高次脳機能障害でお悩みの方へ
この記事でわかること
- 高次脳機能障害の症状
- 高次脳機能障害の後遺障害認定基準
- 高次脳機能障害の後遺障害申請のポイント
- 高次脳機能障害に関する弁護士のサポート内容
高次脳機能障害とは
交通事故により、頭部に外力が加わると、頭蓋骨骨折や頭蓋底骨折などの骨折が起こることがあります。
このような骨折のように、強い衝撃を脳が受けることによって、脳挫傷やくも膜下出血、びまん性軸索損傷といったダメージを負うことがあります。
脳外傷を負った際に、意識を失っている期間が一定期間あると、治療をして回復する過程で、認知障害や行動障害、人格障害といった症状が発生することがあり、このような症状を総称して「高次脳機能障害」と呼ばれています。
高次脳機能障害の症状
認知障害
認知障害としては、以下のような症状があります。
- 過去に体験した記憶が思い出せなくなる
- 新しく体験したことを記憶できなくる
- 注意力が散漫になる
- 物事に集中できなくなる
- 計画的に行動できなくなる
こうした認知障害は、脳がニューロンという神経細胞を通じて、非常に複雑な神経ネットワークを形成しており、信号を授受しあって記憶を形成しているということに由来しています。
つまり、交通事故によって、脳に外傷を受けるとそこに傷が残ってしまい、この神経ネットワークが影響を受けてしまうのです。
行動障害
行動障害としては、以下のような症状があります。
- 周囲の状況に合わせた適切な行動ができない
- 同時に複数のものごとを処理することができない
- 話がまわりくどくなる
- 本をよむことができない
- 職場や社会のマナー、ルールが守れない
- 危険を予測・察知して、それを回避するような行動がとれない
- 衝動的に行動するなど、自分の行動を抑制できない
人格障害
人格障害としては、以下のような症状があります。
- 自発的に行動することができない
- 物事に対するやる気がなくなる
- 自己中心的になる
- 怒りっぽくなる
- 気が短くなり暴言を吐くことがある
- 言動や行動が子どもっぽくなる
- お金の管理ができなくなる
- こだわりが強くなる
高次脳機能障害の認定基準
等級 | 認定基準 | 補足的な考え方 |
---|---|---|
1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの | 身体機能は残存しているが、高度の痴呆があるために、生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの |
2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの | 著しい判断能力の低下や情動の不安定などがあって、1人で外出することができず、日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体的動作には排泄、食事などの活動を行うことができても、生命維持に必要な身辺動作に、家族からの声掛けや監視を欠かすことができないもの |
3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの | 自宅周辺を1人で外出できるなど、日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また、声掛けや、介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力、新しいことを学習する能力、障害の自己認識、円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって、一般就労が全くできないか、困難なもの |
5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 単純くり返し作業などに限定すれば、一般就労も可能。ただし、新しい作業を学習できなかったり、環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており、就労の維持には、職場の理解と援助を欠かすことができないもの |
7級4号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの | 一般就労を維持できるが、作業の手順が悪い、約束を忘れる、ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの |
9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの | 一般就労を維持できるが、問題解決能力などに障害が残り、作業効率や作業能力などに問題があるもの |
参照:労災補償 障害認定必携
高次脳機能障害の被害者と家族が直面する問題
高次脳機能障害は見過ごされやすい
高次脳機能障害は、脳の障害であるため、見た目は特に障害が残っているようには見えません。
健康に見えるなかで、上記のような高次脳機能障害の症状があるため、事情を知らない周囲の人々から誤解されてしまうことがあります。
