青信号で交差点を直進中、右折車と衝突した場合の過失はどうなる?
信号機のある交差点での直進車と右折車の事故(右直事故)の場合、直進車と右折車のどちらが優先なのかが問題となりますが、原則として、右折車に対して直進車が優先されます。
したがって、交差点での右直事故については、右折車の方が過失が大きくなる傾向があります。
この場合の基本過失割合は、直進車20:右折車80です。
交差点での交通事故の過失割合
信号機のある交差点で交通事故が発生した場合、典型的には右直事故と呼ばれる類型の交通事故が挙げられます。
これは、直進車と対向車線の右折車との衝突です。
この場合、原則として、直進車は右折車に対して優先します。
道路交通法37条では以下のように定められています。
【道路交通法37条】
車両等は、交差点で右折する場合において、当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、当該車両等の進行妨害をしてはならない。
この条文にある「進路妨害」とは、
車両等が、進行を継続し、又は始めた場合においては危険を防止するため他の車両等がその速度又は方向を急に変更しなければならないこととなるおそれがあるときに、その進行を継続し、又は始めることをいう。
とされています。
つまり、右折車は対向から来る直進車の進路を妨害しないよう、直進車が通過してから右折をすることになるため、交差点での右直事故については、右折車の方が過失が大きくなる傾向があります。
交通事故の過失割合については、裁判実務上、事故の類型に応じて基本の過失割合というのが設定されています。
信号機で交通整理のされている交差点での直進車と右折車の基本過失割合は 直進車20:右折車80 なので、原則としては直進車にも一定程度の過失が認められるということになります。
直進車の過失とは?
他方で、直進車の注意義務は一切なくなるというわけではありません。
車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。
上記の通り、直進車は交差点を通過するとき「右折する車両等に」「特に注意」するように定められています。
したがって、直進車にも右折する車両に「特に注意」しなかった前方不注視、「できる限り安全な速度と方法」のためのハンドル・ブレーキ操作の不適性があったため、過失が認められることになります。
このような事情から、双方青信号での交差点進入による直進車と右折車との交通事故の基本過失割合は、 直進車:右折車 = 2:8 と設定されています。
過失の修正要素
信号について
直進車・右折車青信号同士となりますので、直進車優先は変わりません。
直進車の過失が加算される過失
直進車の過失が減らされる要素
右直事故の過失割合の注意点
信号機の色で争いになることがある
今回のようなケースでは、直進車、右折車ともに青信号というケースでしたが、実際の事例では、お互いに信号機の色について争うことがあります。
具体的には、直進車は赤信号に変わっていて、右折車の方が青色の矢印信号に従っていたというような主張が右折車の運転手から出ることがあります。
もし仮にこの話が事実であれば、直進車が赤信号で交差点に進入したことになり、過失割合は大きく変わってきます。
このように、交差点の通過時点での信号機の色が問題になると、警察が保管している信号サイクル表などを参考にして話を進めることになりますが、一番直接的な証拠はドライブレコーダーになります。
逆にドライブレコーダーがない事案だと、信号機の色を確定することが非常に難しくなり、事案によっては、裁判で証人尋問までしなければならないということになりかねません。
したがって、万が一に備え、ドライブレコーダーはできるだけつけておく方がよいでしょう。
仮に、交通事故の時点でつけていなかった場合には、後にトラブルにならないよう、目撃者がいないかを確認し、連絡先を聞いておくといった対応が必要です。
修正要素を巡ってトラブルになりやすい
右直事故の場合、直進車の方としては、右折車の方が急に飛び出してきたというケースも多いかと思います。
この場合、直近右折や早回り右折が問題となりえます。
このように、修正要素を巡って保険会社とトラブルになるケースも多いのが実情です。
この修正要素を認めてもらうためには、単に被害者が「右折車が急に飛び出した」と主張しても不十分で、客観的な証拠を求められます。
先ほどのドライブレコーダーや警察の実況見分調書が重要になってきます。
実況見分調書は、人身事故として取り扱う交通事故の場合、警察官が事故の当事者双方の言い分を聞いて作成をしています。
この実況見分調書を取得するのは、刑事処分が終了してから行わなければならず、被害者の方が自分で取得するのは手間がかかります。