石綿健康被害救済制度とは?弁護士がわかりやすく解説


石綿健康被害救済制度とは、労災保険等による補償を受けることができないアスベスト被害者に救済給付を行う制度です。

給付内容は、医療費、療養手当、葬祭料、救済給付調整金、特別遺族弔慰金、特別葬祭料があります。

アスベスト被害にあった本人だけでなく、その遺族も利用できる制度です。

このページでは、石綿健康被害救済制度の制度内容、必要書類、手続きの流れなどについて解説していますので、参考にされてください。

この記事でわかること

  • 石綿健康被害救済制度の概要
  • 石綿健康被害救済制度の給付内容
  • 石綿健康被害救済制度を利用する際の必要書類
  • 石綿健康被害救済制度の手続きの流れ
  • 給付の請求期限

石綿健康被害救済制度の概要

石綿健康被害救済制度とは、アスベスト(石綿)によって健康被害を受けたものの、労災補償等の対象とならなかった方や、その遺族に一定の救済給付をする制度です。

平成18年3月27日に「石綿による健康被害の救済に関する法律」が施行され、この制度による救済が始まりました。

環境省地方環境事務所、あるいは、保健所等に申請を行い、環境再生保全機構が環境大臣の認定結果を踏まえて給付するかどうかの決定がなされます。

給付の内容としては、医療費、療養手当、葬祭料、救済給付調整金、特別遺族弔慰金、特別葬祭料があります。

 

 

どんな人が対象となるの?

対象となるのは、アスベスト(石綿)によって以下の「指定疾病」にかかっている方です。

  1. ① 中皮腫(ちゅうひしゅ)
  2. ② 肺がん
  3. ③ 著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺(せきめんはい)
  4. ④ 著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚(びまんせいきょうまくひこう)

 

 

給付内容とは?


給付内容は下表のとおりです。

給付項目 給付内容 給付金額
医療費 指定疾病に対する医療 自己負担分
療養手当 治療に伴う医療費以外の入通院に伴う諸経費、日常生活における近親者等による介護に要する費用などの給付 月10万3870円
葬祭料 指定疾患に認定された人の葬祭に伴う費用負担に対する給付 19万9000円
救済給付調整金 認定された人が指定疾病が原因で死亡するまでに給付を受けた医療費と療養手当の合計が特別遺族弔慰金の額に満たない場合に、遺族に支給される給付 事案による
特別遺族弔慰金 指定疾患が原因で死亡した人の遺族に対する給付 280万円
特別葬祭料 指定疾患が原因で死亡した人の葬祭に伴う費用負担に対する給付 19万9000円

 

 

石綿健康被害救済制度の請求手続とは?

必要書類

石綿健康被害救済制度を申請するにあたって必要となる書類は以下のとおりです。

医療費等に関する申請の場合

① 現在療養中で医療費等に関する申請をする場合
種別 認定に必要な資料
手続様式 申請書等 ◯認定申請書(手続様式1号)
◯療養手当請求書(手続様式第12号)
身分証明 ◯以下のいずれかのうち1つ
・住民票の写し
・申請者の戸籍の抄本
・戸籍記載事項証明書(手続様式第2号)
判定様式 診断書 ◯指定疾患にかかっていることを証明する診断書
・中皮腫用診断書(判定様式第1号)
・肺がん用診断書(判定様式第2号)
・石綿肺用診断書(判定様式第7号)
・びまん性胸膜肥厚用診断書(判定様式第8号)
その根拠となる医学的資料 中皮腫の場合、右記のいずれかの報告書は必須 以下の報告書は各病院の様式
◯病理組織診断報告書
◯細胞診断報告書
◯可能な限り下記の標本も提出
・病理組織診断の場合:HE染色標本
・細胞診断の場合:パパニコロウ染色 標本
石綿肺、びまん性胸膜肥厚の場合 ◯石綿のばく露に関する申告書(判定様式第9号)
◯呼吸機能検査結果報告書
その他診断の根拠となった検査結果 ◯単純エックス線画像、CT画像(必須)
◯診療録の写し、報告書等(任意)
◯石綿計測結果報告書(判定様式第6号、任意)
アンケート(中皮腫、肺がんの場合) 所定の様式のアンケート(任意)
② 上記の①の申請を行い認定される前に亡くなった場合
種別 請求に必要な書類等
申請書 ◯申請中死亡者に係る決定申請書(手続様式第3号)
死亡事実等の証明 ◯死亡診断書の写し又は死体検案書の写し
上記書類に加えて下記(A)もしくは(B)の書類を提出する
身分関係証明(A) ◯戸籍謄本
生計同一証明(A) ◯以下の書類等から生計が同じであることを証明する
以下のいずれか一つで証明できないときは、複数の書類の提出が必要になる場合もある
・申請中死亡者の住民票除票と申請者の住民票
・消除者を含む世帯全員の住民票
・戸籍の附票
・保険証の写し
・確定申告の控え
・源泉徴収票の写し
・民生委員の証明書など
葬儀者明示書類(B) ◯葬儀の領収書(原本)、死体埋火葬許可書の写し(コピー可)など

