が10対0になるのは、直進車側の信号が赤であるにもかかわらず直進車が交差点に進入し、右折車が青色矢印信号で右折したケース(直進車10:右折車0)です。

この場合、右折車側は青色矢印信号に従って適切に右折しているにもかかわらず、直進車側は信号無視をしているので、右折車の過失割合が0となり、直進車の過失割合が10となるのです。

直進車がバイクで右折車が自動車の場合、直進車が自動車で右折車がバイクの場合でも、基本過失割合は、直進車10:右折車0となります。

ほかにも、過失割合の修正要素が認められることにより、一方の過失割合が0になることもあります。

一方の過失がゼロとなる交通事故のことを、もらい事故といいます。

もらい事故の場合、過失がない当事者は任意保険会社の示談代行サービスを使うことができず、自分で示談交渉しなければなりません。

交通事故の示談交渉を被害者自身ですることは、負担も大きく難しいことですので、もらい事故の被害に遭ってしまったら、なるべく早く弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

もらい事故への対処法については、以下のページでも詳しく解説しています。

 

 

右直事故の過失割合が9対1になるケース

自動車対自動車、自動車対バイクの右直事故で、基本過失割合が9対1になるケースには、以下のものがあります。

  • 自動車同士の事故で、右折車が青信号で進入し、赤信号で右折したところ、赤信号で進入してきた直進車と接触した場合(直進車9:右折車1)
  • 右折車(バイク)が青信号で進入し、赤信号で右折したところ、赤信号で直進してきた直進車(自動車)と接触した場合(直進車(自動車)9:右折車(バイク)1)
  • 自動車が路外に出ようとして右折したところ、直進してきた自動車又はバイクと接触した場合(直進車(自動車又はバイク)1:右折車(自動車)9)

ほかにも、過失割合の修正要素が認められることにより、過失割合が9対1になることもあります。

 

 

右直事故の過失割合の7つの注意点

1 過失割合の交渉は難航するおそれがある

交通事故では示談交渉で損害賠償額などを決めることが多いです。

示談交渉で決着をつける場合、過失割合も、当事者間で話し合って決めることになります。

過失割合については、実務上、東京地裁民事交通訴訟研究会編「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」(別冊判例タイムズ38号)の記載を基に話し合い、決めていきます。

ところが、こうした基準があるにもかかわらず、加害者と被害者の間で過失割合に関する意見が食い違い、交渉が難航することが少なくありません。

ケースによっては、一方の当事者が「自分の過失は2割だ」と主張し、他方の当事者も「自分の過失こそ2割だ」と主張する、というように、過失割合に関する主張が全く逆になっているようなこともあります。

このように当事者の言い分の差が大きくなる原因は、事故状況の特定が容易でないことにあります。

右直事故の場合だと、右折車がいつ右折を始めていたか、その時直進車はどこにいたか、直進車が交差点に進入したのはいつか、信号の色は何だったか、といったことが問題になることが少なくありません。

こうした事実は、ドライブレコーダーや監視カメラの映像が残っていれば比較的判明しやすいのですが、それらがない場合、双方の運転手の供述、車両の損傷具合、道路のブレーキ痕の状況などから推測せざるを得なくなります。

ところが、当事者同士の話し合いである示談交渉では、これらの証拠についてお互いが自分に有利な解釈を施して主張をぶつけ合うことも少なくなく、交渉が難航してしまうのです。

 

2 過失割合が変わると賠償金額も変わる

上でもご説明したとおり、交通事故の賠償金は多額(数百万~1億円以上)に上ることがあるため、過失割合が5%~10%変わるだけでも、賠償金の金額に数百万円~1千万円と大きな影響を及ぼす可能性があります。

このように、過失割合は、賠償金額に大きな影響を及ぼすため、数%といえど安易に妥協してはいけません。

 

3 保険会社から提示される過失割合を鵜呑みにしない

示談交渉では、加害者が加入している任意保険会社から損害賠償額や過失割合に関する提案を受けることが多いです。

交通事故問題に不慣れな事故当事者の中には、「保険会社は交通事故に関する経験が豊富なのだから、保険会社から提案された賠償額や過失割合は客観的で妥当なものなのだろう」と受け取る人も少なくありません。

しかし、実際には、そのようなことはありません。

加害者の保険会社は、あくまで加害者の言い分に立って主張しており、必ずしも客観的視点から見て提案をしているわけではありません。

それに、保険会社自身、示談交渉で決まった損害賠償を支払う立場に立っているため、少しでも自社に有利なようになるよう主張してきます。

示談内容については、保険会社の言っていることが妥当なのかを確認するためにも、一度、交通事故に強い弁護士に相談し、アドバイスをもらうことをお勧めします。

なお、示談書にサインしてしまった後では、「示談契約」が成立してしまうので、仮に示談内容が不適切であっても、示談内容を変更することはほとんど不可能になってしまいます。