また、高次脳機能障害について、十分な理解がない医師にかかると適切な治療を受けることができない可能性もあります。
高次脳機能障害の可能性がある場合には、医師と十分にコミュニケーションをとって、被害者の治療を進めるべきでしょう。
必要に応じて専門医に相談に行かれたほうがいいケースもあります。
家族のサポートの必要性
高次脳機能障害の症状として、被害者に認知障害、行動障害、人格障害が重く出ている場合には、家族のサポートなくしては生活していけません。
日常生活を送る上でも、必要に応じた声かけやスケジュール管理などサポートが必要になります。
また、交通事故による適切な賠償金を受け取るためには、被害者の日常生活等の支障に関するご家族の説明が重要となります。
高次脳機能障害が適切な等級に認定されるためのポイント
Point①適切な医療記録と診断書の提出
高次脳機能障害として後遺障害等級が認められるためには、脳損傷を負ったことを示す画像所見が必要となります。
したがって、脳損傷が確認できる画像資料を提出する必要があります。
脳損傷が明白である場合には、問題有りませんが、必ずしも明らかでないような場合には、脳損傷を指摘する医師の見解を十分に聞き取り、証拠化して提出する必要があります。
また、事故後に意識障害(気を失っていた等)があることも必要です。
この点については、医師に「頭部外傷後の意識障害についての所見」という書面を作成してもらい提出します。
多くの場合は問題有りませんが、必要に応じて、その内容がカルテや緊急搬送記録などの医療記録と矛盾していないか確認する場合もあります。
Point②被害者の症状を具体的に説明した書面を提出する
高次脳機能障害であることが認められるとして、どの程度の等級に認定されるかは、その症状の程度によって決まります。
症状の程度を検討するにあたっては、ご家族が作成される日常生活報告書、職場の同僚らの陳述書、学校の担任の教師の陳述書などを踏まえて検討されます。
他にも、学校の成績表や職場での業務実績・評価などが分かる資料があれば提出することもあります。
日常生活報告書や陳述書は、具体的なエピソードを踏まえて、事故前後で被害者がどのように変化したのかを詳細に作成する必要があります。
日常生活や仕事上、学校生活上でどの程度の支障が出ているかで等級の程度は変わってくるため、被害者の症状を漏らすことなく作成しなければなりません。
職場の同僚らに話を聞いたり、学校を訪問して担任や部活動の顧問の先生から事情を聴取して陳述書として証拠化していくのです。
Point③必要に応じて主治医と面談する
脳に外傷を負っている場合、医療の現場では救急医療、つまり、命を救うための処置を最優先している関係で、カルテには細かな記載がされておらず、担当した医師も被害者の症状を詳細に把握できていないということもあり、そのような状態で後遺障害診断書をはじめとする書類を作成してもらうのは適切でないケースもあります。
そうしたケースの場合には、あらかじめカルテを被害者側で開示して、内容を検討するのはもちろん、その後に被害者本人やご家族が把握している現在の症状を整理し、それを主治医の医師と面談して伝えた上で後遺障害診断書の作成を依頼するなどのプロセスも必要になります。
デイライト法律事務所のサポート
このように交通事故の被害者、ご家族にとって影響の大きな高次脳機能障害に対する問題について、交通事故を専門的に取り扱うデイライト法律事務所では、弁護士が以下のサポートを実施しております。
後遺障害の申請サポート
先ほど解説したとおり、高次脳機能障害の症状が残存する場合には、自賠責保険への後遺障害の申請が必要です。
もっとも、被害者やそのご家族がいきなり自賠責保険への後遺障害申請を行うことは非常に困難です。
特に、高次脳機能障害の案件は専門性が必要ですし、被害者自身ではできないからといって相手方の保険会社に任せるべきものではありません。
そこで、デイライト法律事務所では、弁護士が被害者の方に代わって、自賠責保険への後遺障害の申請手続を全力でサポートしています。
具体的には、必要となる書類の案内、カルテや画像などの取り寄せ、取り寄せたカルテの検討、日常生活報告書の作成サポート、医師への後遺障害診断書、あるいはそれ以外に必要となる書類の作成のお願いといったものです。
こうしたサポートを通じて、被害者の方に残っている症状をしっかりとお伺いして、適切な認定されるように活動をしております。
示談交渉サポート
交通事故にあった場合、保険会社との示談交渉が必要となりますが、保険会社との示談交渉では弁護士が代理人として交渉をすることで賠償額が増額することが非常に多いです。
これは賠償額の基準について、被害者ご本人が交渉する場合と弁護士が交渉する場合で保険会社が異なる基準を用いていることに起因しています。
特に高次脳機能障害の事案の場合には、上記のとおり賠償項目が多くなり、後遺障害の等級も比較的高くなるため、基準の違いによる賠償額の差が大きくなります。
そのため、弁護士に依頼する必要性、メリットが高いといえます。
デイライト法律事務所では、交通事故を専門とする弁護士が被害者の方のご相談に対応し、ご依頼後は保険会社との示談交渉を被害者やご家族に代わって行います。