特別遺族弔慰金・特別葬祭料の請求(遺族の請求)

中皮腫又は肺がんで平成18年3月27日(法施行日)よりも前に死亡した場合、あるいは、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、又は、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚で平成22年7月1日(改正政令施行日)よりも前に死亡した場合の申請書類は、以下のとおりです。

種別 認定に必要な資料
手続様式等 請求書 ◯特別遺族弔慰金・特別葬祭料請求書(施行前死亡者用、手続様式第16号)
死亡事実等の証明 ◯確認同意書(手続様式第16の2号)
※死亡診断書又は死体検案書に請求する病名(中皮腫、石綿肺、びまん性胸膜肥厚)がない場合には診療録の提出が必要になる場合がある。
身分関係証明 ◯戸籍謄本
生計同一証明 ◯以下の書類等から生計が同じであることを証明する
以下のいずれか一つで証明できないときは、複数の 書類の提出が必要になる場合もある
・施行前死亡者の住民票徐票と請求者の住民票
・消徐者を含む世帯全員の住民票
・戸籍の附票
・保険証の写し
・確定申告の控え
・源泉徴収票の写し
・民生委員の証明書など
判定様式 診断の根拠となった検査結果
(肺がんの場合)
◯原因が石綿であることを証明する資料(判定様式第3号)
◯単純エックス線画像、CT画像
アンケート(中皮腫、肺がんの場合) 所定の様式のアンケート(任意)

中皮腫又は肺がんで平成18年3月27日(法施行日)よりも後に死亡した場合、あるいは、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、又は、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚で平成22年7月1日(改正政令施行日)よりも後に死亡した場合の申請書類は、以下のとおりです。

種別 認定に必要な資料
手続書類等 請求書 ◯特別遺族弔慰金・特別葬祭料請求書(未申請死亡者用、手続様式第16の3号)
死亡事実等の証明 ◯死亡診断書の写し又は死体検案書の写し
身分関係証明 ◯戸籍謄本
生計同一証明 ◯以下の書類等から生計が同じであることを証明する
以下のいずれか一つで証明できないときは、複数の書類の提出が必要になる場合もある
・未申請死亡者の住民票徐票と請求者の住民票
・消徐者を含む世帯全員の住民票
・戸籍の附票、保険証の写し
・確定申告の控え
・源泉徴収票の写し
・民生委員の証明書など
判定様式等 診断書 ◯指定疾病にかかっていることを証明できる医師の診断書
・中皮腫用診断書:判定様式第1号
・肺がん用診断書:判定様式第2号
・石綿肺用診断書:判定様式第7号
・びまん性胸膜肥厚用診断書:判定様式第8号
根拠となる医学的資料 中皮腫の場合
右記のいずれかの報告書は必須
以下の報告書は各病院の様式を使用
◯病理組織診断報告書
◯細胞診断報告書
◯可能な限り下記の標本も提出する
・病理組織診断の場合:HE染色標本
・ 細胞診断の場合:パパニコロウ染色標本
石綿肺、びまん性胸膜肥厚の場合 ◯石綿のばく露に関する申告書(判定様式第9号)
◯呼吸機能検査結果報告書
その他診断の根拠となった検査結果 ◯単純エックス線画像、CT画像(必須)
◯診療録の写し、報告書等(任意)
◯石綿計測結果報告書(任意、判定様式第6号)
アンケート(中皮腫、肺がんの場合) 所定の様式のアンケート(任意)

申請書類のダウンロードは、独立行政法人環境再生保全機構の下記のサイトからダウンロートすることができます。

引用元:独立行政法人環境再生保全機構 アスベスト(石綿)健康被害救済給付の概要

 

手続の流れ

石綿健康被害救済制度を利用した給付申請の手続きの流れは以下のとおりです。

石綿健康被害救済制度を利用した給付申請の手続きの流れ

①環境省地方環境事務所又は保健所等に申請を行う

②環境再生保全機構が申請書類を確認

③医学的判定を要する事項を環境大臣が判定して環境再生保全機構に結果を通知

④環境再生保全機構から申請者に結果を通知、認定された場合は給付
  • ① 環境省地方環境事務所又は保健所等に申請を行う
    石綿健康被害救済制度により給付を受けるためには、国内でアスベスト(石綿)を吸入したことで指定疾病にかかったこと、あるいは、かかって死亡した者の遺族であることの認定を、環境再生保全機構から受ける必要があります。