弁護士に相談に行くのは、遅くとも示談書にサインをする前にしましょう。

示談交渉のポイントについては、以下のページもご参照ください。

 

4 損害賠償額の相場をあらかじめ調べておく

過失割合を数%変えることが賠償額にどの程度の影響を与えるかは、自分の事故での賠償金額がどの程度になるかの目安がないと、実感しにくいかもしません。

そのため、自分のケースでの損害賠償額の相場をあらかじめ知っておくことが、過失割合について安易に妥協しない決意を固めるためにも大切です。

この際、損害賠償額の相場は、自分で調べることが重要です。

なぜこれが重要になるかというと、加害者の保険会社が提示してくる金額は、往々にして不十分なものとなっているからです。

これは、保険会社が損害賠償額を算定する際に自社の内部基準(任意保険基準)を使っていることが原因となっています。

任意保険基準は、保険会社の示談代行サービスを使っての示談交渉では広く用いられています。

しかし、実は、任意保険基準による算定額は、裁判になった場合や弁護士が関与して示談交渉を行う場合に用いられる弁護士基準(裁判基準)での算定額に比べ、大幅に低額になることが少なくありません。

そのため、保険会社の言うことに引きずられてしまわないよう、自分でも、弁護士基準に基づいた損害賠償額の相場を知っておくことが大切です。

弁護士基準、任意保険基準などに関する説明、弁護士基準による損害賠償額の相場については、以下のページで詳しく解説しています。

損害賠償額の見積もりをする際には、当事務所の交通事故賠償金計算シミュレーターをご活用いただくと便利です。

このシミュレーターに必要事項(事故時の年齢、性別、年収、入通院期間、後遺障害等級など)をご入力いただけば、慰謝料、逸失利益、休業損害の目安をご覧いただくことができます。

結果はその場ですぐにご覧いただくことができ、後日当事務所からご連絡することはございません。

ご連絡先等の個人情報の入力も不要です。

損害賠償額を見積もる際には、こちらのリンクから、ぜひご活用ください。

 

5 信号機の色が争われることがある

右直事故では、信号機の色が何だったかで事故類型が分かれており、どの事故類型に当たるかによって基本過失割合が大きく変わってきます。

そのため、右直事故において信号機の色はとても重要な問題であり、事故当事者の間でも争いになることが多くなります。

例えば、直進車(自動車)は赤信号にもかかわらず進入してきて、右折車(自動車)の方が青色の矢印信号に従っていた、というような主張が右折車の運転手から出ることがあります。

仮にこの話が事実であれば、直進車が赤信号で交差点に進入したことになり、基本過失割合は直進車100:右折車0となりますので、双方が青信号で進入していた場合の過失割合(直進車80:右折車20)とは大きく変わってきます。

交差点を通過した時点での信号機の色が問題になった場合、最も直接的な証拠は、ドライブレコーダーの映像になります。

警察が保管している信号サイクル表などを参考にして事故状況について検討を進めることもできますが、これだけだと、事故の瞬間の信号機の色を確定することは非常に難しいのが実情です。

場合によっては、裁判を起こして証人尋問までしなければならないということにもなりかねません。

万が一事故になった場合に備え、ドライブレコーダーはできるだけつけておく方がよいでしょう。

事故時にドライブレコーダーをつけていなかった場合には、後のトラブルに備えて、

  • 目撃者がいないかを確認し、連絡先を聞いておく
  • 現場周辺に監視カメラがないか確認し、あれば警察に伝えて画像を確保してもらう

といった対応をすることが大切です。

 

