夜間、無灯火で違法駐車車両に追突し怪我。過失割合は?
執筆者:弁護士 鈴木啓太
(弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士)
駐停車車両へ過失が認められる可能性があります。
一般的には、停止車両に自動車や単車が追突した場合、追突した車両に全面的に過失があるとされます。
しかし、追突車両の運転手は違法駐車が原因でケガをしたのですから、不法行為責任(民法709条)や自賠責法の運行供用者責任を問えます。
駐停車車両へ責任を問える根拠
上記の通り、不法行為責任(民法709条)や自賠責法の運行供用者責任を問えます。
ただ、自賠責法3条本文は「自分のために自動車を運行する者は、その運行により他の人を死亡させ、又は負傷させたときは、その損害を賠償する責任を負う。」とされており、かつて車両の駐車が、自賠責法3条本文の「運行」といえるかが問題となりました。
東京高判(S51.6.22)は「自動車が道路上に駐車している状態も運行状態にある」として、駐車車両運転手の運行供用責任を認めました。
駐車車両の過失
駐停車の運行供用者責任が認められても、さらに駐車車両にどのような過失があるのかは過失割合を考えるとき、重要な問題となります。
道路交通法の規定
駐停車禁止場所
道路交通法44条・45条によって禁止されている場所の駐停車
駐車方法
- ① 道路に左側端に沿い、他の交通の妨げにならないようする(道路交通法47条)。
- ② 夜間やトンネルの中、濃霧で視界が50メートル以下の場所に停めるときでは、非常点滅灯、尾灯または駐車灯をつけなければならない(道路交通法52条ほか)。
過失の判断基準
駐車車両の過失の有無は、 道路交通法の規定を参考に以下の基準などから総合的に判断されます。
- 道路の形状・広狭
- 交通量
- 時間帯
- 明るさ
- 見通し
- 気象状況
- 駐車車両の大きさ・色・形
- 駐車の目的・時間
- 駐車位置・方法
- 駐車後の措置(非常灯点滅など)
- 衝突車両の速度
- 衝突車両の前方注意義務違反の有無、程度
駐停車車両との事故での過失割合
修正要素
判例タイムズの過失割合基準【157】では駐停車車両の基本過失は0ですが、以下駐車車両の修正要素を列挙しています。
- 駐車禁止場所 -10
- 非常灯の無灯火 -10 ~20
- 駐車灯の無灯火 -10 ~20
裁判例
横浜地判 H2.3.27
夜間、国道の駐車禁止場所に駐車灯をつけずに停止していた大型クレーン車に自動二輪車が衝突した事故で、駐車車両の大型クレーン車に40%の過失を認めました。
東京地八王子支判 H3.9.24
夜間、駐車禁止場所に尾灯をつけずに停止していた普通貨物自動車に原付自転車が衝突した事故で、駐車車両の普通貨物自動車に35%の過失を認めました。