    その申請の窓口は、環境省地方環境事務所又は保健所等です。

    したがって、指定疾患のかかった本人あるいは遺族は、上記した必要書類を集めて、環境省地方環境事務所又は保健所等に提出する必要があります。

  • ② 環境再生保全機構が申請書類を確認
    環境省地方環境事務所又は保健所等から申請書類を受け取った環境再生保全機構は、書類内容を確認して、医学的判定が必要な部分について、環境大臣に判定を申し出ます。
  • ③ 医学的判定を要する事項を環境大臣が判定して環境再生保全機構に結果を通知
    環境大臣は、環境再生保全機構からの申し出を受けて、医学的判定の部分に関して、中央環境審議会に意見を聞きます。

    その意見を踏まえて、医学的な判定を行い、その結果を環境再生保全機構に通知します。

  • ④ 環境再生保全機構から申請者に結果を通知、認定された場合は給付
    環境再生保全機構は、環境大臣の判定結果に基づいて、認定の可否を決定し、認定された方には、給付の支給が開始されます。

    認定されなかった場合には、その決定があったことを知った日から起算して3ヶ月以内に公害健康被害補償不服審査会に対して審査請求することができます。

 

 

弁護士に相談するメリットとデメリット

弁護士に相談するメリットとしては、石綿健康被害救済制度の内容について詳しく説明を聞くことができます。

また、石綿健康被害救済制度以外の給付金の制度についても説明を受けることができ、他制度も利用できることが分かるかもしれません。

さらに、相談の上、給付を受けることができる見込みであれば、手続きを弁護士に依頼することもできます。

一方で弁護士に相談することのデメリットは存在しないでしょう。

アスベスト問題に関して、無料相談をしている弁護士事務所であれば費用もかからないため、費用面でのデメリットもありません。

したがって、石綿健康被害救済制度について、疑問点があれば弁護士に相談されることをお勧めします。

メリット
  • 石綿健康被害救済制度の内容について詳しく説明を聞ける
  • 他制度が利用できないか説明を受けることができる
  • 給付の見込みがあれば手続きを弁護士に依頼できる
デメリット
特になし

 

 

石綿健康被害救済制度の3つのポイント

請求期限に注意する

石綿健康被害救済制度の給付には請求できる期間に制限があります。

請求期限内に申請するように注意しましょう。

以下は、各給付の請求できる期間をまとめた表です。

給付内容 請求できる期間
医療費 医療費を支払った日の翌日から2年間
葬祭料 死亡した日の翌日から2年間
療養手当 基準日(※)の属する月の翌月から支給すべき事由が消滅した日の属する月までが給付対象期間。
特別遺族弔慰金、特別葬祭料
(疾病が中皮腫、肺がんの場合)
◯平成18年3月27日より前に死亡した場合
→令和14年3月27日まで
◯平成18年3月27日から平成20年11月30日までに死亡した場合
→令和15年12月1日まで
◯平成20年12月1日以降に死亡した場合
→死亡後25年以内
特別遺族弔慰金、特別葬祭料
(疾病が石綿肺、びまん性胸膜肥厚の場合)
◯平成22年7月1日より前に死亡した場合
→令和18年7月1日
◯平成22年7月1日以降に死亡した場合
→死亡後25年以内

(※)基準日とは、療養開始日又は、その日が申請日の3年前の日前である場合は、申請日の3年前の日を指します。

 

他の制度の活用も検討する

アスベストの救済方法としては、石綿健康被害救済制度の他に、労災保険の使用、建設アスベスト給付金制度、石綿工場の労働者の訴訟手続などがあります。

石綿健康被害救済制度は、労災補償等の対象とならない方が利用する制度であり、この制度を検討されている時点で、他制度の利用は難しいかもしれませんが、他制度を利用することができないか、弁護士に相談して確認してもらうことも検討されてください。

 

アスベストに詳しい弁護士へ相談する


アスベストによって肺がんや中皮腫などの指定疾病にかかってしまったけれど、自分がどの制度を利用できるのか分からない場合もあるかと思います。

また、利用すべき制度は分かっていても、何から着手していいのか分からないという場合もあるかと思います。

アスベストに詳しい弁護士に相談することで、こうした疑問も解消することができます。

また、アスベストの救済の給付には請求の期限がありますので、ご自身やご家族が指定疾病にかかっている場合には、早めにアスベストに詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。

 

 

まとめ

石綿健康被害救済制度は、アスベスト被害を受けているものの、労災補償等の対象とならない方を救済する制度です。

給付内容も医療費、療養手当、葬祭料、救済給付調整金、特別遺族弔慰金、特別葬祭料があり、アスベスト被害を受けている制度の対象者は是非とも利用すべき制度です。

アスベスト被害者あるいは遺族が、自力で石綿健康被害救済制度を利用して、救済給付を受けることは可能ですが、相応の労力がかかるため、状況によっては弁護士に依頼することを検討することをおすすめします。

弊所では、アスベストの相談について、面談での相談はもちろんのこと、LINE、ZOOM、フェイスタイムなどのオンライン相談、電話相談もお受けしています。

アスベスト相談は、初回無料で全国対応していますので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

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