6 修正要素を巡ってトラブルになりやすい

右直事故の場合、直進車側から、「右折車の方が急に飛び出してきた」との主張が出されるケースが多くあります。

この場合、直近右折や早回り右折といった過失割合の修正要素が問題となってきます。

この過失割合の修正要素を巡っては、加害者側の保険会社とトラブルになるケースも多いのが実情です。

修正要素を認めてもらうためには、単に被害者が「右折車が急に飛び出した」と主張するだけでは不十分で、客観的な証拠を提示する必要があります。

証拠となり得るものしては、次のようなものあります。

  • ドライブレコーダーの画像
  • 事故現場や信号、事故現場周辺などを撮影した監視カメラの映像
  • 目撃者の証言
  • 実況見分調書

これらのうち最も直接的な証拠となるのは、ドライブレコーダーの画像又は事故現場と信号を映した監視カメラの映像です。

これらがない場合は、事故現場周辺を映した監視カメラの映像、目撃者の証言、実況見分調書などが有力な証拠になり得ます。

なお、実況見分調書は、人身事故の場合に、警察官が事故の当事者双方の言い分を聞いて作成します。

実況見分調書を取得できるのは、刑事処分が終了してからになりますので、入手までに時間がかかります。

入手手続も、当事者の方がご自身で行うには手間がかかります。

右直事故で過失割合の修正要素についてトラブルになった場合は、早いうちに交通事故に強い弁護士に相談し、実況見分調書などの資料の収集を含めて依頼することをお勧めします。

 

7 交通事故に強い弁護士に相談する

ここまでに見たとおり、右直事故では、事故状況、過失割合について争いになることが少なくありません。

右直事故の当事者になってしまった場合には、なるべく早く弁護士に相談し、示談交渉などへの対応を依頼することをお勧めします。

交通事故について弁護士に相談、依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  • 損害賠償額を算定する際に、被害者に最も有利な弁護士基準を適用することができ、賠償額の増額が期待できる
  • 弁護士が依頼者の立場に立って主張立証を尽くすため、適切な過失割合で解決できる可能性が高くなる
  • 保険会社や加害者側とのやり取りの窓口や証拠資料(カルテ、診断書、実況見分調書など)の収集を任せることができる
  • 加害者側の保険会社から治療の打ち切りを打診されたときに交渉してもらえる
  • 治療や示談に関する不安・疑問について気軽に相談できる
  • 後遺障害等級認定についてもサポートを受けられる

交通事故について弁護士に依頼することのメリット、交通事故に強い弁護士を選ぶ際のポイントについては、以下のページをご参照ください。

 

 

右直事故の過失割合についてのQ&A

信号無視の右直事故の過失割合は?

一方が赤信号を無視して右直事故が起きた場合、過失割合は以下のようになります。
事故態様 過失割合(直進車:右折車)
自動車同士の事故 直進車が赤信号を無視し、右折車は青色矢印信号で右折した 100:0
直進車が赤信号を無視し、右折車は青信号で進入、赤信号で右折を開始した 90:10
直進車が赤信号を無視し、右折車は黄信号で進入し、赤信号で右折した 70:30
双方が赤信号を無視した 50:50
自動車とバイクの事故 直進車(バイク)が赤信号を無視し、右折車(自動車)が青色矢印信号で右折した場合 100:0
直進車(自動車)が赤信号を無視し、右折車(バイク)が青色矢印信号で右折した場合 100:0
直進車(バイク)が赤信号を無視し、右折車(自動車)が青色で進入し、赤信号で右折した場合 80:20
直進車(自動車)が赤信号を無視し、右折車(バイク)が青色で進入し、赤信号で右折した場合 90;10
直進車(バイク)が赤信号を無視し、右折車(自動車)が黄信号で進入し、赤信号で右折した場合 60:40
直進車(自動車)が赤信号を無視し、右折車(バイク)が黄信号で進入し、赤信号で右折した場合 80:20
直進車(バイク)も右折車(自動車)も赤信号を無視した場合 40:60
直進車(自動車)も右折車(バイク)も赤信号を無視した場合 60:40


速度超過の場合の右直事故の過失割合は?

直進車に速度超過があった場合、以下の過失割合が、直進車側に加算されます(加算される過失割合の具体的な数値は、事故類型によって異なります。)。
  • 時速15キロメートル以上30キロメートル未満の超過であれば、5~10%
  • 時速30キロメートル以上の超過であれば、10~20%

右折車に速度超過があった場合は、「徐行なし」として、5~10%の過失割合が加算されます(加算される過失割合の具体的な数値は、事故類型によって異なります。事故類型によっては、加算されない場合もあります。)。

 

 

まとめ

今回は、ケースごとの右直事故の過失割合、右直事故での過失割合の修正要素などについて解説しました。

右直事故では、信号機の色、右折のタイミングなどについて双方の主張が食い違い、争いになることもあります。

右直事故の当事者になってしまった場合は、早めに交通事故に強い弁護士に相談・依頼し、対応を任せることをお勧めします。

当事務所では、交通事故を集中的に取り扱う交通事故チームを設け、交通事故問題でお困りの方のサポートに力を注いでおります。

電話又はオンラインによる全国対応も行っております。

右直事故に遭ってお困りの方はぜひ一度、当事務所までお気軽にご連絡ください。

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